やまいもの雑記

新世紀エヴァンゲリオン劇場版完結編・感想


前半の「Air」はすごかった。あれだけでも見る価値があるんじゃないかと思えるぐらいの出来。春同様、両のまなこを見開いて画面に集中できた。

「DEATH編」の圧縮(縮め方がうまいのでダイジェストとは思えない)に続いてミサトの「わざとらしい生き方」の完遂、弐号機のエヴァシリーズとの格闘と鳥葬。息もつかせない濃密な展開と画面である。エヴァシリーズに内臓を引きずり出されてこときれる弐号機なんて、やはりガロンに内臓を撒き散らされたマグマ大使以来のショックな絵だ。このシーンだけでも成人指定映画じゃないか、これ。しかし、偽物のロンギヌスの槍に貫かれていたとはいえ、あの局面で暴走しないのが初号機と弐号機の差か。

あと、前段で文句を付けた内容も修正してあった。いろいろ解釈できるのは「あのシーンを女性の声優にやらせたことに問題がある」と書いた部分にしっかり「うっ」が追加されて誤解を防いでいたし、「人類はすでにヘイサしている」も「ヘイソクした人類」に直っていたし(声優が変わっていたのは責任とらされたのか?)、ついでに私が自作したアスカのせりふで「○○○○したくせに」とわざわざ伏せ字にした内容も「まごころを、君に」の中でしっかり宮村優子が口にしていたし。

「美樹、美樹、君だけだ。この世界を君の住めない悪魔の世界にはさせないぞ」と走る不動明の行く手に美樹の生首が……じゃなくて、死を賭してのミサトの説教を受けながらも「だって、載れないんだもん、しかたないじゃないか」とあくまで投げやりなシンジが母親に尻を叩かれてようやくエヴァに翼を生やして飛んでいくが、そこには自らの臓物にまみれた弐号機の無惨な姿。思わず悲鳴を上げるシンジのアップで「Air」終了。

テーマ音楽とスタッフロールに続いてリメイク版最終話「まごころを、君に」開始。

しかし怒りの炎で人間どもを焼き尽くした不動明と違ってシンジはあっさり戦意喪失、翼は消え失せ、月から戻ってきたロンギヌスの槍に動きを止められた上でエヴァシリーズに捕獲される。

ゲンドウとの「約束」を果たしにターミナルドグマのリリスの前に来た綾波レイ(碇ユイ?)は、いよいよというときに夫・ゲンドウより息子・シンジを選び、リリスと合体して世界を飲み込んでいく。しかしその姿を見たシンジは自我崩壊……と思いきや、レイが引っ込んでカヲルが姿を見せるや陶然としたほほえみを浮かべる。何なんだ、いったい。

ロンギヌスの槍に貫かれて世界樹と化したエヴァ初号機は何となく『銃夢』だし、レイが愛する相手(?)に見えたとたんATフィールドが壊れていく人々の姿はどこやら『ブラッド・ミュージック』か(ぱっと思いつくのはそれぐらいだぞ、とほほ)。

でまあお約束の電車の中での自我のせめぎ合い、といっても、すべての人間のATフィールドが取り除かれてそれぞれの精神が直接やりとりしてる状態。ゲンドウがシンジと同じ「逃げた人間」だというのは何となく胸落ちした。一番針を逆立ててたヤマアラシはゲンドウだったのね。で、なんだかんだあったあと実写を加工した映像があって、ラストシーンは渚にて。

これは私の目にこう映ったというだけで、他の人には違う風に見えているのかもしれないが、とりあえず書いてみる。エヴァシリーズが弐号機にとどめを刺したときの怪我か右腕に包帯を巻いたアスカに、海の上に一瞬レイの姿を見たシンジがマウントポジションをとって首を絞める。アスカの包帯を巻いた手に頬をなでられると、力を抜いて首から腕を外し、アスカの胸に顔をうずめて泣くシンジ。それを見つめてアスカが一言「気持ち悪い」とつぶやいて終劇。

さて、私の頭が悪いのか感性が鈍いのか、このシーンがさっぱりわからない。なんでシンジはアスカの首を絞めるのだ。何でアスカは首絞めてるやつの顔をなでにゃならんのだ。しかも怪我した方の手で。なんで嫌悪丸出しの「気持ち悪い」のせりふで「終劇」なのだ。これじゃ見終わったという気になんてならないぞ。あのシーンのおかげで映画が終わる直前に物語世界の外にはじき出されてしまったみたいだ。これはテレビシリーズの最終二話も同じだが。

アスカの首を絞めるのは、ATフィールドがなくなって全ての人間がごっちゃになったときにアスカに拒絶されて首を絞めた続きかもしれない。あるいはATフィールドを元に戻す直前の「あんたとだけは死んでもごめんだわ」というアスカの言葉がそうさせたのかもしれない。アスカの「気持ち悪い」もその言葉につながっているのかもしれない。もしくは「ミサトやバカシンジの使ったお湯になんて誰が入るもんか(略)気持ち悪い」の続きかもしれない。

でもあの終わり方じゃこのとき松楓庵にある違和感……(ざわっ)とか違うだろっぐらいしか出てこない(声:伊藤カイジ)。それとも、全てに意味や必然を求める方が間違っているのだろうか。

あのラストがわからない私がうがった見方をするなら、「気持ち悪い」はいわゆる予定調和のエンディングに対する庵野総監督の気持ちをそのまま表したものなのかもしれない。

てなところが映画を見た感想。ここから先は個人的なこじつけや邪推になるので、読んでみたいという物好きな方だけどうぞ。

私は物好きです後悔したくありません少し考えさせてください

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庵主:matsumu@mars.dtinet.or.jp