「Keisuke Hara - [Diary]」
2004/12版 その1


2004/12/01 (水)



2004/12/02 (木)


2004/12/03 (金)

ポカと反例 (math)

この一週間で、二回証明できたと信じたのだが、どちらも幻想だった。 一回目は定積分の計算で変数変換を間違えていて、 二回目は積の微分公式を間違えていた。 (それもこれも私が、 一二回生のときに微積分の演習を馬鹿にして、 サボっていたからに違いない)。 素晴しいことが証明できたと信じて、 安らかに眠ろうとしたときに、 まだどこが間違いとは具体的に分からないのに、 「あれ?」と心臓がキュッと縮むというか、 首の後ろのあたりがひやっとする感じは何回経験しても、 良いものではない。 多分、将棋やチェスの棋士が、 熟慮の一手を指した瞬間に、 自分でポカと気付く感じが近いんじゃないかなあ、 と想像します。違うかな。

しかし、先週も合わせて三度証明したと信じて、 「完全に一般に証明できた。しかも初等的方法だ」 と L 先生に宣言しては恥をかいた後、 今日から数日前のこと、今度は反例の構成ができた。 今度は逆に間違いであって欲しいと思い何度も見直したが、 今までの嘘の証明に輪をかけて易しいので、 間違いようがなかった。 結果、今日のセミナで報告し L 先生を納得させ、 「その望みは成立しない」が二箇月間の努力の結論だった。 とは言え、これで基礎部分は終わったので、 じゃあこれからこれを使って本来の目標を考えよう、 と言う段階に入り、L 先生はファンシィな夢を語っていた。 最初の学期の成果としては悪くなかろう、と信じたい。

そんなこんなで第一学期が今日で終了。 二学期目は来年一月の中旬から。やれやれ… この週末遊んでから(と言っても、 読書とプロブレムを解くことくらいしかないけど)、 冬休み中は翻訳の仕事と、 年始にある Winter School の講演の準備に費す予定。



2004/12/04 (土)

研究所近辺パブ情報 (日常, restaurants)

昨日の午後は一学期の最終日と言うことで、 「確率解析ギャング」が集まって、 院生有志がこの学期中の成果を発表するというイヴェントがあった。 そしてその後、パブで打ち上げ。 町の中心部にある"Yates" という巨大なパブに行った。 ここはあまり趣味の良い店ではないが、 とにかく安いし、大勢で行っても入れる。 日本で言えば、居酒屋チェーン店と言う感じだろうか、 実際、学生たちが日本と同じような目的で使っているようだ。

ついでに研究所の近所のパブ情報。 町の中心の方にはいくらでも有名なパブがあり、 ガイドブックにも載っているが、この近辺の情報は (少なくとも研究所を訪れる数学者には)有用かも知れない。

研究所からそれぞれ同じくらいの距離、 徒歩二、三分くらいのところに三軒のパブがあり、どれも悪くない。 道を渡ってウッドストック通りを北に行ったところにある "Royal Oak" はかなり広く、オープンな感じで、 おそらく春や夏などはラヴリィだろう。 確率解析セミナで講演してもらった人の接待にも使われている。 (ちなみに、ここは私がオックスフォードについたとき、 雨に降り込められて初めて入ったパブでもある。) 研究所を出てそのまま南に町の中心部の方に歩いてすぐ見つかる、 "Lamb and Flag" は静かで上品なパブで、大学人に人気がある。 と言うのも、ここは某コレジが所有しているパブらしく、 半公式くらいの催しにも使われるそうだ。 話の種にどれか一つと言うなら、ここが良いと思う。 もちろん、誰でもいつでも入れるし、比較的空いている。 このパブの道を挟んだ向いあたりにあるのが、 "Eagle and Child". 私が金曜の夕方に、ぐったりして一人でビールを飲んでいるパブである。 料理もまあまあだし、いかにも普通のパブらしく気取りがなくて、 個人的にはこの三軒の中では一番好きだ。 ただ、鰻の寝床式に、幅が狭くて奥に深い構造をしていて、 人によっては息苦しく感じるかも知れない。



2004/12/05 (日)


2004/12/06 (月)


2004/12/07 (火)


2004/12/08 (水)


2004/12/09 (木)

八方桂馬 (chess)

少し暇になったので、チェスの話など。 前に書いたプロブレムの本、 "Pick Up the Best Chess Problems"(Barnes) を時々開いていて、 全二百題の内、五十題ほどを解いた。 単なる二手問題の古典的名作集かと思っていたら、 問題の選択や並べ方、解答についている解説など、 非常に良く作られていて面白い。

例えば、グリムショウ(*1)の主題の問題がいくつか続いて、 一つ目は普通のグリムショウ、 次は二地点で別のグリムショウを行う二重グリムショウ、 次は本当の解とトライ(一つだけメイトにならない応手がある偽の解)で、 それぞれ異なるグリムショウがあるもの、 と言うように、アイデアが発展していく様子が描かれている。

しかも、古典的な問題ばかりかと思っていたら、 比較的新しい発想にも目が行き届いている。 例えば、相手のナイトの八通りの応手に対してそれぞれメイトがある、 という古典的な主題のところに、その八通りのメイトが、 三種類のメイト(A,B,C)の全ての数学的組合せに対応している、 という物凄い作品も載っていた。 つまり、ナイトの八つの動きに対して、 メイトABC,AB,BC,CA,A,B,C,φ(別のメイト), の八つが対応する。 勿論この問題も解けたが、 やけに重解の多い粗雑な問題だなあ…と思いつつ、解答の解説を読んで、 あまりのことに愕然とした。

二手問題なので誰でも(時間さえかければ)必ず解けるし、 色んなアイデアのショウケースの趣きもあり、 この本はお勧めの一冊だと思う。

*1: グリムショウの主題: ルークとビショップが互いの効き筋の交点に移動して、 効き筋を邪魔することで、それぞれメイトが成立する効果。



2004/12/10 (金)

イルミナティ (books)

ペンローズの巨大な本を買ってしまった。 どうやって持って帰ろう。 ちなみに、研究所にもペンローズの部屋が確保されているが(ただし相部屋)、 私たちヴィジタのちょうど隣の部屋で、ちょっと自慢。

それはさておき、Dan Brown の "Angels and Demons" を読んだ。 私は Brown の四作の中でこれが一番面白いと思う。 「ダ=ヴィンチ・コード」よりも過激で面白い。 空気、土、火、水の四元素になぞらえて、 ローマ法王候補が殺されていくところなど、 ちょっとミステリ好きの心もくすぐる。 「ダ=ヴィンチ・コード」の方は映画化されるらしいが、 こちらは絶対に無理だろう。 どう考えても映像化不可能なスケールだし、 CERN の承諾が得られても、 バチカン市国とローマ法王庁の協力が得られそうにない。 しかし、この主人公の図象学者ラングドンは活躍し過ぎじゃないだろうか… 「ダイ・ハード」の主人公の百倍は活躍していることは間違いない。




この日記は、GNSを使用して作成されています。