Home 本の未整理棚  
日なたぼっこ 子どもや絵本、児童文学の部屋

 絵本  児童文学  

クリスマスの本棚へ行ってみる


絵本

たむらしげる 『よるのさんぽ』
  『ながれぼしのよる』 
  『銀河の魚』
  『ファンタスマゴリア』 12
  『スターヘッド』 13
降矢なな 『ちょろりんのすてきなセーター』
  『ちょろりんととっけー』  
  『めっきらもっきら どおん どん』
  『きょだいな きょだいな』
  『おっきょちゃんと かっぱ』  
  『もものうえの たねまろ』  
  『たあんき ぽおんき たんころりん』  
レイ絵・ブラウン作 『いぬ おことわり』
スズキコージ 『エンソくん きしゃにのる』 10
谷川俊太郎・文
タイガー立石・絵
『ままです すきです すてきです』
金森襄作・文  
チョンスクヒャン・絵
『おどりトラ』『あそびトラ』
ロジャー・デュボアザン 『ペチューニアの たからもの』 11
  『しろいゆき あかるいゆき』 16
村山籌子・村山知義 『3びきのこぐまさん』 14
  『リボンと きつねと ゴムまりと 月』 15
  『あめが ふってくりゃ』  
  『川へ おちた たまねぎさん』  

そのほかのひとたち


1.『よるのさんぽ』 たむらしげる 架空社


 (C) たむらしげる
架空の惑星ファンタスマゴリアを舞台に、ちょっとユーモラスでユニークな世界を描くたむらしげるさん。その多くをMacで描いているのだという。ちなみに私はファンタスマゴリアをスクリーンセイバーとして使っている。
 この本は、しかし、ファンタスマゴリアが舞台というわけではないようだ。一部アニメ化されてシチューのコマーシャルに使われたので、見覚えがあるかもしれない。
 夜眠れないで散歩に出たぼくは、家を出ると一歩ごとにずんずん大きくなって、汽車の通る線路をトンネルのようにまたぎ、その汽車と競争しているうちに火事を見つけた。
たいへんだ!おおきくなったぼくは、川から水をくんで火事を消し止めてしまう。「ありがとう!」「ぼくはもうかえらなくっちゃ」と帰路につくとまた一歩一歩ずん!ずん!と小さくなる。再び入ったベッドの足元には、さっき起きたときにはなかった消防車のおもちゃが。青年のようでもあり、少年のようでもある、不思議なキャラクター。

ページトップへ Home


2.『おどりトラ』 金森襄作 福音館書店

(C)鄭 【スク】香

韓国の民話をもとにしたお話。トラがたくさん住んでいるところに、踊りの大好きなトラがいて、何かというとすぐに踊りだしてしまう。ついに大事な狩りの時にまで踊りだしたので、狩りが台無しになってしまった。怒った仲間から追い出されたトラは、国々で修行を積んで、踊りで病を治すという不思議な力を身につけ、有名になった。あるとき、ふるさとへ帰ったおどりトラは、仲間の歓迎を受け、再び皆で狩りに出かける。トラたちに樹上に追いつめられた木こりが、もうこれまでと観念して最期の笛を奏でる。トラばしごを作って木こりの足元に迫っていたトラたちだったが、一番下にいたおどりトラは笛の音を聞くと体がひとりでに踊りだしてしまって、トラばしごは崩れ去ってしまい、トラたちはちりぢりに逃げ去っていった。
夕焼けの中、去ってゆく笛の音に合わせて、一人残ったおどりトラは、いつまでもいつまでも踊っていました…。独特の一見つたない絵が実に魅力があって、韓国らしい色彩も美しい。夕空をバックに一人踊り続けるおどりトラの姿に笛の音が重なって聞こえてきて、滑稽さの中にしんみりとした哀しさが残り、余韻のあるラストである。なぜか心に残る一冊だ。

ページトップへ Home


3.『ちょろりんのすてきなセーター』 降矢なな 福音館書店

 降矢ななさんは、『めっきらもっきら どおん どん』で衝撃的!なデビューを果たした若い画家。ダイナミックでデフォルメの利いた、楽しい色使いの絵を描く。「ちょろりんは、さむがりやのとかげのこ」で始まるこの本は、晩秋から初冬のキンとした、どこか落ち葉のにおいのする空気と、セーターの懐かしいにおいを肌で感じさせてくれて大好きだ。ことにじいちゃんの夜なべ仕事を手伝っているときに、窓の外をまむしがしゅるるっと通り過ぎてゆくところなど、これからいよいよ冬になるという、ぶるぶるっとしたつめたさと透明感をいっぺんで実感させてくれる。続編の『ちょろりんと とっけー』がある。

▲ページトップへ Home


4.『いぬ おことわり』 レイ絵・ブラウン作 偕成社

 ひとまねこざるでおなじみのレイの絵、「おやすみなさいのほん」のマーガレット・ワイズ・ブラウンの文による絵本。
 小さな黒いプードルは、家の隣にある動物園に行きたくてたまりません。だって、心をそそるにおいや、声が聞こえて来るんだもの。ある日、かいぬしのおじさんが、ちいさいいぬを動物園に連れていってくれましたが、入り口には「いぬ おことわり」って書いてあるたてふだが立っているではありませんか!動物園の門番のおじさんは、どんな知恵をさずけてくれたでしょう!
 レイおじさんおとくいのおさるが、活躍しちゃうたのしい本です。

▲ページトップへ Home


5.『めっきらもっきら どおん どん』 
     長谷川摂子作 ふりやなな絵 福音館書店

 

 

 

(c)ふりやなな

この絵本で初めてふりやなな(降矢奈々)さんの絵に出会った。真夏の昼下がり、あそぶ友だちがだれもいなくなって、ひとりぼっちでお社までやってきてしまったかんたは、大木のうろから奇妙な声が聞こえるのに気がついた。あなにもぐりこんでのぞいてみたとたん、かんたは「ひゅうっと あなに すいこまれて おちる おちる おちる おちる」と、アリスのうさぎあなよろしく地底へ吸い込まれていった。そこは、しんとしてなにかおどろおどろしい地底の世界!するとそこへ遠くから賑やかにやってきたのは…?
大胆なデフォルメ、ダイナミックな動きのある若々しい絵、新鮮な絵柄の水彩の画面。どれをとってもみずみずしいページに、一目でファンになってしまった。
 かんたに「ばけもの」と言われて子どもみたいにわーんわーんと泣き叫ぶおかしな生き物たち。神様のようでもあり妖怪のようでもあるが、かんたとわれ先にあそぶ姿に見ほれてしまう。いつまでもあそんでいたかったのに、遊び疲れたかんたが、つい「あかあさ……」と呼んでしまうと、「ひとりぼっち」の魔力は破れて、おばけたちがすがりつくのもむなしく、かんたはもとのお社の木の下にもどっていた。夏の日の妙にしんとしたひとときをうまく切り取った、だが単純なストーリーが、ふりやななさんの型にはまらない、見ようによっては素人くさいといってよい絵により、見事に魅力ある絵本となっている。

▲ページトップへ Home


6.『きょだいな きょだいな』 
           長谷川摂子作 降矢なな絵 福音館書店

 「あったとさ あったとさ ひろい のっぱら どまんなか きょだいな ピアノが あったとさ」で始まり、きょだいなせっけん、でんわ、トイレットペーパー、びん、もも、あわだてき、せんぷうきが、広いのっぱらに忽然と現れる!そこへこどもが100にんやってきて、おにごっこしたり、すべりっこしたり、おしりをふいたり…。そうして最後にせんぷうきで飛ばされて落ちていった先は、それぞれの親とおぼしきおとなの腕の中。なんにもない雄大なのっぱらをこどもたちが遊び回る。どのページでも1匹のこぎつねがびっくりしながらそれを見ている。裏表紙で木の穴のおうちにもどったこぎつねの影、この子もおうちでおかあさんにだっこしてもらったのかなあ。
 コラージュというか貼り絵の手法を使った絵が、これまたすてき。『めっきら…』と同じ、長谷川さんと降矢奈々さんて、息のあったコンビだ。

▲ページトップへ Home


7.『ままです すきです すてきです』 
           谷川俊太郎・文 タイガー立石・絵 福音館書店

(C)タイガー立石

 

これは、しりとりの本です。でもちょっと様子が違います。
 はじめの方はいいの。……
こあら・らっぱ・ぱんつ
 ところが……
ちくおんき・きく・くま・ままです・すきです・すてきです・すてーき・きらいな・なまけもの・のりまき・きった・たべよかな
 「ちくおんき」のところで、ギアが入れ替わった。それまでアカペラだったのがいきなりドラムの伴奏が始まったような、そんな気分の転換と流れるようなリズミカルなテンポ。タイガー立石のお得意のおにの世界でどんどんしりとりが続きます。
うーん、絵と相俟ったこのすごい文は?さっすが、谷川俊太郎なのでした。脱帽。

▲ページトップへ Home


8.『ながれぼしのよる』 
           たむらしげる さく 福音館書店 


  (C) たむらしげる
「あるばん、ロボットのランスロットは、じぶんの からだに たっぷり エネルギーを じゅうでんして、そとに でました。」すりばちじまにながれぼしを見に行ったランスロット、連れはりんごの木とくじらです。落ちてきたながれぼしにバッテリーをつなぎ、星に乗って空をかけまわる!はしゃぎすぎて衝突、墜落ぅ…。くじらに助けてもらって、星降る夜空の下、家路につくランスロットとりんごの木です。
月のクレーターのようなすりばちじまに落ちてくるながれぼしが圧巻。スイー、スイーと星に乗る二人は、私たちの空を飛びたい願望の幾分かをかなえてくれる。トトロの、夢の中でコマに乗って飛ぶシーンもそうでしたね.

▲ページトップへ Home


9.『銀河の魚(ぎんがのうお)』 
           たむらしげる さく メディアファクトリー


  (C) たむらしげる
 モリで魚をつかまえるのが得意なユーりーは祖父と一緒に天文台に住んでいる。あるときこぐま座に見なれぬ星を発見。するとこぐま座は邪悪な魚の姿に変わって、銀河に住む星魚たちばかりか星までも食い荒らし始めた。ユーリーと祖父はコズミックリバーをさかのぼってこの魚のもとへ…。
 「かつて住んだことがある」ような気がする、コズミックリバーの底に広がる町。川をさかのぼって行くといつの間にか銀河に漕ぎ入れているその不思議な感覚。
このシーンは、例のちょっと荒唐無稽だけれど壮大でもある「オリオン・ミステリー」を思い出させる。美しい群青色のページが目にしみいるようだ。
 これはリブロポートがつぶれて絶版になったものをメディアファクトリーが復刊したもののひとつで、かつ映画『クジラの跳躍』公開記念でもある。そのため書影に丸いフープ博士のシールがぺったりと貼られているのがごらんになれるでしょう。ちょっと邪魔ね。ともかく復刊してよかった。

▲ページトップへ Home


10.『エンソくん きしゃにのる』 
           スズキコージ さく 福音館書店

 ほげたまちのほげたえきから汽車に乗ったエンソくんは、いなかのおじいさんのところにひとりで行くところです。「しゅうてんまで」ときっぷを買って乗り込んだ汽車は、混みあった駅を出発して一路いなかへ…。むかいの席のおばさんがこうげんのえきで降りたあとには、羊飼いたちの一団がわんさと乗ってきますが、これが大変なんです。終点の駅の名は「ほいざ」、こうげんのえきは「ほんと」、なんだかとぼけているでしょ。
 初めてスズキコージさんと出会ったこの本、最初は個性の強い絵に一歩ひいてしまいましたが、すぐに大好きになりました。この絵の楽天性とアクの強さがたまりません。

▲ページトップへ Home


11.『ペチューニアの たからもの』 
           ロジャー・デュボアザン さく 童話館出版

(C)童話館出版

 がちょうのペチューニアは、ある日、川底でたからのはこを見つけます。ということは、お金持ちになったということ!ということは、きょうからとてもえらくなったということです!農場の仲間たちは、あれが欲しい、これが欲しいとペチューニアにリクエストをしますが、彼女は川底の宝の箱がかえるにとられやしないかと心配で、夜も満足に眠れません。お金持ちは大変ですね!そうしてしまいに仲間たちはけんかをはじめてしまうのでした…。
 色数を押さえた絵が、『こねこのぴっち』を思い出させる(高校時代に発見して以来、大の気に入り本!)。ちょっと教訓めいてはいるが、のんびりしたテンポととぼけた味のため、気にならない。心配で寝不足のペチューニアの羽根がヤマアラシみたいにちりちりになっちゃう所なんて、笑ってしまう。「なんだかつかれているようねえ」ですってさ!
 作者は1904年スイス生まれ、80年没。道理で、という感じもする。ほかにも童話館出版などからいくつも出ているが、あの祐学社で出ていたものの再刊が多いのね。ぜひ読んでみよう。
 ちなみに『こねこのぴっち』の作者ハンス・フィッシャーも確かスイスの人のはず。『たんじょうび』『ブレーメンのおんがくたい』など持っているが、もう手に入らないようだ。『長ぐつをはいたねこ』(福音館)しか検索にかからない。ほれぼれするような達者な絵なのになあ。残念!

▲ページトップへ Home


12.『ファンタスマゴリア』 
           たむらしげる さく 架空社

 分厚く大きな本です!ソフトカバーなのに、ずっしり重い。たむらしげるワールド、惑星ファンタスマゴリアの様々なシーンがどっさり見られる。フープ博士、人工の月、パンやの秘密、密造酒の謎、鳥人とは、サンタ村の最盛期、クジラの跳躍、等々、見ても見ても見飽きない!!!
 CD-ROM版の映画館で上映されている映画の原画を見ることができる。「いつか・きっと・上映予定」なんだけれど、ほんとに映画にならないかな!
 

▲ページトップへ Home


13.『スターヘッド』 
           たむらしげる さく 架空社

 この本も『ファンタスマゴリア』なみに大判の本で、ふだんはあまり書店でも見かけない。たむらしげるのいくつかの本のようにマンガ仕立てになっている。頭がマークの星おとこが地上に落っこちてきて(といってもどうも惑星ファンタスマゴリア上のようである)ふらふらあちこち旅をする羽目になる。しまいに地上に長くいすぎたので顔色が真っ青になってしまう。スタースピリットを飲んだおかげで、顔色ももとどおりになりぴかぴか光りだして、何億年もあるきつづけていた軌道上に戻って行く。彼、リュックをしょって軌道上を旅しているのよ。いっしょにいたサンタ村のサンタクロースと歩く家とのやりとりがおっかしい。

▲ページトップへ Home


14.『3びきのこぐまさん』 村山籌子 作 ・ 村山知義 絵 婦人之友社

 村山籌子(かずこ)・知義の夫婦は、それぞれ1903年、1901年生まれで、大正時代から戦中にかけて活躍した。籌子は婦人之友社の記者をしていたが同社の子供向けの雑誌『子供之友』(今の福音館の『こどものとも』とは別物)に童謡や詩、童話などを発表した。和義はその母が同社の記者だった縁で、やはり『子供之友』に挿し絵などを描いていた。1924年にふたりが結婚したのち、籌子の文に知義が絵を付けた共同製作により、独特の優れた作品を生みだした。
 籌子は1946年、和義は1977年に亡くなっているが、ふたりの作品は今見てもまったく古めかしくない。それどころか、むしろ不思議な新しさを備えていて、ドライなユーモアにあふれた奇想天外な発想の文と、明快でしゃれた絵が、素晴らしい相乗効果を生みだしているのには驚く。
 何年か前、このくまさんたちのでてくる古めかしいフィルム(昭和6年)を実際に見る機会があったが、とぼけていてぶっ飛んだセンスに、初めは目を丸くし、そしてお腹を抱えて笑ったことがある。
 雑誌MOE1999年3月号(
白泉社)参照。

▲ページトップへ Home


15.『村山籌子作品集1,2,3』 
          
村山籌子 作 ・ 村山知義 絵  JULA出版局

 村山籌子(かずこ)・知義夫婦による作品集。
1.リボンと きつねと ゴムまりと 月
2.あめがふってくりゃ
3.川へ おちた たまねぎさん

 どれもいくつかのお話、詩、絵ばなしからなっており、一気に読めてしまうが、とちゅう吹き出すこと多々あり。ひさしぶりにワッハッハとわらってしまった。絵の多いものもほとんどないものもあるが、やはり絵が入ることによって籌子のエスプリが生きてくるように思える。
 どれがいいって選択に困るのだが、とりあえず各巻よりひとつずつ。

「あひるさんとにわとりさん……あひるさんの おたんじょう日(1巻より)

にわとりさんとにわとりさんのおかあさんは、あひるさんのおたんじょう日にまねかれました。ご馳走を食べようとしたとたん、停電で真っ暗。すぐにあかるくなりましたが、すでにそのときご馳走は空っぽでした。暗いうちに、にわとりさんとあひるさんが食べてしまったからです。「あひるさんの おかあさんと にわとりさんの おかあさんは がっかりしましたが、しかたがありませんので、こうちゃだけで がまんしました。」この時のおかあさんふたりの表情が傑作なんです!!あひるさんとにわとりさんのおなかもまん丸に膨れているのに、そしらぬ顔をきめこんでいる。まあ見てみて下さい。あひるさんとにわとりさんシリーズはどれもおかしい。

「しっぽを なくした ねずみさんの おはなし」(2巻より)

ゆうかんなねずみさんは、あるときついにおねこさんにつかまってしまいます。おねこさんは年寄りだったので、ねずみさんのしっぽをかみ切っただけで放免してくれました。ねずみさんの友だちは、しっぽをなくしたねずみさんを気の毒に思って「お金を出しあって、義尾をかってあげました」。義尾……こんな発想、どこを押したら出て来るんでしょう!

「川へ おちた たまねぎさん」(3巻より)

じゃがいもさんが営んでいる「ジャガイモホテル」は繁盛して満員。りっぱなしんしのたまねぎさんは、疲れ切ってしまったのでむりに頼み込んでちかしつにとめてもらいます。所がどうしたことか、よなかにベッドがことこと動き出して、たまねぎさんを窓の外の川へ放り込んでしまったのです!たまねぎさんはようやっとのことで帰ってきますが、あーら不思議、そんなジャガイモホテルが気に入って、ばんとうさんになって居着いてしまうのです。そしてホテルの名も「ジャガイモ・タマネギ・ホテル」と改名です。

▲ページトップへ Home


16.『しろいゆき あかるいゆき』 
    アルビン・トレッセルトさく・ロジャー・デュボアザンえ ブックローン出版

「ゆきになりそうだな」「ゆきのにおいがする」…すると誰も見ていないうちに静かに雪が降り始め、あたり一面真っ白になってしまいます。ゆうびんやさんも、おひゃくしょうさんも、おまわりさんも、おまわりさんのおくさんもゆきのなか。うさぎやこどもたちも、雪の夜はしずかにおうちのなか。一夜明けるときらきらまぶしい、あかるい雪の日です。
 何日もたって、雪だるまがとけはじめ、おまわりさんの風邪がなおって公園を散歩し始めると、最初のこまどりがうたうのです、「はるがきた!」

 雪が来るときのつかまえどころのない、けれど確かな予感が肌に感じられる。しんしんと降り積もる雪の夜の吸い込まれるような静けさ、そして対照的に一夜明けた雪の朝の何という輝かしさ。雪の絵本って本当にどれも胸がきゅうんとしてしまうのはなぜ?ぼってりしたタッチの絵は雪そのもの。

 原題は“White Snow Bright snow”、江国香織の訳。「あかるい(=Bright)」ゆきというのがすこしわかりにくい気もする。また巻頭の詩、全部ひらがなで訳されているが、その中の「ひひと ふる」の「ひひ」ということばはそれほどポピュラーでないのではないか。3回読んでわからず、辞書のお世話になった。それ以外にもこの詩の訳文はちょっとこなれていないかな?

▲ページトップへ Home


▲ページトップへ

Home