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ヴォイジャー エピソードガイド
第83話「宇宙の闇に棲む狩人」
Hunters

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・イントロダクション
宇宙空間を伝わってくる通信。かなり乱れ、雑音が混じっている。『……こちらは宇宙艦隊司令部。U.S.…イジャーへ。このメッセージを…信したら、よく…証してもらいたい。……な情報が…。……こちらは宇宙艦隊司令部。……ヴォイジャーへ。……を受信したら、……い。……こちらは宇宙艦隊司令部。U.S.S.ヴォイジャーへ。このメッセージを受信したら、……してもらいたい。重要な情報が…』
ヴォイジャーでは通信を受信していた。キムに尋ねるジェインウェイ。「どうなったの?」 「わかりません。通信が突然、切れました。」 「発生源を特定して、アクセスして。」 「これは多分…。艦長、エイリアンの中継ステーション※1群を通って来てます。ドクターをアルファ宇宙域へ送った、あのネットワークですよ。」 チャコティ:「艦隊本部が同じようにネットワークを使ったんでしょう。」 ジェインウェイ:「ハリー、今のメッセージからノイズを取れる?」 キム:「お任せを。」 パリス:「必ず連れ戻すってメッセージですよ。」 トゥヴォック:「とはいえ、これほど早く具体策が見つかったとは思えませんね。」 ジェインウェイ:「メッセージが届いただけでも大進歩ね。」 キム:「OK。受信した分は処理完了しました。ノイズはほとんど取れてます。いきます。」 通信が再生される。 『こちらは宇宙艦隊司令部。U.S.S.ヴォイジャーへ。このメッセージを受信したら、よく検証してもらいたい。重要な情報が…』 キム:「これで全部です。大量のメッセージが、ステーションのどれかに残ったままです。」 ジェインウェイ:「どのステーションかわかる?」 「ここから 3.8光年の距離です。方角は…274、マーク 13。」 「トム、コースセット。」 チャコティ:「前回無断使用した時は、持ち主はいい顔しませんでしたよ。」 「必要なら交渉する。こんなチャンス逃せないでしょ。メッセージの残りをなんとしても聞かなくちゃ。」
異星人の船※2。『こちらは宇宙艦隊司令部。U.S.S.ヴォイジャーへ。このメッセージを受信したら、よく検証してもらいたい。』 壁に頭蓋骨が並んでいる。その船に乗っているヒロージェン※3は部下※4に尋ねた。「誰からの信号だ。」 「不明です。銀河の向こうから来てる。」 「受信してる船を探すんだ。」 「我々の中継ステーションへ向かっています。」 「インターセプトだ。」 ヒロージェンはそれぞれに別の色がついた液体が入った容器から、白い液体を指につけ、自分のヘルメットの左側に塗った。

※1: ヒロージェン中継ステーション Hirogen relay station
VOY第82話 "Message in a Bottle" 「プロメテウスの灯を求めて」より

※2: ヒロージェン艦 Hirogen ship

※3: アルファ・ヒロージェン Alpha-Hirogen (タイニー・ロン Tiny Ron DS9 メイハードゥ役) VOY "Message in a Bottle" に引き続き登場。ただし声優は変更。声:大友龍三郎

※4: ベータ・ヒロージェン Beta-Hirogen (Roger Morrissey) 声:佐々木誠二

・本編
メッセージについて話すクルー。キム:「救助方法が見つかったのかなあ。」 パリス:「6万光年の彼方だぞ。どうやって救助するってんだ。」 「僕らが地球を離れてる間に新しい技術が生まれたのかも。ワープより進んだ航法が開発されたのかもしれない。」 トゥヴォック:「我々がデルタ宇宙域に来たのも科学のなせる業だ。新技術で戻るというのも、あながち的外れではない。」 チャコティ:「ガンマ宇宙域へのワームホールは見つかってます。ここへ抜けるのがあったのかもしれない。」 ジェインウェイ:「あれこれ想像を巡らすのも無理ないけど、後でガックリ気を落とさないように自制してね。」 キム:「無事を伝えられただけでもね。」 「連絡が届いた時は、そこら中でお祝いがあったでしょうね。」 チャコティ:「そうですね。でも、苦しみが蘇った人もいるんじゃないですか。我々のことはもうあきらめてた。弔いも済ませ、慰めを見つけ、新しい暮らしを始めた。なのに生きていた。遥か彼方で死んでるも同然で。」 キム:「複雑な人もいるでしょうけど、でも、うちの親は違う。」 ジェインウェイ:「まあ少なくとも、中継ネットワークがアルファ宇宙域まで届いてることはわかった。艦隊からのメッセージが入るようになったってことは、地球と常に連絡が取れるってことよ。ホッとするわね。」 「ほんとに。でも僕らの救助方法が見つかったんなら、ホッとするんですけどね。誰がどう言おうと、僕は帰ります。」
「今朝医療室に来るはずだったろ。週一度の体調チェックだ。どこにいた。」 天体測定ラボに入ったドクターはセブン・オブ・ナインに言う。 「ここで仕事をしていた。」 セブンをトリコーダーで調べ始めるドクター。「それほど緊急の仕事ってのは何なんだ?」 「艦隊司令部からのメッセージを可能な限り引き出しているところだ。」 「ふむ。職務熱心なのは感心だが、定期的にインプラントのモニターが必要なんだよ。」 「問題はない。」 「いや、ある。血中の赤血球レベルが低下してるぞ。最後に再生してから何時間だ。」 「58時間。」 「道理で無理もない。セブン、前にも話しただろ。一日 3時間はアルコーヴで再生しろ。」 「再生なしで 200時間仕事をしたこともあるんだ。」 「それはボーグの時だ。大部分が人間だってことを忘れてる。」 「言っておくが一度も忘れたことはない。もう一つ来た。」 「何だって?」 「単語をもう一つダウンロードした。これで 6つ目だ。」 「58時間かけて単語をたった 6つ。ステーションに着いてから始めた方が効率的じゃないのか?」 「艦長には非常に重要なメッセージだ。」 「わかってるとも。実際、私がいなければこのメッセージは届いてないんだ。自分のマトリックスの危険をさらしてアルファ宇宙域へ行った。地球へ戻ったら、私はきっとヒーローだろうなあ。ヴォイジャー・クルーを地球へ導いた緊急医療ホログラム。いい響きだとは思わないか。」 「それよりお前のプログラムは削除され、最新バージョンにアップグレードされると考えた方が現実的じゃないか?」 「冗談じゃない。これほど進歩した EMH は私だけだ。実際、研究対象になるかもしれないな。議論の的になる。尊敬されるぞ。」 船が揺れた。「何だ」というドクター。
ジェインウェイ:「報告を。」 キム:「何らかの重力場に遭遇したようです。」 チャコティ:「発生源は。」 「我々が今向かってる中継ステーションですね。」 ジェインウェイ:「ステーションはまだ 2光年も先なのよ。重力場がここまで届くなんてありえない。」 チャコティ:「強力なエネルギー源をもってるのかも知れません。」 キム:「姿勢制御を補正しました。もう大丈夫です。近づかなければ。」 トゥヴォック:「艦長、船影を発見。左舷前方、80万キロの距離です。」 ジェインウェイ:「スクリーンへ。」 停止した船が映し出される。 トゥヴォック:「漂流中です。推進システムダウン、兵器ダウン、生命維持システムダウン。」 キム:「ヒューマノイドの男性を 1名感知しました。死んでます。」 ジェインウェイ:「転送可能になり次第医療室へ転送して。死因を知りたいから。」
ドクターに尋ねるジェインウェイ。「原因は何なの?」 ベッドの上には、中身がなくなった皮状の死体が置いてある。 「この男性は骨も内蔵も完全に……抜かれています。全骨格を抜き出すために何らかの外科的処置がされていますね。骨に筋肉組織、靭帯、腱、内蔵全部です。」 「死後どれくらい経ってる?」 「限定できません。1週間から 1月くらい。」 セブンが言う。「以前見たことがある。ボーグが生命体5174※5 の船に遭遇した時のことだ。死体はこれと同じだ。」 「誰が何のためにやったか調べたか。」 「そんなことは無意味だ。」 ジェインウェイ:「遺体を船に戻して。仲間が探しに来るかもしれない。」 ドクター:「了解。」 「あのステーションまで行ったら、天体測定ラボのデータプロセッサーでメッセージをダウンロードして。」 セブン:「わかった。」
「艦長日誌、宇宙暦 51501.4。2日間ハイワープで飛び、長距離ヴィジュアルセンサーで中継ステーションを捉えられる距離まで来た。」
ワープから抜けるヴォイジャー。スクリーンにステーションが映されている。 パリス:「予想とはだいぶ違うなあ。古めかしいぞ。」 キム:「放射性炭素の減衰率から見て、少なくとも 10万年前のものです。」 チャコティ:「生命反応をスキャンしろ。」 キム:「反応なし。誰もいませんね。」 「一安心だな。また揺れるぞ。」 パリス:「重力場です。」 キム:「副長、センサーに間違いがないなら、このステーションは量子特異点※6を動力源にしてますよ。」 パリス:「ブラックホールをか?」 「かなり小型です。直径 1センチほどでしょう。それでも、4テラワットものエネルギーを放出してます。」 チャコティ:「ブラックホールをステーションに組み込んだっていうのか? その周りにステーションを作り、エネルギーを利用してる。すごい技術だ。」 「もっと近づいて構わないのか?」 キム:「それは勧めないね。重力の渦に巻き込まれる。」 チャコティ:「船を後退させろ。」 パリス:「了解。」 「ブリッジより艦長へ。」 ジェインウェイ:『どうしたの?』 「ここまでが接近の限界です。」 『了解。』
セブンと共に天体測定ラボにいるジェインウェイ。「メッセージのダウンロードを試してみるわ。」 「データストリームが通信中に劣化してる。寸断されて配置が変わってるようだ。メッセージを解凍して正しく並び替えるにはかなりかかる。」 「できるだけダウンロードして。継ぎはぎ作業は後でいいわ。」 「1ブロックアクセスした。テキストをダウンロードしてる。」 「『どんなに会いたいか』、『よく話をします』、『どうしているのか』。妙ね。司令部にしてはセンチメンタルすぎるわ。『子供たちはもう大きくなって』……」 ジェインウェイは気づいた。「手紙だわ。地球からの手紙よ。」

※5: Species 5174

※6: quantum singularity
空間現象。VOY第69話 "Scorpion, Part II" 「生命体8472(後編)」など

ニーリックスに何枚ものパッドを手渡すジェインウェイ。 「あなたを配達係に任命するわ。ダウンロードしたものから順次渡すから。」 「喜んでやらせてもらいますよ。初めてだ。みんながあんなに喜んでるのは。」 「4年ぶりに届いた家族からの便りですからね。」 「宝物みたいに扱いますよ。」 「配り終える頃には、次が出てるから。」 ニーリックスは歩いて行った。セブンがジェインウェイを呼ぶ。「艦長、奇妙なものを見つけた。データにあるのは手紙だけではない。」 「どういうこと?」 「メッセージの下に別のデータストリームがあるようだ。暗号化されている。」 「暗号化?」 「かなり大きなテキストらしい。もしかすると地図かも。」 「その部分を取り出せる?」 「すぐには無理だ。手紙をダウンロードしてからなら、可能だが。」 「……そう。期待するわ。そこにアルファ宇宙域へ帰る方法が書かれてたらって。あなたはどうなの? 今回のこと、どう思ってる? 地球へ帰れるかもしれないのよ。」 「私にとっては感傷的な要素はない。地球へは行ったこともない。」 「でも家族がいるかもしれない。」 「……それは考えなかった。」 「従兄弟やおじいさん、おばあさん。結構感傷的要素があるんじゃない?」 セブンはしばらく考えていたが、作業に戻った。
ブリッジへ入り、咳払いをするニーリックス。「幸せの使者、ニーリックスだ。地球からの最初の手紙だよ。」 「誰になんだよ」と尋ねるキム。 「えー、この手紙は、チャコティ副長宛てですなあ。」 受け取り、早速読み始めるチャコティ。「誰からなんです?」と聞くニーリックスに、「古い友人だ。私をマキに呼びいれた人だ」という。それを聞き、ブリッジのマキ出身の士官たちも顔を見合わせる。 「部屋で読むとしよう。トム、ブリッジを頼む。」 ブリッジを出て行くチャコティ。 ニーリックスも出ていこうとするのを観て、キムは尋ねた。「ニーリックス、待ってよ。ほ、ほかにはないのか?」 「いやあ、ブリッジクルーにはね。今はな。そう焦るな。」
トゥヴォックの部屋のドアチャイムが鳴った。「入れ。」 ニーリックスが入る。「ヴァルカンの旦那良かったな、あんたにも手紙だ!」 「済まないニーリックス、そこに置いておいてくれ。」 パッドを置くが、出て行こうとしないニーリックス。トゥヴォックは「まだ何か?」と言う。 「読まないんかい?」 「読むとも。」 「いや今読まないのか?」 「週一度の戦術システムチェックだ。手紙はこれを、終わらせてから読む。」 「手紙よりそんな、システムチェックを先にするってのかい。」 「置いておいたからといって、メッセージの中身が変わるというものでもない。」 「そういう問題じゃないだろうが。何て書いてあるか、早く読みたくないのか?」 「もちろん内容は確認するつもりだ。」 「すごく大事なことが書いてあるんだよ!」 「中身を、読んだのか。」 「あ……ほんの 2、3行だけさ。宛先を見る時にちょっとね。見る気はなかったんだけど、あ…何なら読み上げようか?」 「では頼む。」 ニーリックスは椅子に座り、読み始めた。「『我が夫へ。あなたが生きていると知らせが入りました。子供たちとエイモンク神殿で神官にお願いし、無事の帰還を祈りました。』 家族はいいねえ!」 「アモナック※7だ。」 「何?」 「アモナック神殿という。ヴァルカン最大の神殿だ。」 「アモナックね。『大切な報告があります。長男のセク※8がポンファーを済ませ、結婚し、父親になったのです。健康な女の子で、あなたのお母さんにちなみ、トゥーミニ※9と名づけました。』 あんたおじいちゃんだよ! すごいなあ、良かったじゃないか。これから何て呼ぼう。じいちゃんか? じいじいか?」 「トゥヴォック少佐のままで結構だ。ありがとうニーリックス、後は自分で読むとしよう。」 「いいから早く読みなよ、すぐにな。後回しにしないで。まだビックリがあるかもしれないぞ。」 部屋を出ていくニーリックス。トゥヴォックはパッドを台の上に置き、チェックに戻った。……だが再びパッドを手に取ると、座って手紙を読み始めた。
ジェインウェイがパッドを持ってブリッジに入る。艦長席に座っていたパリスが尋ねた。「艦長にも手紙が?」 「ええ。今ダウンロードしたばかり。作戦室にいるわ。」 「了解。」
ソファーに座り、一呼吸置いてからパッドを見るジェインウェイ。『マーク・ジョンソン※10』という名前がある。「マークから。」 読み始めるジェインウェイ。一瞬笑いがこぼれる。だが、だんだんと顔がこわばっていった。ジェインウェイは読むのをやめ、顔を上げた。
機関室のトレスのところにチャコティが来た。 「手紙は来てないのか?」 「来るあてもないし。」 「スヴェータ※11を覚えてるか。」 「当然。」 「俺に手紙が来た。」 「何で彼女から?」 話そうとしないチャコティ。「チャコティ、何なの。」 「最悪の事態が起きた。1時間前に読んだのに、まだ信じられない。みんなに伝えなきゃならないが…何といえばいいのか。終わったんだベラナ、マキはもうない。」 「仲間は何万人といるじゃない。」 「一掃されたんだ。カーデシアは味方を見つけた。ガンマ宇宙域の種族で、船と武器を提供したらしい。」 「クターラは? ロベルトは? 私たち以外死んだっていうの?」 「ほとんどな。スヴェータたち生き残りは囚われた。」 「許さない!」 「ベラナ。」 「やめて! 慰めようとなんてしないで、怒りは抑えられないから。仲間だったのよ! 信じることのために命もかえりみず闘ってきた。そのかけがえのない仲間たちが、殺されたなんて。」 「みんな死は覚悟してた。承知の上だ。」 「許されていいはずがない。いつの日か、必ずかたきをとってやる。戻ったら必ず。」 チャコティはトレスの肩に手を置き、歩いて行った。※12
料理の皿を持って、パリスと同席するキム。「トム、手紙あと 30はダウンロードされたってさ。」 「へえ。」 「もうすぐニーリックスがここへ配りに来るぞ。」 「お前さあ、これ何だと思う?」 フォークに料理を刺すパリス。 「これって?」 「この謎の料理だよ。チキンみたいな味もするが、コーンの皮っていう気もしないでもない。」 「今食い物どころじゃないだろ。」 「正体不明の物は、腹に入れたくない。」 「トム、地球からの手紙だぞ。早く見たくないのか?」 「いや、別に。」 「強がるな。」 「でも、まあまあの味だな。」 ニーリックスがやって来た。「ほーら来た」というキム。ニーリックスは箱を持っており、その中からパッドを出す。「お待たせ! セブンが手紙をまたいくつかダウンロードしたぞ。これはスーザン・ニコレッティ※13宛てだ。いるかい?」 ニコレッティ:「いるわ。」 「フィッツパトリック※14。」 フィッツパトリック:「俺だ。」 ニコレッティ:「ありがとう。」 ニーリックス:「あー、キョート※15? ゴルワット※16!」 ボリア人女性が受け取る。「ありがとう。」 ニーリックス:「アッシュモア※17。ドラード※18。」 ドラード:「はい。」 「また僕のはない」というキムに、「途中だろ。待てよ」というパリス。 ニーリックス:「そして最後が…パーソンズ※19。」 パーソンズ:「私。」 「呼ばれなかった人は残念だったが、セブンがまだがんばってるから。」 キムは立ち上がり、尋ねた。「ニーリックス、30以上あるんじゃなかったのか。」 「30? 誰がそんなこと言った。」 「みんながそう言ってたよ。」 「馬鹿なデマに振り回されるなよ。」 食堂を出て行くニーリックス。「デマか。」 ため息をつくキム。 「昼飯食わないのか?」と聞くパリス。 「食欲ない。」 「あんまり期待するなよ。期待しなきゃ、ガッカリもしない。」 「お前とは違う。」 キムは去った。
作戦室で独り座り、考えているジェインウェイ。チャイムが鳴る。「入って。」 部屋へ入るセブン。「データストリームのダウンロードに困難が生じている。中継ステーションで、どんどん劣化が進んでいるらしい。」 「近づけばステーションの密閉フィールドを強化できるけど、これ以上接近はできないわ。」 「小型シャトルなら、比較的重力の渦に巻き込まれにくい。私が行ってくる。」 「トゥヴォック少佐と一緒に行って。」 「どうして少佐と?」 「船外任務に独りで行かせることはしないの。」 「ではそうしよう。」 出て行くセブン。
天体測定ラボで作業しているトレス。ドアが開き、キムがやってきた。「ハイ」と声をかけるトレス。「やあ。セブンがやってるんだと思ってた。」 「シャトルでステーションの密閉フィールドを強化しに行った。私が引き継いだの。ガッカリした?」 「そんなんじゃない。やめてくれよ。言っただろ? 彼女とは何にもない。」 「何もないのは知ってる。完璧な片思いだもんね。」 「馬鹿言うなよ。」 「『僕は恋してます』って札下げてるのも同然。ハリー、見てりゃわかるの。」 「あのねえ、確かに一時期は。セブンは魅力的だけど、もうそんな気持ちは捨てたんだ。」 「あ、そう。」 「そうさ。全く無関係。」 「セブンに会いにじゃなきゃ何しに来たの?」 「ないかと思って。僕宛ての手紙が。」 「ああ…。新しいのはまだダウンロードできてない。」 「手紙って、全員の分あると思う?」 「本部は間違いなく、クルー全員の家族や友達と連絡を取ってるはずよ。一番大事なことなんだから。」 「だといいけど。」 「ハリー、きっとあるわ。もうちょっと待ってて。」
9型シャトルがステーションへ近づく。重力の渦の影響で、中は揺れ続けている。セブンはトゥヴォックに尋ねる。「少佐、ヴァルカン人は嘘をつけないというのは間違いないか。」 「いや、嘘をつくこと自体はできる。だがそうする妥当性や必要性を感じたことはない。」 「嘘をついたことは?」 「上官の命令以外では、一度もないな。」 「では聞きたいことがある。船外任務に一名では行かせないというのは、艦長の方針か?」 「艦長の方針ではない。艦隊の行動規則にそう書かれている。」 「そうか。」 「今の質問の意図は何なんだ?」 「私はまだ信用されていないのかと思った。監視が必要だと思われていると。」 「艦長の君への評価は知らないが、今回の任務に私を同行させたのは、規則通りで格別の意味はないと思うね。」 コンピューターに反応がある。 「極子※20インパルス、放射可能な距離まで接近した。」 「メインディフレクター、オンライン。」 「オンライン。」 ディフレクターからポーラロンが発射される。 「ステーションの密閉フィールドの乱れは、0.29 だ。」 「それだけあれば、メッセージの劣化は防げる。」 「セブン、質問してもいいかな。君には艦長の評価が重要なのか?」 「…ヴォイジャーには階級制度がある。艦長の評価が重要なのは当然だろう?」 シャトルが大きく揺れた。「どうした?」と尋ねるセブン。 「ある種のサブニュークレオニックビームでスキャンされたようだ。」 「ナヴィゲーションセンサーが使用不能だ。」 「ヴォイジャーから誘導ビーコンを送ってもらわないと戻れないな。トゥヴォックよりヴォイジャー。ヴォイジャー、応答してくれ。」 「少佐、ほかのシステムもダウンした。通信も、ワープエンジンも使用不能。兵器もだ。」 「故意の破壊工作に違いない。左舷後方から急速接近中の船を発見。」
シャトルの後方に、ヒロージェン艦が迫っていた。

※7: Amonak
恐らく DS9 特殊映像効果監修 Gary Monak にちなんで命名

※8: Sek

※9: T'Meni
この手紙は、トゥヴォックの妻のタペル (T'Pel) からのものです。VOY第24話 "Persistence of Vision" 「ボーサ人の攻撃」に登場

※10: Mark Johnson
VOY第1話 "Caretaker, Part I" 「遥かなる地球へ(前編)」などに登場。フルネームが初めてパッドに登場

※11: Sveta

※12: マキ (Maquis) がドミニオンに壊滅させられたことは、DS9第121話 "Blaze of Glory" 「最後のテロリスト」でも触れられました

※13: Susan Nicoletti
VOY第72話 "Day of Honor" 「名誉の日」など。声:児玉孝子

※14: Fitzpatrick

※15: キョート少尉 Ensign Kyoto
VOY第7話 "Eye of the Needle" 「ワームホールの崩壊」など

※16: ゴールワット少尉 Ensign Golwat
VOY第44話 "Flashback" 「伝説のミスター・カトー」より。声:岩本裕美子

※17: アッシュモア少尉 Ensign Ashmore
VOY第16話 "Learning Curve" 「バイオ神経回路」など。少なくとも 2人いる模様 (初期の女性と、男性)

※18: Dorado

※19: パーソンズ少尉 Ensign Parsons
VOY第5話 "Phage" 「盗まれた臓器」など

※20: ポーラロン polaron
亜原子粒子。VOY第11話 "State of Flux" 「裏切り者」など。「極性」と吹き替え

ヒロージェン艦の攻撃を受けるシャトル。 セブン:「距離 5万キロ、更に接近中だ。」 トゥヴォック:「シールドのパワーが弱まってる。」 「フェイザーを一基だけでも作動させる。もう一発命中すると船体に亀裂が入るぞ。」 「敵機はこっちよりも大きい。ステーション近くに誘い込めば、重力の渦に巻き込まれて、制御が利かなくなるはずだ。」
中継ステーションへ近づくシャトル。ヒロージェン艦も追う。 トゥヴォック:「トラクタービームだ。船の中に引き込まれる。」 セブン:「ビームを振り切ってみる。…失敗した。」 「救難ビーコン発射!」 シャトルから発射されるビーコン。シャトルは牽引されていく。敵艦から赤いビームが発射された。それはシャトル内に直接影響し、2人は意識を失った。
通信を入れるトレス。「トレスよりブリッジ。」 ジェインウェイ:『どうしたの?』 「艦長、パリス中尉に来てもらって構いませんか? 見せたいものがあるんです。」 「行かせます。」
パリスに話すトレス。「あなたに手紙。取り込んでるところ。」 「俺に?」 「ええ、これがそう。」 「…誰から?」 「まだわからないわ。」 「どうせ更正コロニーからだろう? 保護観察に違反したってさ。」 「どうして茶化すの?」 「誰からの手紙か聞いただけだ。」 「もうすぐわかるわ。」 「ブリッジにいる。」 出ていこうとするパリス。 「何? 待たないの?」 「仕事がある。」 「停泊して待機中に操舵席ですることないでしょ?」 「自分の持ち場についていたいんだ。」 「ほかの人ならごまかせるかもしれないけど、相手は私よ。」 「ダウンロードしろよ。いいから。」 パリスがドアのところまで来た時、トレスは言った。 「差出人がわかった。艦隊からよ。えっと…オーエン提督。知り会い?」 「オーエン・パリス提督※21。俺の親父だ。」 「良かったじゃない。」 「さ、どうかな。……どういうわけなんだか、地球からの手紙でみんながはしゃげばはしゃぐほど、俺の気持ちは覚めてく。きっと多分……ヴォイジャーでの暮らしが、地球の暮らしよりずっとましだからだと思う。懐かしいとも思わない。」 「あなたは 4年前とは変わってるわ。きっとお父さんも。」 「知らないからだよ。」 「チャンスくらいあげたら? 手紙を送ってきたじゃない。」 「一度物事の評価を下したら、二度と考えを変える人じゃない。」 「そう。
Excuse me if I can't feel terribly sorry for you. I learned this morning that a lot of my friends are dead. And I've gone from being so angry that I wanted to kill someone... to crying for an hour... and now I'm just trying to... to accept it and move on."

悪いけど、同情できる気分じゃないの。友達がみんな死んだと、今朝聞かされたの。とてつもなく腹が立って、誰か殺したいと思った。そして 1時間泣いたわ。事実を受け入れて、乗り越えるのに、精一杯なの…。」
パリスはトレスを抱きしめた。「ベラナ、済まなかった。僕が悪かったよ。そんな時にどうでもいいことで八つ当たりしたりして。」 「いいえ、わかってる。ほんとはお父さんに、認めて欲しいんでしょ。」 「ああ。……多分そうなんだろうな。」 「知らせるわ、全部ダウンロードしたら。」 パリスはラボを出ていった。
作戦室のジェインウェイ。チャイムが鳴る。「入って。」 報告するチャコティ。 「トゥヴォックとセブンのお手柄です。密閉フィールドはかなり安定しました。ダウンロードがずっと早くなったとベラナが言ってます。」 「良かったわ。」 「シャトルの位置が不明なんですが、間もなく戻るでしょう。」 「中継ステーションの件で、面白いことがわかったの。1分毎に普通の恒星が 1年に放出するのと同じエネルギーを生み出してる。」 コンソールを見せるジェインウェイ。 「10万年も前に特異点を動力源として利用した者がいるというだけで驚きですよ。」 「問題がなければ、しばらくここに留まってみたいわ。いろんな疑問に対する答えが出るかもしれない。考古学のパズルよ。一番好きな分野なの。コーヒーどう?」 「結構です。……手紙はどうだったんです? 誰からでした。」 「マークからよ。婚約者だった人。私の飼ってたイヌが、小犬を産んだんですって。いろんな人にあげたそうよ。ヴォイジャーが行方不明と聞いて打ちのめされ、それでも誰よりも長く生きてると信じてたらしいわ。でもそれは幻想としか思えなくなって、時計を進めることにしたって。過去を忘れ、新しい人に出会って、……4ヶ月前同僚の女性と結婚した。幸せですって。」 「大丈夫ですか。」 「いつかはこうなると覚悟してたから。でも目の前に突き付けられた。」 「キムより艦長。ブリッジへ来て下さい。」 ジェインウェイに続き、チャコティもブリッジに戻った。
「何なの?」と尋ねるジェインウェイに、キムは答えた。 「トゥヴォックのシャトルから、救難シグナルを感知しました。センサーによれば、シャトルは無人です。」

※21: Admiral Owen Paris
VOY "Persistence of Vision" に登場。ファーストネームが初めて言及

ヒロージェン艦。天井から吊り下げられた網の中に、たくさんの骨が入っている。トゥヴォックとセブンが体を縛られ、床に寝ている。目を覚まし、周りを確認するトゥヴォック。壁には金属でできた武器が何種類も飾られている。セブンに気づいた。「セブン。セブン・オブ・ナイン!」 声に目覚めるセブン。「ここはどこだ。」 「恐らく、エイリアンの船だ。」 「縛られているのか。誰か見たか?」 「いや。どれか刃物を取れれば、このベルトを切れるかもしれない。」 そこへヒロージェンがやってきた。トゥヴォックたちを立たせる。「つまらん狩りだったなあ。簡単に捕まった。これでは狩りをする甲斐がない。聞かせてもらおう。なぜ我々のステーションを侵略した。こんなひ弱な首は、一ひねりで折れるぞ。」 セブンの首をつかむが、すぐに離す。「折っても自慢にもならん。答えろ! なぜステーションを使った。」 答えるトゥヴォック。「母星からの重要な通信をダウンロードしていた。我々を船に戻せ。用が済めば立ち去る。二度と領域侵犯はしない。」 「お前たちは狩りの獲物だ。仕留めた獲物は俺のものだ。」 濃い青色の液体が入った容器を手に取り、それをセブンの右眉の上につけるヒロージェン。セブンに質問する。 「お前たちの船にいる連中は多少は手応えがあるのか?」 「艦長を敵に回すのは無謀だ。船も比較にならないほど重装備だ。」 「よし。強い相手の方が狩りのし甲斐がある。」 トゥヴォックにも液体を塗る。 トゥヴォックは言う。「我々を解放すれば見逃そう。しないなら、お前たちは終わりだ。」 部下のヒロージェンがやってきた。「哀れな奴らです。」 「この種族は初めてだ。仲間が悔しがるぞ」というリーダー。 「獲物の船を発見。ステーションから 4,000ケトリック※22の距離です。」 「1時間もあれば行けるな。潜伏モードで行け。」 動こうとしない部下。 「何をグズグズしてる。」 「もうすぐ味方がやって来ます。」 「何だと? お前が仲間を呼んだのか!」 「俺たちだけじゃ逃がすかもしれません。仲間と一緒に追いつめた方が…」 「手柄を分けてやるつもりはない! この 2人だけを標本にすればいい。準備しろ!」
ジェインウェイに報告するキム。 「艦長、重力場でスキャンしにくいんですが、船を 1隻感知してます。」 「船籍は?」 「今センサーを調整してみます。ヒロージェンです。トゥヴォックとセブンが乗ってます。」 「交信を。」 「スクリーンへ。」 「宇宙艦ヴォイジャーの艦長、ジェインウェイです。うちのクルーを 2人乗せてるわね。」 ヒロージェン:『中継ステーションへのリンクを切断して、直ちに立ち去れ。』 「部下を置いては行けない。」 『あれは俺のものだ。』 「無事に解放するなら交換条件を考えるけど、歩み寄る余地はあるんじゃない?」 『俺たちの仲間がやってきたら、お前たちも捕まるだけだ。今が逃げるチャンスだぞ。』 「逃げるもんですか。」 キム:「センサーが後 3隻感知。ハイワープで接近中。」 ヒロージェン:『馬鹿はよせ! 今逃げれば助かるんだ。』 ジェインウェイ:「部下を帰せばすぐにでも立ち去るわ。」 『獲物は渡さん。』 「なら戦うのみね。非常警報よ!」 ブリッジの照明が暗くなった。

※22: ketric
数キロメートルに相当する模様

ヒロージェンのリーダーはトゥヴォックたちと一緒にいる部下のところへ戻る。 「準備はできたのか。」 「はい。でも後回しにするべきでは。仲間を待って先に船を仕留めましょう。」 「俺が最初の手柄を取る。2人を殺すんだ。」 「でも戦闘になったら俺たちも参加しないと。」 「ほかの連中に任しておけばいい。」 「情報集めの方が大事なんですか。あなたの判断は間違っています!」 「口答えをするな。今すぐかかるぞ!」 トゥヴォックはヒロージェンにいう。「慎重に考えるべきだと思うがね。我々を殺せば、艦長は容赦なくお前たちを追いつめるぞ。」 「来るなら来い。ハーネスを下ろせ。」 取りかかる部下。
セブンを小型の機械で調べるヒロージェン。「コイル状の長い腸か。最高のトロフィーだ。」 「私の腸に一体何の利用価値がある。」 「珍しい標本は価値が高い。男たちの羨望の的になり、女が群がるのさ。」 「残忍な種族だな。体格のよさだけが取り柄か。」 セブンのあごをつかむヒロージェン。「哀れなものだな。逃げられんとわかって最期の強がりか?」 トゥヴォックを指差す。 「こいつが先だ! 女に見せ、自分の行く末を思い知らせてやる。この骨の構造だと背中を切るのが難しい。時間がかかるぞ。」 ヒロージェンは刃物を手に取った。
ヒロージェン艦と対峙するヴォイジャー。ジェインウェイはトレスを呼ぶ。「ブリッジよりトレス。」 『トレスです。』 「後どれくらい?」 「一つずつやってますから、30分はかかります。」 「何かわかった?」 キム:「船の装甲にモノタニウム※23の石を使ってます。ターゲットビームがロックできない。」 チャコティ:「ほかの 3隻も迫っています。6,000キロに接近。」 パリス:「艦長、その 3隻はかなりの重装備です。太刀打ちできません。」 ジェインウェイ:「ハリー、敵の船と中継ステーションの位置関係を見せて。」 キム:「了解。」 「量子特異点を上手く利用できるかもしれない。」 チャコティ:「利用?」 モニターに量子特異点と敵船との位置関係を表示させる。 ジェインウェイ:「特異点のパワーを味方につけるの。今より多少重力を強くすれば、阻止できる。」 キム:「ステーションの密閉フィールドを弱まれば、重力は強まる。アンチトロン※24・ビームを撃ち込もう。」 パリス:「慎重にしないと、こっちも引き込まれます。」 ジェインウェイ:「大丈夫。対策はあるわ。ハリー、ヴォイジャーの周りに低レベルのワープフィールドを張って。光子エネルギーより弱くね。それで重力に対抗できるはずよ。」 チャコティ:「フィールドが強すぎると、トゥヴォックとセブンを転送できません。」 「ハリー、最適のバランスを見つけてちょうだい。」 キム:「お任せを。」 「私の合図で、レベル8 のアンチトロン・ビームをステーションに向け発射して。パリス中尉、全スラスター反転準備。」 パリス:「了解。」 キム:「低レベル・ワープフィールド、セット完了。」 チャコティ:「アンチトロン・システム、オンライン。」 パリス:「スラスター、準備OK。」 ジェインウェイ:「発射。」 揺れ始めるヴォイジャー。モニター上の量子特異点に、3隻の船が引き込まれていく。 チャコティ:「うまくいった。」 ジェインウェイ:「2人を転送できるか確かめて。」
ヒロージェン艦は揺れ、警告音が鳴っている。「船を安定させろ」と命じるヒロージェン。 操作する部下。「できません! 重力場に引き込まれていく。」 トゥヴォックは隙を突いてヒロージェンの刃物を奪い、首元を切り付けた。もう一人にも攻撃しようとしたが、すぐに回復したヒロージェンに体をつかまれる。持ち上げられ、壁に投げつけられた。倒れるトゥヴォック。報告するヒロージェン部下。「あの船がステーションの密閉フィールドを弱めてます。」 「攻撃用意。仲間に戦闘の合図だ。」
天体測定ラボのトレス。「トレスよりブリッジ。」 ジェインウェイ:『こちら艦長。』 「アンチトロン・ビームでシグナルを消失。残りの分はダウンロードできません。 「了解。敵艦を呼んで。」 キム:「回線つなぎます。」 「こちらはジェインウェイ。退却に同意すれば、密閉フィールドを復活させます。」 パリス:「艦長、撃ってきます。」 爆発が起こるコンソール。 チャコティ:「攻撃で、密閉フィールドが更に弱くなってます。」 ジェインウェイ:「こちらジェインウェイ。攻撃をやめなさい。墓穴を掘ってるのがわからないの?」 キム:「フィールドが崩壊。ブラックホールが剥き出しになる!」 ステーションの構造が中心点に吸い込まれ、巨大な渦状のブラックホールが姿を現した。3隻のヒロージェン艦が吸い込まれ、消えていく。
チャコティ:「艦長、トゥヴォックとセブンの乗った船が引き込まれます。」 ジェインウェイ:「トラクタービーム、セット。」 キム:「トゥヴォックとセブンの位置をロックできましたが、今転送すると重力場のせいでパターンが破壊されます!」 チャコティ:「トラクタービーム、効きません。止められない!」 ジェインウェイ:「ハリー、賭けるしかないわ。」 キム:「転送、開始します!」
ヒロージェン艦で、2人の姿が転送ビームに包まれる。部下に命じるヒロージェン。「全速反転! エンジンのパワーを増強しろ。」 「効果ありません。」 転送される 2人には気づいていない。
ジェインウェイ:「転送できた?」 キム:「まだです。パターンがゆがんでます。」 ジェインウェイ:「環状密閉ビームを狭めて。」 チャコティ:「トラクタービーム、消失します。これ以上無理です!」 「全補助動力をトラクターエミッターに回して。」 「トラクタービーム消失。敵艦はブラックホールに飲まれます。」 キム:「パターンバッファ、再編成中。もうちょっとで転送できます。」
ブラックホールに飲み込まれて行くヒロージェン艦。キム:「やりました。2人を転送収容!」 パリス:「エンジンに動力を! こっちも吸い込まれる。」 ジェインウェイ:「全てのパワーをエンジンに迂回させて。」 「まだ足りない!」 「生命維持システム停止。」 チャコティ:「船体に異常。外壁がゆがみ始めてる。」 パリス:「飲み込まれる!」 ジェインウェイ:「反物質注入機を 120%にオープン。」 キム:「エンジンコアが損傷します!」 「吸い込まれたら爆発よ。やって!」 「了解!」 音が変わり、最後の揺れが止まった。パリス:「脱出成功。」 ジェインウェイ:「コース再セット。天体測定ラボにいるわ。」
トレスがいる天体測定ラボへ入るジェインウェイ。 「艦長、見て下さい。特異点からのエネルギーで中継ネットワーク中に大量のパワーが放出、全ステーション使用不能です。」 スクリーン上のネットワーク網から光が消えていく。 「メッセージはダウンロードできたの?」 「本部の暗号文書はほとんど取り込めました。あと、手紙が 2、3通。」 「暗号の解読にどれくらいかかる?」 「デコードは手間取るでしょうね。ハリーが一番の適任です。失礼して、私は手紙を配ってきます。」 「ニーリックスを呼べば?」 「いいんです。私が手渡したいのもあるので。」 出て行くトレス。スクリーンを見たジェインウェイは、ため息をついた。
ブリッジに入るトレス。キムにパッドを渡す。「ハリー、良かったわね。ギリギリで取り込めたわ。」 喜ぶキム。「両親からだ。ありがとう。」 トレスはパリスのところへ行く。「ごめんなさいトム、ダウンロードが間に合わなかったの。」 「読みたい気分になってきたのに。」 「愛する息子へって書いてあったのよ、きっと。誇りに思うって。」 「きっとそうだな。」
「艦長日誌、補足。セブン・オブ・ナインとトゥヴォック少佐はエイリアン船に遭遇したが、特に深い傷もなく無事帰還。エイリアンに対する印象をトゥヴォックから直接聞いておきたい。」
作戦室。報告するトゥヴォック。「あまり多くはわかりませんが、危険な種族と考えた方が良さそうです。良心というものが全くありません。」 「中継ネットワークに固執したのはなぜかしら。」 「さあ…やはり通信手段として使っていたんだと思いますが。 「今後はもう使えないわね。」 「あまり快くは思わないでしょうね。仲間はまだいるようですし。」 チャイムが鳴る。「入って。」 入って来たチャコティは、言葉を止めた。 「私は失礼します。では」 出て行くトゥヴォック。チャコティは報告する。 「修理班が船の隅から隅まで調べました。ワープコイルにメンテが必要な以外は、全く問題ありません。」 「だと思ったわ。」 「コーヒー飲む?」 「頂きます。」 「ミルクと砂糖ね。」 「砂糖 2つで。」 「ああ、2つだった?」 「少し飲み過ぎですよ。」 「そう?」 「私が覚えてるだけでも 3杯目だ。」 「4杯よ。まだまだ飲むでしょうね、こんな日じゃ。コーヒーは、人類が発明した最高の有機飲料ね。おかげで最悪の 4年を乗り越えられたわ。これでボーグに勝ったの。船は帰還までもちこたえるわ。でもクルーの方はそう簡単にはいかない。家族と定期的に連絡が取れると期待をもたせてしまったから。」 「ニーリックスが即席のパーティをやってくれます。クルーを元気付けるんだって。」 「いいわね。何時から?」 「人が集まり次第だと。」 「ほんとに彼の心配りには頭が下がるわ。」 「艦長のご気分は?」 「私は元気。」 「トラケン・ビースト※25に足を引き千切られてもそうおっしゃいますね。ここ数日事件の連続です。やっと地球とコンタクトを取れたと思ったら希望は奪われ、我々を捕えて内蔵をそっくり抜き取ろうって新たな敵まで現れた。しかもその上…」 「どうぞ言ってもいいのよ。その上私は婚約者を失った。わかってたことよ。こんな状況でずっと待っていてくれるとは、期待してなかった。なのに私は彼の存在を言い訳にしてたみたいね。ほかの男性と深く関わらないための。」 「もう言い訳は使えませんね。」 「そのようね。とはいえ、このデルタ宇宙域での暮らしも大忙しだし、誰かとお付き合いする暇があったわけでもなし。どうせ私は独りなのよ。」 「独りじゃありませんよ。それに私の意見ですが、時間はまだあります。」 「たっぷりとね。」 通信が入る。『ニーリックスより作戦室。さあパーティですよ。来てないのは 2人だけなんですがね。』 「すぐに行くわ」といい立ち上がるジェインウェイ。腕を差し出すチャコティ。2人は笑いながら、腕を組んだ。

※23: monotanium

※24: 反トロン antithoron

※25: Trayken beast

・感想
ヴォイジャーのクルーに故郷からの手紙が届きます。疑り深い私は、どうせフェイクだろうと思ってたのですが、本物でしたね。特に良いのが「トゥヴォックおじいちゃん」のシーンです。全体的には少々間延びしている間もありましたけど。
タイトルの Hunters=狩人、ヒロージェンについてはヴォイジャーの本筋となるストーリーで、明らかにこれから先も続くものでしょう。彼らの特徴としては力の強さと図体の大きさ、それから指揮系統があまりうまく機能してないように見受けられる点でしょうか。よく 10万年前にステーション網を作れましたね…。


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