Keisuke Hara - [Diary]
2003/09版 その2

[前日へ続く]

2003/09/11 (Thurs.) DoubleShot

午前中はあれこれ生活の雑務をし、 昼食にオムライスを作つて食べ、 午後はチェロのレッスンに行く。 外は物凄い湿度の蒸し暑さ。秋は遠い。 レッスンの後、SBUX で少し読書をして帰宅。 街で見ると女性の装ひは既に秋物だつたりして、 流石、ファッションは心意気、 お洒落と言ふのは大変だなあ…


2003/09/12 (Fri.) 低血圧

午後は京大の関西確率論セミナーに参加。 来日中の Pinsky 教授の講演。 私が学生時代に初めて書いた論文が、 Pinsky の提案した問題についてのものだつたので、 ははあ、この人がその人であるか、と少し感慨深かつた。 大学の近くでにわか雨に降られた上に、 セミナー室で一番クーラーの風があたる所に座つてゐたら、 講演が終る頃には気持ち悪くなり、 夜の講演者を囲む食事には不参加。バスで帰宅。 Pinsky 教授とは来週の横浜でのシンポジウムでも会へるので、 また話す機会があるだらう。

風邪を引いたかと思つたが温かい食事をしたら治つた。 単に冷房で一時的に血圧が下がつただけらしい。


2003/09/13 (Sat.) 72 の法則

明日のオープンキャンパスでの講演の準備。 珈琲が切れてゐたので、 珈琲豆の買ひ出しのため午後に一時間ほど外出。

個人による資産運用の話題が姦しいためか、 最近「72の法則」の話を良く耳にする。 これは年利が X パーセントの時に、 元本が何年で倍になるかを簡単に計算する方法で、 単にマジックナンバー 72 をこの X で割ればそれが答である、 と言ふ、大変に便利なものである。 例へば、利子が 8 パーセントなら、 72 割る 8 は 9 だから、(約) 9 年で貯金が倍になる。 しかし、何故この「法則」が成立するのか、 をきちんと説明してゐることは皆無である。 恐らく、一般大衆の程度を越へてゐると思はれてゐるのか、 または、もつとありさうな話だが、 解説者自身も良く分かつてゐないからだらう。 実際には理系の高校生程度の知識しか必要としないが、 私の経験によれば、数学者を除けば、 理系の高校生程度の数学をきちんと理解してゐる人は極めて稀であり、 経済学部の教員と言へども例外ではない。 もし、貴方が経済学部の学生ならば、 一度、教員に何故「72 の法則」が成立するのか、 質問してみると良いと思ふ。 君を納得させるやうな易しい説明がすらすらと出て来るやうなら、 その先生はタダモノではない。

ちなみに、 この質問をすると、「そりや、log 2 が約 0.72 だからさ!」 とズバリ回答する人がゐるかも知れない。 (数学者はさう答えてしまふ可能性がかなり高いと思ふ。) その人は凄く頭が切れることは確かだ。 しかし、残念ながら log 2 は約 0.69 である(笑) この問題はもう一歩、精妙さを要する。


2003/09/14 (Sun.) 天才病

来週は横浜でシンポジウムのため、次回の更新は次の土曜日以降です。

日曜日ではあるが出勤。オープンキャンパスなる催しでの、 高校生向けの模擬授業のため。 他の学科は、ゲームによる経済学入門とか、 プロスポーツのマーケティングだとか、 いかにも子供が喜びさうなテーマで模擬授業をしてゐるのに、 「ランダムウォークの数理」じやなあ、と思つてはゐたが予想通り、 開始時には男女二人づつの計四人だつた。 しかし、10分ほど遅れて前時間の企画から流れて、 二十人ほども聴講にやつてきて、 予想を遥かに越へてほぼ満室の状態で講義。 冷静に考へて数学にそんなに人気があるはずもないので、 他の部屋が満員で入れなかつた、とかの理由だらうか…

それはさておき、若者とは良いものだ。 無意味に自信に溢れてゐるところが良い。 さらに極端に行けば、若い頃には多くの人が 「ひよつとして自分は天才なのではないだらうか」 などと思ふものだ。 天才病は青春の病(やまひ)であり、青春は赤恥である。 (今、大笑ひされるのを承知で、 さらに恥を承知の上で告白すると、 私は二十歳過ぎまで「自分は天才かも知れない」と思つてゐた。) 周りにも本人にとつても迷惑な病ではあるが、 麻疹のやうなもので、 一度はこの種の病に感染して免疫を持つておく、 と言ふ意味があるのかも知れない、と今は思ふ。 それに歳をとつて世界が広くなると自然に分かるが、 天賦の才能にはそれほどの意味はない。 天才の本質は鋼の意志である。そんなに有難がるものでもない。 それより若者の、何も未だ成してゐない、 可能性の広さ、自由度の高さこそ有難い。


2003/09/15 (Mon.)


2003/09/16 (Tues.)


2003/09/17 (Wed.)


2003/09/18 (Thurs.)


2003/09/19 (Fri.)


2003/09/20 (Sat.) 古酒

横浜でのシンポジウムより帰宅。 シンポジウムでは Pinsky 教授が講演の中で私の昔の (と言つても7年前に過ぎないが)結果を引用してくれてゐて、 素朴に嬉しく思つた。 普段、仕事量が少ない上に重ねて、 インパクトファクターが零に近いものばかりなので、 評価されてゐるかだうかより、もつと單純に、 世界のどこかに読んでくれてる人がゐるんだ…と言ふのが、 驚きでもあり、嬉しくもあつた。 勿論、正しい態度は「人の己れを知らざるを患へず、 人を知らざるを患ふ」だとは思ふのだが、 知られたい、認められたい、と言ふ、少々下品な欲望は、 学者の基本的なエネルギーの一部ではあるだらう。

横浜に行つた序でに、東京へ。 六本木の鮨屋「松栄」で食事。寿司はやはり東京かねえ… 季節だけに土瓶蒸しも出て、なにもかも美味しかつたです。 続いて渋谷の「黒い月」に移動。 目を会はさずヴィンテージへの愛を熱く語る ソムリエ兼バーテンダ嬢の愛犬がゐたので、 隣りに座らせて一緒に飲む。少々グラマーなダックスフンドで、 おとなしい別嬪さんだつた。 翌日、新幹線で帰宅。ホテルのデリカテッセンで買つた、 鰯の酢漬けと半熟卵のサンドウィッチを車中で食す。

帰宅すると母から手紙が来てゐて、 丁度数日前が祖母の百ヶ日でもあつて、 建碑式と納骨をしたとのことであつた。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

この日記は、GNSを使用して作成されています。