Keisuke Hara - [Diary]
2004/05版 その1

[前日へ続く]

2004/05/01 (Sat.) 労働者

メーデー。我々、労働者の日である。 午前中はのんびり過し、 昼食を糠漬、梅干し、若布の味噌汁などの粗食で済ませ、 午後はあまりに良い天気なので、外出することにする。 と言つても、労働者の哀しい性で大学へ。立て万国の労働者。 珈琲豆を鞄に入れ、 近所のパン屋で苺のデニッシュを買ひ、いざ出勤。 研究室で各種、 後回しにしてゐた小さな事務用を片付ける。 休憩に珈琲をプレスで淹れ、 デニッシュを食べる。美味い。 京都で(フレンチの)パン屋と言へば、 「プチメック」(*1)と言ふことになつてゐるやうだが、 そこまででなくてもかなりまともなパン屋が、 自宅の近所にあると言ふのは結構なことだ。 序でに運用を止めてゐた sshd をこつそり立てたり、 コンピュータを少しいぢつて、帰宅。 往復の移動中は休日らしくプロブレムなど考へる。 フェアリーが幾つか解けた。 普段の通勤時は何か仕事をしてゐることが多い。 と言ふのも、私のやうに、 一日に通勤時間が二時間半もあるやうだと、 その時間を有効に使はないと、 どうしやうもないからである。 職場のすぐ近くに住んでゐる人は、 本当に人生の「勝ち組」だと思ふ。いや、冗談でなく。 夕食は炒飯と胡瓜のサラダ、赤ワイン。 炒飯はいつもの米がぱらっとしたのでなく、 敢て、卵御飯風のしっとりしたものを作つてみた。

*1: 「ル・プチメック」: 上京区今出川通大宮西入ル


2004/05/02 (Sun.) ボワモルティエ

九時起床。 午前中はチェロの練習など。 昼食は卵とぢ饂飩。 午後は読書をしたりして、 夕方からチェロのレッスンに行く。 スケールやエチュードをやつて、 マルチェロのチェロソナタの最後の所をやる。 チェロ 2 台で合奏するとかけ合ひの和音の動きなどが綺麗で、 いかにもバロック、と言ふ感じで気持ちが良い (まあ、片方が下手なので、あまり合つちやゐないのだが)。 先生も私のチェロと同じ作家のものを使つてゐるので、 音色が似てゐてかなり助けられる。 続いて、少しだけ、ボワモルティエ (Boismortier? Boimortier? 私の楽譜の表紙には Boifmortier と書いてあるやうだが)のソナタ(3 番)に入る。 フレンチバロックらしく、音符通りには弾かないで、 「ボン・グーで」(「良い趣味で」)弾くやうに、 と言ふことなのだが、そのフレージングのつけ方が、 このあたりはこことここが二声に聞こえる感じで、とか、 ここのフレーズは一まとめで短かめに、 とか、分からないでもない気がしないでもない…と言ふか、 つまり、良く分からない。電車の中で楽譜を読んで悩みつつ帰宅。 かう言ふのは、演奏する前提の問題だから、 分かつたところでそれを反映できる腕もないから、 と言ふ理由でサボるのは駄目だろうな。

自宅で検索してみると、 ボワモルティエのチェロソナタで比較的手に入りやすさうな CD は、 鈴木秀美「チェロの野望」 ("Les Pretentions du Violincello" 輸入版(ベルギー)) くらいかな…と思ふくらゐ、モノ自体が少ない。 ちよつとマニアックなのか。


2004/05/03 (Mon.) Alice annotated

annotated Alice 何だかやけに眠くて、正午近くまで寝てしまふ。 昼食は適当パスタ。 午後は講義の準備などして、 夕方から河原町の丸善に本を探しに出かける。 目的の本は見つからず、 洋書のコーナーをぶらぶらしてゐると、 キャロルの "The annotated Alice" (edited by M. Gardner, The definitive edition, Penguin)が目に入り、 表紙のデザインがあまりに好みだつたので買つてしまふ。 既に他の版と日本語訳を持つてゐる上に、 Amazon などで買ふより 5 割以上も高いのに。 行動経済学を学び直した方が良からう。 さらに十字屋で「ポケ版音楽用語辞典」(森島洋一著/aanmusic) を買つて帰宅。 夜も講義の準備の続き、読書など。 今夜から近畿の天気は崩れて、 明日にかけて大雨との予報。

床が黒白の市松模様で、壁が赤、ドアが白、 つて家に住みたいなあ…


2004/05/04 (Tues.) 家事

昨夜、夜なべをしたせゐで、起床は 11 時。 深夜から雨になり、今日は終日雨。 昼食は天かすのかけ蕎麦。 午後は、洗濯物を畳み、 不覚にもかなり溜つてゐた洗ひものをし、 掃除器がけをする。 一段落ついて珈琲を淹れ、音楽を聴きながら、 読書をしたり、プロブレムを考へたり。 夕食は若布の味噌汁、糠漬、紫蘇と梅干しのお結び。 夜はチェロの練習をしやうとしたが、 寝てゐる間に左手首をひねつたらしく、 痛むので止めておく。

今日の一曲。 バッハ「無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ全曲」 (シギスヴァルト・クイケン演奏)。


2004/05/05 (Wed.) 捻挫

九時起床。 昼食は糠漬、野菜炒め、若布の味噌汁。 午後は烏丸に珈琲豆を買ひに行く。 すぐ帰宅。読書など。 少し残つてゐたベーコンが賞味期限切れだつたので、 野菜くずと炒めて野菜のスープを作り、 さらにカルボナーラを作つて使ひ切る。 カルボナーラとスープの夕食。食後に珈琲。 スープはあと二、三食分ありさう。 夜は明日の昼食のサンドウィッチの具の仕込みや、 読書などをして最後の休日を過す。 まだ手首が痛むし、少し腫れてゐるので、 今日もチェロの練習はお休み。 全然、記憶にないのだが、捻挫でもしたのだらうか。 それとも練習のし過ぎかな…


2004/05/06 (Thurs.) アクシデントとマージン

連休も終了。八時半起床。 お弁当のサンドウィッチを作つて出勤。 南草津駅で人身事故とのことで、 膳所、石山で合計 30 分強ほど停車。 南草津駅を降りると、 救急車やら消防車やらが沢山駐車してゐた。 電車の中では「今のところ復旧の見通しは立っていません」 の連呼で、ひよつとすると 午後の授業に遅れる可能性もあるか、 と心配したのだが、なんとか少し余裕を持つて到着。 今学期からは、一時間以上のマージン(安全域) を取るやうに心がけてゐるので、 これくらいの遅れならば消化できる。 研究室でサンドウィッチの昼食を食べながら、事務仕事。 12 時半から「情報処理演習」。 今度は、情報システム課からスタッフがやつて来て、 システムにログインできない原因不明の障害が現れ、 「今のところ復旧の見通しは立っていません」、 とのこと。電車の遅れのせゐなのか、 三人ゐるはずの TA も一人しか来てゐない。 やむを得ず、 しばらくホワイトボードで C 言語でのプログラミングについて解説をし、 ぼちぼちとログインできてきたとのことなので、 演習の作業をしてもらふ。 まだあちこちネットワークの動きが不穏な中、 50 人のクラスを TA と私の二人だけで飛び周つて何とか終了。 夕方まで事務仕事をして、早めに帰宅。 夕食は胡瓜のサンドウィッチ、 野菜くずのスープ、ワイン。食後に珈琲。

今日は変な疲れ方をして、もうぐつたり… 自分では、それほどきちんとした性格だとは思はないのだが、 やはり FBI 行動科学班(そんなものがあるのか知らないが) で言ふところの "organaized type" らしい、 と思ふのは、こんな日。 ちなみに私の好きな言葉は "calculated risk".


2004/05/07 (Fri.) 無限要素法

午前中はトマトソースを作りながら、雑用。 アラビアータの昼食を取つて、キャンパスへ。 夕方から、イタリアから一ヶ月 R 大学に滞在してゐる S 先生のセミナーに参加。 有限要素法ならぬ、 無限要素法と言ふものを初めて知り、勉強になつた。 しかしこの「無限要素法」と言ふ名前は、 かなり誤解を招くおそれがあると思ふが、 わざとそのミスリーディングを誘ふことを意図したネーミング、 とも思はれる。 夜は S 先生を囲んで近所の料亭で食事会。


2004/05/08 (Sat.) 昼風呂

6 時前に起床。寝床で事務仕事。 また眠くなつてきて二度寝。 次に目覚めたのは正午前。 蕎麦を茹で卵と葱をかけて、 醤油と島とうがらしで食べる。 午後は読書をしたり、お風呂に入つたり。 昼間に湯船につかると、退廃の感があるなあ。 夕食はトマトソースのパスタと、野菜屑のスープ。 夜は、手首が完治したので久しぶりにチェロを弾く。 スケールとポジション移動など基本練習。


2004/05/09 (Sun.) A to Z

今日は比較的早起き。 だが、何故か身体のあちこちが痛くて、 かなり疲れてゐる。 どうも最近、体調がいまひとつ。 昼食は近所のベンガルカレー屋。 午後は丸善に地図を買ひに行く。 夕食はまたトマトソースのパスタ (これでトマトソースを使ひ切つた)。 夜はチェロの練習など。E の音階つて難しいなあ。 C 線が落ちついてきたので、 G 線もオイドクサに張り換える。

後期から一年間の予定で在外研究させてもらへることになつてゐて、 滞在先は Oxford 大の予定である。しかし、 数学研究所から visitor として迎へる招待状を書いてもらつただけで、 まだほとんど何も準備が出来てゐない。いや、しばらく前に、 accommodation についてメイルで問ひあはせをしたが、 その返事は未だなしのつぶてである。 大学の施設があつてそこに住めることが分かれば一安心できるのだが、 さうでなければ自分で住居探しなのか… 取り敢ず、今日は丸善で、Oxford 地区の "A to Z" 地図を買つたのが唯一の進歩。 誰か Oxford に知り合ひがゐないものかしらむ。

ちなみに、私はこの "A to Z" の地図が大好き。 何の変哲もないやうに見えて、 デザインがいいのだらうか。


2004/05/10 (Mon.) 地図の折り方

昼食用に近所のパン屋でサンドウィッチを購入して出勤。 事務用をいくつか片付け、午後から卒研セミナ。 弱大数の法則。 独立性よりもベッセルの不等式にその本質があることを強調してゐたり、 簡単なところでも独特のセンス。 「弱」法則と言ふ言葉に異議を唱へてゐたり、 なかなか勉強になる。 続いて、M2 セミナ。ランダムラティス暗号の話。 夕方、まだ雨の降り出さないうちに、 生協書籍部で「残酷な女たち」 (L. ザッヘル=マゾッホ著/池田信雄・飯吉光夫訳/河出文庫) を購入して帰宅。 勝手に、「毛皮を着たヴィーナス」のみの作家かと思つてゐたら、 実は沢山の作品があり、スケールの大きな人物の模様。 とは言へ、どの短編を読んでも、 豹の毛皮を着た美女が鞭を持つて現れるのが御愛嬌か…

思はぬ所に人間の想像力が発揮されるもので、 例へば、地図の折り方である。 良く考へると地図には、簡単に開けて、折り目がいたまず、 見たいところだけをコンパクトに見られる、など色々と要求がある。 しかし、それらが全て満たされる折り方は存在しない。 良く見られるのは、左右の辺に平行に等間隔な三本の縦線を、 端から山、谷、山折りして屏風状にし、 最後に中央横線で上下に二つ折りするもの、 これをその道のプロは「カガミ折り」と言ふ (昨日購入した A-Z の地図もこれだつた)。 しかし、これは少々大きい、と言ふこともあるし、 また使ひたいところだけを見るにも大き過ぎ、 開くのがそんなに楽でもなく、折り目がいたみ易い、 と、無難ではあるのだが色々と欠点がある。 そこで次の二つの「究極の折り方」が知られてゐる。 一つは地図を多用するフィールドワークの方面で、 決定版として知られる「金関折り」、 そして、もう一つは弾性学の立場から発明された 「三浦折り」である。

「金関折り」は、まず、地図面を隠すやうに、 上下の辺を折つて中央の水平線で合はせる。 さらにこれを左右の辺に平行に屏風折りする。 勿論、これでは図面は見えない。 ここで画期的なアイデアの登場で、 なんと天地からの蓋の山折りになつてゐる縦線の折り目に、 カッターで切れ目を入れるのである。 こうして、2 マス分の蓋を上下に開くやうにして、 見たいところだけを使用するわけだ。 地図を参照しながらフィールドを移動するやうな、 ヘヴィーな使用には最良の方法で、愛用者が多い。 欠点は地図にハサミを入れてしまふことで、 使ひ捨てるくらいの気持がないと実行出来ない。 一方、「三浦折り」は、説明が難しいのだが、 天地の辺に平行な横のラインは平行な直線に折り、 左右の辺に平行な縦のラインはジグザクな折れ線に折るものである。 これによつて、 地図は一つの区画が、同じ大きさで向きの違ふ二種類の 平行四辺形で分割される。 この平行四辺形は掌サイズくらゐにし、 全ての折り目は、山、谷、山、谷と交互に折る。 さうすると、平行四辺形の名刺の束を、 上下にずらせて持つたやうな感じに畳まれる。 これの凄い所は、流石に数理弾性学の立場から、 東大宇宙航空研究所で開発されたと言ふだけあつて、 ワンタッチで全面展開し、ワンタッチで元通りに戻るところで、 初めて見ると誰しも、びつくりする。 しかも折り目がいたみ難いさうだ。 この欠点は、必要な箇所だけを開くことができないので、 フィールドワークには向かないことである。


[後日へ続く]

[最新版へ]
[日記リストへ]

Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

この日記は、GNSを使用して作成されています。