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ディープスペースナイン エピソードガイド
第158話「戦争の影−AR558攻防戦−」
The Siege of AR-558

 

イントロダクション
|  ロム※1がリズムをつけて歌い始めた。※2 Wind in her hair  音楽に合わせて手を動かし、心から楽しんでいる。 She's broke but it's oke Hates California It's cold and it's damp That's why the lady That's why the lady That's why the lady Is a scamp.  歌が終わり、聞いていたヴィック・フォンテーン※3は手を叩いた。  ステージを降りるロム。「どうでした?」  ヴィック:「悪くない。だが、レディ・イズ・ア・『トランプ』だ。スキャンプじゃない。」  「トランプか。で、出られます? 舞台。」  「悪いが無理だな。」  「でも、オープニングの出し物探してるんでしょ? 僕、歌好きなんだ。」  「わかるがねえ。一つのショーにシンガー二人はいらない。共倒れになる。客を温めてくれるコメディアンを探してるんだ。」  「えー、コメディアン…」  「客を笑わせてリラックスさせるんだ。」  「できるよ、僕は笑い者だって兄貴がいつも言ってるもん。」  「ああ、かもしれないが、これはホロスイート・プログラムでねえ。」  「だから?」  「君はホログラムじゃないだろ?」  「…人生は不公平だ。」  ベシアがやってくる。「ヴィック、ちょっといい。」  愚痴を言うロム。「ダメだあ、使ってもらえない。」 ホロスイートを出ていった。  ベシア:「ロム、どうした。」  ヴィック:「ショービジネスは厳しいからな。何か用かな、相棒。」  「僕の好きな曲のレコーディング、できてるかな。」  アイソリニアロッドを渡すヴィック。「オールディーズだろう?」  ベシア:「ああ、よかった。悪かったね。」  「いいんだよ、400年前の曲ばかりだ。前線の兵士が聞きたがるかなあ。」  「曲は古くても、君が歌うと新鮮だから。」  「上手いねえ、私まで物資補給についていきたくなるよ。ショーだってできなくはないぞ。2、3曲歌ってジョークを言って。慰問協会に登録してくれよ。」  笑うベシア。「向こうにホロスイートはないんじゃないかな?」  ヴィック:「ロムの言う通りだ。人生は不公平。参るよ。ホログラムでいるというのは、時々たまらなく嫌になるもんだよ。」  「じゃ、戻ったらまた来るよ。」  「私はここにいるから。」  上級士官室。  シスコは壁面のコンピューターに表示された、戦死・行方不明者リストを見つめていた。  オドーが入る。「ここじゃないかと思いました。ご命令の新しい保安規則をもってきました。」  シスコ:「…この戦争で一番忘れられない時はいつだと思う。…戦死者の報告を受ける時だ。私にとっては仕事に過ぎない。死んだ兵士たちの名前を見る。…開戦当初には、全部の名前を読んだ。…戦死者に対する最低の礼儀だと思った。……今は…ただ名前の羅列に思える。」  「…仕方ありませんよ。」  「…そうかな。」  キラの通信が入る。『司令室より、シスコ大佐。』  シスコ:「何だ。」  『ディファイアント、出発準備完了です。』  「…すぐ行く。」  宇宙空間を進むディファイアント。  クワーク:「何でだ? 何で俺を行かせるんだ。…息子同然の俺を。」  エズリ:「クワーク、まだブツブツ言ってる。」  「悪かったな。でも…でも不公平だろう。俺にも責任ってもんがあるんだ。店に来るお客にな。」  「…でもグランド・ネーガスはあなたが適任だと思ったから選んだのよ?」  「何が適任だ。前線の実態調査だなんて、全く。艦隊情報部から報告がたっぷり入ってるはずだ。それ以上俺に何がわかる。」  「フェレンギ人の視点から見た情報が欲しいんじゃない?」  「ならノーグに聞きゃあいい。」  「あなたを信頼してるのよ。」  「フン…。どういうつもりだよ。慰めてんのか?」  「仕事だもの。金儲けの秘訣 34条。『戦争は金になる』※4でしょ?」  「遠く離れてりゃあな。前線に近づけば近づくほど…うまみはなくなるんだよ。」  突然、船が揺れた。警報が鳴る。  クワーク:「何だこりゃ?」  エズリ:「ここにいて。」 食堂を出て行く。  「…待てよ! 置いてくな!」  怯えたクワークは、外に飛び出した。  廊下を歩くクワーク。揺れが続く。「ああ!」  ぶつかりそうになるウォーフ。「こんな時に通路をうろつくんじゃない!」  クワーク:「ああ…! チントカ星系※5は連邦の支配下じゃないのか?」  「ああ…だがドミニオンが奪回に来てる。今や全領域が戦場だ。」  「ああー! なるほどね。ノートにメモっとくぜ。」  スクリーンに映っていたジェムハダー船が攻撃を受け、爆発した。  ブリッジに入るウォーフたち。  シスコ:「オブライエン! ジェムハダーがいないか警戒を続けろ。」  オブライエン:「了解。」  ノーグ※6に近づくクワーク。  ノーグ:「何だよ、おじさん。」  クワーク:「お前に…会いにな。」  「勤務中だよ。」  シスコ:「クワーク、何か用なのかな?」  クワーク:「いや別に…ただ甥っ子の様子を、見に寄っただけだよ。」  「それじゃ、もう用は済んだな。」  「…誰か、俺と食卓でラクタジーノでも飲まないか?」  「クワーク!」  「今出てくよ。」 ブリッジを出ていくクワーク。  ノーグ:「艦長、後できつく言っときますから。」  無言のシスコ。  エズリ:「おじさんは落ち着いていられないのよ。戦場には慣れてないんだから、無理ないわ。」  ノーグ:「言い訳にならないよ。」  ディファイアントは惑星に到着した。  ベシア:「艦長、転送準備できました。」  ウォーフ:「AR-558※7 には連絡済み。補給物資を待ってます。」  シスコ:「上陸班、一緒に来い。ウォーフ少佐、船を頼む。」  「了解。」  オブライエンも残し、シスコたちは出ていく。  艦長席に座るウォーフ。  転送されるシスコたち。  辺りは夜だ。フェイザーライフルを構える。  虫の音だけが聞こえ、誰の姿も見えない。  クワーク:「何か陰気なとこだなあ。」  突然、何者かが武器を撃ってきた。岩陰に隠れる。 | ※1: Rom (マックス・グローデンチック Max Grodenchik) DS9第156話 "Treachery, Faith and the Great River" 「予期せぬ亡命者」以来の登場。声:田原アルノ ※2: 曲名は "The Lady Is a Tramp" ※3: Vic Fontaine (ジェイムズ・ダーレン James Darren) DS9第151話 "Image in the Sand" 「砂漠からの呼び声」以来の登場。声:堀勝之祐 ※4: No.34: "War is good for business." 最初 (DS9第61話 "Destiny" 「三匹の毒蛇」) は「戦争は商売のチャンス。」と訳されていました。なお第35条は "Peace is good for business." 「平和は商売のチャンス。」 ※5: Chin'toka System 戦略的に重要な惑星系。DS9150話 "Tears of the Prophets" 「決意の代償」より ※6: Nog (エイロン・アイゼンバーグ Aron Eisenberg) DS9 "Treachery, Faith and the Great River" 以来の登場。声:落合弘治 ※7: AR-558 原題の一部。数字は恐らく、このエピソードの製作番号が 558番であることから | 
本編
|  攻撃が続く。  シスコ:「惑星連邦のフェイザーだ。」 相手に聞こえるよう、大きな声で叫ぶ。「攻撃をやめろ! U.S.S.ディファイアント艦長、ベンジャミン・シスコだ!」  女性の声。「聞こえたでしょ、攻撃中止!」  相手は撃つのをやめた。  シスコ:「今出ていく!」  広間に出るシスコたち。  隠れていた士官たちが、姿を現す。  女性が一人の男性に詰め寄る。「誰が撃てと命令したの!」  コマンドー服を着た男。「影が見えてジェムハダーだと思ったんだ。」  女性:「彼らがジェムハダーに見える? 艦隊から補給物資が届くから間違うなと言っておいたはずでしょ?」  「俺は聞いてないぜ。」  「…大佐、すみません。通信機に故障がありまして。」  シスコ:「被害は出ていない。ルーミス大佐※8はどこだ。」  「10日前、戦死しました。パーカー中佐※9もです。」  「今の指揮官は。」  「私です。ナディア・ラーキン※10中尉です。」  握手するシスコ。「ベン・シスコだ。補給物資はどこへ運ぶ。」  ラーキン:「ヴァーガスがご案内します。」  ヴァーガス※11:「補給物資なんて…俺たちはもう帰りたいんだよ!」  別の男、リース※12が言う。「やめろよ、ヴァーガス。」  ヴァーガス:「やめろだと? 全部やめてやりたいよ。この穴蔵から連れ出してくれりゃ、何もかもやめて、死ぬまでのんびり暮らすね! 艦隊の規則じゃ、最前線任務は 90日ごとに交代要員が送られてくるんじゃなかったのか! 90日だ! …俺たちはもう 5ヶ月もここにいるんですよ、大佐! やめてやるよ。」  ラーキン:「パラダイスへようこそ、大佐。」  洞窟の中に、大規模な機械が設置されている。宇宙艦隊の士官たちが周りにいる。  ラーキン:「これです、ここを死守しろと言われてる理由です。星域最大のドミニオンの通信アンテナです。」  シスコ:「このシステムを解析できれば、彼らの全通信システムを傍受できるからな。」  「連中も奪回しようと必死ですよ。」  「必ず阻止するんだ。」  「ええ、命令はわかってます。でも艦隊本部が、ここの状況をわかっているとは思えない。もう 5ヶ月です。奪回を狙い、繰り返し襲ってくるジェムハダーとの攻防戦を 5ヶ月も続けてます。上陸した時は、総員 150名でした。今 43名です。」  「…これまでよくやってくれた。私から必ず、現状を伝えておく。だが聞いているところでは、この星系では部隊が広く展開している。もうしばらく留まってもらう可能性が高いだろうな。」  「嬉しいことで。」  作業をしていたエンジニアのケリン※13。「誰か、デュオネティック連結器取ってくれ。」  さっきシスコたちと一緒に来たエズリが、器具を渡した。  ケリン:「悪い。」  エズリ:「周波数識別装置が不安定ね。リセットした方がいいわ。」 コンピューターをチェックする。  「エンジニアなのか?」  「いいえ。でも以前のホストのトビンがそうだったの。」  「似たようなもんだ。マイクロダイン連結器で、トランステイターの調整を頼む。」  手伝うエズリ。  ノーグは外に出て、見張りについているリースの姿を目にした。  クワークが近づく。「ノーグ! 補給物資を降ろすのを手伝うんじゃないのか?」  ノーグ:「ほとんど終わったんだ。」  「そうか。さっさと片づけて帰ろう!」  「あそこの兵士だけど、ネックレス見える? …ケトラセル・ホワイトのチューブだ。」  リースの首には、何本ものチューブが数珠つなぎになっていた。  クワーク:「それが?」  ノーグ:「どうしてもってると思う。」  「通販か?」  「死んだジェムハダーたちから奪ったんだよ。自分が殺したやつからね。あれが勲章なんだ。」  「お前うらやましいのか?」  「当然だろ。」  「冗談じゃない。…周りをよく見てみろ。お前の知ってる艦隊とは違う。」  「違わないよ。長い前線勤務で疲れてるだけだ。ずっとここで踏ん張ってきたんだ。部隊の 3分の2 が戦死してる。それでもまだがんばってるんだ。何でかわかる? みんなヒーローだからさ。」  「かもな。だがあいつらみたいにはなって欲しくないねえ。」  「ああ…」  ノーグを抑えるクワーク。「…地球人※14について、一つ教えといてやろう。みんな立派で、平和的だ。ホロスイートがあって、飯が食えてる間はな。…衣食住が足りてる間だけだ。食い物や、眠りや…ソニックシャワーを取り上げられ、長いこと…命の危険にさらされると、あんなに平和的で、知的で、立派だった人間が…卑劣で凶暴に…変わっちまうんだ。血に飢えたクリンゴンよりひどい。信じないのか? …奴らの顔を見ろ。あの目を見てみろ。」  ノーグは周りの士官たちを見た。  クワーク:「お前にもわかるだろ。…どうだ、何か言うことないのか?」  ノーグ:「…ジェムハダーが哀れだよ。」  中へ戻っていくノーグ。クワークも続いた。  怪我をした士官たちが集まっている。  ベシア:「ルミノルテトラミノゼン※15、20cc だ。熱が下がり、胸部の鬱血が治まる。それと、これで背中の皮膚の炎症も治まる。どうだい。」  ヴァーガス:「ああ…良くなった。こんなに気分がいいのは上陸した日以来だ。」  「よかった。じゃあ次は腕を見せてくれ。」  ベシアが腕に触ろうとすると、突然ヴァーガスはベシアの首元をつかみあげた。「何しやがる! この包帯に触るな!」 フェイザーを突きつける。  ベシア:「傷を診ないと。」  「誰も包帯には触らせない。わかったか。」  「どうして。」  「わかったかと聞いたんだよ。」  「ああ…」  手を離すヴァーガス。「……マグリーヴィー※16が巻いてくれた。奴の軍服を裂いてな。」  ベシア:「いい仲間なんだね。」  「クソ野郎だった、我慢ならなかったよ。しゃべり通しだった。いつも、いつも、いつも。何でも自分が一番の権威みたいに知ったかぶりだ。…わかってる、死人に…むち打つのは良くないが、本当に嫌な奴だった。いつも通りしゃべりながら俺の腕に包帯を巻いてたと思ったら、次の瞬間には胸に穴が空いて仰向けに倒れてた。……その時俺は奴を見ながら、ほっとしてた。…やっと静かになった。初めて口を閉じてくれたってな!」  ヴァーガスは涙を抑える。  ベシア:「……それでも、傷は診ないと。」  包帯を外すヴァーガス。ベシアは腕を診る。  ラーキンに話すシスコ。「強固な防衛戦を張ってるようだが、脇を固める必要がある。」  ベシアがやってきた。「大佐、よろしいですか。」 近づいたシスコに話す。「ここの兵士は、肉体的、精神的に限界にきてます。わずかな補給物資ではとても足りません。すぐに引き上げさせないと。」  シスコ:「状況はわかるが、今はこれ以上どうしようもない。」  その時、大きな爆発音が聞こえた。  ラーキン:「やられた!」  騒ぐ声が聞こえる。ラーキンと共に向かうシスコたち。  怪我をした者が運ばれていく。  ノーグ:「瞬間を見ました。彼が歩いてたら…」  シスコ:「敷地内から対人地雷を一掃したんじゃなかったのか。」  ラーキン:「百回やっても無駄です。マジシャン※17相手じゃ。」  ベシア:「マジシャン?」  リース:「自由自在に現れるのさ。」  ラーキン:「亜空間に隠れて、突然現れるんです。」  ヴァーガス:「ある場所を百回歩いて何ともなかったとしても、突然ドカン!」  リース:「ヴァーガス、言うだけ無駄だ。大佐には関係ない。…もう帰られる。」  ヴァーガスも歩いていく。  シスコ:「君たちの状況を何とか改善してやりたいが。」  ラーキン:「気になさらないで下さい。」  ウォーフの通信が入る。『ディファイアントより艦長。』  シスコ:「…何だ。」  揺れる船内。  ウォーフ:「艦長、ジェムハダー機 2機に攻撃されています。そちらの座標はロックしました。収容します。」  指示するシスコ。「待機だ、ウォーフ少佐。」  オブライエン:『艦長、センサーによれば、そこから 9キロの場所にジェムハダーが迫ってます。』  攻撃を受けるディファイアント。  ウォーフ:「転送収容します。すぐ起動を離脱しないと。」  シスコは命じた。「ウォーフ少佐、回避行動を取れ。…我々は残る。」  ウォーフ:『艦長、考え直して下さい。いつここへ迎えに戻れるかわかりません。』  「命令は聞こえたはずだ。」  『…了解。ご無事で。』  シスコは士官たちに向き直る。「…何を見てる! 仕事があるだろ。」  ラーキン:「了解。ほら、聞こえたでしょ! 大佐、指示をお願いします。」  「命令に変更はない。……死守する。」 | ※8: Captain Loomis ※9: Commander Parker ※10: Nadia Larkin (Annette Helde DS9第63話 "Visionary" 「DS9破壊工作」のカレナ (Karina)、VOY第75話 "Scientific Method" 「DNAに刻まれた悪夢」の Takar、映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」の保安部員役) 声:横尾まり ※11: Vargas (レイモンド・クルツ Raymond Cruz) 声:楠見尚己、DS9 アレキサンダー ※12: Reese (パトリック・キルパトリック Patrick Kilpatrick VOY第18話 "Initiations" 「ケイゾン戦士誕生」のラジーク (Razik)、第149話 "Drive" 「愛の危機」のアサーン (Assan) 役) 声:手塚秀彰 ※13: Kellin (ビル・マミー Bill Mumy) 声:松本大 ※14: 「人間」と吹き替え ※15: numinol tetraminothen ※16: McGreevey ※17: 原語ではフーディーニズ (Houdinis)。フーディーニとはマジシャンのハリー・フーディーニ (1874〜1926) のこと。参照 | 
|  フェイザーを持って、岩陰に隠れる士官たち。ノーグとリースがいる。  シスコはトリコーダーを使う。「ジェムハダーが何人、どこにいるのかつかむ必要がある。」  ラーキン:「大佐、トリコーダーは役に立ちません。お互いのセンサーを妨害し合ってますから。向こうが有利です。この場所は割れてる。」  「知られているのはそれだけだ。兵士の配置や、人数までは知らないはずだ。」  「そういう点を含めても、向こうと変わりたいですね。」  シスコは素早くノーグに近づいた。「何かわかったか!」  ノーグ:「いろいろと。ヴァーガスのお腹がグルグルいってるし、エズリが通信室で位相増幅器をチューニングしてるのも聞こえます。」  「ジェムハダーのことだよ。」  「何も聞こえません。もしいるとしたら、全く音を立ててない。」  リース:「奴らはいる。」 手に持ったナイフを研磨器で磨いている。  シスコ:「聞き逃すんじゃないぞ、少尉。」  ノーグ:「わかってます。」  シスコはヴァーガスに駆け寄った。「何か見えるか。」  ヴァーガス:「いや。」  ノーグはリースに言った。「あんたが持ってるナイフ、支給品じゃないね。…見せてくれる?」  リース:「敵の動きを聞き取るのが任務だろ。」  「そうだけど。」  「だったら気を散らすな。」  ラーキン:「奴らが来た。」  ナイフを投げ捨てるリース。  フェイザーを構える一同。  ジェムハダーが現れた。一斉に迎え撃つ。  次々と倒れていくジェムハダー。何人も続く。  リース:「様子が変だ。…奴ら撃ってこない。」  シスコ:「撃ち方やめい!」  その瞬間、ジェムハダーの姿は同時に消滅した。  ヴァーガス:「どこ行ったんだ。」  シスコ:「敵は元々いなかった!」  リース:「ホログラムか。」  ノーグ:「どういうこと?」  シスコ:「偵察のためにホログラムを送ってよこしたんだ。人数をつかむためにな。」  リース:「配置も知られた。」  ラーキン:「死傷者を一人も出さずにね。やられたわ。」  ヴァーガス:「感心してる場合か、俺たちは終わりだ!」  シスコ:「いや、まだだ。」  クワークが物陰から現れる。「もう終わったか?」  シスコ:「今はな。だが次にやってくるのはホログラムじゃない。」  また地雷の爆発が起こり、驚くクワーク。「ああ!」  近づく士官たち。「おい!」「まただ。」  ラーキン:「担架もってきて。負傷者を医療室に運んで。」  通信室のエズリ。「通信アンテナの分析を中断しろって言うの。」  シスコ:「しばらく君なしで作業してもらう。マジシャンを探して、解除するんだ。」  「喜んでやるわ。あんな非人道的な地雷ってないもの。」  ケリン:「でも、探知不能なんです。すいません、大佐。私はエンジニアで、マジシャンじゃない。」  シスコ:「チャレンジが好きだと聞いてたんだがな。」  「ええ、昔は。でも無駄に何ヶ月もあの通信アンテナと格闘してる間に…気力も失せました。」  エズリ:「彼は謙遜してるだけよ。オブライエンなら喜んでクルーに加えるわ。」  シスコ:「最大の誉め言葉だな。」 歩いていく。  ケリン:「…どうするんだ?」  エズリ:「ウサギを帽子から引きずり出すの。」  ついていくケリン。  クワークがまたノーグの元にやってきた。息を切らし、携帯食料を渡す。「ほら。これ食って力をつけろ。」  ノーグ:「ありがとう。でも食事ぐらい自分で摂るよ。」  「…どうしたんだ。人間※14たちの前で、かっこつけたいのか?」  「そんなんじゃない。認めてもらいたいんだよ。」  「魂を売ってまでか! ……見てみろ、フェイザーをまるでラチナムみたいに大事に抱えて。」  「ここは戦場なんだよ。フェイザーのおかげで生きていられるんだ。僕は艦隊士官だ。」  「お前はフェレンギだ! フェレンギらしくしたらどうなんだ。」  「何か起きるたびに陰に隠れろってこと?」  「…いいか、よく聞けよ。惑星連邦がフェレンギ連盟のいうことを聞いてりゃ、戦争にはなってなかった。」  「そりゃとっくの昔に降伏してるだろうからね。」  「違うね。俺たちなら和解にもちこめた。俺たちなら、相手と交渉のテーブルについて、和平条約を締結してたんだよう。…八方丸く収まってた。」  「随分簡単そうに言うよね。」  「金儲けの秘訣、125条。『死んだら儲けようがない。』※18」  シスコが部下と共にやってきた。「ノーグ。お前とラーキンとリースで、偵察に行ってもらうぞ。」  ノーグ:「了解。」  「敵の状況を知りたいんだ。ジェムハダーが何人いるのか、キャンプはどこか、どんな武器があるか調べてくれ。」  「出発はいつです?」  ラーキン:「今よ。」  クワーク:「おい、ちょっと待て! ノーグを? もっとベテランから選べばいいだろ。」  リース:「あんたの意見は聞いてない。」  シスコ:「トリコーダーが効かないからな。」  ノーグ:「僕の耳が使える。」  「その通り。」  「任せて下さい。ジェムハダーを見つけます。」  ラーキン:「行きましょう。」  クワーク:「ノーグ、ちょっと待て。」  シスコ:「クワーク、これは任務だ。」  クワークから離れ、3人で歩いていくノーグ。  クワーク:「軽く言ってくれるよな。ジェイクならそう簡単に送り出せるか?」  シスコ:「ジェイクは艦隊の士官じゃない。」  中に戻るクワーク。 | ※18: No.125: "You can't make a deal if you're dead." | 
|  道を進むノーグたち。  止まるよう指示するノーグ。再び歩き出す。  エズリはトリコーダーを扱っていた。機能し出す。  ケリン:「やったな!」  エズリ:「ああ…私がやったわけじゃないわ。トビンかジャッジアかもね。」  「関係ないよ。とにかく君が、妨害シグナルを除去したんだから。」  「だけど、100メートル以上範囲を広げられないの。」  「キャンプ全体のスキャンには十分だよ。次の問題は、トリコーダーをどう改良すれば、亜空間の地雷を探知できるかだ。」  「…光電子リレーと、アイソダインリレーをリンクしてみたら?」  「…ほんとにエンジニアじゃないのか?」  「9つの人生でいろいろやってきたから。」  「…だけど、自分で混乱しないのか。」  「そりゃもうすごいわよ。」  「ほんとに?」  「例えばこんな感じ。私前線に来るのは初めてなんだけど…」  「それはエズリのことだよね。」  「ええ。でも、トライアスとクルゾンとジャッジアは、何度も戦闘を体験してるわ。だからどんなだったか覚えてるの。その時の恐怖や、強い怒りや、アドレナリンが吹き出す感じ。」  「他人の戦場での記憶と実際の体験は…きっと天と地ほども違うと思うよ。」  「これからわかるんでしょうね。」  ケリンはエズリの肩に触れた。「君なら心配ない。」  作業に戻るケリン。  リースたちは高台から下を見ている。  双眼鏡を使うラーキン。「よく見えるわ。」  ジェムハダーのキャンプが見える。訓練している者もいる。  ノーグ:「何だろう、気づかれた?」  ラーキン:「引き上げるわよ。」  リースはジェムハダーたちが列をなして出てくるのを見る。「了解。」  ラーキン:「行きましょう。」  引き返す 3人。  ノーグ:「ストップ!」  前にジェムハダーがいることを聞き取り、別の道を進むことにする。  だがその時、敵が発砲してきた。最後を歩いていたラーキンに直撃する。  ノーグも足を撃たれてしまった。  痛みに叫ぶノーグ。  クワークは外を気にしていた。  ヴァーガスの声が響く。「誰か来るぞ!」  リース:「撃つな! 俺だ、リースだ。担架を。」  リースが抱えている者に気づくクワーク。「ノーグ!」  駆け寄るクワーク。「どうしたんだ。」  リース:「ジェムハダーのパトロールだ。」  苦しそうなノーグは、クワークたちによって運ばれていく。  シスコ:「ラーキンは!」  リース:「死んだ。」  「死んだ?!」  「ノーグは野営地を見つけた。ここから南へ 3キロだ。」  「向こうの人数は。」  「部隊が 2つ。」  ヴァーガス:「それじゃとても太刀打ちできないぞ!」  シスコ:「相手を分散させるんだ。」  リース:「どうやるんだ。」  「時間をくれ!」  「大佐…ノーグはよくやった。」  シスコは洞窟の一画に近づく。奥にベシアがいる。  クワーク:「面会謝絶だと言われた。」  シスコ:「ノーグの具合は。」  「今頃になって心配してくれるとはね。」  「クワーク。」  「足を切断するんだ! これで満足か?」  無言のシスコ。 | 
|  クワークは尋ねた。「この後どうする? 代わりの足は作ってくれるんだろ?」  ベシア:「病院に運びさえすれば、細胞から合成した義足が作れる。ただちょっと…複雑では、あるかもしれない。」  「どういうことなんだ。」  「ノーグは大腿骨の運動神経に、ひどい火傷を負ってる。義足の人工筋肉組織を刺激できるかどうか。それについては、手術をしてみるまでわからないんだ。…中へ、戻らないと。」 離れるベシア。  「ノーグを病院へ連れてくぞ。」  シスコ:「なるべく早くそうする。」  「なるべくじゃ遅いんだよ。」  「仕方ない!」  「仕方ない? 本当にノーグのことがかわいけりゃ、あんな偵察任務なんぞ行かせなかったはずだ!」  「いいか、よく聞け、クワーク。こんなことは一度しか言わないからな。ノーグを含め私の部下は、一人残らずかわいいと思っている。どの…一人、とってもな!」 シスコも中へ走っていった。  横になっているノーグ。  ベシアと入れ違いに入るシスコ。  ノーグは起きあがろうとする。「あ…大佐…」  シスコ:「そのままでいい。」  「…申し訳ありません。」  「何がだ。」  「ラーキンのことです。…罠に引き入れてしまって。」  「君は敵のキャンプを見つけた。」  「あ…あ…来るのが聞こえた。でも、手遅れで。フェイザーの音が響いて…気づいたら撃たれてて…」  「ノーグ。」  「それで…」  「もうしゃべるな。君は命令通り、役割を果たした。よくやったな。」  「…ありがとうございます。」  シスコはノーグの足を見る。毛布の下に見える形が、片足分しかない。  ノーグ:「痛くないんです。」 笑う。「痛そうに見えるけど、そうでもない。」  シスコ:「ならいい。」  「すぐ治しますから。」 シスコを呼び止めるノーグ。「大佐。あのアンテナ守る価値、あるんですよね。」  「私もそう願ってる。」  エズリがやってきた。「ベンジャミン。邪魔してごめんなさい。準備 OK よ。」  シスコは微笑み、ノーグの手に触れて歩いていった。  外でトリコーダーを使っているエズリ。  ケリンも同様だ。  シスコ:「忘れるな! 私が合図するまで、誰も動くな。中尉、始めろ。」  2人の操作によって、空中に浮かぶ亜空間地雷の姿が次々を現れてくる。  周りを見渡すシスコ。地雷は至る所にあり、ヴァーガスの顔のすぐそばにも存在していた。  ケリン:「後は起爆装置を、解除するだけです。」  シスコ:「解除する気はない。こいつを利用する。」  地面に図を描くリース。「ここが連中で、ここが我々。東西に山脈が走ってる。こっちへ来るには、間の渓谷を通るしかない。」  シスコ:「ならそこに地雷を敷設することにしよう。」  ケリン:「移動させるのは不可能じゃありません。難しいですが、不可能じゃない。」  「それから動きに反応して爆発するよう、プログラムし直してもらいたい。」  リース:「あまり過敏にするなよ。谷がジェムハダーで一杯になった時に、爆発させたいからな。」  ケリン:「何とかできると思うよ。」  「兵力の 3分の1 は、片づけられる。」  エズリの様子に気づくシスコ。「どうした、おやじさん。何か不備があるか。」  エズリ:「そうじゃないの。…こんな残虐な地雷を使うのはドミニオンだけだって、ほんの 2、3時間前まで思ってたのに。結局…」  リース:「今度は俺たちが使おうとしてる。」  シスコ:「遅かれ早かれ、ジェムハダーはあのバリケードを突き破ってくる。その数が少なければ、生き残る可能性は高くなる。命令はわかったな。」  取りかかる部下。  外で、エズリもフェイザーライフルを構える。  近くにいるヴァーガス。  リースがフェイザーの部品を配っている。「パワーパックだ。」  ヴァーガス:「今の音、何だ?」  エズリ:「聞こえないけど?」  リース:「落ち着け。奴らが来ればわかる。」  続いて配っていくリース。「パワーパックだ。」  シスコは、近くのカチカチという音に気づいた。フェイザーの照準を開け閉じする音だ。  シスコに見られていることに気づくケリン。「すいません。指が、ちょっと緊張…してまして。」  シスコ:「気持ちはわかるよ。」  「ジェムハダーも、戦闘前は緊張するんですかねえ。」  「それはどうだろうな。」  突然、歌声※19が聞こえてきた。  ヴァーガス:「…何なんだ?」  エズリ:「シーッ! 静かに。」  ヴィックの歌が続く。 The children's carousel The chestnut trees  その声は、クワークがいる部屋にも響く。 In every lovely summer's day...  眠っているノーグの毛布をかけ直すクワーク。  ベシアがやってきた。  エズリ:「これ、あなた?」  フェイザーを準備するベシア。「ヴィック・フォンテーンで、気持ちを静めた方がいい。」  エズリ:「ノーグはどう?」  「基地へ戻るまではしてやれることはない。地雷の移動は成功したんだな。」  「今夜はあの谷へは散歩に行きたくないわね。」  「僕もごめんだな。それより、こんな状況は、予想外だ。」  ヴァーガス:「銃は初めてじゃないな。」  「残念ながらね。皮肉だな。人を救うために艦隊に入ったのにね。」 I'll be looking at the moon  その時、爆発音が響いた。  暗闇の中に、連続した光が走る。  光と音が収まる。ヴィックの歌の、ピアノも終わった。  ヴァーガス:「…来ないかもしれないな。引き返したのかも。全滅したんじゃないか?」  だが、叫び声が聞こえてきた。  照準を準備する士官たち。  ついにジェムハダーが姿を現した。  命じるシスコ。「撃てー!」 フェイザーを発射する。 | ※19: "I'll Be Seeing You" CDアルバム "This One's from the Heart" に収録されています | 
|  フェイザーを撃つ士官。  次々と倒れていくジェムハダー。  その数は減らず、反撃される。  断末魔を死んでいくジェムハダー。連邦側の被害も大きい。  ジェムハダーはバリケードを乗り越えてくる。シスコは直接殴り倒した。  腹部を撃たれるベシア。  ナイフを使うリース。声をあげ、飛びかかっていく。  シスコは再びフェイザーライフルを使う。  壮絶な戦闘の音は、ノーグの汗をぬぐうクワークにも聞こえている。  ヴァーガスは背中から刺され、倒れた。  苦しんでいるベシア。  エズリにもジェムハダーが襲いかかる。ケリンが救うが、逆に背後から撃たれてしまった。  顔から血を流すエズリ。「ケリン? ケリン?!」  クワークは気配に気づき、持っていた銃に触れる。  叫びながら、現れたジェムハダーを撃ち殺した。  呆然とするクワーク。  ベシアは何とかフェイザーを撃ち続ける。  シスコは後ろから殴られ、ジェムハダーが銃を構えるのを目にした。  周りが暗くなる。意識を失う。  リースの声。「生きてるのか? 大佐? 生きてますか?」  シスコは起きあがった。「ああ…ああ、辛うじてな。」  辺りでは火が上がり、ベシアが負傷者の治療をしている。  エズリは死んだケリンを抱きかかえていた。  多数の死体が転がっている。  シスコ:「死守したな。」  リース:「それが命令ですから。」  稼働している通信アンテナ。  ウォーフがやってくる。「大佐。」  シスコ:「ああ、何だウォーフ。」  「U.S.S.ヴェラクルス※20が軌道に入りました。交代要員と技術チームを、上陸させています。」  「我々の部下は。」  「ドクターはノーグと負傷者を連れ、ヴェラクルスに乗船しました。第371宇宙基地※21の病院へ搬送されます。」  「そうか。私もすぐディファイアントへ戻る。」  「……大佐、これは大勝利です。後生に語り継ぐべき、戦いでした。」  「…犠牲は大きかった。」  離れるウォーフ。シスコも続いた。  新たに到着した士官たちに、指示が与えられる。「こっちだ。お前はセクション4 だ。よし。」  それを見つめていたリース。「子供だな。」  シスコ:「今だけだ。…いいか?」  リースはナイフを取り出し、地面に投げ刺した。「帰りましょう。」  通信するシスコ。「シスコよりディファイアント。3名、転送してくれ。」  ウォーフも転送される。  DS9。  司令官室でコンソールを扱うシスコ。  キラが入る。「大佐。最新の戦死者報告が届きました。」  シスコ:「今回は何名だ。」  「AR-558 の部隊も含めると、1,730 です。」  「1,730名…。」 立ち上がり、窓の外を見つめるシスコ。  「…かなりの数ですね。」  「ただの数字じゃない。一人ずつに、人生があった。……それを忘れちゃいけない。」 | ※20: U.S.S. Veracruz メキシコの州・市名 ※21: Starbase 371 | 
感想
|  明るいのは冒頭のロムの歌だけ。あとは全て暗い、ストーリーも映像も文字通り暗いエピソードです。暗すぎて CS での視聴には不向きなほど…。DS9 でしか描けない展開が、ここに極まったという感じですね。あえてウォーフやキラなどの戦闘的なレギュラーではなく、エズリやベシアを配したそうです。そのシリーズでしか描けない話という点で、DS9 は見事に TNG から脱却したと言えます。  こういう戦闘ものでは、大抵「レギュラーは死なない」ものです。でも今回は死ぬまでには到らなかったものの、レギュラーに限りなく近い存在となったノーグが片足を失ってしまいました。このエピソードではクワーク (彼は前から地球人のことを「ヒューマン」ではなく「ヒューモン」と変な呼び方をするんですよね) ととの関係で印象深いシーンをいくつか残しただけですが、今後どのように扱われるのか興味深いです。 | 

|  第157話 "Once More unto the Breach" 「今一度あの雄姿を」 | 第159話 "Covenant" 「裏切られた誓約」  | 
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