「Keisuke Hara - [Diary]」
2005/05版 その3


2005/05/21 (土)


2005/05/22 (日)

ポストイット (books, 日常)

日曜日は仕事日。 オフィスで副産物定理の TeX 書き。 いつか使うかどうかは分からないが、 「書いておけば忘れない」(by L 先生)。 議論のステップのいくつかは引用で済ませたので、 せいぜい 4 ページくらいで証明が終わり、 タイピングしている内に vi の涅槃の境地に入れるほどではなかった。 午後一杯はかかるかと思っていたら、正味二時間もかからなかった。

購入本。 "Islam (A Very Short Introduction)" (M. Ruthven, Very Short Introductions, Oxford Univ. Press).

読書のメモの取り方 Tips. 本を読み始めるとき、 ポストイットを数枚まとめて束のままはがし、表紙の裏に貼る。 使い切ったら、または使い切りそうになったら、同じことをする。 本と一緒にポストイットやカードの類を持ち歩かなくてよくて便利。



2005/05/23 (月)

ブランダー (chess)

戎棋夷説 (05/05/23)で、トパロフのソフィア優勝を知る。 しかし、このクラムニクのブランダーは目の眩むようなポカだな… うーん、凄く親近感が湧く ;-)

ブランダーは人間しか指さないので、 非常に人間らしい手で、ほとんど常に(私には)興味深い。 ところで、イギリスに来てから、 娯楽に乏しいのと、web ベースで気楽そうなのとで、 初めて ICCF の国際戦に参加してみた。 もう、大方は情勢が判明している。 黒番は全敗しそうだし、白番も相手が放棄してしまったものを除けば、 一、二ゲームしか勝てそうにない。 ほとんど身を入れて対戦していないというモチベーションの問題が大きいが、 それにしてもどうしてこうポカが多いのだろうか。 通信戦とは思えないブランダーが炸裂する。 一手につき大体一週間は考えられるのに、 仕事の手が空いたときにちょっと web をチェックして、 五分くらいで手を決めたりしているのが主な原因だろうが、 それにしても酷い。 そして、どれも私には非常に興味深いポカではある。



2005/05/24 (火)

ブレイクスルー (math)

絶対に示せそうにないし、むしろ一般には成立しない、 とさえ思っていた事実があっさり証明された。 しかし、自分で解いたわけではなく、 既に解かれていたことを発見したので、自慢にはならない。 そして、その簡単そうな積分評価が思いがけなく、 「深い」不等式だったことを知り、 無駄な努力をしないですんだことを偶然の神に感謝した。 私なら、あと十年かかってもこの不等式は示せなかっただろう。 人生の落し穴を一つ回避…

たまに偉い数学者が(そして、たまには偉くない数学者も)、 「私は人の論文は読まない。自分で考えた方が早い」などと恰好良いことを言うものだが、 (私自身もその傾向が強いが)、極めてデンジャラスな方針だ。 この一件で深く、反省した。



2005/05/25 (水)

問題の楽園 (chess, 日常)

ブレイクスルーと言っても、 このくらいのブレイクが後、三回くらいないと、 本来の目標は解決しないなあ…

今朝、キッチンで立ったまま本を読みつつ朝食を取っていると、 家主が珍しく朝早く起きてきて立ち話。 私が手にしている本を見て、 「『問題の楽園』だなんて、おかしな人生観を持った人間もいるものね、 あなたは本当にリマーカブルな人ですよ、オホホホホホホー」 と笑いつつ去って行った。



2005/05/26 (木)

The end of oil (books)

"The end of oil" (Paul Roberts) 読了。 このしばらくの就眠儀式本の一つで、 毎日、ちょっとにしておこうと思うのに、 ついつい小一時間読みふけってしまい、 朝が起きられなくなったりしたものだ。 石油経済の近未来を分析したかなり大部の本ではあるが、 大変に明解かつリーダブル。 タイトルから予想するような、 もうすぐ石油がなくなって大変だよ、 などと言った良くある危機物でも、 邪悪なテキサス・オイルメンが諸悪の根源、 と言うような陰謀物でもない。 政治や経済のドキュメンタリが好きで、 ちょっと腰を据えて読書してみたい、 と言う人にお勧め。下手な推理小説を読むより、 サスペンスフルだと思いますし、 国際ニュースを見る視点が一つ増えます。

通常、石油の問題は、それがいつ枯渇するのか、 と言う問題で語られがちだが、 著者はこの問いをそれほど重視しない。 と言うのも、近々なくなることは確実だし、 正確にいつかは誰にも分からない(*1)。 エネルギーを巡る問題はもっと複雑で、 もっと複合的で、しかも、もっと間近に迫った、 よりシリアスな問題が色々あるのだ、と。

*1: とは言え、2030年までに全生産がピークに達し、 その後、急激に枯渇に向かうシナリオがコンセンサスらしい。 そして、非OPEC産の石油に限れば、 2015年から遅くとも2020年までにはピークをつけるそうだ。



2005/05/27 (金)

プログラミングと数学 (日常, math)

昨日の夕方に L 先生がオフィスに現れて、 明日の午前は忙しそうだから今からゼミをしようと言う。 先生のオフィスに移動して、二時間ばかり数学。 しかもその後、C++ の「テンプレート」がいかに革新的かを、 最近書いたソースコードを例に一時間半ほどレクチャーしていただき、 充実した木曜の夜を送る。 そんなわけで今日金曜は休日。 今朝の天気予報で初めて "hot" と言う表現が使われ、 今日は夏のような陽気。場所によっては、 20度後半に達するところもあるようだ。

おそらく日本の確率論関係者にもあまり知られていないと思うが、 L 先生は意外なことにハッカーで、 趣味と実益を兼ねて熱烈にプログラミングをする。 実益とはもちろん数学研究。 バリバリの実解析屋の姿からはあまり想像できない。 確かに数値解析や応用数学的な業績もあるとは言え、 そういうところに使っていると言うより、 むしろプログラミングをするということ自体が、 純粋数学の問題を「考えるのに」役立っているようだ。 普通に想像するような、予想を数値計算でサポートするとか、 反例を探すとか言うことではない。 独特のセンスの数学をする人だが、 このあたりにその謎を解く鍵があると思われる。



2005/05/28 (土)

3 で割る (日常, math)

私は午後のお茶の時間を喫茶店で過すのをほとんど日課にしているので、 おおよそ半年をかけてゆっくりと、そのイタリア系の店員たちと仲良くなってきた。 最近、あまり話したことのなかった店員に、 「英語を勉強しているのか」と聞かれ、 いや数学を勉強しているのだ、と答えると、 「じゃあ、何か数学の問題を出してみろ」と言う。 「オーケー。ジャ、1000000000000001を3で割るとアマリュはいくら?」 「アマリュ?ああ、余りね。よし待ってろ」 と言って、私がカプチーノを飲んでいる間考えている。 しばらくして私のテーブルにやって来て、分からないと言うのでレクチャーする。

100…0001は99…999プラス2に等しいだリョ? デ、アキりゃかニ、999…のところは3で割り切れるから、 余りは2になるネ、と持ち歩いているカードに書いて説明すると、 「ちょっと待て。どうしてそれが9999…プラス2に等しいのか分からん」 と言う。 ジャ、9足す2を私にクダサイ。 「11だろ」。タダシイ。デハ、99足ス2は? 「101」。それはタダシイ答えね。では、999足す2は? 「1001」。タダシイネ。デハ、9999足す2は? 「10001。ああ!分かった!お前は賢いなあ!! そうか、余りは絶対に2じゃなくちゃならん」 と大変に感心するので、こう答える。 私はカシコクないのね、カシコイのは数学ね、 そしてあなた、今カシコイね。



2005/05/29 (日)


2005/05/30 (月)

メッセージ (日常, thoughts)

第六週スタート。早いような遅いような。

イギリスでは結構良くテレビを観ている。 番組そのものがあまり良く分からないものの、 CM は良く分かる。広告は伝わってナンボなので、 ニュースよりもさらに聞き取り易いようだ。 大体は日本で見るものとさして変わらない。 IBM の CM は日本で見るのと全く同じだし、 日本の CM もやっている(某自動車会社の「ユメ、ノォ、チカーラァ」)。 しかし、メッセージ CM は印象的なものが多い。

例えば、自動車運転の制限速度厳守を訴える CM。 誰もいない道の傍らに、車にはねられたらしき女の子が倒れている (S. キングの映画が始まりそうで、もういきなり恐い)。 アップになったところで、おかしな方向に折れている腕や足が、 「リング」の貞子ばりに、がくりがくっ、と言う感じで元通りになる。 耳から流れていた血が耳の中に戻る。 何かに引っぱられるように、ずるずるずるずると身体が道の真ん中まで移動すると、 完全に元の身体に戻った女の子の上半身が、ひょいと起き上がる。 無音のまま、キャプション。「制限速度には理由があります。時速○○マイル以下なら、 被害者の八割の命が助かります」。 初めて見ると、うなされそうな CM である。

例えば、こんな CM もある。また子供である。 静かに音楽が流れる中、二三歳くらいの子供たちが、 それぞれに絵を描いたり、遊んだりしているシーンが映る。 子供たちの才能を育てましょう、とか言う、マイクロソフトあたりの CM かなあ、 洒落ているなあ、と思っていると、おかしなことに気付く。 子供たちが口や鼻から吐く息が微かに白いのだ。 じっくりとこのシーンを見せて、 視聴者がそのことに気付いたあたりで、キャプション。 あなたが煙草を吸っているとき、子供たちも吸っています。 そんな子供の○パーセントが病に苦しんでいます。 「あなたが吸うなら、私も吸っている」(煙を吐く子供の顔のアップ)。 すごく恐い。 この CM に限らず、嫌煙ものは強烈だ。 去年流れていたのは、喫煙者の血管から白い脂肪が…、 いや、もう止めておきましょう。



2005/05/31 (火)

ハッカーの鑑 (tech&hacks)

数学はこれ以上、進展するとは思えないなあ… 問題が難し過ぎる。 と言う暗い気持ちでいる今日この頃、 久しぶりに 真のハッカー魂 を見て心が洗われた (エルゴキーボードの、次の画像を御覧下さい)。 うっかり感嘆してしまったが、本当は失笑すべき?




この日記は、GNSを使用して作成されています。