インターネット・サーベイに関するヒント集
Update: Jul. 13. 1997
インターネットを使ってアンケートを行う時に役立つ情報・ヒントや、ふだんの私自身の業務の中でインターネットを使って調査を実施した時に感じたことを差しつかえない範囲でお伝えします。
【実 践 編】
【理 論 編】
REVIEW and COMMENTARY
■アンケート告知における「とくとくページ」 の影響力と利用法 Sep. 21. 1996
ウエッブ上にアンケートを設置したら、できるだけ多くの人に回答して欲しいのが人情ですから、多くのアンケートには景品や懸賞などのインセンティブがついています。しかしここで注意が必要です。先日実施したインターネット上の某アンケートでは、最初の1週間ほど回答者がさっぱりだったのに、ある日を境に突然10倍近いアクセスが得られるようになりました。当初、原因不明でしたが、どうやら「とくとくページ」に掲載されたためであることが判明しました。
ご存じ「とくとくページ」はインターネット上の懸賞や景品付きアンケート等を集めたサイトで、奈良市にお住まいの山本恭弘さんの個人ページながら、月間アクセス20万ヒット!。「NIKKEI NET」のホームページランキングでは「よく利用する」、「面白いと思う」の両部門でこのところずっとトップを独走していることからもその人気がわかります。ここは掲載を申し込むのではなく、山本さんへのメール投稿が情報源となっていますので、アンケート実施者が知らなくても(景品が魅力的なら)掲載されることになります。
したがって、アンケートを実施する場合は、その目的に応じて、以下ような「とくとくページ」対策をとる必要があります。
- 企業がダイレクトマーケティングのためにとにかく個人情報を集めたい場合には、魅力的な景品、懸賞をつければ掲載されるでしょう。極めて有効な告知にもなります。ターゲットの嗜好、特性に合った景品ならなおいい。(ただしアンケートと称してDM名簿を作成するのは本来好ましくないことを忘れないで下さい。)
- 自社サイトを見てくれている人のプロフィールを知るためにアンケートを設置する場合は、要注意です。とくとくページに掲載されたとたんに「なじみの」利用者ではない「いちげん」の回答者が殺到する可能性大です。また商品内容によって回答者のプロフィールは異なるものになるでしょう。
- インターネットの利用者の全体像を知りたいようなきちんとした調査の場合は、景品、懸賞なしで、日経マルチメディア誌「アクティブユーザー調査」のように、人気サイトの協力を得てリンクを張ってもらう方法で通す、あるいは、山本さんに掲載しないようお願いする必要があるかもしれません。
「とくとくページ」は私個人的にはとても好きです。ここに書いたのはあくまでわれわれインターネットでアンケートを実施したい側の問題ですから、山本さんには是非これからも魅力的なページを創りつづけていただきたいと思います。
■アンケート告知における「とくとくページ」 の影響力と利用法(続) Sep. 23. 1996
さて、上記記事をごらんいただいた「とくとくページ」の作者山本恭弘氏からさっそくコメントをいただきました。ポイントは以下の通りです。
- 情報投稿があったページは山本氏ご自身で内容を確認され、とくとくへの掲載が影響を与えるようなアンケートについては、山本氏の方から企画主体へ掲載してよいかどうかの確認を行っている。(逆に言えば、企業の顧客情報収集など明らかに告知することが目的と思われるようなアンケートについてはそのまま掲載することもある)
- また、情報投稿者が企画主体の関係者(現場担当者など)であれば、主催者より掲載許可を得られたと判断し、アンケートの内容にかかわらず原則として掲載している。
山本さんご自身、とくとくページへの掲載が与えるアンケート結果への影響に配慮されていることがよくわかります。要はアンケート企画側が目的に応じて利用方法を考えるべき、ということでしょう。
■「世界の青年の色彩認知に関する調査」の質問設計 Oct. 19. 1996
実施主体:武蔵野美術大学
アドレス:現在なし
「色彩に関する国際的データベースの構築とその活用方法の研究」とのテーマで、武蔵野美術大学千々岩英彰教授による青年の色彩嗜好、色彩感覚の国際比較を行うためのオンライン調査である。
パソコンの多色表示やグローバル性といったインターネットの特性をフルに活かしたサーベイの好例といえよう。
ある言葉から想起する色を実際のサンプルから選ぶ、あるいは様々な色の組み合わせの中から好きなパタンを選ぶといった質問が中心だが、紙の質問票のようなアンケートをふだん見ている目にはとても斬新にうつる。質問前にモニター調整用のテストバタンがあるのもアンケートへの興味をかき立てる。サンプルの片寄りや対象者への告知の問題が残るにしても、同様の調査を紙で実施する場合のコスト、手間(カラー印刷、国際郵便等)を考えると「インターネットがあって初めて実現可能となった」調査といってもオーバーではないだろう。
写真、イラストなどのイメージでも同じ手法で使えるので、このようなテキストにとらわれないサーベイはマーケットリサーチや社会調査の分野でもますます利用範囲が拡がるはずだ。
■柴内康文「電子ネットワークにおける世論調査」 Jul. 12. 1996
http://www-socpsy.l.u-tokyo.ac.jp/shibanai/paper/jesa97.htm
- 東京大学大学院の柴内康文氏の論文。1997年度日本選挙学会に用意されたものであるが、ネットワークユーザーの党派心や投票行動に何らかの偏りが考えられるかという課題に応えるため、「ネットワークに接続されたコンピュータを通じて回答をする調査」の可能性と問題点について検討されている。オンラインサーベイの持つインターフェイス特性、サンプリング特性、回収率特性などが、国内外のデータに基づいて論じられており、インターネットや電子メールを使った調査の技法を概観するのに最適。
■島田喜郎「インターネット・アンケートのデータ処理」 Apr. 29. 1996
http://www.nikkei-r.co.jp/inetanq.htm
- 「日経リサーチレポート(97-I)」より。インターネット上のアンケートに答えて「送信」ボタンを押した後どうなるのだろう、との疑問にわかりやすく答えてあります。
■アクセス向上委員会「アクセス向上の100の方法」 Oct. 19. 1996
http://www.airnet.or.jp/~hasimoto/accessml/report/
- このサイトはインターネットでアンケートを実施しようとするすべての方にとって必見です。インターネット調査は、とにかくその調査票が置いてあるサイトへ回答者にアクセスしてもらわなくては始まりません。できるだけ多くの人に、片寄りのないようにアクセスしてもらうかは、調査の精度にも直結します。そのための網羅的でかつ実用的なヒントとノウハウが集大成されています。(早稲田大学の橋本さんによる運営)
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