「Keisuke Hara - [Diary]」
2005/10版 その3


2005/10/21 (金)


2005/10/22 (土)

アスク・ジーヴズ (日常, books)

博多出張から帰ってきた。 本来一番聞きたかった講演は、 私のスケジュールの都合で聞くことはできなかったが、 本人から直接情報を得ることができたし、 それ以外にも面白い講演が多くて楽しかった。 ホテルで仕事も一つ片付けたし、数学もちょっと進んだかも。 あとは、明日の日曜を書類書きにあてれば、 一応仕事には追いつけている感じ。 P.G. ウッドハウス選集I(岩永正勝・小山太一編訳、文芸春秋社) で天才執事ジーヴズとお間抜け主人バーティ君の活躍を読みつつ、 新幹線で帰る。


バルチュスのコック (foods, restaurants)

西日本の某所にあるイタリアン・レストランへ。 シェフが晩年のバルチュスの屋敷で料理番をしていた、 という話なので、どんなものを作るのか興味があって。 一つのコースを食べただけで判断はできないが、 「良い意味で平凡」と言う気がした。 意外性はないが端正なメニュー、 美味し過ぎない適度な美味しさ、 手はこんでいないが丁寧な仕上がり、そんな安心感。 この落ち着きは、 個人邸のコックを勤めていた経歴で理由付けしたくはなる。 ちなみに値段も、 地方都市である上に少し辺鄙なところにあるせいか、 かなり安い。 近所にあれば、時々行きたいと思うだろう。



2005/10/23 (日)

研究費 (日常, thoughts)

終日、書類書き。 私は毎年、科研費の申請を「するべきではない」かも知れない、 と悩む。ちなみに、面倒だからではない。 実際、書類を書くことは私にとって、それほど面倒なことではない。 コストパフォーマンスから言えば、異常に効率が良いとさえ言える。 だから主な理由は、あくまで思想的なものである。 しかし、現在世界中で支配的になっているこの数学/科学研究の研究費配布システムにチャレンジするほどの、 思想的強度を今のところ持ちあわせていないので、 あれこれを秤にかけたとするとプラスが多いのかも知れない、 と言う程度の判断で今は申請している。 勿論、書く以上は全力投球で申請書を作っているけれど。



2005/10/24 (月)

日常の業 (日常)

締切りの今日は衣笠出勤なので、科研費書類をメイルで提出。 この一年、新しい問題を考えているので、 2 ページもある「直接関係する業績リスト」の項目が完全に空。 これは厳しそうだ。

午後は衣笠で、文系講義二つ。 「数理の世界」は 0, 1, -1 の間の「大小関係」を証明した。 「情報の数理」は最適(Optimal)コードについて。 両方とも真面目で熱心な学生が多く、 講義も数理科学科でやっているものよりも静かに聞いてくれているくらい。 まあ、今頃初めて講義に出てきて、レポート課題はもう出ましたか、 なんて爽やかな笑顔で尋くサボリ学生もいるけど、 それもまたのんびりしていて良かろう。

帰りにスーパーで買物などして、夕方帰宅。 出張の始末で、洗濯をしたり、掃除をしたり、料理をしたり。 今週の料理の手間を減らすために、 近所のベンガルカレー屋で買ってきたスパイスセットで、 5 食分のチキンカレーを作った。 店で出しているものはそうなっていないのだが、 「メーヤウ」風に(?) 具は鷄手羽、じゃが芋、茹で卵の三つという組合せにしてみた。 御飯は本来ならタイ米にすべきところを、 面倒なので硬めに炊いた日本米。ワイン、漬物などと食す。 上出来。食後にヨーグルトとコーヒー。



2005/10/25 (火)

秋鰹 (日常, books, chess)

出勤。午後は 12 時半から卒研ゼミ。 ドゥーブの Lp 不等式、積型マルチンゲールの角谷の定理など。 その後は時間ぎりぎりに定期健康診断へ。 血を抜かれて、エネルギーダウン。 締切り間際に行けば空いているだろう、 と思った人は結構いたらしく、大入り満員で待たされる。 周りの年配の方の中には、 「そろそろ会議が始まる。 その後も会議で、その後も会議で、今日はもう無理だ。 明日は大阪に出張で、明後日は講義と講義と会議で、 もうこの健診の続きを受ける時間がない。 なんとか、残りは省略できないのか」 などと医者たちに無理を言い始める人までいる始末。

健康診断が終わったらもう夕方。 生協に注文していた本を取りに行き、 事務室で amazon に注文していた本を受け取り、帰宅。 近所の定食屋にて、鰹のたたきでエネルギー補給。 しかも、家に帰ったらまたお腹が減ってきて、 自作のチキンカレー。きっと血を抜かれたせいだろう。

購入本。 P.G. ウッドハウスの「比類なきジーヴズ」「よしきた、ジーヴズ」 「それゆけ、ジーヴズ」(以上、国書刊行会、森村たまき訳)。 同じくウッドハウスの原書 "Life with Jeeves: The inimitable Jeeves, Very Good, Jeeves!, and Right Ho, Jeeves" (Penguin), とレチの古典 "Masters of the Chess Board" (R. Reti, a Hardinge Simpole chess classic).



2005/10/26 (水)

ハイパーモダン (日常)

rice wine and a chess book 今日もいつものように京都駅の電車は遅れている。 そして、遅れている電車がホームに入ってくるので、 特に出勤自体は遅れない。 今日の理由は、小動物が線路に入ったことと、 急病人が出たことらしい。 午前は「プログラミング演習」。 一人ずつ席を回って講評など。時間が足りなくて、最後まで周り切れなかった。 昼食は生協弁当。来年の卒研の学生がやってきて、相談など。 続いて、「情報の数理」。ハフマン・コードなど。 続いて、教室会議。 帰宅したら、大体八時。

写真は先日、広島土産にもらった日本酒。 本はレチ。 真っ白のペイパーカヴァーに、黒だけの簡単な絵。 いかにもハイパーモダンで格好良い。



2005/10/27 (木)

「〈数学〉を読む」 (日常, books)

午前の仕事は、科研費申請の情報ファイル訂正から。 昨日の夕方、会議から研究室に帰ってきたとたん、 どこかから見張っていたかのように電話がなり、事務から訂正箇所を指示いただいたので。 次は、専門書購入の立て替え払いのため郵便局へ。 昼食は自家製カレー・パスタ。三日煮込んだカレーから手羽を取り出して身をほぐし、 アーリオオーリオの要領で作ったパスタに、 ルーと一緒にからめて作ってみた。 午後は、明日見学を予定しているシンポジウム会場に連絡をいれたり、仕事の続き。 夕方からは解析セミナー。 ドイツから滞在中の W さんの講演を聞く。 その後、W さんの歓迎会もあるようだったが、 帰国以来まだどうも本調子でないような気がしているので、 御遠慮させていただく。 やっぱり一年も全く違う暮らし方をしていると、 なかなか復帰できない。 夕食はまだまだカレーライス。ヨーグルトと珈琲。 明日の最後はドライカレーにしてみようか。

私が十人の著者の一人を務めた、 「ブックガイド〈数学〉を読む」(岩波書店編集部編、[新装]岩波科学ライブラリー) が 11 月 2 日に刊行予定との報せ。 十人の選者の中で唯一の無名人、 原啓介のお勧め本 5 冊のブックガイドを心して待つべし!



2005/10/28 (金)

ブンヤ気分 (日常)

ちょっと寝坊してしまった。九時過ぎ起き。 午前中は講義の準備。 昼食、予定通りにドライカレー、ヨーグルト、珈琲。 午後は、モールスキン手帳片手にブンヤ気分を盛り上げて、 シンポジウム予定会場二箇所の検分。 「フムフム、なるほど?」などと言いつつ、 インタビューのメモを取る。 続いて、京大関西セミナ。S 川先生の講演。 バスで帰宅して、夕食は家の近所のバーにて。 鯛のカルパッチョ、鴨のコンフィ、チーズの盛り合わせ、 グラスワイン少々。



2005/10/29 (土)

OTB (日常, chess)

午前中は定期バックアップ作業、一週間の反省。 昼食はアラビアータとワイン。 食後に、執事と今月の精算の端数をかけたチェス。 30 分プラス一手10秒、白番、ルイ・ロペス。 お互い対面チェスが一年以上ぶりだったので、 時間の使い方を忘れている上に、 執事所有の「不思議(鏡)の国のアリス」デザインの駒で対局したため、 盤面把握に時間がかかり、ぱっとしない対局。 のんびり指していたら、私の時間切れ負け。 新しい状況にすぐ対処できないのは年のせいかねえ…

ところで、少し前に、友人と話したことには、 最近みるみる頭が悪くなっているのには困ったものだ、と。 しかし放置していてはますます酷くなる。 そこで、何か瞬発的な集中力が必要な刺激が良いのではないか。 一説によれば、加齢につれ記憶力が衰えると言うのは正しくなくて、 実は衰えているのは集中力なのである。 そもそも記憶する段階が漠然としているため、 当然ながら思い出せない。 子供時代の記憶はいつまでも残っているのに、 最近のものごとが思い出せないのはそのせいだ、と。 ふーむ、集中力か。 それなら対面のチェスがよかろう。 そして、自分の子供であってもおかしくないような歳頃の相手に、 ころころと負かされて、悔しがりながら盤面に集中するのだ。 これはいい運動になりそうではないか。 そういうわけで、対面のチェスの大会に初めて出てみようか、 と思っている今日この頃。



2005/10/30 (日)

空振り (日常, books, math)

ブックガイド<数学>を読む 午前中はプロブレムを考えたり。 今回は帰国前後で考える時間があまり取れず、 ほとんど解けなかったのが残念だ。 長手数のものとか、レトロとか、もうちょっとで解けそうなんだけどなあ。 昼食はオクラとしめじの味噌汁、納豆、冷や御飯。 午後は少し数学を考える。ひょっとしてこの手は見逃されているのでは、 と昼食の時に思いついたのだが、さすがに猿知恵だった。空振り。 その後、四条烏丸へ。編集部の方が出張のついでに、 もうすぐ出る本を届けてくれると言うので。 おお、なんと何故にか十人の書き手の中で私が先鋒だぞ。 夕食は、作り置きのマリナーラソースでまたアラビアータ。 ソースの類を作ると毎日同じものを食べてしまうのが欠点。

この岩波科学ライブラリー113「ブックガイド〈数学〉を読む」 (岩波書店編集部編、岩波書店、ISBN4-00-007453-9)は、 11月2日刊行らしいです。 amazon などでは既に予約販売されている模様。 私はともかく、他の九人のブックガイドは必読なり!



2005/10/31 (月)

不調なり (日常)

昨日、執事とチェスをしたら、また時間切れで負けた。 時間の使い方がおかしいのが主原因であるとは言え、 単純なブランダーを連発し、ほとんどチェスになっていない。 プロブレムも解けなくなっているし、 数学も進展がゼロと言う以前に、集中力があまり続かないし、 ひょっとしてイギリスに縁の深い牛の病気? そう言えば、数学者のリトルウッドが研究と休暇についてのエッセイの中で、 一年間を通じて見ると知的能力には好不調の波があり、 毎日トランプの一人ゲームをしてスコアをつけているので、 それがはっきり分かる、と書いていた(*1)。 私の場合、ただの不調のわりには重症のような気もするが、 やはり留学の一年、特に後半全く休みを取れず、 そのまま帰国直後から新学期に入ったからじゃないだろうか、 つまり私に必要なのは二週間の休暇だ、 と日記には書いておこう。

朝は講義の予習などをして衣笠へ。 連続して講義「数理の世界」、「情報の数理」。 「数理」は「数」について反射律と推移律が成り立つことの証明、 「情報」はハフマンコードについてなど。

*1: と言うことは、リトルウッドは毎日欠かさず、 ペイシェンスだかソリテアだかをやっていたわけで、 昔の数学者は暇だったんだなあ。




この日記は、GNSを使用して作成されています。