Keisuke Hara - [Diary]
2003/11版 その2

[前日へ続く]

2003/11/11 (Tues.) 贋金の貨幣論

生協で定食を食べて、正午から卒研ゼミ。 推定の話。易しい確率と統計の教科書だが、 たまに、ほほう、と思ふことが載つてゐて勉強になる。 今日のところには、 百日間無事故のドライバと、 百日間で一度だけ事故を起こしたドライバの、 それぞれが事故を起す真の確率はどれくらいか、 と言ふ推定の問題が出てゐて、ちよつと感心した。 二項分布の正規分布近似による推定の初歩であるが、 なかなか良い問題である。 続いて、M1 ゼミ。LLL アルゴリズムとランダムラティス暗号の解読の関係。 早く終わつたので空いた時間を使つて、 物理学科の先生と某委員会についての短いミーティング。 続いて、M2 ゼミ。修論までのスケージュリング。 夕方に終了。図書館で易しいニーチェ論の本を借りて読みつつ帰宅。 ニーチェに共感する人の心性、 「ニーチェ主義」をニーチェの観点から解読し批判するあたりが、 明晰で面白かつた。

夕食は私の秘密のレシピによる甘藍パスタ、白ワイン。 天才かな、私…。食後にチョコレートと珈琲。 夜は、Williams の校正。第 9 、第 10 章を終了。


2003/11/12 (Wed.) エスプレッソ

午前中は自宅で勉強。 ベーコンエッグ、甘藍の味噌汁、漬物などで、 自宅で早目の昼食をとり、出勤。 午後は「プログラミング演習」、 続いて教室会議。特に大きな議題があつたわけでもないが、 やはり七時くらいまでかかる。 学生の部屋でエスプレッソを一杯御馳走になり帰宅。 私も出資したので、明日からは講義前に、 エスプレッソでカフェインと糖分を補給するなんてことが出来さうだ。

九時ぎりぎりに帰宅。 夕食をとりつつ、「相棒」を観る。 この目貼りのトリックは D. カーの某作品のものだが、 特に新たなヒネリがあつたわけでもないので、 わざわざ筋立てに組み込む必要はなかつたのでは。 むしろ、犯人の意外性に集中した方が良かつたかも。


2003/11/13 (Thurs.) コート

この冬、初めてコートを来て出勤。 今朝は元同級生ではなく、K 川先生本人の方に会つた。 このすぐ後に空いたバスが来るんですよ、 と、さすが電車・バス事情に詳しい K 川先生である。 でも最近はたまに自動車通勤もしてゐるさうである。 自動車ツウにもなるかも知れない。 砂糖入りのエスプレッソを飲んでから、 朝の講義「確率論」。 生協食堂で昼食を取つて、少し事務をして、 午後の講義「積分論 II」。 続いて、物理の Y 君の Dym-McKean 自主ゼミ。

デロンギのエスプレッソマシンいいなあ。


2003/11/14 (Fri.) 修羅雪姫

朝は、執事が家に持つてきた 「キル・ビル vol.1」のサウンドトラックを聴きつつ、来週の講義の準備。 「恨みの道を行くおーんなぁ、心はとうに捨てぇまぁしいぃたあぁ…」 何故、「修羅雪姫」なのかは良く分からないが(映画を観てないので)、 梶茅衣子つてすごく歌が上手だつたんだなあ。

昼食はまた甘藍パスタ。午後から休日。 洗濯、書庫の整理などの梶、いや家事と、 河原町に珈琲豆と本の買ひ出し。 ユマ・サーマンのファンでもあるし一応観るか、 と思ひ「キル・ビル vol.1」を観る。映画館はガラガラ。 内容はすごい脱力系 B 級スプラッタ… ハリウッドはタランティーノに騙されてないか?(笑) ちなみに、「修羅雪姫」のみならず、 クレジットロールでは「恨み節」がフルコーラス流れてゐた。


2003/11/15 (Sat.) デカルトと虹

九時起床。朝食はチョコレートと珈琲。 午前中は「魔剣天翔」(森博嗣)を読む。読了。 貧乏パスタの昼食を食べ、午後も読書。 書庫で「ファインマンさん最後の授業」(レナード・ムロディナウ、訳:安平文子) を読了。そのまましばらくの間、 書庫でしんみりと人生について省察してから、 次は寝台で「自宅にて急逝」(クリスチアナ・ブランド、訳:恩地三保子) を読む。 夕方になつて読書を中断し、近所で豚のバラ肉を買つてきて、 簡易版(とは言へ一時間以上かかるのだが) のトンポーロを作成して、根菜の味噌汁と漬物で夕食。 夜はチェロの練習と読書の続き。 チェロは人差指を痛めて数日控へてゐたので指ならしに、 Feuillard の本よりスケールと簡単なエチュードなど、 メカニックなところを軽く練習。 読書はブランドの続き。読了。 傑作とされる作品群には及ばないが、これも良く出来てゐる。 ブランドはやつぱりいい。 続いて、 「グロタンディーク 〜数学を越えて」(山下純一)。 有意義な一日だつた。

足元が痺れるやうに冷たくなり、 ようやく冬らしくなつてきて、嬉しい。 私は寒いのが好きだ。 心が冴えざえとして、純粋な気持ちになる。


2003/11/16 (Sun.) 虹の関数とファインマン・テスト

九時起床。チョコレートと珈琲で目を覚まして、 午前中は講義の準備と自分の研究を兼ねて、 Airy 関数で色々遊んでみる。 昼食は贋トンポーロのだしに茹で卵と豆腐を投入して煮込み、 おでん風にしてみた。午後も、午前の続き。 大量に作つたので、夕食も昼食とほぼ同じ。 夜は代数の入門書を読みながら、TV で「ダイヤル M」を観る。 ヒッチコックの「ダイヤル M をまわせ」の特に意味のないリメイク。 見所は、グィネス・パルトロウのファッションが地味ながらシックで、 彼女が綺麗に撮れてゐることくらいか。やはり、何かが薄いけど…

この三次曲面つてこんな形なのか… と、簡単なこととは言へ、自分であちこち値を計算してみたり、 微分してみたりして調べるのが楽しい。 もちろん、Mathematica とか Maple とかを使へば、 一瞬で画面に描けるのだらうが。

さう言へば、昨日読んだ本の中に、 死期の近いファインマンが、 理論物理学の研究を続けて行けるのかと迷ふ若いエリート研究者に、 「君は原子の顕微鏡写真を見てドキドキするかい? 私に答へる必要はないが、自分の心に答へるんだ」 と言ふやうなことを問ふシーンがあつた。 この話の味噌は、 この若き研究者がバリバリの理論屋であるにも関らず、 ファインマンがそんな質問をしたことだと思ふ。 (数学で言へば、これはどんな質問にあたるだらう。) 進路のことで難しい悩みを持つてゐる学生や院生は数学科に多いが、 ファインマンと同様の質問を自分にしてみるべきだらう。 また教員もさうすべきだ。その答がかつてはイエスだつたが、 今は本当のところ、どうなのか、と。


2003/11/17 (Mon.) 夢と計画

少し寝坊した。 日射しは強いが、気温は低い。 ほんの少し代数の勉強をしたところで昼食。 葱と油揚のパスタ。 昼休憩の執事がやつて来て、花を生けて帰つた。 上から見ると星型に花弁が開いてゐる、 不思議な咲き方の白い小型の薔薇だが、何と言ふものだらう。 午後は事務作業をしばらくして、 夕方は経路積分の本をぱらぱらと眺めて、 進むべき方向を模索。 夕食はまたおでん。他に納豆、根菜の味噌汁など。

今回は人間完敗を予想してゐたのだが、 3 ゲーム目にして Kasparov が一勝。タイに戻した。 このゲームは Fritz がいかにもコンピュータらしく負けた。 つまり、ポーンの鎖で盤面が閉じて膠着したところで、 次の有効な「プラン」を立てることが出来なかつたし、 人間なら明白に分かるはずの敵のプランを読むことも出来なかつた。 結局この、プランを立てると言ふ、 「夢の盤面」を思ひ描く能力が、コンピュータチェスの最後の壁だらうか。 現在 1 1/2 ポイントずつでタイ。 第 4 ゲームは 18 日。 ゲームの情報、棋譜、ライヴ観戦などは、 こちらの X3D のサイトからどうぞ。


2003/11/18 (Tues.) デミタス

正午からゼミなので、少し早めにキャンパスに行き、 生協で鯵フライ(一つ 80 円)メインの昼食を食べてゐると、 同じく午後からゼミと講義と会議の K 川先生に会ふ。 若者らしからぬ会議の話など。あ、もう若くないか。 エスプレッソで気合ひを入れて、卒研ゼミ。 ゼミ室へ移動中に廊下で O 坂先生に会つたら、 手に持つてゐたデミタスカップを羨ましがられた。 どこで手に入れたのかと聞かれたので、ベトナムと答へると、 O 坂先生は、ベトナムは遠いなあ…と言ひながら去つて行つた。 実はエスプレッソ用ではなく、ベトナムコーヒー用のカップなのである。

珈琲で気合ひを入れても、卒研ゼミはあいかはらず、 まつたり、おつとり。 続いて、M ゼミ。LLL アルゴリズムの解説。 続いて、某委員会の会議。移動の合間には、 郵便を出したり、書類を出したりと事務仕事。 夕方終了。帰宅は 7 時。夕食は納豆パスタ、ワイン、 食後にチーズ(ブリーレノミ)。


2003/11/19 (Wed.) Loose pieces drop off!

午前中は自宅で小一時間ほど計算をして、出勤。 某会報に研究室紹介の記事を頼まれてゐたのを思ひ出して、 午後は個研で一気に書いてメイルで提出。 続いて、「プログラミング演習」。 今日は教室会議はなし。

Kasparov vs. Fritz の最終第四ゲームはドロー。 結局、このマッチ自体 2.0-2.0 のドローの結果となつた。 第四ゲームの詳細な解析はまだ出てゐないやうだが、 黒番の Kasparov は、 コンピュータが得意さうな盤面を良く凌いだのではないだらうか。 つくづく 第二ゲーム での激しいポカ (32. ... Rg7 ??) が悔まれるが、 そこは人間だからしやうがない。 このポカは普段の自分のゲームを見てゐるやうで、 世界最強の Kasparov に親しみが持てて良い感じ(笑) 実際のところ、 こんなポカが名人にさへ出てしまふのは心理学的な効果に違ひなく、 上の棋譜はその視点から見ても興味深い。


2003/11/20 (Thurs.) アーリオオーリオ再考

朝は「確率論」。大数の弱法則と強法則。 生協で昼食を取つて、 数理ファイナンスシンポジウムの準備ミーティング。 続いて「積分論II」。 夕方の自主ゼミは学生の都合でお休み。 「ランダム 〜数学における偶然と秩序」(E.ベルトラミ著) を生協で購入して車中で読みながら帰宅。 翻訳がかなり悪いやうで、これは原文ではこう書いてあつたのだらう、 と一々推定しながら読むため、ストレスがたまる。 面白い本なのに残念だ。

昨夜、NHK 教育の料理番組で、 片岡護氏がアーリオオーリオの作り方を説明してゐるのを観て、 「おや、これは」と悟るところがあり、 今日の夕食にアーリオオーリオを作つてみる。 なるほどね…、と一つ進歩。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

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