Keisuke Hara - [Diary]
2004/01版 その3

[前日へ続く]

2004/01/21 (Wed.)


2004/01/22 (Thurs.)


2004/01/23 (Fri.)


2004/01/24 (Sat.) メアリー・ロジャーズの秘密

水曜日から金曜日まで九大でシンポジウム。 会期中は大変な寒さと、 ほとんど吹雪のやうな雪だつたが、 全国的にさうだつたやうで、 むしろ京都にゐた方が酷かつたかも知れない。 シンポジウムの内容は私が不慣れな分野の話が多かつたが、 極限定理に関する話のショーケースの趣きで、 門外漢でも意外に楽しかつた。 そして、夜はまあ、大体において飲んでゐた。 博多は酒も魚も美味で宜しいし、 最近は大学の内部問題の話の種がつきないので、 酒席の話題としての肴にもことかかない。

新年が明けてから、TV を観るのを止めたのだが、 ホテルで一時間だけ禁をやぶつて「相棒」を観た。 チェスタトンの「青い十字架」を意識した内容だつたが、 視聴者にそのことをほのめかしたいと思つたのか、 登場人物に(他の短編ではあるものの)チェスタトンの名前を挙げさせてゐた。 こう言ふ親切さが特徴的なドラマのやうに思ふ。

帰りの読書。 「名探偵ポオ氏 ― 『マリー・ロジェの秘密』をめぐって」 (J.ウォルシュ著/海保真夫訳/草思社)。


2004/01/25 (Sun.) 底冷

寒い。最低気温は氷点下と思はれる。 出張疲れのため休日。 午前中は粛々と確定申告の書類作成。 ほとんど控除項目がないので、簡単に終了。 昼食は近所のカレー屋で済ませる。 午後は、朝の勢ひで税制の勉強をしたり、 読書など。 夕方、食材を買ひに地下鉄の駅の方に出たら、 市長選挙の街宣車がやかましくて、 慌てて用を済ませ帰宅。


2004/01/26 (Mon.) 妖精の問題

朝は掃除、洗濯などの家事。 昼食は納豆パスタとワイン、食後にヨーグルトと珈琲。 午後は数学。今日も特に進展なし。 途中で散歩を兼ねて、 駅の方まで所用を足しに行く。 ワイン屋で今年も入荷されたモンペザを購入など。 夜は出張でサボつてゐたチェロを練習。 スケール中心の指慣らし。

最近、チェス・プロブレムに熱中してゐる。 詰将棋ファンは世に多いと思ふのだが、 プロブレムはあまり、と言ふよりほとんど、 いや正直なところ全く、知られてゐない。 けつして単なる「詰将棋のチェス版」ではないところも、 さらに敷居を高くしてゐるやうに思ふ。 しかし実際はとても魅力的で、素晴しい芸術分野である。 この世界を知るのにおすすめなのは、クセジュ文庫の 「チェスの本」(F.ル=リヨネ著/成相恭二訳/白水社)だが、 クセジュらしく小さな入門書の割に内容が高級なのが少し困る (特にプロブレムの章とその巻末解答は超高級だと思ふ)。 とは言へ、エスプリに溢れた名著である。 今、ちよつと訳者の前書きを見返してみたら、 ル=リヨネはストラスブールで数学と化学を学んだ学者で、 しかも随分と大物らしい。 「数学思想の流れ」(村田全監訳/東京図書)の他、 科学史関係の編著書も多い一方で、 チェスでも色々と本を出してゐる (フレンチ・ディフェンスの本も(笑))。 ちなみに、訳者の成相氏の方は天文学者らしく、 こちらも少し不思議な感じ。

プロブレムに戻つて、本ではないがおすすめなのは、 日本チェス・プロブレム協会のサイトの中の チェス・プロブレム入門のページ。 チェスのルール自体の説明は省略されてゐるが、 これは素晴しく良く解説されてゐる。 一番最初の例がいきなり「フェアリー」(*1)と言ふところも痺れる。 おそらく若島正先生の文章と思ふ。

*1: フェアリー(妖精)チェス: 通常のチェスのルールを改変して行ふゲームやプロブレム。 新しい動きや機能を持つ駒の創造 (クイーン兼ナイト、駒を飛び越して次のマスに着地、 チェックされるとその駒の動きに化けるキング…)、 盤の変形(円筒盤、トーラス盤、無限盤…)などから始まつて、 様々な規則の様々な意味での変更 (二手ずつ動かす、取れる駒は必ず取る、負けた方が勝ち…) が考へられてゐる。


2004/01/27 (Tues.) 充満

九時起床。 午前中は少し数学を考へてから、出勤。 午後は採点とそのマークシートの成績報告書作成。 これで今学期の採点は全て終了。 次はいよいよ来週末から入試採点か… 続いて、定期試験の監督補助に行く。 学生が大教室に一杯。 これは大教室一つで済んでゐたが、 中には大教室を複数使ふやうな定期試験が結構あつて驚く。 どんな講義をしてゐるのだらうか。 ちよつと、オルテガの「大衆の反逆」を思ひ出したり。

夕方、帰路につく。 夕食は納豆、ポテトサラダ、油揚と葱と大根の味噌汁。 明日のお弁当用のおかずを少し仕込む。 夜はチェロの練習、チェスの勉強など。


2004/01/28 (Wed.) 赤い黴

簡単なお弁当を作つて出勤。 午後は教室会議。 議題はあれこれで夕方までかかる。 修士論文の原稿に赤を入れて返却。 締切まであと二週間ほどだが、 間に合ふのだらうか、ちよつと心配だ。 帰宅して夕食は鷄煮込み饂飩。

神田の古書店から稀覯本の目録が届いてゐた。 アラステアの挿絵 12 枚入りのラクロの「危険な関係」 (C.D.Laclos "Les Liaisons Dangereuses") の限定本など良い感じだつたが、 残念ながら買ふ金銭的余裕がない。 かう言ふときに限つて、 「どうせ当たらないから」と思つて注文を出すと、 当たるものなので、迂闊に手を出してはいけない。 アラステアと言へば、 私の兄弟子にあたる某都立大の H さんが少し前に、 故生田耕作氏と共編でアラステアの画集を出したこともあり、 これからファンが増加して行くかも知れない。 その画集で見るには今一つピンとこない画風なのだが、 版画の現物はなかなか良い。 私のアラステアのイメージは何故か「赤黴」で、 若干行き過ぎの感のある独特の退廃的ムードに味があると思ふ。


2004/01/29 (Thurs.) アマチュアの愛

月末チェス。 20 分プラス一手 10 秒、白番、レティ・オープニング。 黒が中央突破のため 1 ポーンを捨てた所から、 こちらはナイトを捨て返しポーン 2 個と交換。 a,b,c ファイルはもらつた…中盤に入つたところで既に、 これが言はゆる "material balanced, but, positionally The End." と言ふ奴か愉快愉快、と思つてゐたら、 黒は逆のキングズファイル側で大きな捨て駒をして、 メイトのチャンスを含みつつ繰り返しチェックのドローを狙ふ厳しい抵抗を繰り出し、 しかし、その抵抗を確実にしのぎ、後は必勝の終盤。 と思つてゐたら、ルークのただ取られを見逃して負け。 これは完勝譜だと思つてゐたのだが、がつくり意気消沈。

自宅で貧しい昼食を取り、少し論文を読んでから、 午後は京都大学総合博物館にロラン・バルトのデッサン展を観に行く。 なんてことはない絵だが、 どれも尖つたところの一切ない心地良さとアマチュアリズムが素敵だ。 電話を待つてゐる間(話し中だつたのか)、電話が済んだ後、 と言ふ連作が面白かつた。 総合博物館に行つたのは初めてだが、 とても綺麗でいい空間であつた。 しかもバルトのデッサンなんて誰も観に来やしないので、 ほとんど空間を独占してゆつたりと鑑賞することができた。 生協で数学の本を購入して、 珈琲豆を買ふために河原町を経由し、夕方帰宅。 夕食は近所のワイングロッサリー・バーにて。 雛鳥のポトフ、食後にチーズ等。 ひつそりと一人で今頃、新年会をする。


2004/01/30 (Fri.) セレスト

チキンライスとサラダのお弁当を作つて出勤。 午後は定期試験の試験監督応援。 特大の階段教室二つに大入満員で、充満の事実を思ひ知らされる。 続いて、物理の Y 君の自主ゼミ。 こちらはマン・ツー・マンの贅沢さ。 ポワソンの和公式、ハイゼンベルグ不等式など。 続いて、M2 の院生の様子を見に行く。 これもマン・ツー・マン。数物は恵まれてゐるなあ。

今年に入つてから TV を観るのを一切やめたのだが、 一ヶ月が経つてみて思ふに、 始めからなかつたかのやうに特に何と言ふことはなく、 つまり、日々の暮らしに必要なものではなかつた。 おかげで自由な時間が増える…はずだつたのだが、 何故かその時間には雑務が侵食して来るだけで、 特に新たに時間が出来た気がしない。 プルーストのやうに献身的な秘書がゐればなあ。


2004/01/31 (Sat.) 冬の寝床

九時起床。午前中は寝床で読書。 御飯を炊いていつもの貧しい昼食を取り、 午後は寝床で数学。 マリアヴァン解析の簡単な計算。 簡単だが慣れてゐないのと、 同じ対象を計算するのに伊藤解析と微妙に違ふのとで、 わずらわしい。 夕方になつて少しチェロの練習。 親子丼の夕食を作つて食べ、 夜は近所のワイン屋の試飲会に行く。 しかし、 頭がまだ固有値問題を考へ続けるのを止めることができず、 あまり味が分からなかつた。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

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