「Keisuke Hara - [Diary]」
2004/10版 その1


2004/10/01 (金)


2004/10/02 (土)

プニン (books)

日常生活については何とか、ほとんどの問題は解決された。 一週間ほどかかったが、一応生きてはいける。 研究所については金曜日に行ってみたら、 受付で秘書が留守だと言われて、来週再来訪の予定。

なんだか、ナボコフの「プニン」が身に染みて読めるなあ… "Digital Fortress" の方はやたらにリーダブルでどんどん読める。 しかし、重要人物の一人の日本人天才プログラマの名前が、 エンセイ・タンカドだったり(淡角円生と書くのだろうか?)、 日本企業のボスが「メンボコ」を保ったり、 「アクタ・サメ」(悪太鮫?)と綽名されてたり、若干の謎。 この作家は確かに色々調査して知的なものを書くが、 明らかに意識的に身につけた「ベストセラーを書くテクニック」 が身上の作家のような気がする。 クーンツとか読んで修行したんじゃないだろうか。



2004/10/03 (日)


2004/10/04 (月)

マッシュドピー (日常, foods)

研究所、再訪。 今回は何とか取りついでもらうことができ、秘書登場。 鼻にピアスをしたインド人だった(少なくとも見た目は)。 それはともかく、 やはり向こうは何の準備もしていないようで、 しかもスポンサの L 教授も今いないらしく、 まあ、ちょっとそこで待っててくれ、と一階のソファで待たされる。 今日の受け付け嬢は親切で、紅茶を持ってきてくれた。 しばらくして、L 教授がどこかから帰ってくるのを目撃。 さらにしばらくして、 秘書がヴィジター用七つ道具みたいなのを持って来てくれた。 あちこちの鍵と、カードキーと、登録書類一式。 L 教授は研究室で私の身辺と数学について、てきぱきと雑談し、 秘書のところに連れていってスケジュールを説明し、 (一週間に一回は私と話をする、と主張していて、 「それはちょっと…」と言いたかったが、 どうせ守られっこないし、失礼になってもいけないので、自然風化に任せることにした) 私の寄合オフィスを案内し(今のところ私しかいない)、 「じゃ、忙しいからこれでっ」と風のように去っていった。

取りあえずもらったオフィスで、 大学証とコンピュータアカウントの申請書を記入し、 秘書と受付に提出し、図書室を覗きに行く 正直に言ってあまりたいしたことのない、こじんまりした図書室である。 論文雑誌はまあまあと言ったところで、 書籍に関してはかなり少ない。 ウォーウィックの数学研究所の図書室に負けているかも知れない。 もちろん、大学全体の理系図書を集める巨大図書館が別にあるのだが、 ここにないと面倒なことは確かである。 何せ大学全体が一つの町なので、移動が楽ではない。 何だかまだ分からないことが沢山あるが、 取り敢えず、居場所が出来たし、図書室にも入れるようになった。 研究所での生活が動き出したことは確かである。

研究所を後にして、 今日は我ながら良くやった(?)、と妙な納得の仕方をし、 コーンマーケット通りの少し奥まったところにある、 パブ "Crown" でビールを飲んでお祝いをすることにする。 ふと、今回渡英してからまだフィシュ&チップスを食べていないな、 と思い出して注文する。 長径50センチ弱くらいの巨大なプレートに、 ほとんど丸ごと一匹の片身と思われる魚のフライと、 大量のフライドポテトと、どんぶり一杯分くらいのマッシュドピーが載っていた。 イギリス料理の話の種として、 「モルトビネガーが食えた代物かどうか」と言う話題があるが、 もうちょっと通の話題として、 「マッシュドピーが食えた代物かどうか」と言う話題もある。 私個人はそう嫌いではないし、少しなら美味しいんじゃないかと思う。 少しならだけど。



2004/10/05 (火)


2004/10/06 (水)

丸いカメラ

先日、申請した University Card が届いていた。 学生からスタッフまで全員が持っている身分証のようなもの。 写真つきのプラスティックのカードで、 磁気テープとバーコードがついている。 これで身分もはっきりし、どの図書館にもアクセスできるようになった。 取り敢えず、研究所の図書室で貸出し登録をしてもらい、 本の借り方などを司書に教えてもらう。 この図書室はバーコードを使ったセルフサーヴィス方式で、 全部一人で出来るようになっている。 しかしそのハイテクぶりの割に人間的なところもある。 これで入れるってカードを貰ったから図書室に来てみたけど、 どうすればいいのかな…と言う感じで新人が途方に暮れていると、 見かけない顔を見つけた司書が傍に寄ってきて、 「何かお困り?」と声をかけ、その後、本の借り方などあれこれを教えてくれるのだ。 私もそうだったし、最近は毎日、そんな様子を見かける。 一枚、紙に印刷してカードと一緒に渡せばいいと思うが…

ところで、オックスフォードの図書館と言えば、 世界に誇るボドレアン・ライブラリ(Bodleian Library)である。 ボドレアンは中央図書館と、 その他、各分野の専門図書館の集合体の総称で、 この図書館群には科学分野のラドクリフ科学図書館、 哲学図書館、法律図書館、東洋図書館、日本図書館などがある。 でも普通、人々がボドレアンと言ったときには中央図書館のことのようである。 中央図書館は、 ブロード・ストリートとパークス・ロードの交わる辺り一帯を占める荘厳な建物群で、 旧館、新館、ラドクリフ・カメラの三つからなる。 各リーディング・ルームでは学生たちが勉強したり、 専門家が資料を閲覧したりしている。 こんな教会みたいな厳めしい古い建物の、 とてつもなく高い天井の下で落ち着いて仕事が捗るのかな、 と思わないでもないが、 「学問をしているぞ」と言う物凄い迫力があることは確かである。 私は今まで、何故、図書館なのに「カメラ」 と言う名前がついているのか不思議に思っていたが、 今日辞書を引いてみたら、 camera には「円形の建築物」と言う意味があるのだった。 円形の図書館って何だか趣きがある。 八角形もいいけど。



2004/10/07 (木)


2004/10/08 (金)


2004/10/09 (土)

ベストテンリスト、プロブレム本二冊 (chess, books)

オックスフォードの町には大きな本屋が幾つかあるが、 チェス関係の本はあまり置かれていない。 一番多く置いてくれているのは、 ランドルフ・ホテルの少し南にある「ボーダーズ」のようだ。 それでも数十冊と言うところ。 イギリスで一番良い本屋との評判で、 実際膨大な開架書籍量を誇る「ブラックウェルズ」は、 ターゲットが高尚過ぎるせいか、チェスの本は少ししかない。 ちなみに、ブラックウェルズの売上げベストテン・リストには、 現在はロジャー・ペンローズの厚さ10センチもある、 ハードカヴァの理論物理の一般解説書と、 ドーキンスの生物学の一般解説書がランクインしていて、 かなりの高尚度を示している。 その他は流石に軽いサスペンスもので、 ブラウンの「ダヴィンチ・コード」、 それから私は読んだことはないがアレクサンダー・マコール・スミスが 数冊ランクインしていて、大人気のようだ。

私が発見したプロブレム関係の本は二冊だけで、 一冊は Barnes の "Pick Up the Best Chess Problems", もう一冊は Nunn の "Solving in Style" で、両方購入した。 とにかくこの二冊しかなかったので、選択したわけではなく、 お勧めできるかどうか分からないが、ポピュラーではあるのだろう。 前者は「名作集」なので、内容は古典的なプロブレムに限られ、 しかも全てが二手問題。 しかし、古典と言うものは何の分野でも良きものであって、 シンプルな作図の中に「驚きの一手」を素朴に観賞できる。 チェスは知っているけどプロブレムは全然、と言う入門者にも、 現代プロブレムを考えるのに疲れたマニアにもよろしいか、と。

後者は、私個人はなかなか優れ物の一冊だと思う。 Nunn はプレイヤであると同時にソルヴァでもあるし、 本を書く経験も豊かなので、外れてはいないはずだ。 内容は二手問題から始まって、スタディ、ヘルプ、セルフ、 レトロなどプロブレムの全般に渡って、 それぞれの考え方と背景にあるアイデアが紹介されている。 ノヴォトニ、グリムショウ、プラチュッタの三テーマに一章を設けて、 丁寧に解説されているのも嬉しい。 1985年に最初に出た本の再版なので内容がやや古いのと、 フェアリが弱いことから、保守的な印象を受けるが、 プロブレムの基本の全体がおさえられているように思う。



2004/10/10 (日)



この日記は、GNSを使用して作成されています。