Keisuke Hara - [Diary]
2004/03版 その2

[前日へ続く]

2004/03/11 (Thurs.) 研究室引越し

午前中に出勤して、若干の事務用をこなし、 生協で昼食を取つて、 一時から教室会議。 学科の研究室の再分配後の使ひ方をめぐる議論の最中で失礼して、 二時から個人研究室の引越しに取りかかる。 今日中に研究室を引き払ふやうに言はれてゐたので、 大慌てで引越し作業。しかし、 事前にかなりの下準備をしておいたことと、 学生の手伝ひ五名を動員したことで、 思はぬスピードで作業は進み、あつと言ふ間に引越しが完了した。 新しい研究室は最上階七階の琵琶湖側中央で、 絶好のロケーション。 ネットワークは明日以降に接続可能になる模様で、 設定などを含めれば来週から始動できるかと。 夜は、引越しを手伝つてくれた五名の学生を引き連れて、 京都駅近辺の「楽座」で宴会。 引越しのバイト代が出せるかどうか不明なので、 せめてもの御礼である。深夜 0 時頃帰宅。

投稿したゐた論文の採択の報せが届いた。 シンポジウムは終はつたし、 引越しは済んだし、論文は通つたしで万万歳。 この週末くらいは休暇を取つても罰は当たらないですよね…


2004/03/12 (Fri.) 煙の住処

飲んだ翌朝は何故か早朝に目覚めてしまふ。 今朝も六時くらゐ。 寝床で読書などをして、 九時過ぎに寝床から起き出して朝風呂に入り、 近所のベンガルカレー屋で昼食をとる。 午後からは神戸に遊びに行く予定。 私は阪急の駅の近くに住んでゐるので、 大阪神戸方面には阪急を使ふことが多いが、 三宮まで 600 円、つて本当に経営が成立してゐるのだらうか、 他人事ながら心配になる。

今まで学科で一人だけ 4 階にゐたもので、 学生の間からは「どこにゐるのか分からない人」とされて、 ほとんど誰も質問などに来たことがなかつたのだが、 (いや、本当はそれ以外の理由が主)、 学科の地盤の一つである 7 階に移つたことで、 これからはオフィスアワーを設けたりなどして、 門戸を開放して行かうかなあ、と考へ中。 ところで、理工系の建物には、 「天上に近い分野ほど高い場所に住む」 と言ふ一般法則がある。 最上階は大抵、一番浮世離れした数学か物理、天文などで、 階を下がるごとに世間に近付いて行き、 地面に近いあたりは地に足のついた学問、 と言ふ寸法である。 まあ出来過ぎた話だが、 貴女の大学ではどうなつてゐるかチェックしてみては?


2004/03/13 (Sat.) フレンチ/チャイニーズ・コネクション

神戸でフレンチと中華をいやと言ふほど食べて身体が重い。 今日の今でも、 まだ胃が昨日の鳩を消化しやうと努力してゐる気がする。 フランスと中国は美食の国と言ふより、 大食の国なのではないかなあ。 枯れた繊細な日本人としては、 最初からスタミナで負けてゐて、 何をやつても勝負にならないやうで不安になる。

今日の午後はとても良い陽気であつたが、 夕方になつてかなり冷えてきた。 京都の明日の朝は零度近くまで下がるやうで、 その後からが春らしい。 夕食は近所の定食屋で簡単に済ませ、 夜はチェロを少し弾いて、のんびりする。 ちよつと仕事がしたい気がしたが、 明日からにしやう。


2004/03/14 (Sun.) ゼロからのスタート

九時頃起床。午前中は洗濯をしつつ、 寝床で読書。 昼食にペペロンチーノを作つて食べ、 午後は論文の最終稿作り。 指定されたスタイルファイルをもらつてコンパイルすると、 いかにも掲載論文です、 と言ふ感じに仕上がつて嬉しい。 とは言へ、 昔はこんな最終段階まで著者がする作業はなかつたはずで、 便利になると言ふことはつまり、 背比べをするのに皆で高下駄を履くやうなものだ。 夕食は適当に御飯と味噌汁の粗食。

私の引越しを待つてゐてくれて、 いよいよ theory ドメインが消滅したのだらうか、 接続できなくなつてゐる。 三月中に消滅するとは聞いてゐたが、さうだとすると、 これで情報学科時代の名残が全てなくなつて、 ちよつと寂しいような。 私はもう実質的には使用してゐなかつたので、 唯一の心配事は santaro 日記サーバがどこに移動するのか、かな(笑)

空集合をゼロと看倣す と言ふか、それをゼロの定義にするわけですね。 自然数をどう定義するか、と言ふのは趣味の問題がありますが、 まあ、「出発点」になるものと、 「その次」と言ふ操作があれば定義できるわけで、 出発点に空集合を取るのも一つの方法でせう。 とにかく、空集合と言ふものが存在する、 (何もない、と言ふことが、ある、) と言ふことはかなりもつともらしいし、 何となく無から全てが生まれてくる感じがクール。 ゼロで除算されると困りはしますが、 自然数に何らかの演算を定義するのは、その後の問題ですね。 自然数にゼロを含める人と含めない人がゐるのは確かで、 私は入れない流儀ですが、 たまにゼロを入れてゐた方が便利だつたかな、 と思ふときもあります。


2004/03/15 (Mon.) 島とうがらし

午前中に一仕事しやうと早めに家を出たのだが、 尼崎の方で人が線路に入つてきたとかで、 京滋線は一時間遅れ。 京都駅のホームから零れ落ちさうな乗客の群と一緒に 満員の電車に乗り込み、 キャンパスについたら午後だつた。 まず事務用をいくつか。事務室が近いつて便利。 続いて、研究室のコンピュータのネットワーク設定。 特に問題もなく、すんなり完了。 部屋の中もすつきりと片付いて、 四月からの新生活に弾みもつきさうである。 夕方、帰路につく。

夕食は炒飯と葱のスープ。 炒飯に隠し味として、 最近、知り合ひからもらつた沖縄の「島とうがらし」 を使つてみたのが絶妙だつた。 小さな唐辛子をたくさん泡盛に漬け込んだもので、 その泡盛の方を調味料に使ふ。 いくつかの料理で試してみたが、大変美味しい。 これは常備したいが、どこに売つてゐるのだらうか… なくなつたら、 泡盛を足せばまた使へる、と聞いたが、 それも二、三回と言ふところだらうなあ。


2004/03/16 (Tues.) 4 分間の奇跡

自宅で粗食をとり出勤。 今日の電車も遅れてゐる。帰りも遅れてゐた。 ホームで電車を待ちながら、 さういや、頻繁に電車が出入りする巨大な駅で、 車両に邪魔されずに あるホームから別のホームまで見通せる時間が一日に数分間しかない、 と言ふことが味噌の推理小説があつたなあ…(*1)、 と古き良き時代を偲ぶ。

今日は温かく、風もない、 おだやかな良い陽気である。 午後は今期、最後の教授会。 会議中は、「セバスチャン・ナイトの真実の生涯」 (ナボコフ著/富士川義之訳/講談社文芸文庫)を読んだり。 教授会終了後は恒例の懇親会だが、 私は今回も不参加。

*1: さて、この有名な推理小説は何でせう。


2004/03/17 (Wed.) bon gout

昨夜なかなか寝つけなかつたせゐで、 朝はかなり寝坊した。 昼食に納豆、味噌汁などの粗食を取り、 午後はチェロのレッスンに行く。 レッスンの後は、 近所の SBUX で読書をしながら、 レモンケーキと珈琲で一服。

鍵盤楽器と違つて、チェロのやうな弦楽器では、 連続的に音の高さを変化させることが出来る。 つまり、二つの音の間、 例へばドとレの間や、もつと長い距離を、 音を出しながら連続的に移動できる。 グリサンドとかポルタメントとか言ふもので、 楽曲演奏の中で効果的に使はれてゐると、 弦楽器ならではの魅力がある。 これは原理的にはいつでも可能なのだが、 ポジション移動と運指の問題があつて、 し易いときと、し難いときがある。 特に、私のやうな初心者にとつて問題なのは、 注意しないと勝手にさうなつてしまふときである。 またその方法も、 出発の音のあたりにかける、 行き着く音のあたりにかける、全般にかける、 あるいは任意の変化で行ふこともでき、 つまりは無限の可能性がありうる。

で、問題はいつ、どのやうにすべきか、 または、すべきでないか(勝手にさうなることを意識的に禁じる)、 なのだが、もちろん楽譜にそんな指定はなくて、 その方針が良く分からない。 一般則がある程度あるやうなのだが、 そのときどきの楽曲からの要請と運指の都合で、 この場合はこう、この場合はこう、と言ふ感じでもあり、 納得できないことが多い。 そして、最終的には「趣味の良さ」 の一言で片付けられてしまふ。 思ふに、それはきつと、 非常に高い次元では単純極まりない法則なのだが (つまりは、「趣味良く弾きませう」)、 低い次元の狭い窓から見ると、 その度々に複雑な形が垣間見えるだけなのだらう。

ところで、チェロはさておき、 何かを作つたり表現したりしてゐる人にとつて、 趣味の良さの功罪は、 常にシリアスな問題であると思ふ。 特に「罪」の方の根が深く、悩ましい。


2004/03/18 (Thurs.) 世界のゲーム

8 時起床。雨。 今日は丸一日、休日にあてる。 午前中は寝床で読書。 森先生は余程、サリンジャーがお好きなのだなあ。 昼食は冷蔵庫の余り物で適当に作つたパスタ。 午後には雨は上がつた。 食後、散歩がてら、河原町の丸善に本を買ひに行き、 すぐ帰宅して午睡。 夕食は胡瓜と半熟卵のサラダなど。 夜は少し棋譜を並べたり、読書など。

日々、チェス日記「戎棋夷説」を愛読させてもらつてゐるサイト "Chess Chronicon" の影響で、 Chess Today と言ふネット配信のチェス新聞を講読し始めた。 今日の注目記事は、「カスパロフが大統領に?」。 (参考: ABC のインタヴュー記事) いくら偉くても、 ロシア国民のためには止めておいた方がいいと思ふ… 世界をボードにチェスを始められても困るし。 また、今日のゲーム註釈のところで、 シシリアン・ドラゴン定跡は女の子のトーナメントで人気がある、 単純で女の子にだつて簡単に説明できるから、 なんて書いてあつて、 良くドラゴンを使ふ上にフェミニストの私はカチンと来たのだが、 そのすぐ後に、 先週コステニュク に負けたので「復讐」のジョークだと続いてゐて、 少し笑はせてもらふ。 (ところで、上記の彼女のサイトの "The world plays with Alexandra" の企画、面白いですね。)


2004/03/19 (Fri.) ストーブ

まだそれほど春らしい気候と言ふわけでもないのだが、 なんだか一日中眠くて困る。 朝は寝床で読書など。 昼食は紫蘇入り納豆、胡瓜の漬物、 葱と油揚の味噌汁などのいつもの粗食。 よつぽど、暇なのかと思はれさうだが、 午後一杯かけてミートソースを仕込む。 最後にトマトを入れてから、さらに三時間ほど煮込むので、 その間ガスレンジの横に椅子を置いて、 「透明な対象」(ナボコフ著/若島正・中田晶子訳/国書刊行会) を読みながら鍋の番をする。 夕食はミートソースでパスタを作り、赤ワインを伴に食す。 美味しいけど半日かけても食べるのは一瞬、 それが料理のダンディズムと言ふものか。 それに、大量に作つてしまつたので (大量に作らざるを得ない料理だ)、 最低でも 4 回はこのミートソースを使つた料理を食べねばならない。 夜は軽くチェロを弾く。スケール、エチュードなど基礎練習。


2004/03/20 (Sat.) マリアージュ

今日は冷たい雨が降り、 また冬に逆戻りにしたやうな京都である。 昼食は御飯を炊いて、ベーコンエッグ、甘藍の味噌汁など。 午後は洗濯をしてから、 午睡をしたり、読書をしたり、 チェス・プロブレムを考へたり、と春休みを満喫。 しかし、プロブレムは一題も解けず。 締切は近いが既に解けるものは解けて、 後は今の私には手に負へないのかも知れない。

夕食はまたミートソースのパスタ。 変化をつけるため、茄子を使ふ。 茄子を大きめの賽の目に切り、 塩を振つて紙でアクを取り、素揚げする。 ミートソースに混ぜて炒め、 パルメジャーノと一緒にパスタと和へる。 美味しい…茄子はミートソースに良く合ふ。 正しい素材の組み合はせの知識は人類の遺産。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

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