第一回大会がニュージーランド。二回大会がオーストラリア。南高北低のラグビー事情を如実にあらわす結果となったワールドカップだが、影の世界一を噂されるチームが存在した。それが南アフリカ代表の通称スプリングボクス。
長く続いたアパルトヘイト(人種隔離政策)の為に国際舞台から締め出され、第一回大会を制したニュージーランドが、真の世界一を決めるために敢えて南アフリカ遠征したのは有名な話。ようやくアパルトヘイトも解除され、国際舞台に復帰した南アフリカが第三回大会の開催地となった。
開会式ではマンデラ大統領の挨拶で世界中に南アフリカの存在をアピール。
その直後、自らの強さを誇示しようと組まれたオープニングカードの対戦相手は前回の覇者オーストラリア。世界中のラグビーファンが固唾を飲んで見守った。
その試合で南アフリカは鉄壁のディフェンスを見せ、「27-18」で快勝。あらためてその力を披露し、順当に予選リーグを勝ち上がる。
一方、予選リーグ、決勝トーナメントと圧倒的な破壊力で快進撃を続けたのがニュージーランド。なかでもジョナ・ロムーのプレーは衝撃的だった。196cm、100kgを超える体躯で100mを10秒台で走る運動能力。日本なら大型ロックとして通用しそうなサイズながらポジションはウイング。タックルに来る選手を一人二人と弾き飛ばし、或いは引きずりながら、ゴールへと突き進むその姿は、"スピードで振り切る""ステップで交わす"というそれまでのウイングの概念を見事に打ち砕いた。
ニュージーランドは、準々決勝でスコットランドを「48-30」、準決勝でもオーストラリアを破り勝ち上がったイングランドから6Tを奪う猛攻で「45-29」と快勝。凄まじいまでの攻撃力で、決勝に勝ち進む。南アフリカも準々決勝で西サモア、準決勝ではフランスに「19-15」と苦戦しながらも、勝利を治め、決勝に進出する。
決勝戦は、南アフリカがニュージーランドのロムーを徹底的に抑えこむディフェンスを見せ、最後まで凌ぎきり、互いにノートライながら、延長戦突入後の劇的なDGで初優勝を飾った。
選手の大型化を進めた日本は、直前まで選手選考でもめたり、戦術的な批判を浴びたこともあってか、三戦全敗でまたもや予選リーグ敗退。特にニュージーランド戦での「145-17」というスコアは、ギネスブックにも残る記録的な大敗となった。
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