スコッド発表に思う

何故に夏の高校野球大会の組み合わせ発表と同じ日にスコッドの発表をしなければならないのか?

協会にすれば、「先にこちらの方がスケジュールが決まっていた」という言い分もあるだろう。
しかしながら、軽自動車が、割り込みしてきた大型ダンプカー相手にいくら正当性を主張したとしても、所詮、ダンプにこすられるか、ダンプの運ちゃんに怒鳴られるのがオチで、何にも良いことなどない。
それと同じだ。

ホームページ上でファンから意見を集めたり、こまめに情報を更新するなどして、人気回復を狙って積極的に活動し始めた協会の姿勢は評価したいが、それならどうしてこんな初歩的な過ちをまた犯すのか?
現在の日本では、プロ野球、高校野球、サッカーが人気のある三大イベント。大きく離れて、バレーボール、ラグビー、、バスケット、陸上などが続く。仮に、日本シリーズとワールドカップ決勝が同日になれば、ラグビーファンがどんな意気込んでも、スポーツ新聞の一面が日本シリーズになるのは間違いないし、テレビのスポーツニュースなども日本シリーズの扱いの方が大きくなるのは避けられないだろう。

高校野球の組み合わせ抽選会と同じ日にワールドカップのスコッドを発表しても、記事の扱いが小さくなるのは目に見えてるではないか。
ラグビーの人気回復を考えるならば、まずマスコミで、いかに注目してもらうか、を考えるべきで、その意味ではこの日の発表は愚挙に等しい。
野球がない日、或いは他の大きなイベントがない日などを見計らって発表日を決定すれば良かったのに、としみじみ思う。
(案の定、朝日新聞などは見事に同じ面に掲載され、大きさでいえば、高校野球の1/3のスペースだった)

30人について
中道、長谷川、薫田、坂田、中村直、ゴードン、大久保、田沼、桜庭、渡邉、スミス、ジョセフ、伊藤剛、バショップ、村田、広瀬、岩淵、増保、ツイドラキ、元木、マコーミック、大畑、松田の23人はまず「確定済み」という雰囲気だったと思う。(もちろん本人たちにすれば、そこまで安閑とはしていなかっただろうが)

残り枠の七人は、プロップ一人、フランカーが一人、ウイングが一人、センターが二人、フルバックが一人、そしてスクラムハーフだけはもう一人選ばれて3人になるだろう、というのが大方の予想だった。しかし、結局スクラムハーフも二人のみで、すべてのポジションに二人ずつ選ばれる形になった。

プロップ
右プロップは若くて伸び盛りの「笠井」対ベテラン「小口」の対決だった。
スクラムの強い小口、サイズとスタミナのある笠井。ポイントは、二人の弱点を本大会までの僅か二ヶ月間でどこまで矯正できるかにあったと思う。結局、二ヶ月で笠井のスクラムを鍛え上げるのは不可能に近く、小口に徹底的に走り込みをさせて、フィットネスを上げさせる方が得策と判断したのではなかろうか。

フランカー
激戦区をものにしたのは、石井と木曽だった。
中村航や黒川という選択肢もあったが、韓国戦、ワイカト戦で露わになったスミスが万が一負傷した場合の代役として、まずトヨタ自動車の石井に白羽の矢が立てられた。体こそ他のプレーヤーに劣るが、ボールへの嗅覚はなかなか優れたものを持っており、リンクプレーヤーとしてはまずまずの期待が出来る。

木曽は香港セブンズや日本選抜でも見せた通り、ラインアウト、キックオフジャンパーとしてのスキルが高い。フィットネス面も悪くなく、大きく成長しつつある選手だ。七人制の代表から15人制の中心選手へというのは、岩淵や大畑が歩んできた道であり、今更ながらこういった、当初無名に近い才能のある選手を発掘して育て上げるナワル氏(七人制日本代表監督)の手腕には恐れ入る。
個人的には中村航に頑張ってほしかったが、ワイカト戦の怪我の影響はやはり大きかったのだろう。残念だ。

スクラムハーフ
最も驚いたのはスクラムハーフ堀越の落選。
バショップ、村田の二人に運命を託し、もしこの二人とも出場できないような辞退になった場合は玉砕という腹決めだろう。(恐らくその場合は岩淵がハーフを務める可能性が高い)
確かに、堀越の球捌きも捨てがたいし、その闘志はプレーヤーや見るものをも奮い立たせてくれる。しかしながら、フィットネス面では往年に比べ明らかに落ちてるように見えたので、仕方ないところかもしれない。

センター
元木、マコーミックの不動のコンビは動かないものの、リザーブは激戦区だった。難波、河合、吉田、古賀、ぞれぞれ一長一短ながら、豪州遠征では評価の高かった古賀と、最終段階で突如滑り込んだ吉田が選ばれた。古賀は、ワイカト戦の出来は今一つだったが、スピード、突破力、ディフェンスとも悪くない。問題はやはりコンビネーションだと思う。

吉田は、最終選考試合とも言うべきワイカト戦で急遽抜擢。最後の数十分間に出場して、正確なパスワークと、しっかりしたディフェンスで首脳陣にアピール。合宿でも高い評価を得て、見事に最後の椅子を獲得した。
元木、吉田のコンビとなれば、どうしてもあの忌まわしいブルームフォンテーンが思い出されるが、増保同様、心を入れ替えたという彼のプレーに期待しよう。

ウイング
増保、大畑、ツイドラキは確定で、4番目のウィングに誰が選ばれるか注目されたが、これまた七人制で評価の高い、竜谷大の三木が選ばれた。
15人制ではまだ知名度が低く、関東のラグビーファンに初めて(15人制で)その姿を見せたのは昨年の大学選手権一回戦。秩父宮での早稲田大学との対戦だったが、結構活躍したような記憶がある。

それよりも、今年のジャパンセブンズ。長かった髪を短くして精悍さを増した三木は、切れのある走りとスペース感覚で、大いなる成長を遂げていた。恐らく、その後も飛躍的なスキルアップで今回の選出になったものと推測する。確か彼はフルバックも出来るはず(そちらが本職だったか?)で、層の薄いフルバックのリザーブにもなりうるユーティリティプレーヤーとしても評価されたのではないだろうか。

フルバック
そのフルバックには、当確の松田(ただし個人的には増保をフルバックで使いたいと思うが)の次に、平尾が入った。日本Aや選抜での攻守両面での活躍からは当然で、問題は怪我の回復度合いにあったはず。選出されたとなれば、その不安も一掃されたと見るべきだろう。立川の場合は何と言ってもディフェンス面での不安が大きく、類稀な攻撃センスをどんなに高く評価しても、その稚拙なディフェンスとの落差はあまりに大きく、落とさざるを得なかったということか。

全体としてはまずまず順当な選出だろう。
パシリムでの優勝という快挙を考えれば、あのメンバーからそう大幅に入れ替わるはずもない。
あとはみな怪我をしないことを祈るのみ。
壮行試合で怪我をして断念、というのが最も悲惨な形だろうが、かといって手の抜いたプレーはしてほしくない。
スペイン戦は複雑な気持ちで応援することになるだろう。

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