Keisuke Hara - [Diary]
2004/07版 その2

[前日へ続く]

2004/07/11 (Sun.) 明晰性

ミューズリの朝食をとり、午前中は講義の準備など。 昼食は素麺。 午後は掃除器がけをし、洗濯物を畳み、 とドメスティックな用を済ませてから、選挙投票に行き、 帰宅後は夜まで数学など。 再来週あたりに一時間の短いセミナで話すので、 出来るだけ明晰に話せるやうに詰めて行く。 自分が分かつてゐるのと人に分からせるのとは違ふのだが、 しかし実際のところ、人に分からせることができない場合は、 自分自身が十分明晰に理解できてゐないことが多い。 その意味では、 機会を捉へて人に話すのは効率の良い勉強になる。 夕食は簡単なパスタ。 食後は禁を破つて TV をつけ、NHK の選挙速報を観る。 京都は自民、民主か…ちよつと意外。


2004/07/12 (Mon.) 太極

自宅で朝昼兼用のミューズリを食べて、出勤。 午後、卒研セミナ。クラメルの定理のあたり。 今日も、著者が証明抜きで、 「次の不等式が成立することに注意すれば…」 とさらつと主張する、 不等式評価に引つかかつてかなり時間を使つたが、 最後には何とか示せた。 示せてみれば確かにほぼ自明だが、なかなか不親切な本だ。 続いて、修論のセミナ。ランダムラティス。 今日はかなり遅くなつたので、生協食堂で夕食をとつて帰宅。

どうも最近、身体が重い。何か訓練しやうかな… 先日会つた N 氏のやうに。 N 氏は太極拳を学んでゐるさうだ。 かつて横浜では武闘派として知られてゐた N 氏が、 そんな健康体操みたいなものを…と思つたのだが、 良く聞いてみると太極拳も流石に武術であつて、 なかなかに恐しい破壊力を持つものださうな。


2004/07/13 (Tues.) 物静かな人

WCC 2004 のファイナル 6 ゲーム目はドローになり、 13 日本日現地時間 12:30 からの早指しによるタイ・ブレイクにもつれ込んだ。 ここまで来るとアダムス(Adams, Michael)に勝つて欲しい。 忙しくて、今朝までファイナルの棋譜をみてゐなかつたのだが、 一言で言ふと、アダムスは地味にしぶとい。 一昨日の Chess Today に、 "The embarrassing thing about playing the likes of Mickey is that casual observers (who only know me) assume that I will win easily." と言ふ、 GM D. Norwood の言葉が引用されてゐたが、さもありなん。 最初の数ゲームを見ると、 カシムジャノフ(Kasimdzhanov, Rustam)の楽勝なのぢやないか、 とさへ思へたのだが。最後の 6 ゲーム目もまさにしぶとい。 時間に追はれ、終盤はお互ひ "??" 級のブランダーを応酬したが、 結局ドロー。 最後の大ミスはアダムス側なので、勝てるゲームだつたとも言へやうが、 アダムス良くやつた、と思ふ。 静かなるタフ、いかにもブリティッシュ… イギリスから世界チャンピオンが出ると面白いなあ。

夜はタイ・ブレイク の早指し戦を観戦予定。(以上は、18:50 頃、記)

駄目だつたか…タイ・ブレイクは、1.5-0.5 でカシムジャノフ。 惜しかつたがなあ。


2004/07/14 (Wed.) 悪の美学

近所のパン屋でサンドウィッチを買つて出勤。 研究室でサンドウィッチの昼食を取りつつレポートを見たりして、 午後は「確率過程論」。マルチンゲール理論の続き。 来週は最終講義試験なので、今日が事実上は最後の講義。 講義の後、毎回聴講しに来てくれてゐた経済経営の先生から、 立派な桃をいただいた。御実家で作つてゐるものらしい。有難し。 続いて、「計算機代数学続論」。 素因数分解と離散対数問題のアルゴリズム。 これも最後の講義で、来週が最終講義試験。 続いて、教室会議。常に何かと議題はあるものだ。 帰宅は 8 時半くらゐ。夕食は適当なパスタ。 お風呂あがりに、冷やした桃。

最近の就眠儀式本はル・カレ「ナイト・マネジャー」(村上博基訳/ハヤカワ文庫)。 何度読んでも面白いなあ…つい寝るのを忘れて読み更けつてしまふ。 実は私は、甘いとは思ひつつも、 スマイリー・サーガのどれよりもこちらの方が好きだ。 ヒーローのホテルマン、ジョナサン・パインが格好良いし、 宿敵の、北半球一の悪者ローパーがまたそれ以上に格好良い。 やはり悪役が格好良くないとね。 それに、この本を読むと、イラク情勢が情勢だけに、 悪と言ふものについて考へさせられる。 この本の中で登場人物の会話に出てくるのは、 前のブッシュ大統領なのだねえ。


2004/07/15 (Thurs.) 浴衣

猛暑。今日も昼食はサンドウィッチ。 午後から「情報処理演習」。今日が最終日。 帰りの電車には浴衣姿の女の子が多く、 さう言ふと、今日は祇園祭の宵宵山であつた。 週末、街の方は騒がしいことであらう。

学力低下問題についてのアンケートが来てゐた。 本当に学力は低下してゐると思ひますか? どのやうな能力が低下してゐますか?と言ふ感じの状況調査。 私は教へる方になつてから、まだ十年にもなつてゐないので、 その変化を捉へられないのも当然だが、 正直な印象では、そんなに「変化」はないと思ふ。 さらに正直に言ふと、教員に初めてなつたときには、 (平均的には)その出来なさぶりに衝撃を受けた。 しかし、同時に、「結構やるぢやん」と驚くこともあつたし、 学生時代の間に、どんどんと成長して行く学生も沢山見た。 これは大昔から年長者が若者に思ふことなのである。 使ひ古されたギャグだが、 古代遺跡から「最近の若者はなつてない」 と書かれた石板が見つかつた、と言ふやつだ。

むしろ、私が心配なのは、 私が私自身の期待ほど能力も知識も教養も業績もないことだ。 パスカル曰く、 王位を奪はれた王でなければ、誰が王でないことを嘆くだらう。 貴方たちの心の中には、そんな王がゐるかね。 学生に言ひたいことがあるとすれば、精々それくらゐだらうか。


2004/07/16 (Fri.) 四季、夏

今日も太陽は元気にかんかん照りで 35 度越え。 とは言へ、この猛暑の中、宵山と言ふことで、 市内は夕方の時点で既に十万人以上の人出ださうだ。 昼食は冷や御飯と味噌汁、納豆と漬物類などの粗食。 レポート採点などを休み休みやる。 夕食は素麺。夏は食費がほとんどかからない。 冬もほとんどかかつてないけど。

近所のワイン屋から注文したワインと、漬物が届く。 東山「八百伊」のお漬物だが、こんなに沢山… 十日間くらゐ漬物三昧になりさうだ。 夜、瓜の浅漬を肴に白ワイン。 コパン・ワインズの 「四季」より "l'ete"(「夏」) 2002。


2004/07/17 (Sat.) 四季、夏。その2

何故か早く目が覚めてしまつたので、 午前中は数学の勉強をする。 午後は、北山の京都コンサートホールに、 室内楽のコンサートに行く。 三階にあるアンサンブルホール・ムラタにて。 現代音楽がテーマで、良く眠れました…(笑) それは冗談として、 ミヨーの「四季」の「夏」が意外に良かつた。 独奏がヴィオラの曲で、 ヴィオラはなにより音色が良いし、 おおらかなところが上品で好きだ。 夕食はポモドーロ、白ワイン("L'ete"の残り)。


2004/07/18 (Sun.) 思考の錯誤

終日、自宅でセミナの準備とか仕事を色々。 午後にかなり強い夕立が何度かあつて、 夕方にはかなり涼しくなつた。

忙しく数学のノートなどを作つて、 ふと休憩にチェスプロブレムを見ると、 あれだけ分からなかつたものが見た途端に解けたりする。 解けると分からなかつたのが不思議で、 問題解決における知性の働きつて不思議だ。 ポアンカレとか、ポリヤとか、色々な論説があるが、 どうしてそう不経済なのか、と思ふ。 こんな風に分かるのなら、 最初からすぐに分かつても良ささうではないか。 私は最近、私が思つてゐたやうな知能はおおむね存在しないのではないか、 実際は、ほとんど「試行錯誤」が脳の主要な働きなのではないか、 と疑つてゐる。


2004/07/19 (Mon.) 直島

今日は世間は休日でも、R 大は講義日。 私は月曜日は講義がないので、 休日でもそうでなくてもほとんど影響はないが。 昼食はスパゲティ。午後は、洗濯に掃除など軽く家事をしてから、 数学のノート作り。夜も続き。

瀬戸内海の直島に、 地中美術館オープン。 直島自体も、こんなこと になつてゐるらしい。ちよつと、行つてみたい… それはともかく、ベネッセつてお金持ちなんだなあ。


2004/07/20 (Tues.) Status Anxiety

今日も暑いが、40度近い気温の東京に比べれば、 涼しいくらゐだよね…と慰める。 昼食は蕎麦と漬物。 午後は、出張手続きとか、来週の健康診断の予約とか、 あれこれ事務処理をして、 夕方からは解析学セミナで発表。 ラフパス理論の易しい解説をする。

院生たちが最終講義試験とかちあつて聞けないと言ふので、 通常より 1 時間遅らせて 5 時半から開始。 そのため、出席者が少ないんぢやないかなあと思つてゐたが、 大入り満員(と言つても十数名くらゐだが)。 実解析の基本的なところの話題なので、 結構興味を持つていただけた模様。 講演後、ぐつたり疲れてゐたので、後で思ふに、 変に力の入り過ぎた講演だつたかも知れない。 直前に濃い珈琲を飲んだためだらうか…と少し反省。 兎に角、これでワン・ダウン。 来週末の某 A 社の仕事でツー、 平行して試験監督と採点を全てやつてスリー、で夏休み。 がんばろうっ(カフェイン効果)。

電車で "Status Anxiety" (by A. De Botton / Hamish Hamilton, Penguin, 2004) を読みつつ帰る。 相変らずのデ・ボトン節だが、多分、 翻訳すれば日本ではこれが一番売れさう。 帰宅は 9 時過ぎくらゐ。


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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

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