「Keisuke Hara - [Diary]」
2004/09版 その1


2004/09/01 (水)

チャレンジ (people, 日常)

夕方から、三条大橋の SBUX で、 A 出版社の A さんと打合せ。 私としては初めての一般書の翻訳の話で、 全くまさに一つのチャレンジであるが、 喜んで引き受けさせていただく。 まだ正式に翻訳権が取れてはいないようだが、 ほぼ確実とのことなので、早速仕事にかかり、 年内には第一稿をあげる予定。 打合せが終わった頃、 K 大の W 先生もやってきて、 三人で先斗町に食事に行く。 日帰りの旅程のため A さんが先に帰ったあと、 さらに喫茶店で W 先生といろいろ話す。 主にチェスとプロブレムの話など。

しかし、まさにチャレンジなのは、 むしろ出版社にとってですね… ;-)



2004/09/02 (木)

河風のすゞしくもあるか うちよする (season)

涼しい。今日、この夏で初めて、涼しい、と思った。


選択 (books)

昨日、話題にのぼった話で、 ある女性が好きな小説のベストスリーに、 サンドラールの「世界の果てまで連れてって」と マッカラーズの「心は孤独な狩人」 を挙げていたと言う。(もう一つは不明。) 趣味がいい。 まるで関係ない話のようにも思うが、 昭和天皇が園遊会だかで天麩羅職人に、 何をおあげいたしましょうかときかれて、 「紫蘇の葉と穴子」と答えたという逸話を思い出した。 こういうのは、 そうくるか、と一瞬思ったあとに、 ああ、でもそうでなくちゃね、 と納得する感じがポイントである。 しかし、好きな小説ベストスリーか…、 私なら一つは確実に「失われた時を求めて」だが(*1)、 残りの二つを選ぶのは難しいなあ。

*1: とは言え、今まで二回しか読み通したことがない。


レビュー (math)

AMS のマス・レビューを書く。 雑誌に掲載された数学論文はほとんど全て、 アメリカ数学会(AMS)によってデータ化されて、 一つ一つに「レビュー」がつけられる。 括弧でくくったのは、 これが普通の人が思うような詳細な批評ではなく、 データベースを検索した人が、 大体この論文にはこんなことが書いてある、 ということが分かる程度の非常に短いものだからである。 そしてこのレビューは、 他の数学者によるボランティアによって書かれている。 初めて論文を出版したあと、 AMS から「レビューをやってくれませんか」 というお願いの手紙がやってきて、 イエスと答えると、 時々レビューの依頼が来るようになるようだ。 私も昔そう答えたために今でも依頼がくる。 当時は、自分のような極東の名もなき一書生が、 数学界に微かとは言え貢献できるなんて、 と健気にも思って、大文字でイエスと答えたものだ。 しかし、今、周りを見渡してみると、 AMS レビューを書いている人はあまりいない。 面倒であるし、自分がそんなに興味のない論文に目を通すのは、 査読だけで十分だ、と思うのが普通なのだろう。 それに、締切りを守らなかったり、 ずっと忘れたまま放置したりしたために、 それから依頼されなくなった、というようなこともあるようだ。 私は、依頼を受けた時点ですぐに書いているので、 いいカモだ、否、いいレビュアだ、と思われているのかも知れない。



2004/09/03 (金)

きんし (foods, restaurants)

航空券を受け取りに行ったついでに、 河原町で昼食。 午餐だけど、最後の晩餐シリーズ。 「かねよ」できんし丼。 鰻丼の上にだし巻き卵が乗っている、と言う大胆な丼もの。 全然、金糸ではないので、名前の意味は不明。


アダムス (chess)

わけあって、「完全チェス読本2(偉大なる天才たちの名局)」 (フォックス&ジェイムズ著/松田道弘訳/毎日コミュニケーションズ) を調べていたら、 アダムスについての記述が目に入った。 ちょっと面白い。

「…。アダムスの強さと弱さははっきりしている。 ミドルゲームに無類の強さを発揮し、頭の回転も速く、 冷静沈着なのだが、オープニングの対応がまずいのと、 エンドゲームのテクニックにやや欠ける。 研究よりも実戦を数多くこなしてきた プレーヤーによく見かけるタイプである。 彼がショートの顰みに倣い、トレーナーを見つけることができれば、なにごとも可能である。だがさしあたってのところ、 ミッキーは楽天的で呑気な性格で、 野心がないことを公言している。 富と名声への誘惑が彼の心を動かすことはないのだろうか。…」



2004/09/04 (土)

秋の味 (restaurants, people)

終日、蒸し暑い気候。やはりまだ秋は遠いか。 夕方、市役所前で待合わせて、 麩屋町通りの「京四季」へ。 去年の卒研生、T 君、M 君、N さん、T さんの四人が、 私の外留の歓送会をしてくれた。 なかなか古風な、味のある店で、 料理も美味しかった。若者の癖に渋い選択だ。 しかも贈物までいただき、 ありがたくも、かたじけなし。 こんなにしてもらうほど良い先生ではなかったのだが。 その後、河原町のホテルのバーで一杯だけ飲んで帰宅。



2004/09/05 (日)

計画 (日常)

曇りがちで雨も降る一日なのに、 気温と湿度の高い不穏な雰囲気の天気。 なんだか体調もおかしいような気がする。 主に外留の準備をしつつ、 朝、夕と少しずつ翻訳の仕事。 やり始めてみると、 これはかなりの分量である。 余程計画的に日々こなしていく必要があるな… でも内容は凄く面白い。 夜は実家に電話。旅行の前に、 父方と母方の両方の墓参りをしておこうと思って、 アポイントをとる。


上々 (restaurants, books)

夕食は近所の中華料理屋「上々」にて、 ちょっと豪華に食べる。 最後の晩餐シリーズと言うより、 近所の名店シリーズのようになっているが、 食べられなくなるとちょっと切ないな、 と思うと日常的に良く行っている店で食事をしておきたくなる。 食事を取りつつ、読書。 「翻訳夜話」(村上春樹・柴田元幸著/文春新書)。


フィッシャー・ランダム (chess, math)

カルポフとスーザン・ポルガーが来たる9月18日から、 カンサスでマッチをするようだ。 二局の早指し(rapid)、二局の超早指し(blitz)、 そして二局のフィッシャー・ランダムをするらしい。 フィッシャー・ランダムとは、 普通のチェスから序盤定跡の記憶ゲーム的な要素を除くために、 ゲームのスタート時の初期盤面をランダム化するもので、 ボビー・フィッシャーが考案したらしい。 二段目のポーンの位置は通常通りだが、 一段目の駒を、キングが二つのルークの間にあり、 かつ、二つのビショップが反対色のマスにあるように、 ランダムに並び替える。ただし、 白と黒は通常のチェスの通り線対称におくので、 白の配置が決まれば黒は自動的に決まる。 (ゲームが始まったあとは、 キャスリングのルールだけがちょっと面倒臭い。 今日の脚注をご参考に。) このような並べ方が何通りありますか、 と言う確率の問題はなかなか良い大学入試問題になりそうだが、 残念ながら、ここに書いてしまったので、使えない。

正直に言って、いつか入試に出すためにこのネタを保存しておくかどうか、 かなり悩みましたが…

*1: Fischer Random Chess" の説明が詳細かつ明解かと思います。 いかにもソフトウェア開発者らしいドキュメントです。



2004/09/06 (月)

交渉と算段 (日常)

今日も曇り、しかしおかしな具合に蒸し暑い、 気味の悪い天気。 終日、外留前の準備として家の保存の算段や、 電話の休止の申し込みなど。 その合間にかすかに数学をしたり、 翻訳をしたり。



2004/09/07 (火)

嵐の日だから数学でもしよう (日常, math)

朝は快晴。段々と雲が増えながらも、 気温はぐんぐんと上がり、久しぶりに35度を突破。 午後から強い風が吹き始め、まさに熱帯の嵐である。 しかし、台風は北の方のコースを通ったためか、 京都南部にはそれほどの被害を与えなかった模様。 午前中は翻訳。 午後に少し昼寝をして、 夕方から A 堀先生に言われていた計算を始める。 簡単なガウシアンの計算に過ぎないのに、 あちこち間違っては、迷子になり、 途中でシリアルの夕食をとり、珈琲を飲み、 結局三時間くらいかかって大体目処がついた。 どうしてこんな簡単な計算がすぐに出来ないのか、 分からない。アルツハイマーだろうか。 どうも間違い方がひどいような気がする。 普通は、ちょっと計算やロジックを間違い始めると、 これは何か違うな、と居心地の悪さみたいなものを感じて、 チェックするものだが、今日はどうも良くない。 少し記号を間違えたまま(ミューとラムダを逆に書いたとか)、 どんどん計算を続け、猛烈な逆ラプラス変換とかまで始めたあげくに、 遭難してしまってから間違いに気付く、と言う感じだった。 夜はまた頭を切りかえて、翻訳の手直しなどをする。


オムライス (foods)

今日の昼食。オムライス。 これも食べられないと食べたくなるような気がして。 ちなみに私は、オムライスにかかっているのは、 やはり純粋なケチャップであるべきだと思う。



2004/09/08 (水)

手続色々 (日常)

今日も暑い。 午前中はあれこれ手続。 外国でどうしてもインターネット接続ができないときのフェイルセイフに、 Vodafone の国際ローミングの契約をする。 NTT Docomo は近日、解約予定。 携帯電話のセットアップを待っている間に、 郵便局に行き、今度は郵便物転送の手続き。 さらに、次は外貨。犯罪にならない程度の額のポンドを闇調達。

夕方、D 大の T 先生と三条大橋で待ち合わせて、 色々とオックスフォードのローカル情報を仕入れる。 今回の外留は相手側からほとんどサポートが得られず、 住む所さえなかなか見つけられなかったのだが、 知り合いの知り合いの知り合いの知り合いコネクションによって、 何とか最初の一箇月の算段は出来た(のかな?)。 この知り合いの輪のグラフ・メトリックで距離 3 の方が、 直接には今日初めてお会いした英文学者の T 先生である。 大変、親切な良い方であった。 既に様々な人の善意に助けられて、 「まあ、なんとかなるんじゃないかな…」 と言うところまでやってきたように思うが、 さてはて、どうなることやら… T 先生からいただいたお土産のケーキを手に、 高瀬川の流れを見つつ木屋町を下って、阪急で帰宅。



2004/09/09 (木)

牡丹 (films, 日常)

今日もあれこれ準備や情報収集など。 河原町に買物に出たときに、 少し時間が余ったので、 うっかり、映画「Lovers」を観てしまう。 ちょっと章子怡 (公式サイト www.helloziyi.com) が好きなので。 相変わらず脚本はてんで駄目だったが、 映像は綺麗でいい。個人的には、 冒頭の20分くらい、遊廓で彼女が踊るシーンだけ観れば、 多分もとは取れてるし、後は特に観る必要はないと思った。 さすがに、この太鼓の踊りのかなりの部分は、 本物のバレリーナの吹替だろうな…本人だったら凄いけど。



2004/09/10 (金)

真夏日、夏日 (日常)

朝は翻訳などして、午後は数学。 夕方から激しい雨。 今日は久しぶりに最高気温が30度を切り、 涼しいと言えなくもない一日だった。 とは言え、天気予報によれば、 出国するまでの間は、 ほとんどずっと真夏日(*1)のようだが。

*1: 真夏日の定義は、最高気温が30度以上。 25度以上で夏日。


論考 (books)

持っていく一冊に、ヴィトゲンシュタインはどうかな… (岩波文庫の「論理哲学論考」。) 翻訳ものだし、日本情緒でもないが、 薄いし、シャープだし、一年読んでも飽きなさそうだし。 ところで、岩波文庫のこの本は註釈や解説が多過ぎると思う。 本文だけで、すごく薄い一冊にしておけば、恰好良かったのに。




この日記は、GNSを使用して作成されています。