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ヴォイジャー 特別エピソードガイド
第130話「遥か彼方からの声」
Pathfinder

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・イントロダクション
ドアを叩く音がする。
散らかった部屋にいるレジナルド・バークレイ※1が応えた。「ちょっと待って。今すぐ出ますからねえ。」 片付けるバークレイ。
またドアの音。「今出ますって!」
ドアを開けると、笑みを浮かべた女性が立っていた。
バークレイ:「ディアナ!」
挨拶するカウンセラー・トロイ※2。「こんにちは、レッジ※3。」
「無事着いて良かった。君に会えて嬉しいよ。」
「……中に入ってもよろしいかしら?」
迎え入れるバークレイ。「ああー、もちろん。どうぞ、入って。さあ。何か飲み物でもどうだい? そうだなあ、コーヒーとか、紅茶? あ、ちょっと待って! 何も…言わないで。チョコレートアイスクリーム。」
「好みをよくご存知ね。でもちょっとだけね。これ以上太りたくないの。」
「何言ってる! 君は…全然太ってない!」
「女を喜ばすつぼを心得てる。」
動かないバークレイ。
トロイ:「……取ってきましょうか?」
「取るって、何を。」
「アイスクリームよ。」
「あ、そうそう、アイスクリームね。いや結構。どうぞ。かけて、楽にしててくれよ。」
2階へ向かうバークレイ。
トロイ:「いいお部屋ね。」
「どうも! チョコレートアイス一つ。」 レプリケーターが反応する。
「引っ越したばかり?」
「いや、引っ越してから、そろそろ 2年になるかな。片付ける暇がなかなかなくてねえ。」 アイスを持って下に降りてくる。
「うまくいってるの、レッジ。」
「もちろん。何でそんなことを。」
「何だかちょっとピリピリして見えるから。」
「そうかい? それは君に会えて、興奮しているからだよ。」
アイスクリームを受け取るトロイ。「私もあなたに会えて嬉しいわ。ラフォージ※4を誘わなかったから、きっと彼がっかりしてるでしょうね。」
「そうだな。エンタープライズが軌道を外れる前に、少佐※5も一緒に誘いたかったんだがねえ。僕は…まずは君といろいろ話したかったんだよ。構わなかったかい?」
「ええ、もちろんよ。」
話そうとしないバークレイ。
トロイ:「……今はパスファインダー・プロジェクトに関わってるんでしょ?」
「ああ、以前はね。でも、もう違うんだよ。」
「何があったの?」
「ああ、別に何も…ほんとさ。ただ何て言うか…プレッシャーで。」
突然やってきたネコが、テーブルの上に置いてあったアイスクリームをなめ始めた。
笑うトロイ。「こんにちは。」
ネコを抱くバークレイ。「ニーリックス※6! あまり人に慣れなくてねえ。全くお客さんのアイスをなめちゃうなんて、お行儀悪いぞお。お腹空いてるのか? ディアナ…ニーリックスって言うんだ。」
「ニーリックス。変わった名前ね。データ※7のネコのスポット※8に会わせたいわ。」
笑うバークレイ。
トロイ:「……思い出話をするために私を呼んだわけじゃないんでしょ。何があったの、レッジ。」
ため息をつくバークレイ。「のめり込んだんだ、僕は…ディアナ。」
「一体何に?」
「……ヴォイジャーにだ。僕はヴォイジャーに…とり付かれてしまった。」

※1: Reginald Barclay
(ドワイト・シュルツ Dwight Schultz) TNG サブレギュラー。元エンタープライズ-D・E の機関部員。また、ルイス・ジマーマン博士による緊急医療ホログラムの開発チームの一人。VOY第19話 "Projections" 「ホログラム」以来の登場 (ただしドクターのプログラム異常による)。TNG第69話 "Hollow Pursuits" 「倒錯のホログラム・デッキ」に初登場。映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」にも登場。このエピソードで初めて中尉から大尉に昇進していることがわかりました。声: 岩崎ひろし。TNG の田中秀幸、FC の荒川太郎、VOY "Projections" の堀内賢雄に続き、4代目

※2: カウンセラー・ディアナ・トロイ Counselor Deanna Troi
(マリーナ・サーティス Marina Sirtis) TNG レギュラー。エンタープライズ-D・E のカウンセラー、現在の階級は中佐。地球人とベタゾイドのハーフで、母のラクサナは大使。TNG レギュラーとしては VOY第100話 "Timeless" 「過去を救いに来た男」のラフォージ (ただし可能性の未来) 以来の登場。ちなみに時期的には、映画 "Star Trek: Insurrection" 「スター・トレック 叛乱」の更に後にあたります (参照: 宇宙暦順エピソードリスト)。後にも登場。声: 高島雅羅。バークレイやパリス提督とは違い統一されています

※3: Reg
バークレイの愛称

※4: ジョーディ・ラフォージ Geordi La Forge
現在、エンタープライズ-E の機関主任。VOY第100話 "Timeless" 「過去を救いに来た男」に可能性の未来の中で登場。原語では「ジョーディ」

※5: 「ラフォージ」と吹き替えされていますが、原語では "him" としか言っていません。上官であることから「少佐」または「主任」とでも訳すべき

※6: Neelix
ドクターからの情報で名づけたのかもしれませんが、後のホロデッキのプログラム内にはニーリックスは登場しません。名前だけが伝えられたのか、単なる偶然?

※7: データ少佐 Lieutenant Commander Data
エンタープライズ-D・E のオペレーションズ・マネージャー。アンドロイドであることに関連して、VOY第29話 "Prototype" 「ユニット3947」で言及されたこともあります

※8: Spot
メス猫。TNG第85話 "Data's Day" 「ヒューマン・アンドロイド・データ」に初登場。当初はオスで種類も違っていたのは永遠の謎とされています

・本編
話し始めるバークレイ。「君が上陸してるって聞いて飛びついた。君を誘い出したのは、カウンセリングをね。」
トロイ:「そんなこと気にしないで。こうして会えたんだから、ぜひあなたの力になりたいの。」
ネコのニーリックスを下ろすバークレイ。「ありがとう。」
「じゃ、最初から話して。」
「こう考えたことないか? Bクラスの巡回パルサー※9にタキオンビームを発射すれば、大量の重力変動エネルギーを生み出して人工特異点を作り出せると。」
「私は考えたことないけど。」
「僕は思いついた。でも、上司とは意見が食い違う。乱用だというんだ。ミダス※10の。」
「ミダス?」
「ムターラ・インターディメンション・ディープ・スペース・トランスポンダー・アレイ※11。」
「レッジ、何のことだかさっぱり。」
「ごめん。」
「最初から話して。」
「最初ね。……事の発端はホロデッキだった。全てがね。いつもそうだな。」 笑うバークレイ。
「続けて。」
「うん…僕はシミュレーションをやっていたんだ。」

バークレイはヴォイジャーのブリッジにいた。「コンピューター、ヴォイジャーのトランシーバー、出力 20%増大。」
『トランシーバー、出力は最大です。』
「シグナル装置にナローバンドフィルターを適用。」
『フィルター作動。』
音声の雑音が消えた。男の声が届く。『ヴォイジャー、どうぞ。応答願います。ヴォイジャー、どうぞ。こちら宇宙艦隊司令部。ヴォイジャー、どうぞ、ヴォイジャー。』
バークレイ:「よし、よし、いいぞ。バンドフィルター 0.3キロヘルツダウン。」
ターボリフトから男性の宇宙艦隊士官、ハーキンズ※12が降りてきた。「レッジ。」
慌ててコンピューターを切るバークレイ。
ハーキンズ:「何をしているんだ。」
「あ、あの…中佐※13。私はあの…ただ…ちょっと。」
「ははあ、また別のシミュレーションをやっているのか。送信機の検査はどうなった?」
「はい、送信機の検査ですね。」
「当然もう終わったんだろうねえ。」
「ええ、大体。」
「大体じゃ困るよ。明日朝一番でパリス提督※14が来るんだ。」
「パリス提督…。」
「忘れてたとは言わせないぞ。」
「あーいえいえ、忘れていませんよ。ちょっと日時を勘違いしただけで。」
「レッジ。」
「コンピューター、プログラム終了。」
ブリッジが消え、ホロデッキの壁に戻る。ハーキンズの後を追いながら話すバークレイ。「今思いついたんですが、パリス提督がいらっしゃるのはちょうど都合がいい。私の説をご説明するいい機会です。」
外では多数の士官が働いている。彼らをチェックしながら歩くハーキンズ。「君の説?」
「ずっとディープ・スペース・ナイン※15から恒星間現象予測を行っていたんですが、その予測によりますと、ああ…3日以内に Bクラス巡回パルサーが、ミダス・アレイの 40億キロ内を通ることが明らかになったんです。」
「パルサーがアレイに損傷を与えると?」
「いえいえ…シールドがあれば大丈夫。私はパルサーを利用できるんじゃないかと…思い…ついたんです。」
「何に。」
「いいですか。例えばパルサーに向けてタキオンビームを発射するよう、アレイに指示を出せないかと。理論的には、人工ワームホールを作るのに十分な重力変動波を作り出すことが可能なんです。そうなれば、ヴォイジャーとの送受信コミュニケーションが可能になります。」
「レッジ、また夢みたいなことを。」
「いえ、きっと成功します。シミュレーションによればですね…」
「君のこの前のシミュレーションのせいで、トランスワープ・プローブ※16を開発するのに、半年無駄にした。」
「今…今回こそは…これは…」
「レッジ、君のイマジネーションは私も認めている。君が重要な役割を担っているのもそのせいだ。しかし提督に何て話せばいいんだ。『息子さんと話す方法が見つかりました。でも突飛な説でして、こん中にあります。』」 バークレイの頭に触れるハーキンズ。「頼むから、仕事に専念してくれよ。」
「わかりました。」 コンピューターを操作し始めるバークレイ。
ハーキンズは出て行く前に言った。 「それから、念を押しておく。提督がみえたら、余計なことは言うなよ。」
「ええもちろん、わかってます。」
『ピート※17は僕の気を逸らそうとした。でも僕は自信があった。あきらめるわけにはいかなかった。』

通信研究センター※18のビル。
ハーキンズがやってきて、独りで作業をしているバークレイに話しかける。「残業かね、レッジ。」
「あの…送信機の検査は、ちゃんと終わらせました。」
「ああ、わかっている。見せてもらったよ。よくやった。」 バークレイに近づくハーキンズ。「そろそろ切り上げたらどうだ?」
「ちょっと…2、3、気になることを片付けてから。」
「そうか。ではまた明日。……そうだ、レッジ、どうかな。仕事が終わったら、今夜遊びにこないか。」
「遊びに?」
「うちに寄りたまえ。お茶でも飲もう。アンジー※19の妹がボストンから来ている。きっと…君を気に入ると思うよ。」
「…いや、今夜は遠慮しておきます。今夜は…一緒に過ごす予定なんです、ニーリックスと。」
「思い違いだったら言ってくれ。ニーリックスというのはネコだろ?」
「……。」
「気が変わったら、寄ってくれ。」
「どうも、ありがとう。努力します。」
『でも僕は行かなかった。自分の計画を確かなものにするまでは離れられなかった。パリス提督が来るまであと 14時間しかないのに、アイデアが全然浮かばなかった。データを詳細に調べても無駄だった。僕に必要なのは、ちょっとした…そう、発想の、転換だった。』
バークレイ:「コンピューター、ホログリッド食堂を再現。バークレイ・11・ガンマ※20。」

バークレイはヴォイジャーの食堂に入った。
ホロ・パリス:「やあ、レッジ。」
ホロ・チャコティ:「気をつけろ、食いつかれるぞ。」
笑うホロ・トレス。「ゲームを始めましょ。」チャコティとトレスはマキの服を着ている※21
ホロ・キム:「調子はどうだ、レッジ。」
バークレイ:「同じさ。」
レプリケーターに向かうキム。「コンピューター、ミルク 1杯。ホットで。」
「ありがとう、ハリー。」
「君のご機嫌を取ってるだけさ。今夜はお手柔らかに頼むよ。」
ミルクを受け取るバークレイ。「いつも言っているだろ。もしも熱くてたまらないときは…」
「ワープコアを捨てる、か?」
チャコティはトランプのカードを切っている。「さあ、大尉。たまにはみんなにも勝たせてくれよ。命令だ。」
バークレイ:「そこまで言うか、副長。だが君に警告しておこう。私は自分の勝ちを誰かに譲る気はないぞ。」 トランプを受け取る。「それより、トゥヴォックは。」
トレス:「明らかに優れたプレイヤーに負け続けるのは、非論理的だって。」
「まあ、そりゃ残念。ヴァルカン人の悔しがる姿、見たかったのに。」 笑うチャコティとトレス。「ルールはわかってるな。2 の札と片目のジャック、ハートのキングはオールマイティ。同じカード 5枚はストレートフラッシュより強い。」
パリス:「手加減してくれよ。」
キム:「そりゃ無理さ。」
バークレイ:「がんばってくれ、君らが負けるのは僕も辛い。結局…君らは友達だからな。」

『ポーカーで神経のたかぶりも収まっていて欲しかった。そうすれば明日に備えて心安らかに眠れる。だが、あの夜うちに戻っても、ヴォイジャーのことが頭から離れなかった。ホロデッキに戻るしかなかった。』
ニーリックスが上で寝ているが、バークレイは目を開けたままだ。起き上がった。

ドクターは両手を使い、医療質のベッドの上で寝ているバークレイの体を叩いている。
バークレイ:「あー、気持ちいいよ、ドクター。」
ドクター:「このマッサージは不眠症に効果的な治療法なんですよ、大尉。だが根本的に解消しようと思うなら、不眠症の原因を突き止める必要がある。」
「眠ろうとして目を閉じた途端に、心がザワザワ騒ぎ始めるんだ。」
「具体的に言うと?」
「あるプロジェクトが気にかかってる。自分はあらゆる角度から問題を追求しただろうか、ほかにもっとやれることがあるんじゃないか、これで十分だろうか。あー。」 マッサージが続く。
「不安を起こすハードな仕事か。仕事量を減らすよう、艦長に話した方がいいなあ。」
「いくら艦長でも、助けてもらうのは無理だと思います。」
「君はヴォイジャーにとって貴重な人材だ、ミスター・バークレイ。」
「ありがとう、ドクター。評価して頂いて感謝します。アッ!」

廊下を歩くバークレイに、通りがかりのチャコティが話しかける。「おやすみタイムか?」
「ああ。」
他のクルーも。「やあ、レッジ。」
『なぜかわからないが、僕は自分のアパートではホログラムの部屋のように安眠できなくなっていた。ヴォイジャーの方が、ずっとくつろいだ気持ちになれた。そうなんだ。』
「ああ…。」 バークレイはホログラムのベッドの上で眠りに入った。


※9: Class-B itinerant pulsar

※10: ミダス・アレイ MIDAS Array
「MIDAS アレイ」と書くべきかもしれません

※11: Mutara Interdimensional Deep Space Transponder Array
「ムターラ」は映画 ST2 "The Wrath of Khan" 「カーンの逆襲」に登場した星雲 (VOYでも星雲のクラス名として登場) からだと思われます。どう略したら "MIDAS" になるんでしょうか?

※12: ピート・ハーキンズ中佐 Commander Pete Harkins
(リチャード・マクゴナグル Richard McGonagle TNG第110話 "New Ground" 「新ワープ航法ソリトン・ウェーブ」のジャダー博士 (Dr. Ja'Dar) 役) 名のピートは訳出されていません。後にも登場。声: 池田勝

※13: 原語では名の「ピート」を使っています

※14: Admiral Paris
オーエン・パリス (Owen Paris)。トム・パリスの父親で、ジェインウェイの元上官

※15: Deep Space Nine
カーデシア建造、ベイジョー所有、惑星連邦管理による巨大宇宙基地。言わずと知れた第3シリーズの舞台

※16: transwarp probe

※17: ここも原語では「ピート」ですが、「司令官」と訳しています。「中佐」では?

※18: Communications Research Center

※19: Angie

※20: Barclay 11 gamma

※21: パリスは中尉、トゥヴォックは少佐 (現在は再び少佐) ですし、ジェインウェイをはじめとする髪型も初期のままです

バークレイは食堂に入る。「おはよう、諸君!」
キム:「おはよう、レッジ。」
パリス:「元気はつらつだな。」
バークレイ:「ああ、ぐっすり眠ったからねえ。」
キム:「だったらレッジ特製チーズオムレツ※22を作るエネルギーはあるだろ?」
パリス:「いいな、腹ぺこだあ。」
バークレイ:「悪いな、9時に重要なブリーフィングがある。コーヒーを飲む時間しかない。」
コーヒーを注ぐキム。「今夜の約束覚えてる?」
「ああ、わかってる。」
「ヴェロシティ※23の遊び方を教えてくれる約束だ。」
パリス:「いや、だめだよ。レッジは僕とホヴァーボール※24・ゲームをやるんだ。」
バークレイ:「落ち着けよ、どっちにも付き合うさ。」
トレスが慌てて入ってきた。「レッジ! 悪いんだけど、ワープコアの調整がまだうまくいかないのよ。」
「構わないさ。後で機関室に寄って、見てあげよう。」
「ありがとう。本当に助かるわ。」 すぐに出て行くトレス。
パリス:「ヴェロシティにホヴァーボール、ワープコア調整? 一人でどうやってこなすんだ。」
バークレイ:「僕の秘密を、教えてあげよう。僕は 2人いる。」

話しているハーキンズ。「デルタ宇宙域、セクター41751※25、グリッド 9。これがヴォイジャーのドクターが報告した船の位置です。ドクターのプログラムは 2年前にヴォイジャーから、転送されました※26。ヴォイジャーがまだ地球に向かっているなら、彼らが飛んでいる軌道の範囲を測定することができます。平均ワープ速度を 6.2 と推測し、様々な天文学上の障害物を考慮に入れますと……、ヴォイジャーはこの 3つのセクターのうちのどこかにいると推測できます。」 銀河系の図が拡大され、その後ヴォイジャーとセクターの位置が現れた。
他の提督たちと共にいるパリス提督※27。「通信はできないのか。」
「ご承知の通り、我々はミダス・アレイに配備したヴァルカン人と協力してます。」 アレイの構造図が映し出される。「現在テスト段階ですが、近い将来にはハイパー亜空間※28速度でシグナルを送る技術が使えるようになるでしょう。通常目的地に到着するまで何年もかかるメッセージが、ものの数日でヴォイジャーに届きます。」
「素晴らしい。返事ももらえるようになるのかね。」
「いいえ、提督。しかし我々がヴォイジャーを探していることは伝わります。しかしいずれはこっちがハイパー亜空間技術で送ったデータを、向こうが使って返事を出せるようになればと考えています。」
手を挙げようかためらっていたバークレイが、ついに声をあげた。「あのー! パリス…提督。」
ハーキンズ:「バークレイ大尉…」
「聞いて下さい、中佐。でも、もしかしたらヴォイジャーと送受信しあえる方法が、確立できるかもしれないんです。」
「大尉。時期尚早だよ。」
パリス提督:「構わんよ、ハーキンズ。話をさせなさい。聞こうじゃないか。」
バークレイ:「あのー…あー。ご承知の通り…あの…Bクラス巡回パルサーというのがありますねえ。あのー、当然提督は、ご存知でしょうねえ、はい。ニュートリノ放射というのも。あー…あー? あ、つまり私が言いたいのはですね、あのアレイだ、そうアレイがあれば、人工的に開くことができると思うんです。あー…あー、あの…特…特…特異点を!」
「ワームホールかね?」
拍手するバークレイ。「はい! そうです。それをコンジットとして使って話すんです、ヴォイジャーと。わかりますか?」
「大尉、その説明はわかりにくいが、なかなか興味深い。彼の説は実現可能かね。」
ハーキンズ:「バークレイ大尉は先走る傾向がありまして。残念ながら彼の提案は、我々の能力を超えています。」
バークレイ:「でも試すだけでも…」
「バークレイ大尉!」
「うまく説明できなかったのは私の責任です。しかしお言葉を返すようですが、失敗しても失うものは何もない。皆さんはデルタ宇宙域に、150人の仲間が取り残されているという事実を、すっかりお忘れになっています。」
パリス提督:「ヴォイジャーには息子も乗っている。一瞬も息子のことを忘れたことはないよ。」
「申し訳ありません。私はそういう意味でいったのでは…。」
ハーキンズ:「君はもう帰りたまえ、レッジ。」
「でも…」
「いいか、これは命令だ。」
バークレイは出ていった。

トロイは尋ねた。「その後自分の気持ちをどう整理したの?」
バークレイの部屋。外は既に夕方になっている。バークレイ:「どういう意味だい。」
「つまり、ブリーフィングの後でハーキンズ中佐と話したの? 謝った?」
「うーん。うーん、いや。僕は自分の計画を修正したかったから、すぐ仕事に戻ったんだよ。わかるかい。」
「具体的に話して。何をしたの?」
「うーん、僕には…自分のアイデアを…ぶつける相手が必要だった。考えに集中できるようにね。」
「筋は通ってるわ。じゃああなたは、プロジェクトの仲間の誰かにでも相談したわけね。」
「まあ、ちょっと違うな。」
「ホロデッキに戻ったのね。」
「僕が話せる人間は彼らだけだ。」
「人間じゃないわ。」
「わかってる。でも彼らは、私の仕事を助けてくれる。」
「ポーカーで? マッサージで? ホロデッキの部屋で眠って満足? 私には逃げてるように思えるわ。」
「リラックスしないと仕事に集中できない。」
「友人といてリラックスできないの?」
「友人って?」
「あなたはハーキンズ中佐の家に招かれたじゃない。それなのにホロデッキに行った。」
「君が考えているようなことはないよ、ディアナ。絶対にホロデッキ中毒※29が再発したわけじゃないぞ。」
「わかった。じゃあホログラムがどう役に立っているか教えて。」
「うん。彼らに自分の問題を話して、技術的な問題を解決するんだ。」

バークレイはヴォイジャーの会議室で声をあげた。「具体的な提案が欲しいんだよ、諸君!」
ホロ・ジェインウェイ:「大尉、もう一度話してちょうだい。順番にね。それでアイデアが浮かぶかもしれない。」
「まずは巡回パルサーがある。そしてムターラ・インターディメンション・トランスポンダー・アレイもある。ワームホールを作るには?」
トレス:「一晩中かかりそう。」
「あー。重力変動エネルギーを作り出せることはわかっている。でも…特異点を作り出すほどの、ハイレベルのパワーを出せるだろうか?」
キム:「大規模亜空間反応ってことか。」
「そうだ。そこが問題かも。」
チャコティ:「レッジ?」
「小規模にするんだよ。」
パリス:「どういうことだ。」
「実際どれぐらいのバンドの幅が必要なんだろう。ワームホールは普通巨大だけど、もしデータストリームを圧縮すれば…。」
トレス:「巨大なワームホールほどのコンジットは必要ない。」
ジェインウェイ:「何を思いついたの?」
バークレイ:「マイクロ・ワームホール。」
ホロ・トゥヴォック:「興味深い。」
ジェインウェイ:「とうとうやったわね、レッジ。」
バークレイ:「僕にはまだ、君達の力がいる。」
「チームを作って。必要な資源は何でも言って構わない。」

機関室にいるバークレイ。「パワーの、比率は? えーっと、およそ 60テラワットだ。これでバッチリ。」
チャコティはバークレイとキャッチボールをしながら話す。「それで足りるか?」
「多分ね。でも重力変動干渉を補正しなければならない。」
トレス:「どうやってやるの?」
「それなんだが、トランスポンダーにナローバンドフィルターを適用したらどうかな。」
チャコティ:「バークレイ、大当たり!」
だがボールを受け取ったのは、ハーキンズだった。「何をやってるんだ?」
バークレイ:「中佐!」
トレス:「あなたのお友達?」
ハーキンズ:「ああ、ぜひ紹介してくれないか?」
バークレイ:「コンピューター、人物消去。」
トレスとチャコティの映像が消えた。
ハーキンズ:「家に帰るよう言ったはずだ。」
バークレイ:「僕は…仕事をしてました。」
「これが仕事か? ホログラムで、ヴォイジャーのクルー達を作った。」
「ああ、でも心配ありませんよ。これは対話式の診断プログラムですから。問題解決を手伝ってもらうために、作ったんです。」
「いつからここにいるんだ。」
「ブリーフィング直後から。」
「ブリーフィングが終わったのは 10時間前だ。」
「あの…提督の前で中佐を困らせたことは、悪いと思っています。本当に…申し訳ありません。私は自分のアイデアを煮詰めて具体的なプランとして、示したかったんです。そして完成した。ワームホールでは大き過ぎるという中佐の考えは正しかった。だから縮小しました。」
「君は仕事以外、そのことにかかりきりだ。ホログラム記録をチェックすれば、君がここに入り浸りだったことがわかるだろう。」 「いいえ、そんな。いつもってわけじゃありませんよ。」
「ではどれくらいだ。」
「恐らく、1週間に…2、30時間でしょう。」
「ちょっと多すぎるとは思わんかね?」
「これもヴォイジャーとコンタクトするためなんです。」
「君をチームに連れてくる前、個人ファイルを見た。君は以前ホログラム中毒だったそうだな。私から見ると、君の病気が再発したようだ。」
「あの…誤解なさるもの無理ないと思いますが…」
「カウンセリングを受けろ。」
「そんなことより、私のアイデアに真剣に着目して下さい!」
ため息をつくハーキンズ。「もっと着目しているべきだったよ、君の行動に。私は君を放っておくことが、友人だと思っていたんだ。だから気づかなかった。君がどのようにヴォイジャーにのめりこんでいったのか。」
「それがそんなに悪いことですか。彼らの気持ちがわかりますか。故郷から 6万光年のところにいる彼らの気持ちがわかりますか。ヴォイジャーがどれほど…孤独か。」
「残念だが、レッジ、病気が治るまで、君はプロジェクトを降りろ。」
「それは困ります。」
「これは命令だ。このホログリッドと、ラボは、立ち入り禁止とする。うちに帰りたまえ。」
「嫌です。話を聞いてくれるまでは帰りません。」
「レッジ! 保安部員を呼びたくないんだよ。」


※22: cheese omelets

※23: velocity
飛び回る飛行体をフェイザーで撃っていくゲーム。VOY第94話 "Hope and Fear" 「裏切られたメッセージ」で登場

※24: hoverball
反重力浮遊装置と、限られた推進システムを装備した小さなボールを使ったスポーツ。TNG第67話 "Captain's Holiday" 「大いなるホリディ」など

※25: Sector 41751

※26: VOY第82話 "Message in a Bottle" 「プロメテウスの灯を求めて」での出来事

※27: Admiral Paris
(リチャード・ハード Richard Herd TNG第142・143話 "Birthright" 「バースライト」のルコー (L'Kor) 役) 階級章は四つ星 (大将)。VOY第24話 "Persistence of Vision" 「ボーサ人の攻撃」以来の登場 (ただしパリスの幻覚。階級章は三つ星 (中将))。なお俳優はそのエピソード、および VOY第103話 "Thirty Days" 「水の惑星に消えた夢」に声だけの出演をしたウォレン・マンソン (Warren Munson) から代わっており、2代目となります。声: 阪脩、TNG クイン提督、TAS スポック役。"Persistence of Vision" では茶風林、"Thirty Days" ではドクター役の中博史が兼任

※28: hyper-subspace
従来の亜空間通信を超えるものと推測されます

※29: holo-addiction
ホロデッキ中毒。TNG第69話 "Hollow Pursuits" 「倒錯のホログラム・デッキ」より

宇宙艦隊司令部。パリス提督のオフィスで、呼び出し音が鳴る。「何だ、ニコール※30。」
女性が応える。『また来ています。』
「15時に会議があると彼に伝えたのか?」
『もちろんです。でも帰ろうとしません。』
彼のテーブルの上には、パリスの写真が飾ってある。ため息をつくパリス提督。「通しなさい。」
『はい。』
バークレイが中に入る。「提督。あの…会って頂いて、ありがとうございます。」
パリス提督:「秘書を困らせないでくれよ。5分だけだ。」
「5分ですね。」
「かけたまえ。」
椅子に座るバークレイ。「あの…まずは謝罪いたします。昨日、図々しく話をしたことを。それも全て私がヴォイジャーのことを、思うがゆえで…」
「ああ。君のヴォイジャーに対する熱意はハーキンズから聞いておる。ホログラムで再生された私の息子やクルー達と、共に過ごしているそうだな。気持ちはわかる。正直言って心が乱れるよ。」
「提督のお気持ちもお察ししますが…しかし、それはヴォイジャーとコミュニケートするという私の計画を否定するものではありません。」
「ハーキンズは君の計画に否定的だ。」
「あれから計画を煮詰め、単純化しました。私はそれを試すチャンスが欲しいんです。私が正しいなら、トムと話すチャンスがあるということです。」 パッドを渡す。
パリス提督は息子の写真※31を見つめた。「ハーキンズが君をプロジェクトから外したのは妥当な処置だろう。中佐の判断だ。私は宇宙艦隊の処分について、個人的な感情を差し挟むつもりはない。」 パッドを返す。
「規約を破った私は罰を受けるべきだと思います。でもヴォイジャーのクルーは関係ない。だからお願いします。私はただあと一日ラボに入りたいだけなんです。その後でもしも私が間違っていたら、今度こそ任務を離れます。」
「…では君の計画を再検討させよう。アイデアが有効という結論が出たら、その時はハーキンズに続行を指示する。」
「でも私しかわからない…」
「私にできるのはそこまでだ。では。」
パッドを置くバークレイ。

夜になっても、バークレイの話を聞いているトロイ。「話し合いはうまくいったのね。」
バークレイ:「いや、何言ってる! そうじゃない。全然だよ!」
「提督は計画の再検討を約束したわ。」
「わからないのか! 彼はていよく僕を追っ払っただけで、中佐と同じさ!」
「落ち着いてよ。」
「これでわかったろ。なぜ君が必要か。」
「ええ、そうね。」
「君は宇宙艦隊のカウンセラーとして公務の立場で提督を呼び出し、僕の仕事復帰は何の支障もないと伝えて欲しいんだ。」
「……それはできない。」
「ああ…アアアー! なぜなんだ!」
「だってそうでしょ? あなたは激しい不安と不眠に悩まされているのよ。普通じゃない。あなたは最善を尽くした。ヴォイジャーのことはもう宇宙艦隊に任せた方がいいわ。あなたには治療が必要よ。」
「僕には悪いところなんてない。全く、正常だよー!」
「自分で言ったじゃない。ヴォイジャーに取りつかれたって。」
「だから何だ。取りつかれたことで、仕事がうまくいくなら、喜んで自分の身を捧げるさ。多少の不安なんて構わない。引き換えに立ち往生の宇宙船とコンタクトできるならね。僕の心理的状態より、ヴォイジャーの方がずっと大事なんだよ!」
「ヴォイジャーは確かに大事よ。でもあなたも大事なの。」
「ヴォ…ヴォイジャーと、……クルーは……僕の全てだ。」
トロイはバークレイの隣に座った。「詳しく聞かせて。」
「エンタープライズを降りてから変わってしまった。全てがね。喪失感だよ。まるで僕は……家族をなくしたよ。」
「それでホロデッキで新しい家族を作ったわけね。…彼らは本物じゃないのよ。」
「僕はそうするしか、なかったんだ。それしかなかった。」
「初めてエンタープライズに乗ったときのことを覚えてる? うまくなじめなくて悩んだでしょ? でもしばらくしたら、新しい友達を作り始めた。この地球でも同じようにすればいいのよ。」
「だめだ。だって、やり方がわからない。」
「私も手伝うから。」
「でも、君は明日出発する。そうだろ?」
「ピカード艦長※32にお休みをもらえるよう、頼むことに決めたわ。旧友と一緒に過ごすためなら、そのぐらい。」
「ああディアナ、そんな…そんなことしなくていいよ。」
「私を追い返すつもり?」 トロイは微笑んだ。

バークレイは、やはり眠れずにいた。ニーリックスに話しかける。「ニーリックス、ごめんよ。やっぱり行かなきゃ。だめ、だめ。そんなに鳴いたってだめだよ。」 ネコを置き、立ち上がる。

制服に着替え、道具を持ったバークレイは研究センターに着いた。ドアの前のコンピューターに触れる。
『認証コードが必要です。』
「バークレイ・アルファ・1.7・ガンマ※33。」
『アクセス不能。認証コードは取り消されています。』
バークレイは下部のパネルを開け、持ってきた道具を使う。「コンピューター、認証コード、バークレイ・アルファ・1.7 ガンマでもう一度。」
『アクセスしました。』
ドアが開き、中へ入る。機械のスイッチを入れていくバークレイ。「コンピューター、ミダス・アレイ、インターフェイスを接続。」
アレイの図が表示される。


※30: Nicole
声: 岩本裕美子

※31: 不思議なことに、この写真が最初に映った時と記章の位置が逆になっています。本来は後に映った方が正しいのですが。さらに制服がヴォイジャーのものに似ていますが、よく見ると首元のシャツや前のファスナーがないため、これは昔のアカデミー候補生のものです。となると…これは本当はパリスではなくて、TNG第119話 "The First Duty" 「悲しみのアカデミー卒業式」でパリス役のロバート・ダンカン・マクニールが演じたニコラス・ロカルノ候補生の写真の使いまわしだと思われます。背景もそのエピソードのものっぽいですね

※32: ジャン・リュック・ピカード艦長 Captain Jean-Luc Picard
エンタープライズ-D・E の艦長
ブースビーのお世話になった者として、VOY第98話 "In the Flesh" 「偽造された地球」で言及されたこともあります

※33: Barclay alpha 1-7 gamma

指示を与えていくバークレイ。「コントロール・マトリックス作動。」
ミダス・アレイが作動し始め、中央の物体に向けてエネルギーが集中される。
『マトリックス、作動しました。』
「重力量子エミッター、パワー最大。」
『エミッター始動中。』
「アレイの周囲をスキャンして、Bクラス巡回パルサーの位置を測定しろ。」
『パルサーは、座標 227-41、マーク 6 に感知しました。』 コンピューターにパルサーの位置が出る。
「よーし、いいぞ。パルサーに向けて、60テラワットのタキオンビーム発射。」
『タキオンビーム、発射。』 アレイの向きが変わり、ビームが発射される図が表示される。
「コンピューター、何分かかる。500万テラダインの重力変動波を発生されるのに、十分なレベルに達するまで。」
『およそ 17分です。』
継続的にミダス・アレイからタキオンが発射されている。

バークレイ:「コンピューター、座標 343、27 にマイクロ・ワームホールは存在するか。」
『スキャン中。存在します。』
「やっぱりな! 位相配列を調整し、ワームホールの軌道をデルタ宇宙域、グリッド 9、セクター41751 に向けろ。」
『軌道、設定完了。』
「宇宙艦隊の緊急チャンネルにつなげ。特異点に向けて、送信…スタート。」
『チャンネルつなぎました。』
「宇宙艦隊司令部より、U.S.S.ヴォイジャー。どうぞ、ヴォイジャー。ヴォイジャー、聞こえるか。こちら…大尉の、レジナルド・バークレイ。」
ドアが開く音がする。「そこから離れるんだ。」 保安部員たちを連れたハーキンズが立っていた。通信を切るバークレイ。「中佐。メッセージを送信しました。」
「離れたまえ、バークレイ大尉。」
「わかった。わかりました。コンピューター、コントロールをホログリッド・プログラム、バークレイ・パイ・3※34 に転送。アクセス禁止!」 逃げ込むバークレイ。
「止めろ! 必要なら強硬手段だ。」 追う保安部員。

ターボリフトから降りたバークレイは、ドアを作動だけさせて中には入らず、横へ隠れた。勘違いしてドアの中へ入っていく保安部員たち。
そこへトゥヴォックがやってきた。バークレイ:「トゥヴォック! 男を見なかったか。」
「見ていない。」
「艦隊の保安部員を装っているが、偽者だ。」
「侵入者か。」
「私を追ってきた。助けてくれ。」
コミュニケーターを叩くトゥヴォック。「トゥヴォックより全クルー。警戒警報。コンピューター、船内に無許可の人物が侵入。現在地は。」
『身元不詳の人物が 2名、第4デッキ、セクション 8 にいます。』
「フォースフィールドで隔離。」
うなずき、走り去るバークレイ。

保安部員はフィールドで足止めされた。
外のハーキンズに伝える保安部員※35。『保安部よりハーキンズ中佐。2人ともフォースフィールドで隔離されました。プログラムを終了できませんか。』
「今やってる。」
コンピューター:『アクセス拒否。ホログリッド・コントロールは暗号化されています。』
連絡を入れるハーキンズ。「ハーキンズより保安部。保安部員をもっとよこしてくれ。」

機関室に入るなり、バークレイは命じる。「コンピューター、ワームホールの軌道をデルタ宇宙域、グリッド 11、セクター64238※36 に修正、再送信。」
『軌道、設定完了。送信中。』
トレスが尋ねる。「ワームホール? 何なの?」
「友人を助けたいだけなんだ。応答はあったか?」
コンピューター:『ありません。』
「コンピューター、ワームホールの軌道を修正。」
トレス:「レッジ!」
保安部員が駆けつけた。「大尉、同行願います。」
トレスはフェイザーを取った。「私に任せて。」
2人を撃つが、ホログラムであるため全く効果がない。
逃げるバークレイ。ジェフリーチューブに入る。「コンピューター、ジェフリーチューブの扉、J 53 を封鎖。」
上がれない保安部員。

ハーキンズ:「コンピューター、ホログリッドの全パワー遮断。」
『実行できません。メインパワー・コントロールが暗号化されています。』
「賢いよ、レッジ。」
『保安部より中佐。大尉を見失いました。』
「私に考えがある。今そちらに行く。」

機関室に入るハーキンズ。トレスが気づく。「あなた、レッジの友人よね。友人なら、彼のために何かできないの?」
ハーキンズは無視する。「コンピューター、第1次冷却システム停止。」
「気は確か? そんなことしたら、ワープコアが爆発するわ!」
「その通り。」
トレスをフェイザーで撃つハーキンズ。映像が消えた。

バークレイはブリッジに入った。ジェインウェイが尋ねる。「バークレイ大尉。私の船で何が起きているのか、説明して。」
「私はヴォイジャーの利益を第一に考えています。私を信じて頂きたい。」
「あなたを疑う理由は何もない。」
「コンピューター、ワームホールの軌道をデルタ宇宙域、グリッド 10、セクター3658※37 に修正、再送信しろ。」
『軌道、設定完了。送信中。』
キム:「誰に送信してるんだ。」
『警告、ワープコア爆発まで 45秒。』
ジェインウェイ:「ブリッジより機関室。状況は?」
ハーキンズと保安部員たちもブリッジへやってきた。ハーキンズ:「プログラムを終了させろ、レッジ。」
ジェインウェイ:「艦長より保安部。ブリッジに侵入者。」
バークレイ:「コンピューター、サイエンス・ステーションにフォースフィールド。」 バークレイの前にフィールドが現れる。
『警告、ワープコア爆発まで 30秒。』
ジェインウェイ:「ハリー。機関室に行って、爆発を止めて。」
ハーキンズ:「フォースフィールドなんて役に立たんぞ。もう終わりだ。」
バークレイ:「これが最後のチャンスなんです。」
『ワープコア爆発まで 20秒。』
ジェインウェイ:「艦長より全クルーへ。脱出せよ!」
ブリッジを出て行くクルー。『ワープコア爆発まで 10秒。9、8…』
ハーキンズ:「どちらにせよ、プログラムはもう終わる。
『7、6、5…』
バークレイ:「さようなら、艦長。コンピューター、プログラム終了。」
ジェインウェイもブリッジも消えた。

デルタ宇宙域の、本物のヴォイジャー。天体測定ラボにいるセブンのところへ、ニーリックスがやってきた。「下準備はバッチリだぜー!」
「お前に歌を教えるのは、時間の無駄という結論だ。」
「そんな…俺、練習してきたよ。」
「練習を続けても無意味だ。お前の声帯は全音階の音を作り出すようにできていない。リズム感の欠如は言うに及ばずだが。」
ため息をつくニーリックス。「ソニックシャワーでは上手に聞こえるけど。」
「お前の場合、シャワー室でだけ歌うことだ。」
反応がコンピューターにある。連絡するセブン。「天体測定ラボよりブリッジ。」
ジェインウェイ:「どうぞ、セブン。」
「今、座標 194.6、35 に、マイクロ・ワームホールらしきものを感知した。」
「マイクロ・ワームホール?」
「それを通じてメッセージが送信されているようだ。……宇宙艦隊の緊急用チャンネルだ。」
ブリッジのジェインウェイたちは、互いに顔を見合わせた。


※34: Barclay pi-3

※35: (ヴィクター・ビヴァイン Victor Bevine DS9第106話 "Things Past" 「秘められた過去」の Belar、映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」の保安部員、ENT第50話 "First Flight" 「運命の飛行」の管制官役)

※36: Sector 64238

※37: Sector 3658

ジェインウェイは言う。「聞いてみましょう、ハリー。」
音声が乱れている。
「シグナル装置にナローバンドを適用して。」
明瞭になった。『聞こえるか。こちら…大尉の、レジナルド・バークレイ。』
キム:「これだけだ。バークレイが誰か知らないが、送信をストップした。」
トゥヴォック:「マイクロ・ワームホールが、毎秒 0.2%の速度で崩壊していきます。」
ジェインウェイ:「残された時間はわずかね。」
チャコティ:「何をするんです?」
「メッセージの返事を送るのよ。バークレイ大尉が聴いてるといいけど。」

バークレイは話している。「うまくいくはずでした。なぜ失敗したのかわかりません。」
そこへパリス提督がやってきた。「やっと捕まえた! バークレイ大尉のプランを見なおしてみたが、試す価値はあるな。」
ハーキンズ:「提督の許可なしで既に試しました。失敗でした。」
「それは残念だ。」
バークレイ:「私もです。私を信頼して頂き、感謝しますが、自分にはそんな価値はない。」
ハーキンズ:「提督、大尉の処分はどうしましょう。大尉はラボに侵入して、ミダス・アレイにアクセスし、抵抗しました。」
パリス提督:「苦しい立場に追い込んでくれたものだ。ヴォイジャーとのコンタクトに成功して…」
コンピューターに反応がある。
技術者※38が報告する。「何かを受信しました。」
パリス提督:「どこからだ。」
「座標 3437.6、27 です。」
バークレイ:「ワームホールだ。」
ジェインウェイの声が届いた。『宇宙艦隊司令部。応答せよ。』
パリス提督:「ヴォイジャーだ!」
ハーキンズ:「レッジ、至急雑音を取り除くんだ。」
うなずくパリス提督。バークレイも慌ててすぐにコンピューターを操作する。「バンドフィルターを 0.3キロヘルツ下げて。」
ジェインウェイ:『こちらキャスリン・ジェインウェイ艦長。聞こえますか?』
ハーキンズは微笑んで言った。「君に話しかけているんだ。」
バークレイ:「艦長。こちら…宇宙艦隊司令部。レジナルド・バークレイ大尉です。」
ジェインウェイ:「声が聞けて良かった、大尉。私達はこの瞬間を待ち続けていました。」
「私達もですよ。残念ながら、マイクロ・ワームホールは崩壊しつつあります。残された時間はわずか。」
「了解。至急そちらにヴォイジャーの日誌と、クルーの報告書、航行記録を送信することにします。」 ジェインウェイの合図を受け、うなずくトゥヴォック。
『了解しました。こちらからは新しいハイパー亜空間テクノロジーのデータを送ります。これからも通常コンタクトのために使って下さい。通信システムデータも含まれているので、修正をお願いします。』
「できるだけ早く実行します。」
「あの…もう一人、ぜひ話したいという方がいますので、代わります。」
「こちらパリス提督。」
その声にハッとするパリス。ジェインウェイ:「お久しぶりです。」
『みんな無事でやっているか。』
「ええ、もちろん。模範的なクルーばかりですから。息子さんも含めて。」
「伝えて欲しい。早く会いたいと。息子を誇りに思う…」 音声が乱れてきた。
「聞こえています。」
バークレイ:「ワームホールが崩壊する。」
パリス提督:「ヴォイジャーを地球に戻すために最善を尽くそう。」
ジェインウェイ:「ありがとうございます。ヴォイジャーのためにドッキング・ベイを開けておいて下さい。ヴォイジャーは…」 音声が切れた。
バークレイ:「終わりだ。消えてしまった。」
ため息をつくハーキンズ。「やったな、レッジ。君を疑って、悪かった。」
パリス提督:「なぜそんな悲しい顔をする。」
バークレイ:「それは…終わってしまったからです。」
「それは違う。ヴォイジャーの地球帰還プロジェクトは、今始まったばかりだ。君のおかげで。」

ヴォイジャーの食堂。シャンパンを注ぐニーリックス。
トレス:「誰かバークレイ大尉を知ってる?」
ドクター:「勝手に彼の個人ファイルを見せてもらったが、大尉はなかなか面白いキャリアの持ち主だ。病歴も変わっているがねえ。彼は様々な病気から回復してる。例えば…転送恐怖症※39とホロ中毒だ※40。」
ジェインウェイ:「どんな病歴があろうと、彼は私達にたどり着いた。」
チャコティ:「昇進させるべきだな。」
セブン:「バークレイ大尉から送信されたデータ分析が終わった。ハイパー亜空間テクノロジーは見込みがある。将来的には、地球との通信が可能だな。」
集まったクルーはざわつく。ニーリックス:「そりゃ祝杯ものッスねえ。」
ジェインウェイ:「トム、乾杯の音頭を。」
パリス:「……俺の、父に。健在だとわかって嬉しかった。そして新しくヴォイジャーの名誉クルーと認められた、レジナルド・バークレイ大尉に。会ったことないけど。」
「賛成。バークレイ大尉に。」

乾杯。トロイ:「おめでとう。」
バークレイ:「でもこんなに祝ってもらう価値が僕にあるのかな。」
「なぜよ? 立派な業績だわ。」
「君の力なしでは、なし得なかった。」
「ハーキンズ中佐はどう言ってるの?」
「うーん、多分満足していると思うよ。」
「当然でしょ? あなたはよくやったわ。」
「これで、いわくつきの男でも、奥さんの妹とデートできるよな?」
「新しい時代ね。それで? そのラッキーな女性は? 詳しく聞かせて。」
「えーと、彼女の名前は、ホープ※41だ。」
「ネコなの?」
「いや。」 ニーリックスがいきなり近づいてきた。シャンパンをこぼしそうになる。「あー、当然ネコ好きだけどね。」
笑うトロイ。バークレイはニーリックスにキスをした。


※38: (Mark Daniel Cade)

※39: transporter phobia
TNG第128話 "Realm of Fear" 「プラズマ放電の謎」より

※40: バークレイが自分の開発チームの一員だったということは…?

※41: Hope

・感想
本国放映当時も大きな話題となったエピソードがついに日本でも放送。顔見せ程度ではなく、TNG のキャラクターが活躍するのはファンにとっては嬉しいですね。バークレイの声優が代わったのは残念ですが、新しい方が下手というわけではないので、今後は気を遣って頂きたいですね。
その代わりといってはなんですが、途中まではヴォイジャーのクルーが全く出てこず、さらにホログラムではない本物となると終盤になってやっとで登場しました。ヴォイジャーしか観ていないファンにとっては少し複雑な気分かもしれませんねぇ…。
とはいえ、途中のいつもの「中だるみ病」を除けば、最後のシーンも感動できる内容で良かったです。以前の内容を引き継ぎつつ、今後も重要な意味をもつエピソードですね。
今後もこの「系譜」のエピソードは特別版にする予定ですので、お楽しみに。


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