「Keisuke Hara - [Diary]」
2005/01版 その3


2005/01/21 (金)

ラスカーはどれくらい偉かったか (chess)

たまに話題になり、尋ねられることもしばしばだが、 答えることの出来なかった疑問が今日たまたま解決した。 19世紀終わり頃から20世紀初頭にかけて、 世界チェスチャンピオンだったエマヌエル・ラスカーは、 数学と哲学の博士号を持ち、数学者でもあったことは良く知られている。 問題は「どれくらいの数学者だったのか?」と言う質問である。

今期も金曜の午前がマンツーマン・セミナなので、 今日もL 先生の部屋に行くと、まだ会議中。 部屋の前で待つことにした。 部屋の前の廊下には、IBM 社が作成したらしい、 「数学歴史年表」が飾ってある。 人類の曙くらいから始まるので、かなり大ざっぱな年表で、 数学者なら誰でも知っているような超大物しか名前が出ていないと思ってよい。 例えば、日本人で項目が挙がっているのは「関孝和」ただ一人で、 その項目に弟子の建部について記述があるのと、 近代の数学者たちの顔写真の中に高木貞治がいる。 他には「能の成立」が年表の中にある。 たまにこの年表を眺めているときがあるのだが、 今日はふと、チェス盤を前に座っている、 数学者らしき人物の写真に目がとまった。 なんと、ラスカーである。 エンミ・ネーターの項目の追加説明で、 ネーターとクロネッカーの業績との関連が書かれていた。

もちろん、 世界チェスチャンピオンであったことが、 項目をたてた原因のかなりを占めていることは間違いないが (何せ、IBM 社の作成である)、 それにしても、数学者としても第一級か、 それ以上であったと思われる。 L 先生風に言うと、excellent と outstanding の間くらいだったのではないか。



2005/01/22 (土)


2005/01/23 (日)


2005/01/24 (月)


2005/01/25 (火)

オックスフォードの殺人 (books)

面白い本を見つけたので御報告。 "The Oxford Murders" (G. Martinez 著/ S.Soto 訳). 著者はアルゼンチン生まれ、ブエノス・アイレスに住む作家で、 数理科学の博士号を持つ。 小説、短篇集などの著書があり、この作品で Planeta 賞授賞。 イギリスで英語訳が出版されるのは、今年出たこの本が初めて。

主人公はブエノス・アイレス大学で数学を学び、 代数的トポロジで卒業論文を書いたあと奨学金を得て、 オックスフォード大の数学研究所に一年間滞在することになった大学院生。 指導教授の女性数学者の勧めで、 彼女のかつての恩師の未亡人宅に下宿することになる。 家主のイーグルトン夫人は車椅子生活の老女で、 かつてクロスワードパズルの国内大会に参加、入賞した結果、 チューリング指揮下の暗号解読チームの一員として大戦中活躍、 そこで数学者の夫に出会ったという経歴の持主。 交通事故で子供を亡くし、現在は孫娘のベスと二人だけで住んでいる。 ベスは地元のオーケストラのチェロ奏者。 しかし、主人公がようやくオックスフォードの生活に慣れ始めた頃、 家主のイーグルトン夫人が自宅で殺される。 発見者は主人公自身と、ゲーデルの業績の拡張で名高い 哲学者にして数学者、アーサー・セルドム。 セルドムはその日、「列の第一項」という謎の言葉と、 正確な円、そして殺人現場と時刻が書かれた、 匿名の手紙を受け取ったのだと言う。 そしてセルドムの予想通り、第二の殺人が起こる。 今回、謎の手紙は数学研究所の玄関に貼り出されていた。 「列の第二項」は、二つの括弧を合わせた、魚のような記号。 第二の犠牲者は、ラドクリフ病院の寝たきりの老人だったが、 その隣りのベッドの意識不明の患者はセルドムの知人で、 一生を IQ テストの記号列作りと、 ヴィトゲンシュタインの有限規則パラドクスの克服に捧げた男だった。 主人公とセルドムは次の記号を当て、連続殺人を阻止できるのか。 そして犯人の動機とは…

私を良く知る人の中には、これはプラクティカルジョークで、 私の捏造に違いない、と思っている方がいらっしゃるかも知れませんが、 本当です(笑)。 我ながら、知らない内に自分で書いたのではないか、 と思うような小説でした。



2005/01/26 (水)


2005/01/27 (木)


2005/01/28 (金)

ロードマップ (日常, math)

金曜午前はマンツーマン・セミナ。 一応、先学期で準備完了ということで、 今期から本来の大きな問題に取り組むことになった。 今日はその作戦会議で、その結果、 L 先生は「これで完全なプログラムができたな」と御機嫌なので、 「…そうですネ、リョードマップが得られたとは言えセウ」 と答えると、 「リョード?ああ、これから道路を建設するところだけどね(笑)」 と言っていた。

リーマン予想を解決する十段階計画として、 「1、2、3、…と9まで数えて、10『リーマン予想を解く』」 という数学ジョークがあるが、 それよりは、遥かに具体性のある計画ではあった。

ところで、前期はロジシャンと二人でヴィジタ部屋を使っていたのだが、 年末に新たにヴィジタが一人現れ、現在は三人で使っている。 フランス人らしき新人は専門が数理物理(特に相対論)で、 これで三人のヴィジタの専門がロジック、数理物理、確率論となって、 揃いも揃ってマトモな数学じゃない、 と言う人もいるのではないだろうか(笑)



2005/01/29 (土)


2005/01/30 (日)


2005/01/31 (月)



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