Keisuke Hara - [Diary]
2004/01版 その2

[前日へ続く]

2004/01/11 (Sun.) 回覧板

十時起床。目覚しをかけたものの早く起きられない。 シリアル、ヨーグルト、珈琲の朝食を取り、 午前中は校正作業。 昼食は九条葱と油揚のパスタ、 ワイン、珈琲、チョコレート。 Monasterio de Santa Ana, Monastrell 2002 美味い…千円くらいとは思へない味がする。 午後は計算など。 途中でミルクティーを作つて飲んだ。 夕食は冷や御飯とその辺りのものを食べておく。 今日は回覧板を回した以外には、 ほとんど外出せず。


2004/01/12 (Mon.) シリアル・シリアル

また十時起床。どうして起きられないのかな。 シリアルとヨーグルトと珈琲の朝食。 昼食はベンガルカレー。 午後はチェロを弾くのと計算とを交互にする。 最近は確率論的なテクニックをあまり使つてゐなかつたので、 なかなか新鮮で、しかし、あまり自信の持てない参考書片手の計算。 強マルコフ性つてこれでいいんだつけ…と言ふやうな感じ。 夕食もシリアル。夜はチェロのレッスンに行く。 どう考へても似合つてゐない、 派手な振り袖姿を沢山見かけたところを見ると、 今日は成人式らしい。

とにかく、京都駅などはかなりの人出であつた。 東京に住んでゐたころはさうでもなかつたのだが、 最近は本当に人混みが苦手になつた。 端的に言ふと、人に酔つて気持ちが悪くなるのである。 それに音も駄目になつてきた。 そのせゐで、自宅にゐる時間が長くなつたし、 自宅でも音楽などかけずに無音にしてゐることが多くなつた。 幸にも今の自宅は街中とは言へ、 大きな通りから内側に入つてゐるため、 静かな環境が保たれてゐて好ましい。


2004/01/13 (Tues.) 雪と砂

昨夜、遅くまでバルトを読んでゐたので、 かなり寝坊。 慌てて仕度をして出勤。 正午から卒研。多重回帰分析。 部屋にゐた T 屋君に、 帰省土産のお菓子をもらつた。 諸事情により、今日で卒研のゼミは終了。 続いて、M1 ゼミ。ランダムラティス暗号の meet in the middle 攻撃とその改良の計算量評価。 かなり怪しげなので、きちんとした理解は宿題。 続いて、教授会代議員会議。 私は代議員ではないが、某審査のコメントのため出席。 生協で夕食を食べて、 次の会議までの三十分を A 堀先生の研究室を訪ねてつぶす。 N 田さんとのゼミ中だつたが、お邪魔をして少し数学の議論。 続いて、某委員会の会議。 さらに、引き続いて、某委員会の会議。 終了は九時前。雪の降りしきる暗い夜の中を帰路につく。 十時半頃、帰宅。 噫、三月あたり暇になつたら、 モロッコに旅立ちたい、嗚呼、 昼間は太陽と砂以外に何もない、 夜は星と月と砂以外に何もない、 私以外に何もない砂漠に癒されたい…

昨夜、つい読み耽つてしまつたのだが、 やはりロラン・バルトはいいなあ。 偉大だ、とか、天才だとか言ふのではないのだが、 この人が亡くなつたことで、 真、善、美といつた人間にとつての良きものが、 ほんの少しとは言へ確実に、この世界から失なはれた、 とでも言ふやうな喪失感がある。


2004/01/14 (Wed.) 燃料

九時起床。午前は少し計算など。 早めの昼食を簡単に済ませて、出勤。 午後は「プログラミング演習」。 今日は最終日で、最後のレポート提出。 続いて、緊急の臨時教室会議。 短く半時間ほどで終了。 しばらく A 堀先生と数学の議論をし、 研究室の整理を少ししてから、帰る。 粗食の夕餉の後はチェロの練習と、 持ち返つた事務仕事。

しまつた、 珈琲のフィルタを買ふのを忘れてゐた。 これでただでさへ遅い私の進歩が、 一日停滞してしまふ(笑)


2004/01/15 (Thurs.) フィルタ

最終講義試験なのに、 朝、電車が遅れて遅刻かと思つたが、 心配ない。京都駅の乗り継ぎも遅れてゐた。 そんなわけで無事、朝は「確率論」 の最終講義試験。 試験の内容が易しいせゐもあらうが、 結構できてゐたやうだつた。 生協食堂で昼食をとり、 次は「積分論 II」の最終講義試験。 続いて、物理の Y 地君の Dym-McKean 自主ゼミ。 修士論文の草稿に赤を入れつつ、 マルチタスクでゼミを聞く。 6 時過ぎに帰路につく。 帰りも電車が遅れて、帰宅は 8 時前。 微かに雪らしきものが散らついてゐた。

いつの間にやら、珈琲の紙フィルタが補充されてゐた。 偉いぞ、執事。持つべきものは有能な召使ひ。


2004/01/16 (Fri.) 色の音楽/手の幸福

午前中は洗濯など家事。 自宅で貧しい昼食をとつて、烏丸の銀行で所用を済ませ、 京大での確率論セミナに向かふ。 少し早く着いてしまつたので、 近所の「遅日草舎」で少し時間をつぶす。 理学部の建物に着くと、 ロラン・バルトのデッサン展(*1)の宣伝が置いてあつた。 去年末、東大でやつたものを、こちらでもやるらしい。 さうと知つてゐれば早く来て観に行つたのに。 しばらくやつてゐるやうだから、また出直さう。 今日のセミナでは、 W 先生が一次元拡散過程についての最近の研究の発表をしてゐた。 また内容が進展してゐるやうだつた。

*1: ロラン・バルトのデッサン展: 「色の音楽・手の幸福」。 京都日仏会館の 展覧会お報せ に宣伝があります(2004年1月現在)。 バルトは評論家、思想家、哲学者のそれぞれ、 またはそれらの混合体と言つたところの人であつたと思ふが(多分)、 熱心なアマチュアのピアノ弾きであつたり、 便箋にカラフルな悪戯書きのやうなデッサンを描いたり、 とエクリチュール以外の芸術表現をすることも好んだ。


2004/01/17 (Sat.) ズッパ・ディ・ヴェルドゥーラ

十時起床。 寝床で「明るい部屋」(ロラン・バルト著/花輪光訳/みすず書房) を読んで、 昼食はシリアル、ヨーグルト、ベーコンエッグにワイン。 午後はバルトのデッサン展に行かうかと思はないでもなかつたが、 今日はセンター試験なので大学近辺は混雑してゐるだらうし、 雪とまではいかないが時折り氷雨が降つてゐて、 外出する気持ちにもなれず自宅での休日を過すことにする。 午後も読書など。 写真家ブラッサイによる写真から見たプルースト論。 夕方になつて、夕食の仕度の序でに、 作りおきの野菜スープも作成。 伊丹十三のエッセイで学んだイタリア料理らしきもので、 昔から十八番である。

ブラッサイを読んでゐて気になることがあつたので、 「事典 プルースト博物館」(P.ミシェル=チリエ著/保苅瑞穂監訳、 湯沢・中野・横山訳/筑摩書房)を調べてゐて、 こんなサイトを知る。 イリノイ大学の コルブ=プルースト研究資料集。 おそらくインターネットで最も充実したプルースト情報。


2004/01/18 (Sun.) 煮込み饂飩

早く起きて一仕事するつもりだつたのだが、寝坊。 昼食はベンガルカレー。 午後はプリントサーバを買ひに寺町へ。 序でに SBUX で珈琲豆(スマトラ)を買ひ、少し読書をして帰宅。 夕食は煮込み饂飩。 夜は少しチェロを弾いたり、金利モデルの論文を読んだり。


2004/01/19 (Mon.) モデルと趣向

九時起床。朝は寝床で論文を読む。 数学的にはほぼ自明な内容だが、 モデルの提唱に意味があるのかな… 出勤して、生協で昼食をとり、 午後一杯は某面接の学内業務。

チェスのプロブレムが一題解けずにゐたのだが、 今夜になつてやうやく分かつた。 普段はそんなに悩まなくても解けるので、 どうしても気になつて他のことに集中できず、 ほとんどの時間は最表層人格任せのオートパイロットの状態で、 休日と今日一日を無駄に過してしまつた。 私のプロブレムの解き方は (邪道だとは思ふのだが)、最初から趣向を、 つまり作者の意図を探しに行く方法である。 解けるときは一目で解けるが、 解けないときはまるで解けない原因であらう。 これはチェスのプロブレムに限らず、 私が一般的に問題にアプローチする方法のやうに思ふのだが、 その有効性は大変に疑問である。 と言ふのも、 世の中のほとんどの問題には作者がゐないからである。 もちろん、信仰のある人や、ロマンティックな人は、 神様の意図を読む、と思ふのかも知れない。


2004/01/20 (Tues.) 問題と意図

関西の冬の風物詩、遅れた電車に乗り出勤。 生協で早目の昼食をとり、 ファイナンス・シンポジウムの準備ミーティング。 続いて、M1 ゼミ。ランダムラティス暗号の攻撃の計算量評価。 次の会議まで時間があつたので、定期試験の採点をする。 「確率論」は問題が易しく、普通の問題だつたせゐか (「大数の弱法則の主張を述べて、証明を与へなさい」とか)、 良く出来てゐた。気分良く、 「積分論 II」の採点に入ると、 受験した誰一人として問題の意味を理解してゐないことに、 一気に心が冷える。 ひよつとしたら、と少し心配だつたので試験中に、 こことここの二箇所を証明して下さい、と言ふ問題ですよ、 と説明したのだがなあ… この講義では積分論の知識を前提に、 私が解析周りで好きな話を自由にしたと言ふ事情もあり、 無碍に全員不合格と言ふのも酷いと思ひ、 悩んだ末に私の方が意図を変更することにして採点。

続いて教授会。 会議室に行くと、 今まで見たこともないくらい膨大な量の資料が置かれてゐて、 今日中に帰れるのだらうか、 エコノミークラス症候群の肺血栓で倒れたりする人が出るのではないか、 と心配したのだが、 流石に執行部から省略案が提案され、三時間ほどで終了。

明日からシンポジウム参加のため出張。 次回更新は次の土曜日の深夜を予定してゐます。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

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