Keisuke Hara - [Diary]
2003/08版 その2

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2003/08/11 (Mon.)


2003/08/12 (Tues.) 子曰、未能事人、焉能事鬼

先の水無月、亡くなつた祖母の初盆で、 実家を訪問してゐました。 とは言へ、私は親戚筋やら法事やらが苦手なので、 実際に色々とある明日は避けて、 一人で焼香だけして帰ることにする。 子曰く、未だ人に事ふること能はず、焉ぞ能く鬼に事へん。 田舎に生まれて、村から出ることもなく、 ただそこで働いて死んだ無名人だが、 徳のある人であつた。 お土産は、琥珀で作られた印鑑。 祖母の遺産相続のために実印を作つた母が、 ついでに私の分も注文してくれたらしい。 琥珀の中に煙を閉じ込めたやうな自然な模様があつて、 なかなか味がある。

実家までの往復路と実家の閑な時間に、 新刊の「陰摩羅鬼の瑕」(京極夏彦)を読む。 特に、実家では、色々な事情で部屋があちこちふさがつてゐて、 やむなく仏間で寝ることになつてしまひ、 かなりの部分を深夜の、しかも初盆の、 仏間で読んだのが迫力満点でした(笑)

内容については、 物語の外部に視点を持つ読者には早々と全てが見通せてしまふことが、 そもそも眼目になつてゐるので、残りの大部分はその確認と、 このテーマを料理する作者の腕前を楽しむと言ふことではあるが、 なかなか面白かつた。 ミステリの根本にある内部/外部視点の倒錯的な関係から、 実は読者は物語の外部にゐるのだ、 と言ふ自明な事実に敢て目醒めてみせる手法は、 森博嗣の「笑わない数学者」でおそらく初めて、 誰にも明白な形で試験されたと思ふ。 このテーマはとても知的だし、可能性が沢山あると思ふが、 アンチミステリの一つのテーマに留まるのか、 分野に発展するのか、興味のあるところである。


2003/08/13 (Wed.) 盆会

cat in library 「季路、鬼神に事へんことを問ふ。 子、曰はく、未だ人に事ふること能はず、 焉んぞ能く鬼に事へん。 曰はく、敢て死を問ふ。曰はく、未だ生を知らず、 焉んぞ死を知らん」

(「論語」先進第十一より)


2003/08/14 (Thurs.)


2003/08/15 (Fri.)


2003/08/16 (Sat.) トチメンボー

職場は夏休みであるが、 私は普段通り週に五日と半日、「開店営業中」である。 しかし、人並に夏休みらしいことをしてみたい、と思はないでもない。 と言ふことで、 烏丸のジュンク堂で夏目漱石全集(ちくま文庫版全十巻)を購入した。 なんと言つても夏休みの読書と言へば、漱石にとどめをさす。 今は第一巻「我輩は猫である」で、これは何度読んでも面白い。 今日は迷亭君が笊蕎麦を食ふ所で独り笑ひ転げてしまひ、 いささかばつが悪かつた。

続いて、寒月君(*1)が現れて執筆中の博士論文の進展を報告する場面である。 「蛙の眼球の電動作用に対する紫外光線の影響」と言ふ研究で、 眼球のモデルとして実験に用いるため、 まずは自分の手で十分な精度のガラスの真球を作らねばならない。 林檎くらいの大きさから始めて、 あちらを磨きこちらを磨きしてゐるうちに、苺ほどの大きさになり、 さらに大豆ほどになるまで磨いてもやはり真球にならず、 毎日、朝から晩まで実験室でガラス玉を磨いて、 もうかれこれ正月から今まで(今は盛夏である)六つ磨り潰したと言ふ。 この調子では博士論文完成までには十年どころか廿年かかりさうだとのこと、 まさに学者たるもの、かくありたい。

*1: 寒月君: 漱石門下の天才的(?)物理学者、寺田寅彦がモデルと言はれてゐる。


2003/08/17 (Sun.)


2003/08/18 (Mon.)


2003/08/19 (Tues.)


2003/08/20 (Wed.)


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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

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