環境審査 レッスン17 08.01.31
ISO審査員のレベル

いつぞや私はプロセスアプローチという駄文を書いた。
それをご覧になられた某氏から「JAB(日本適合性認定協会)の通知で書いていることと同じじゃないか。人の真似、盗作はいけないよ」というお便りをいただいた。
ご指導、ご忠告ありがとうございます。
おっしゃる通り、人の真似、知的財産の侵害はいけませんね
ところがよく見ると、私がその駄文をアップしたのは07年3月11日ですが、JABの「マネジメントシステムに係る認証審査のあり方」という通知は07年4月13日なのです。
すみません、ご署名を残されなかったのでお名前を存じ上げませんが、JABに人の真似、盗作はいけないよとお伝えしていただけませんか?
もしかしたらそのお方、倒錯してたのかもしれません。 

ところで私はJABに対してプロセスアプローチとい
う言葉の著作者人格権を主張できるのであろうか?
アッツ、冗談です・・スミマセン

さて、せっかく頂いたお便りであるから捨てるのはもったいない。本日はその続きというか、それから頭に浮かんだことを書く。
いずれにしても私の話はくだらないことに変わりはない。

ここでは環境ISOに限定するが、普通いったいどんな切り口から監査を始めるのだろうか? ということを考えてみる。
監査というとピンとこないが、オーデットあるいはヒアリングといえばすんなりご理解いただけるだろう。
ざっくばらんに言えば、世間話のきっかけは何かということである。
ISO14001においてはマニュアルを作らなくても良いことになっているが、各審査機関は登録ガイドなどという名称の冊子で、環境マニュアルを作ることを要求している。まあそれはガイド66に反していないから文句は言わない。ともかく審査員は組織の監査を徒手空拳でなく、相当の情報を持って監査を始めることができるわけだ。
私なんかマニュアルなんてなくても、予備知識がなくても監査をする自信がある。今でもしていますしね

監査を規格条項に沿ってでなく、業務に沿って行うように前述のJABの通知は求めている。私がプロセスアプローチと語ったのと同じことだ。
しかし、JABがそういう通知を出したということは、現実の審査はそうではないことを意味している。

規格項番の順に沿って作られたチェックリストによって質問する審査員も多い。
ISO認証して間もない組織もそういう内部監査をしているのが多い。システムが成熟していないなら、それもやむを得ない。しかし認証してから10年たってもいまだに規格項番順のチェックリストで「環境方針は定めていますか?」「環境側面を特定する手順はありますか」なんておままごと監査をしている組織もある。実は私はそんなレベルにある多くの組織を知っている。
しかし大の大人がそんな監査もどきをしていて空しくないのだろうか? 
もちろん内部監査を経営に役立てようと全面的に改革して、そしてものすごい成果を出している会社も知っている。もっとも、ISO審査で「そのような内部監査は規格に適合していないから従来に戻すように」と審査員が語ったとか!?
きっと自分がする審査より優れていたのでやっかんだのではないかと思います。
ともかく、JABのご指導により、そういった規格項番順の審査はこれから恐竜のように姿を消すだろう。

よく見かけるのは、環境実施計画を切り口にヒアリングを始める審査員である。
聞いた話であるが某会社で某審査員は「その部門は環境目的目標を設定していないので審査しなくてよいです」と言ったとか?
ISO14001の骨は環境目的目標なのであろうか?
たぶんその審査員はそう考えているのだろう。
私は、そうではないと考えている。
ISO14001のメインテーマは間違いなく環境側面なのである。
誰が考えたって、環境改善活動よりも、事故や違反を起こさないほうが重大で優先することはISO規格など知らなくても分りきったことだ。ならばそのためにどうしているのか? 本当に大丈夫なのかを確認するのが当然である。
環境実施計画からヒアリングを始める審査員は最低ランクであろう。
おっと、環境実施計画しか聞かない審査員はそれ以下の不合格であることはいうまでもない。
実は、そういうお方も多いのである。
適合性以前の審査員なのであろう。

さて、環境側面から質問を始める審査員は少しは期待が持てる。
もっともすべての審査員は環境側面に関心があるのだが、環境側面を特定し、著しい環境側面を決定する手段とか記録についてはしっかり調べ、計算がおかしいとか、とりあげている要素が足りないとかいろいろと心配してくれる。
しかし、不思議なことだが、特定した側面、決定した著しい側面が適正か、漏れがないかということには、あまり気を使わない人が多い。
ひょっとすると、環境側面を特定する手法には詳しくても、現実の環境側面というものを知らないのかもしれない。 
環境側面をどのようにして決めているかを質問するのではなく、その環境側面が適切かどうかを質問する審査員はおおいに期待が持てる。
期待が持てるのであって、期待どうりなのかはその次を見ないと論評できない。
環境側面を管理する仕組みが適切か? ちゃんと運用されているかを調べることは、規格どうこうではなく、企業にとって極めて重要なことである。

規格適合審査とかいう観点を離れて考えてみよう。
あなたが初めての会社を訪問して、その会社が法律を守って、事故が起きないように管理しているか、それが個人の力に依存しているのではなく、継続的にしっかりと運用されていくかどうかを点検するとした場合、どうしますかね?
そんなことが私の日常であるのだが
簡単であるとは言わないが、単純であることは間違いない。その会社の製品、工程、設備、近隣の状況、そういったことを聞き取り、どのような環境側面を有しているか、どのような法規制に関わるかを考えることである。
その結果、先方が見落としている法規制に気づくかもしれないし、環境側面の特定方法などに関わらずに環境側面をしっかり把握して管理しているか、関係者の力量は大丈夫かなど知ることができる。
そのような監査には環境側面登録表もいらないし、法規制一覧表もいらない。己の知識と聞き取る能力、そして目ざとさのみが頼りである。それがプロセスアプローチ監査であることはいうまでもない。
業務は何か?からはじまる審査員は合格です。


本日の定食のメニューです。

業務からはじまる審査員は松
環境側面から始める審査員は竹
環境実施計画から始める審査員は梅
環境実施計画しか聞かない審査員は不要です

../hinmaru2.jpg../dish.gif



ISO14001の目次にもどる