大晦日の夜に実家に帰り、二泊の正月休み。 昨年に祖母が亡くなつてゐるので、新年でおめでたいとは言へず、 重箱を出すこともないのだが、それなりのお正月だつた。 かう言つては祖母には悪いが、葬式やらあれこれやらを終へて、 両親としてはほつとしてゐるのであらう、 昨年一年より随分と元気さうに見えた。 既にリタイアしてゐる父は、 典型的な会社一筋サラリーマンだつた後遺症の無趣味故に、 ぶらぶらしてゐるやうだが、 たまに暇をつぶしに、 地元の大学の市民講座を聴きに行つたりしてゐるやうだ。 それが土木、建築方面の講座が多いのも、 江戸から明治時代あたりの先祖のことを図書館で調べたりしてゐるのも、 これまた典型的な引退サラリーマンらしく、 自分のルーツを歴史に求めてゐるのであらう。 妹は髪型が派手になつてゐて、 「髪の派手さでごまかそ思て」と言つてゐた。 何をごまかすのだ。
二日の今日、帰京。 煮染めを入れて行つた重箱に、 代わりにおせちの残りを詰めてもらつて帰る。 自宅で少し作つてあつた料理なども一緒に詰めて、 三段おせちを完成し、ワインとともに夕食。 ワインはガゴ 2001 (トロ)。値段の割に美味しい。 瓶そのものに白い塗料で "g" と一文字だけ書かれた ボトルのデザインもお洒落。 帰省中の読書、文庫版の埴谷雄高「死霊」の I と II。 「死霊」面白いな…
昨年に引き続いて今年の目標は、さらに勉強、 と言ふところなので、「精進」にしておくかな。
十時頃起床。クロに朝ごはんをやる。 昼食はハムのパスタ。 散歩がてら近所に少し買ひ物に出て、 午後は黒豆を肴に昨夜のワインの残りを飲みながら、 DVD でグリーナウェイの「コックと泥棒、その妻と愛人」を観る。 癒されるなあ…いや、冗談でなく。 夕食は御飯を炊いて、おせちの残りをおかずにする。
昨夜の執事とのチェス。 20 分プラス一手 10 秒、黒番。 アレヒン・ディフェンス(1.e4 Nf6)。 中盤の終りに大きな戦略的ミスをおかしたが、 相手のタイムトラブルで勝ち。
十時頃起床。まだ早く起きられない。 午前午後と、近所でベンガルカレーの昼食を狭んで読書。 「死霊」読了。非常に面白いところもあるが、 どうだらうかなあ…これ。 感想は、「あっは、ぷふい」、と言つたところか。 その後は部屋の整理で、 さあ仕事するぞ、と言ふ態勢だけは整へる。 夕食は自宅で、絹莢と卵の清し汁や、 余りもので作つた炒飯飯などで適当に済ませる。 夜は数日ぶりにチェロの弾き初め。 身体を慣らすために、小一時間ほど軽く練習する。 ハ長調、ハ短調のスケール、 第 6 ポジションへの移動などの基礎練習、 フランショームのエチュード、 マルチェロの 6 番など。
仕事始め。 まだ早く起きられない。午前中は講義の準備。 「確率論」の最後の講義はクラメルの定理を証明する予定。 Strook の教科書からノートを作つたが、 かなり不親切なのでギャップを埋める。 昼食は絹莢とベーコンのパスタ。 午後も朝の続き。 一段落ついて、近所の本屋まで散歩し、 スーパーで唐辛子と牛乳を買ひ帰宅。 夕食は、絹莢と里芋の味噌汁、梅干しと漬物など。 年末に買つた絹莢を漸く使ひ切つた。
夜は読書。 "Lempriere's Dictionary" by L. Norfolk (Vintage, 1999)
八時起床。朝は人事関係のミーティング。 生協で昼食を取り、正午より卒研。回帰分析の初歩。 なんだか統計学つて、 少し自己撞着的なところがあるやうに思ふのだけれども、 気のせゐかな… 続いて M1 ゼミ。 昨年末に 8 次元の格子空間に LLL アルゴリズムを ほどこして暗号を解く課題を出しておいたのだが、 さすがに猛烈な計算に音をあげた模様。 次回からは通常通り論文に戻る。 修論を書いてゐるはずの二年生は登校してゐないやうだつたので、 事務処理やら、本の注文やら受け取りやらをして帰宅。 夕食は豚バラ飯と若布のスープ。
生協で受けとつた本は、 「ロラン・バルト著作集 10 新たな生のほうへ (1978-1980)」 (石田美子訳/みすず書房)、 「空想文学千夜一夜」(荒俣宏/工作舎)など。 amazon から届いてゐた本は、 "Garry Kasparov on My Great Predecessors" の第一巻、二巻。 神田の古書店に注文したのは、 L.キャロルの記号論理学の教科書。
少し寝坊した。 朝はプロシーディング論文の査読。 英語もきちんとしてゐるし、 証明やロジックを追ふところもない種類の論文なので、 二時間くらいで簡単に終了。 早めの昼食を取つて出勤。 午後は「プログラミング演習」。 引き続き、教室会議。 6 時半くらいまでかかつて、 生協で食事をして帰る。
年始に祖母の墓参りをして来た。 両親は私を信用してゐないので、自分たちの墓を既に建ててゐて、 祖母の遺骨もそこに納められてゐる。 その時に聞いたのだが、 同じ寺の中でも墓地には場所によつてランクがあるらしく、 何でも敷地の西の端が一番良い場所なんださうだ。 西方浄土に近いと言ふことだらうか。 確かにその寺では、一番西の端に住職の一族の墓と、 戦死された方々の墓がある。 端だけに壁際で日当たりも悪く、 本当にこんな場所が良いのかと思はないでもないが、 墓石の顔ぶれ(?)から見るになるほど確かにここが一等地らしい。 (ちなみに私の母方の祖父は南方で戦死してゐるので、 ここに祭られてゐる。) そしてそこに近いほど、地面の値段が高いらしいのである。 ここにいくらと具体的な値段は書けないが、 数メートルほど離れただけで三倍も違ふのである。 なんとかの沙汰も金次第と言ふが、 だうも釈然とはしない。
雪の降る町を、出勤。 南草津駅で情報の N 尾さんと偶然会ひ、 新年の挨拶。 朝は「確率論」。クラメルの定理。 来週の最終講義は試験なので、実質的に今日で最後。 ずつと講義を聴きに来てくれてゐた経営の T 先生と 生協で一緒に昼食をとる。 ジニ係数の話とか、 Williams の確率・統計の本の話とか。 続いて、 数理ファイナンスシンポジウムの準備ミーティング。 さらに続いて、 「積分論 II」。これも最後の講義。 その後、院生と簡単な打ち合はせをして、帰宅。
突然のこと、 来月末くらいに研究室の引越しをすることになつた。 情報学科が学部独立して新しい建物に移ることがきつかけで、 次々と玉突き現象的に引越しの雪崩が起こつてゐるのである。 情報の誰かが引越した後に誰かが引越し、 空いたその部屋に誰かが引越し、 そのまた後に誰かが引越し…まあそんな感じ。 何故、最初の人の部屋に、最後の人が引越さないのかつて? アーイドンノォォ。
同じ建物で階を移るだけだが、 膨大な本類や什器類や巨大な 21 型 CRT モニタ 2 台など、 かなりの難航が予想される。 そんなわけで、 お手伝いをしてくれる方、募集。 その御礼は…善処します(笑)
午前中は洗濯など家事。 自宅で貧しい昼食を取つて、 午後から京大のセミナに出席するために外出。 烏丸でスマトラを買ひ、喫茶店で一時間ほど読書をし、 夕方から京大で関西確率論セミナ。 京大の Y さんが ランダム媒質中のディレクテッドポリマーの中心極限定理 についての新しい結果を話してゐた。 講演は分かり易くて、面白い内容だつたが、 表に出さなかつた証明の技術的な部分は非常に難しさうだ。 バスで帰宅。 実家で貰つてきたレトルトのトンポーロを使つて、 葱と茹で卵で豚バラ飯を作り、葱のスープとともに食す。
午前十時起床。 適当なパスタの昼食を自宅で済ませ、 Williams の三回目の校正原稿を受け取りにキャンパスへ。 土曜で空いてゐるだらうと思つてゐたのだが、 電車も何故だかやけに混んでゐるし、 キャンパスまで普段通りの人の多さである。 さう言へば、今日は補講予備日だつた。 わざわざ出勤した序でに、 引越しに向けて少し研究室の片付けをして帰宅。 夕食に、久しぶりにオムレツを作る。 たまに作らないと腕が鈍るので…
と思つたら、 今まで作つた中でベストと言ひ切れる出来であつた。 むらなく焼きあがつた表面、 プレーンオムレツなのに中身は溶けたチーズのやうな 滑らかな舌触り、 焦げたバターの香りが漂ふ中、 ねつとりとした単純ながら豊かな味はひ、 これまでのものとは段違ひである。 これに比べれば、オムレツに似てオムレツにあらず、 似非オムレツである。 しかし、それが何故なのか、 一体いつもの作り方とどこが違つたのか、 さつぱり分からない。材料も手順も同じだと思ふ。 これが毎回作れれば、料理人なのだが…
夜は校正作業。
この日記は、GNSを使用して作成されています。