Keisuke Hara - [Diary]
2003/12版 その1

[前日へ続く]

2003/12/01 (Mon.) オールドマネー

何故か今日の寝醒めがとても悪く、 午前中はぼうつとしてゐる間に過ぎてしまつた。 昼食はベンガルカレーで済ませ、 食後の散歩がてら銀行や郵便局などで所用。 午後は自分の問題を考へるほど気分が盛り上がらないので、 (来週出張のための貯金として)次次回分の講義の準備をする。 夕方から買ひ出し。 鷄のモツが安かつたので多めに購入。 帰りにちよつと新刊書店を覗くと、 フランスの古書店と個人の書架を特集した雑誌が目に入つて、 思はず購入。

私の人生目標の一つは、 客のほとんど来ない古書肆を京都にひつそり構へることなのだが (他には、自分で研究所を設立して唯一の研究員になるとかね(笑))、 またそんな夢を刺激されたり。帰宅して、 格好いいなあラルダンシェ書店…この方向は私には無理だが、とか、 鹿島先生、 ギャルリ・ヴィヴィエンヌ内のジュソーム書店を 「いい意味で B 級」とばつさり切る硬派さが素敵…とか、眺めつつ、 鷄モツの佃煮風煮込みを作る。 あとは白菜の漬物とかそのあたりのもので、 今週は何とかなるだらう。 御飯を炊いて、根菜の味噌汁などとともに食す。

15年前の「現代思想」の「ハイ・スタイル」特集の目を引く所の一つは、 ブルデューの論考や、ラルフ・ローレン論が語られる中で、 ブッシュ前大統領が取り挙げられてゐることだらうか。 ジュニアが愛すべき素朴なキャラクタなので忘れられがちだが、 ブッシュ家は言はゆる「オールドマネー」、 アメリカの本当の最上流階級なのである。 いや、その倫理の問題を考へると、 「だつた」と言ふべきかも知れない。 オールドマネー階級の倫理観の終焉としてのブッシュ前大統領の時代と、 ラルフ・ローレン等による上流階級の「良い趣味」 の商品化の大成功を過ぎて、 何の時代とは言ひかねるが、今の息子の時代と、 対照するなと言はれてもしたくなるところである。


2003/12/02 (Tues.) 死霊

生協書籍部で, 注文してゐたバートランド・ラッセルの著書数冊と、 埴谷雄高の「死霊 (I, II, III)」(講談社文芸文庫) を受け取り、食堂で早めの昼食。

正午から卒研。 統計学つてなかなか面白いし、 数学としても深いものだなあ。 専門家以外は(数学者でさへ) 確率論と統計学はほとんど同じものだと思つてゐるが、 実際の所はこの二つの分野はかなり遠い。 私などは、 ほとんど統計学を知らないままに来てしまつて、 最近になつて大いに反省してゐる。

続いて、M1 ゼミ。 ランダムラティス暗号を小さな数字で具体的にやつてもらふ。 面倒な計算をなかなか頑張つて来てゐて、 暗号の仕組みと "meet in the middle" 攻撃が良く理解できた模様。 Y 田先生と Williams 翻訳の件で立ち話をし、 O 坂先生と外国との共同研究の件で立ち話をして、 続いて M2 ゼミ。報告のみで五分ほどで終了。 でも、「スイッチが入りましたから大丈夫です」とのこと。 帰宅して、夕食は、鷄モツ、納豆、白菜の漬物、根菜と油揚の味噌汁。


2003/12/03 (Wed.) バス停

九時起床。 午前中は Rough Path 理論の勉強。 かなりノートがたまつて来たので、 先学期に Malliavin 解析入門ノート(*1)を作つたように、 また TeX でまとめることにした。 少し銀行に所用に出かけて、早目の昼食を自宅で取り出勤。 午後は「プログラミング演習」。今日は教室会議はなし。 夜はドラマ「相棒」など。 こんなのもできるか…。なんでもありと言ふか、 同じセットで別のドラマを取る、 みたいなオトク感がありますね。

ところで、BKC キャンパスから南草津駅行きのバスの運賃は 220 円なのだが、 その駅のほんの百メートルほど手前のバス停「野路」までは 170 円。 きつと距離で何キロメートル以下はいくら、と言ふ料金体系になつてゐて、 たまたまその分岐点が駅の直前にあるのであらう。 そんなわけで、かなりの数の学生や職員が一つ手前のバス停で降りる。 「でもさ、あのバス停に停まるときと、 停まらないときがあるじやないですか?」 と K 川先生に言ふと、さすが(何故か)交通機関にやけに詳しい。 近江バスのあれこれについてレクチャーを受け、 今では 170 円区間の回数券を持つてゐる私です(笑)

*1: ~kshara/arch.html においてあります。 それとは関係ないのですが、今日、 "Elements of Style"(by W. Strunk, Jr.) を同ページの My favorite documents に追加しました。


2003/12/04 (Thurs.) 模型

午前は「確率論」。特性関数と分布。 その後、 すぐ数理ファイナンス国際シンポジウムの準備ミーティングが始まるので、 隙間の時間に生協食堂でカレーライスを食べてゐると、 久しぶりに経済の O 川先生に会つた。 さう言へば、御結婚されたらしい。おめでたうございます。 12 時半からミーティング。続いて、「積分論 II」。 今日から応用編として超関数入門。 経済経営の某先生が聴講に来てくれてゐるのだが、 今日は前回の講義でやつた内容について、 紙の模型まで自作して研究してきてくれてゐて、感心した。

さう言へば昔は、 石膏(?)か何かで作つた多面体とか色んな曲面の模型が あつたと思ふんですけど、 最近の数学教室にはないんですか?


2003/12/05 (Fri.)


2003/12/06 (Sat.) エゾジカ

昨日金曜の午後から、地方に古書の買ひ付けの旅。 夜は元旅館を改築したやけに雰囲気のあるレストランで 御馳走をいただく。エゾジカの肉が美味しかつたです。 名前から鹿肉を想像してゐたのだが、 どちらかと言ふと牛肉の味に近かつたかな… 古書の方は、その地方の短期大学がつぶれたらしく、 その大学図書館の判子が押してあつたり、 図書館らしいプラスチックシールのカヴァーが ついてゐたりするものの、結構いいものが色々と見つかつた。 これからかなりの数の大学がつぶれるか統合されてなくなるだらうから、 このやうな機会は増えるかも知れない。 土曜日の夕方帰宅。

私は図書館と言ふもの自体は大変好きだし、 素晴しい公共の利益だとは思ふのだが、 本の扱ひについては非常に困つた存在だとも思つてゐる。 カヴァが汚れないやうにプラスチックのシールで 覆つてしまつてゐたり、そもそも捨ててあつたり、 でかでかと図書館の判子が押してあつたり、 磁気素材を埋め込んだり、バーコードシールを貼つたり、 手にとると泣けてくるやうな仕打をする。 希覯書の類は持ち出し禁止できちんと保存してあることになつてゐるが、 それも大したレヴェルの保存ではないことが多い。 その意味では、図書館は書物の敵の一つである。 私はけして愛書家ではないし、蔵書家と言ふほどの量も持つてゐないが、 古書的価値、美術的価値のある本は、 むしろ古書市場を通じて個人が蔵書する方がマシであるだらう、 とは思つてゐる。


2003/12/07 (Sun.) 白い正方形

エゾジカは十二月がシーズンらしい…季節ものだつたんだ(笑)

朝、九時過ぎに起床。 今期の私の予定では日曜日は通常営業だが、 旅の疲れで今日はほぼ休日。 午後からは洗濯をしたり、書庫の整理をしたり。 夕方から烏丸に買ひ出しに行く。 表に出ると今日はかなり寒い。 今年の京都は随分とあたたかくて、 まだ冬と言ふ気がしてゐなかつたのだが、 そろそろだらうか。 珈琲豆を購入し、食器を買ふ。 クロに割られたティーカップを買ふつもりだつたのだが、 もう一つピンとくるのがなく、 代わりと言ふわけでもないが真白の正方形の大皿を買つた。 さらに散歩がてら東洞院通りを下がり、 プリンセス H を越し、 シルヴァン書房のあたりまで歩いてみる。 本屋は残念ながら閉まつてゐた。大宮で食材を買ひ帰宅。

カーター・ブラウン「女ボディガード」 (田中小実昌訳、ハヤカワポケットミステリ 812) を読む。馬鹿つぽい…まさにパルプフィクションと言ふに ふさわしい内容のなさである。 でも、疲れた頭を休めるのに最適かと。 カーター・ブラウンは一杯書いてゐるし、 今、日本でドラマ化すると、 この様式にまで高められた軽薄さがウケるんじやないかな。


2003/12/08 (Mon.) 居間でも襟巻

午前九時起床。 午前、午後と TeX でノート作り。 昼食はしめじのアーリオオーリオ。 夕食は納豆、漬物、根菜の味噌汁などの粗食。 夜はチェロの練習のあと、 しんみりと 「人間の土地」(サン=テグジュペリ著/堀口大學訳/新潮文庫) を読んだり。

今日の京都はかなり寒い。 最低気温 5 度くらゐだらうか。 居間でも襟巻が必要なくらいになつてきた。 クロを膝に乗せてお互ひ暖を取りながら、 タイプ打ちをしたりしてゐる。 一階は LDK なので食事の仕度をすると、 レンジの火で部屋が少し温かくなつていい。 ちなみに、暖房がないわけではなく、 暖房が好きでないのである。


2003/12/09 (Tues.) 大シンポ

生協で注文してゐた本を受け取り、正午から卒研。 今日もまつたりと、易しい統計学を学ぶ。最尤法とか。 続いて、M1 ゼミ。LLL アルゴリズムを低次元の場合について、 具体的な計算。 12 x 12 の巨大な行列の具体計算を課題に出して、 既に M1 ゼミは冬休み。ゼミ室を出ると、 後から大きな溜息らしき不思議な音がした。 続いて、M2 ゼミ。O 大の S 先生の 擬似乱数についての論説のレビューと、 C のプログラムのチェック。 確かにエンジンがかかつたやうだ。 続いて、来年度の外国留学の説明会。 私は来年の秋から一年間イギリスで学外研究の予定。

その説明会での感想。 しかし事務の人たちつて偉いなあ…御苦労様です。

明日から金沢で年末恒例の確率論大シンポ(*1)なので、 次回更新は日曜の夜です。

*1: 毎年、12 月にあるシンポジウム。 タイトルは「確率過程とその周辺」 または「マルコフ過程とその周辺」などで、 確率論でも分野が相当に細分化してゐる中、 最も守備範囲の広いシンポジウム。 通称は「年末大シンポ」「大マルコフ」など。


2003/12/10 (Wed.)


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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

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