Keisuke Hara - [Diary]
2004/07版 その1

[前日へ続く]

2004/07/01 (Thurs.) 開平法

昼食はサンドウィッチ。午後は「情報処理演習」。 ニュートン法で平方根を求めるやり方を説明して、 じゃあ、これでプログラムを書いてみて下さい、 と言ふ課題だつたのだが、今回は難し過ぎた模様。 今のところ、 ほとんどの提出物が私が時間中に作つた例をコピーしただけのものだつた。 でも大体、限界が分かつたと言ふ意味では収穫か。 これよりも、幾らか易しい課題にすべきだらうが、 簡単過ぎると興味を持つてもらへないし、難しいところだ。 それはともかく、ニュートン法つて凄い。 猛烈な勢ひで収束するので、 手計算でやつても通常の開平の筆算より速いだらう。 (ところで、開平の筆算の仕方つて覚えてますか?) 昔の数学者は、数値計算を自分の手でやらざるを得なかつたので、 それ用の「技」を色々持つてゐて、 結局、それが純粋数学における重要な概念に発展してゐることも多い。

大使館からヴィザが発行されて、パスポートが返つて来た。 国内にゐるのだから構はないやうなものだが、 何故かパスポートを預けると不安な気がするもので、 手元に戻つて一安心。 これが、エントリー・クリアランスと言ふものか、 確かにさう書いてあるな…としばし感心する。 まあ、これで入国と滞在が許可されたわけだし、 向こうの大学の受け入れ招待状もあるし、 後は現地に行けば何とかなるだらう。(どうかな…?)


2004/07/02 (Fri.) 逃避

来週の講義の準備など。 昼食はカルボナーラとリースリングのワイン。

梅雨明けしたのかしてゐないのか知らないのだが、 気候はもう京都の夏。 日頃の疲れを癒すためにちよつと京都に短い休暇に… と言ふ気持ちになる頃らしく、 (もつと直接的に言ふと、「もう、やってられるか!」 と言ふ気持ちになる頃らしく、) 私の数少ない知り合ひ達からも幾つか連絡があつた。 彼等と比較すれば、私は静止画像なみに閑なので、 勿論ウェルカムで、 むしろ普段ひつそり暮らしてゐる分、 連れ出してもらへて有難いくらゐである。

でも京都に住んでゐる方にとつては、 夏はむしろどこかに逃げ出したい感じなんですけどね…


2004/07/03 (Sat.) 夏のリースリング

今日は R 大学ではまた「月曜日」だつたかも知れない。 と、言ふのも、 この前の台風で一回なくなつた月曜日の講義分を、 どこかの土曜日を月曜日にして補充するとのこと。 私の場合、幸運にも今期は月曜日は卒業研究と院生のセミナなので、 学生たちと相談さへすれば、この問題を適当に回避できる。 そんなわけで、いつの土曜日が月曜日なのか覚へてゐない。 今日ぢやなかつたやうな気もする。 兎に角、講義があつたら大変だつただらうなあ… ちなみに、R 大では今月 19 日「海の日」(月曜日)は授業日です。 最終週で大事な時期なので、 講義のある学生さんたちはお間違へのないやうに。

蒸し暑くてたまらないと思つてゐるのだが、 実はまだ最高気温 33 度くらいで、夏本番にはまだ遠い。 しかし、夕方、三条商店街に買ひ出しに行くと、 今日は夜店らしく、 かき氷やら、風船やら、 焼き蕎麦やらを持つた浴衣姿の人々で賑わつてゐた。 やはり、もう夏。 昼はリースリング・ワインとパスタ、夜は素麺。 リースリングつてたまに飲むと美味しい、特に夏は。

今日の読書。「珈琲相場師」(D. リス著/松下祥子訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)。 ニール・スティーブンスンと言ひ、最近、金融経済の黎明期が熱い。 日本人も江戸時代の米の先物相場あたりを舞台に、 ミステリを書いてみたらどうだらう。


2004/07/04 (Sun.) 作問

洗濯など家事をしつつ、勉強や読書など。 夜はチェロのレッスン。 どうも最近、練習時間が確保できなくて不調。 生活全般も夏を前にして既に夏バテ気味。

閑を見つけては、チェスプロブレムを解く。 二手は大体解けたが、ここからどこまで行けるかだな… しかし、日本には超人的なフェアリ作家がゐる。 ただ超絶技巧過ぎて、 私にはほとんど解けさうにないのが寂しい。 そして、最近とみに思ふのは、 かう言ふジャンルは作る方が勝ち、と言ふか、 その方が遥かに楽しいだらうなあ、と。 実はこの私も修行を重ねて、 いつか作家としてデビューできたらなあ、 と言ふ秘かな野望を抱いてゐるのである。 幸ひ、来年はかなり時間がありさうだし… (何のための外留なんだか、とか、 他に投稿すべきものがあるだらう、 とかは言はない約束でお願いします。)


2004/07/05 (Mon.) 冷奴と素麺

曇ときどき雨。 昼食は冷や御飯と味噌汁。 午後は卒業研究のゼミから。 大偏差原理のところで必要なガウス積分の評価。 学生が一週間考へて出来なかつたと言ふので、 私も一緒に考へてみたが時間中には出来ず。宿題。 続いて、院生のゼミ。ランダムラティス。 就職活動は一段落で、内定も一つ取れたらしく一安心。 学生の部屋で少し数学を考へて帰宅。 夕食は冷奴と素麺。

夜は定期試験の作問を片付けてから、 卒研ゼミで出て来た評価計算をしてみるが、 どうしても後 1/2 乗分のオーダが稼げない。 若干評価が粗いやうにも思ふので、 改善の可能性はあるが、 テキスト間違つてるんぢやないかなあ。 上からの評価とオーダが違ふのも変だし。


2004/07/06 (Tues.) ラッキョウ

珍しく研究室で数学など。 夕方から解析セミナに参加。 講演者は O 坂先生。関数環の話で詳細は良く分からなかつたが、 大体どんなことに興味を持つてゐるかは分かつた。 二週間後の次回は、私がラフパス理論入門の解説をする予定。

夜は下漬けしてあつた薤(ラッキョウ)を本漬けにしたりと、 ドメスティックに過す。


2004/07/07 (Wed.) 成長

昨日、今日と既に猛暑。おそらく 35 度は越してゐただらう。 BKC は逃げ場のないコンクリートジャングルなので、 まさしくヒートアイランド。 しかも、何もかもが白く眩しい。

研究室でサンドウィッチの昼食を取り、 午後は「確率過程論」。マルチンゲールの定義と、 ドゥーブの不等式。 続いて「計算機代数学続論」。 素数生成の確率的方法、DH 系、Elgamal 系のアルゴリズム。

試験が近付いて来たので、 見たことすらない学生から、どうすればいいですか、 と言つた漠然とした質問を受けたりする。 以前の私は、即座に、「どうもしなくていいです」 と答へてゐたのだが、最近の私は違ふ。また、 この時期、一番多い質問は、 「教科書は何ですか」で、次は「レジュメはありますか」なのだが、 これらに対しても、数年前の私は、 最初の質問には「あるわけないぢゃん(失笑)」、 後の質問には「レジュメつて何?(真顔)」、と答へてゐた。 しかし、今は違ふ。 我、童たるときは思ふことも童のごとく、 論ずることも童のごとく、語ることも童のごとくありしが、 今、人となりて童たることを捨てたり。

最近の私は、「申しわけないけど作つてないんですよ、 出席してる友達とかにノートを見せてもらうといいと思ふよ。 教科書も参考書も指定してないんだけど、あれとかこれとか、 で勉強するといいんぢやないかな…」 などと答へてゐる。 誰もが、いづれ大人になつて行くものだ。 私など、どんどん角が取れて、もうほとんど真球なんぢやないか、 とさへ思ふ。


2004/07/08 (Thurs.) 京の癒し

猛暑。京都は 36 度を突破。もうたまらない。 アメリカやヨーロッパの企業から日本駐在に飛ばされると、 熱帯手当がつくんだつてね。それも、もつともだ。 滋賀は少し温度が低いとは言へ、BKC は 37 度越。 地面のタイルで目玉焼が作れさうだ。 午後は「情報処理演習」。 前回のニュートン法のプログラムを改造して、 平方根を求める関数を作つてもらふ。

夏期休暇で京都を訪れた渋谷のネットワークエンジニア N 氏と自宅で待ち合はせて、 夜は、執事とともに先斗町の「ますだ」で N 氏の接待。 「ますだ」は有名店だが、 やはり日本人で良かつたと言ふ気のする、良い店である。 その後、執事はまた徹夜仕事に戻つたたが、 N 氏と私は続いて祇園に移動し、冷酒などを飲みつつ、 プログラミングの話題などを議論する。 最後は「味味香」でカレー饂飩を食べて帰宅。

執事も最近、副業のプログラマが忙しいらしく、 滅多に顔を見ることすらない。 会社にほとんど毎日泊まり、 椅子の上で仮眠してはコーディング、 またはコーディングしながら仮眠、の日々らしい。 N 氏も「人間組込み OS」と言はれるほど働いてゐるので、 異常なワーカホリクの二人の心を私が慰める、と言ふ形である。 どうして、コンピュータ業界の人は、 人間の限界に挑戦するほど働くのだらうか…謎だ。 何が彼等をして、一日 20 時間以上もの労働をさせるのだらうか。 十分働いて 40 歳くらゐで引退した後は、 コモ湖畔あたりで残りの 40 年をのんびり暮らす予定なのかも知れないが…


2004/07/09 (Fri.) 四川料理

京大のセミナに出席する序でに、 休暇で上洛中の N 氏と丸太町の「マダム紅蘭」に昼食に行く。 叩きつけるやうな日差しの中、しばらく道に迷ひ、 行き倒れさうになつたが、何とか到着。 時間が遅かつたため既にコースは終わつてゐたが、 一応ランチメニューを食べる。 しかし、やつぱりこの手の店は夜に来て、 テーブルを一杯にするほど皿を並べて豪勢にやるのが良ささうだ。 食後は、一緒に百万遍まで行き、「進々堂」で休憩。 そこで別れて、私は確率論セミナに行き、 N 氏は休暇をさらにエンジョイするために街中に戻つて行つた。 セミナの後、少し喫茶店で論文を読んで暇をつぶし、 夜は百万遍の近所で、 D 大の C 先生と焼き鳥を食べながらチェスをする。 今日は仲良く一勝一敗。 しかし、いつまでたつても、 英語で言ひたいことの十分の一も話せないなあ。


2004/07/10 (Sat.) The Art of Travel

朝は豪雨。午前中は寝台で、 「プログラミング演習」のレポート採点をする。 毎週レポートを出してもらつてゐるし、 一人一人のプログラムに全て目を通してゐるので、 結構時間がかかる。ようやく、現在出題中の演習にまで追ひついた。 昼食はベンガルカレー。 午後になつてすつかり雨は上がつたので、航空券を手配に行く。 デフレのせゐか旅行業界の不景気のせゐか、結構安くて有難い。

夕食は素麺。夜になり雷雨。 読書。「旅する哲学」(アラン・ド・ボトン著/安引宏訳/集英社)。 前にイギリスにゐたときに、 偶然本屋でド・ボトンの "The Consolations of Philosophy" を見つけて読み(2000 年当時、ベストセラーだつた模様)、 実際のところ大いに傷心を慰められて、 それ以来注目してゐる。これは日本語にも翻訳されたし、 他にも「プルーストによる人生改善法」 ("How Proust can change your Life")も翻訳が出てゐる。 今日、「旅する哲学」で初めて気付いたのだが、 本人のサイト (www.alaindebotton.com) まで出来てゐて、すつかり売れつこらしい。 私の印象では、 もしロラン・バルトがイギリス人で、かつ、もう少し陽気だつたら、 こんな感じだと思ふ。(どうかな?)


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

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