Keisuke Hara - [Diary]
2003/08版 その3

[前日へ続く]

2003/08/21 (Thurs.) へしこと麦来(バクライ)

毎日、家でぼおっとしてゐるわけではなく、 たまに大学に所用があつたりする。 何度も主張するやうに夏休みなのは学生だけである。 今日もそんなことで出勤。 偶然、大学で情報学科の N 尾氏に会い、 突然、今夜、祇園あたりに飲みに行くことにする。

N 尾氏運転の移動の車中で、 ユビキタス、つまり「遍在」とはまさにあまねくありとあらゆるところに、 つまりこの地球上のどこでもと言ふにとどまらず、 この宇宙の、過去や未来のどの時空間上の点でも、 我々のイメージや思念のいずこにでも、すべての存在と情報のあるところ、 どこにでも「ある」と言ふことであり、 ユビキタス・コンピューティングは、 それを想定して言はゆる現実世界を越へてシームレスにデザインすべきであり、 現実の地理的「空間」に基いた設計は、 人間からの歴史的観点にひきづられた誤謬である、と主張してみたのだが、 現実的見地から一蹴された。 とは言へ、N 尾氏は学生時代からの私の畏友であるからしてタダモノではない。 その思想は一瞬に理解したが、 それでは具体的な研究にはならないことも同時に悟つた、と言ふことであらう。 しかし、5年や10年先を見通すのも困難であることを知りながら、 半世紀または一世紀先を夢見るのが科学者の心意気であり義務でもある。 無責任に意見を述べられるときは、いつでも途方もないことを言ひたい。

祇園の「八咫」では、 私が「へしこ」(鯖の糠漬け保存食)なる食べ物の美味を N 尾氏に教へ、 逆に N 尾氏からは「麦来(バクライ)」なる食べ物の美味を教はる。 日本の食文化は果てしなく深く広い。 その後、「味味香」でカレー饂飩、倍辛、豚肉卵入りを食べて帰宅。


2003/08/22 (Fri.)


2003/08/23 (Sat.)


2003/08/24 (Sun.)


2003/08/25 (Mon.)


2003/08/26 (Tues.) 努力しないで成功する方法

あることが示せないのでそれを仮定にしてみたり、 仮定にしてゐたことが常に成立してゐることが分かつたり。

ところで、自分が最近、駄目になつてきてゐるな、 最近の俺はダメダメだな、と思ふときに、 自分を研ぎ直すために読み返す本があるものである。 私の場合も何冊かそんな本があるが、それは内緒にしておこう。 逆に、少しのんびりとした気持ちになりたいな、と思ふときに (ダメ人間になりたいな、と言ふことではない。念のため)、 読み返す本もある。 私の場合も何冊かそんな本があるが、 その一冊は例へば、スマリヤン(*1)の "The Tao is Silent" (「タオは笑っている」桜内篤子訳/工作舎) である。以下のその引用。

「知り会いのまた知り会いの数学者は毎日きまって昼寝をするという。 わたしは昼寝はしないが、本を読んでいていつのまにか 眠ってしまうことはよくある。 意識的に昼寝するのとはちがう。 わが家の犬たちは昼寝をしないが、よく寝ることはよく寝る。 どこでも、どんなときでも、好きなときに、 ということはほとんどいつでも、寝てしまう。 こういった犬こそ真の賢人(賢犬)と言うべきだろう…」

*1: R.M.Smullyan: 数理論理学者、哲学者(?)。 数学基礎論の学術書から易しく楽しい入門書などで有名だが、 私にとっては、最高に奇妙なチェスのパズルの本を書いた人。


2003/08/27 (Wed.) 仮定は仮定である

朝、起きたときには、その仮定は要らないと思つたが、 午前中考えるとやはり必要だと思ひ、 午後昼寝をしながら考へてゐると不要だと結論し、 夕方からチェロのレッスンのため外出すると、 電車の中ではやはり必要だと分かり、 膳所の SBUX ではその仮定を使はない証明法を閃き、 レッスンの後の電車でその証明の穴を見つけたが、 帰宅の頃にはその穴は存在しないことが分かつた。 つまらないことながら、気になるのでしやうがない。 明日はどうなる…

夜はチェロのレッスン。 サムポジションのスケール、エチュード、 マルチェロのチェロソナタ三番など。


2003/08/28 (Thurs.)


2003/08/29 (Fri.) DRC

朝から出勤。午前中は前期修了の修論発表会。 普段は数論関係の発表は修論とは言へ、 全く分からないのだが、 テーマが「二次ふるい法」だつたので参加してみる。 二次ふるい法は実際に C と GNU の多倍長演算ライブラリで実装したこともあるし、 少なくとも原理は理解してゐるので、ほぼ完全に分かつた。 しかし、偉いのは K 川先生で、 この発表会を聴くために前日に予習してきたさうだ。 確かにその努力の成果か、私と違つてまつとうな質問をしてゐた。

午後は大学院入試の面接とその判定会議、続いて教室会議。 九月中旬にあるオープンキャンパスの模擬講義を仰せつかつた。 図書館でワイルの「リーマン面」を借り、 子母沢寛の「味覚極楽」を延長して、帰宅。

夜は近所のバーに食事に行く。 バーの二周年記念企画で DRC の某ワインをグラス単位で出すと言ふ。 このクラスのワインをボトルで注文できることは、 私には一生ないだらうと思ひ、この機会にグラスで味見させて頂く。 確かにどこにも目立つ欠点がなく、 濃縮した味わひでありながらも繊細、 これぞ理想のピノ・ノワール…かも知れないが、 普段のワインの数倍から数十倍の値段の価値が本当にあるのだらうか、 と思はないでもない。 かう言ふものを本当の贅沢品と言ふのであらう。 ごくたまに一杯だけ、と言ふ程度にとどめておきたい。


2003/08/30 (Sat.)


2003/08/31 (Sun.)


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

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