![]() ●●●● わたしたちがいま、洋(装)本に対して和(装)本として思い浮かべる本のつくりは、四つ穴をあけて糸綴じしてあるものではないでしょうか。しかし和装本というのは、巻子本や折本、旋風葉、粘葉装、そして、糸で綴じる線装本(胡蝶装、大和綴じ、袋綴じなど)を含み(早稲田大学図書館所蔵古文書参照)、明治以降にやってきた洋装本以外のすべての総称としてつけられたものです(正文堂による古本用語集、IRODORI-和紙の華、洸巻堂など参照)。また、この製本の仕方(製紙法も)は、中国、韓国、日本などで基本は共通なのに、各国さまざまな呼び名があるようです(国会図書館、「ふみくら」、日中韓古医籍の特徴と関連、印刷用語辞典(和英)など参照)。 ここではまず、和装本の代表である四つ目綴じをやってみよう、からはじめます。(最終更新=2004.5.15) | ||
手順 | 作業内容 | 道具/参照サイト※ |
01 なかみを用意する | ||
01_01![]() 01_02 ![]() |
二つ折りして袋綴じしたいのか、折らずにペラ紙を束ねたいのか考えて、本文用紙を用意しましょう。 01_01は、A5サイズのうすい紙に片面印刷し、袋綴じ用にまん中から折ったところ。洋紙をつかう場合は、紙の目(紙の目をしらべる方法)をタテにとりましょう。ヘラを使って折り山をおさえると、しっかりきれいに仕上がります。ページの順番をまちがえないように、重ねます。 和綴じ(糸で綴じる和本の製本法をさして、ここでは以降こう呼ぶことにします)は、厚い紙でもビニールでも、穴さえあけられれば鉄でも、かがることができます。しかし、かがるときに糸をしっかりひいて、その糸が柔らかい紙に弱冠くいこむことでスパッと粋に仕上がるのが和綴じの良さ。それを考えると、和綴じにむいている紙質のイメージがつかめるでしょう。 本文にあわせて、本文用紙の前後につける紙(01_02図で緑の部分)も用意します。これは、つけなくてもOK、また、判型と同寸で裁ってペラ一枚ずつつけてもOK。ここでは、判型(本の大きさ)の横二倍の大きさで紙を用意(洋紙の場合は紙の目に注意)し、二つに折ってつける場合を例示します。01_02(左:袋綴じ、右:ペラ紙を束ねる場合)のように、折山が本の背側(ノド)にくるようにして、本文に重ね合わせます。この図は上(天)から見たところ。 |
各自用意 ・カッター、カッターマット、定規(ステンレス、30cm)、ヘラ(裁縫用のもの) 参照サイト ・和本を造る(1) ・京都和本工房・文政堂〜「折り上げの面が最終仕上げなので、折りは精度が必要な作業」 ・新宿区産業ネットの手づくり製本 ・和とじ館 ・小次郎さんの四つ目綴じ ・本文紙にアシをつける |
02 仮綴じの用意 | ||
02_01 ![]() 02_02 ![]() |
表紙を貼って糸綴じをするまえに、細い糸で仮綴じをします。こうしておけば、本番のかがりのときに、なかみがずれずにきれいにできます。 まず01で用意したなかみ全体を、小口側でよくつきそろえて、02_01のようにクリップではさみます。クリップの跡がつかないように、厚紙をかませるとなおよい。 02_02 を参考にして、穴の位地(本の判型によって微調整してください)を目打ちでしるしてから、02_03 のように木づちや金づちで目打ちを叩き、穴をあけます。垂直に、まっすぐ。左の図の赤い丸が穴ですが、めだつように大きく描いただけですので念のため。 02_03 ![]() |
まとめて用意 厚紙 各自用意 目打ち、木づち(金づちでも可)、クリップ(2〜3個) 参照サイト ・和本を造る(2) ↑で使われているイラストは武井武雄によるもの(『製本』(昭和16年アオイ書房)。トランスアートから復刻版が出ているのでぜひ参考に。 |
03 仮綴じする | ||
03_01![]() |
細くて強い糸(絹や木綿など。長さは200ミリくらい)を針にとおして、仮綴じします。針の運びは、03_01をみてください。糸の最初と最後は、3のように綴じ糸をはさんで4のように結び、短く切ります。結び目の上から木づちで叩いておさえます。 全体を見て、本の背側に凸凹があれば、03_02のように定規をあててカッターで切りそろえます。全体をプレスして、おちつかせるとなおよい。 03_02 ![]() |
まとめて用意 仮綴じ用の糸、ハサミ 各自用意 針(刺繍用のものなど)1本 |
04 角布(かどぎれ)を貼る | ||
04_01![]() 04_02 ![]() |
本の角がめくれたり傷むのを防ぐために、角に補強紙(布)を貼ります。材質は、丈夫な紙ならなんでもいいでしょう。布の場合は、薄い和紙で裏打ちしてつかいます。 04_01のような大きさ(本の厚み(束)+左右に5〜7ミリ×35ミリ)で、二枚用意します。15ミリとある部分を本の天と地側に貼り、20ミリとある部分を背に貼ります。本の判型が小さい場合は、この割合(15:20=3:4)を保ちながら、長さを調整しましょう。 裏面にノリをいれ、04_02のように本の背の角にあわせ、まず天側をさきに貼り、そのうえに、背側にくる角布をかぶせるようにして貼ります。 04_01の図で示した5〜7ミリの部分は、最終的には表紙で隠れてみえなくなります。 ここがだぶつくと、なんともマヌケな仕上がりになってしまうので丁寧に。親指と中指で貼る紙をよくひきながら本文をはさみ、人さし指でしっかりおさえて、ピシッと角を出して仕上げましょう。したの写真を参考にしてください。これを、本の背の天側(上)と地側(下)、両方に貼ります。 |
まとめて用意 ノリ 各自用意 角布用の紙(布の場合は裏打ちすること) 参照サイト ・角布のいろいろ〜ブックハウス和本工房 |
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05 表紙の紙を用意する | ||
05_01![]() 05_02 ![]() |
表紙をつくります。判型と同じ大きさでつくってそのまま綴じる方法もありますが、ここでは、天地左右の四方を折って(小口側のみの場合もあり)つける方法をやってみましょう。和綴じの場合は、表紙が硬いと、ひらいたときに糸かがりしたところで折れ曲がってしまうので、表紙用の紙は、和紙かやわらかい洋紙(紙の目に注意)を用意します。布を用いる場合は、紙で裏打ちしてから使います。素材は綿や絹がいいでしょう。 タイトルを表紙の紙にプリントして使うなら、このあとに出てくる「外題貼り」の工程は必要ありません。 05_01のように、判型より四方10ミリずつ大きく表紙の紙を裁ちます。図では、赤線で囲ったところがこの本の判型。これを、仕上がりが本文の大きさとぴったりになるように、四方を内側に折ります。まず表紙の紙の四方を斜めに切り落として、天、地、小口、さいごにノド側を折ります。へらをつかって、丁寧に。角のところは、二方向から紙が折り込まれるので厚くなります。木づちなどで叩いて、ふくらみをおさえておきましょう。 05_02のように、表紙で04をはさんで重ねてみましょう。全体の大きさがぴったり合っていますか。 なかみのノドと小口部分に一筋ノリをいれ、表紙を貼りつけます。全体を貼りあわせても、かまいません。 |
まとめて用意 ノリ 各自用意 表紙用の紙 |
06 糸綴じの準備をする | ||
06_01![]() |
いよいよ糸綴じにはいります。表紙を重ねた状態で、まとめて穴をあけてかがっていきます。 まず穴。あけかたは仮綴じのときと同じ。06_01のように穴の位地を決め(判型が小さい場合は20ミリのところを15ミリにするなどして調整のこと)たら、目打ちでビシッとまっすぐ垂直にあけていきます。 03の図と見比べてください。仮綴じの穴と糸綴じの穴が重ならず、また仮綴じしたところが、糸綴じによってすっかり見えなくなることがわかると思います。 判型が大きい場合は、四つ目綴じの応用で六つ目綴じしたほうがしっかりするでしょう。06_01の図で三分割したところを五分割し、かがりかたは四つ目綴じと同じ要領でできます。 |
参照サイト ・和紙の華・和紙雑話>四つ目綴の綴じ方 ・和な暮し/和綴じ本 |
07 糸綴じする | ||
07_01![]() |
針に糸をとおして、07_01のようにしてかがってていきます。糸の材質は木綿や絹、麻など、長さは「本文天地×4+α」で用意。太さや色は、表紙や角布とのバランスを考えて、楽しく選びましょう。写真は刺繍用の絹糸。細めのものでしっかり綴じたほうがピシッとしていいように思います。 はじめるまえに、確認。07_02のように、背側からのぞく角布のラインと、本番の糸綴じの両端の穴がぴったり合っていると、気持ちがいいですね。 07_02 ![]() まず、1図のように、本の裏側から針をとおします。30ミリくらい残したかがりはじめの糸を、2のようにして本文のなかに入れ込みます。07_03はその作業をしているところ。針先で、かがり始めの糸をすぅっと抜きます。糸の先っぽにほんの少しノリをつけ、背と平行になるように本文のなか入れて隠し、おさえます。 07_03 ![]() あとは図をみながら針をすすめます。糸の始末は12のように、垂直に交わる糸をからげて結び、最後に針を通した穴に、逆から針を入れます。本を裏返して針をよくひき、ぎりぎりのところで糸を切ります。結び目が、本文のなかに入り込んで、おもてからは見えなくなります。はい、できました。 ![]() |
各自用意 綴じ糸(本文天地×4+αの長さで一本) 参考書籍 ・『自分で仕立てる本』文化出版局1976〜装幀・仲條正義、写真・繰上和美他。 ・『はじめての和装本』〜身の回りの道具でつくれる和装本の紹介。 ・『手づくり製本術』 |
08 外題貼り | ||
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タイトルを書いた紙を表紙に貼ります。大きさや材質、また、どのようにタイトルを描くか、貼る位地などは、特にきまりはありません。 目安としては、縦の長さが、本の大きさの横の長さ、横幅が35ミリくらいの大きさで、本の端から4ミリずつ内側にはいったところに貼ります。少し水でのばしたノリを、ハケをつかってしっかり均等にいれましょう。 |
各自用意 外題用の紙 |
09 完成! |