「Keisuke Hara - [Diary]」
2004/10版 その2


2004/10/11 (月)

新学期 (日常, math)

今日から講義などの通常スケジュールが開始。 事実上の第一学期スタートである。長さは八週間。 オフィスでフランスパンのサンドウィッチの昼食を食べ、 午後は研究所の近くのダーティントン・ハウスで定例セミナ。 この月曜定例の確率解析セミナは、 スピーカ二人による二本建てになっている。 しかも既にこの学期中のほとんどのスピーカが決定していて、 驚異的な活発さである。 フランスを中心とするヨーロッパ各国やイギリス各大学から、 いくらでもスピーカを集められるのだろう。 今日の参加者はおよそ三十名ほど。第一回のため集まりが良かったのかもしれない。 実際、この小さな部屋には入り切らないほどだった。 一つ目がパリ第十大学の女性研究者による、 ダーウィン進化論の確率過程モデルについて。 確率論は昔から進化論や遺伝学と相性が良く、 例えば木村資生による集団遺伝学の業績などが有名である。 今日の話は、スーパープロセスのような高度な確率過程論を使うもので、 数学的にも難しい話だった。 二つ目はこの前亡くなった J. ドゥーブの逸話を語る数学史(?)だった。 こういうのは、同じ分野を研究する者として、 仲間意識が高まっていいかも知れない。 続いて、研究所の方に戻って、 短期滞在中のラックスの集中講義に出席。 もちろん、KdV 方程式の話。 ラックスは言葉が極めて分かり易い。

今日、ようやくアカウントがピジョンホールに届いていて、 研究所のコンピュータが使えるようになった。 セミナの間のお茶の時間に、 L 教授に「私と話す時間の予定は入れたか」 と聞かれたので、「いつ、都合よろしのでせか?」と聞き返すと、 「見当もつかん (Simply, I don't know.)」と答えていた。 スケジュールは全て秘書任せらしい。 彼はポケットには何かパームコンピュータらしきもの、 手にはタブレット PC を抱えて、慌しくうろうろしているが、 一体そのガジェットは何に使っているか謎だ。



2004/10/12 (火)

八枚のトランプ (日常, math)

今日は夜に、ケンブリッジのケルナーによる一般講演があった。 学部学生くらいを対象にした易しいものだと言うことだったが、 一応、彼のフーリエ解析の本の翻訳者の一人としては出席せねばなるまい。 行ってみると、やはり出席者は普段研究所にいない若い学生たちばかりで、 大きな部屋が一杯になる人気だった。

講演はまず最初に聴衆に八枚ずつのトランプを配り、 それを裏向けて一列に並べさせると、 一度に二枚ずつ表の数を見ては元に戻すことを繰り返して、 この中で一番大きな数を見つけるにはどうすればよいか、 と問いかけることから始まった。 この問題を、ソーティング、記録更新の確率、 最高の伴侶を見つける方法、と言った色々な方向に発展させ、 確率論とアルゴリズムの問題を解説すると言うもの。 一年生程度の微積分の知識と、 確率のセンスが少しあれば理解できる易しい話だが、 関心したのはそれが完全にリゴラスで、 まったく数学的にごまかしのなかったことである。 私でも同じような話ができるが、 ここまで深い内容を説明するには、 あちこちで、証明なしに事実を認めてもらうか、 嘘を混ぜざるを得ないだろう。

若い学生の頃に、このような易しくはあるが数学的に深くて面白い話を、 ケルナーのような教養ある解析学者にしてもらえる機会があると言うのは、 素晴しいことだ。日本にこういう人材がいないわけではないと思うが、 こういう機会がないことは確かだ。



2004/10/13 (水)


2004/10/14 (木)


2004/10/15 (金)

一週間 (日常, math)

ようやく今学期の一週間目が終わった。 月曜の定例セミナ以外にも、 やはり二本建ての統計学科の確率論セミナ、 ノムラが資本提供している数理ファイナンスグループのセミナなどがあり、 結局、確率論関係だけで週に最大で五つもの公式セミナがあるのだった。 その他にワーキングセミナと称する週一回の院生向けセミナが、 研究所の確率解析グループだけで、 L 教授による大偏差理論、 もう一人のスタッフによるレヴィ過程の二つがある。 これらは院生の勉強会の色合いが濃いもので、 L 教授によれば「院生はまだ何も知らないので、 自分たちで勉強して何か分かる、って経験を与えるため」だそうだ。 実際、院生が自分たちで輪講して、指導者はせいぜい後ろでコメントするくらいとか。 私が参加したければ歓迎するが、 エレメンタリなので出なくてよい、と言われた。

そして、 私には L 教授とのマンツーマンのセミナが週一回設定されてしまった。 今日、そのセミナの一回目があったが、 内容は極めてシリアスなもので、 これを毎週やられたらたまったものではないが…毎週あるのだ。 結局、他のセミナは月曜定例を除いては、 ほとんどサボらざるを得ないように思われる。

ところで、何に使っているのかと思っていたタブレットPCは、 何とセミナで活躍していた。 PC の画面に書いて、プロジェクタで投影して議論するのだ。 プリンタに打ち出せるとか、相手も MS 製品マニアならメイルで送れるとか、 PC で統一的に仕事を管理できるとか、 若干の利点はあるものの、 どう考えても黒板に書いてノートを取る古典的な方法の方が、 遥かに優れているようにしか私には思われないが…



2004/10/16 (土)


2004/10/17 (日)


2004/10/18 (月)


2004/10/19 (火)


2004/10/20 (水)



この日記は、GNSを使用して作成されています。