プロセスアプローチ 2007.03.11
本文をご覧になられた某氏から「JAB(日本適合性認定協会)の通知で書いていることと同じじゃないか。人の真似、盗作はいけないよ」というお便りをいただいた。
私がこの駄文をアップしたのは07年3月11日ですが、JABの「マネジメントシステムに係る認証審査のあり方」という通知は07年4月13日です。
ご了承ください。
2008年1月31日追加

昔の話だ。2000年にISO9001が改定されて、規格にプロセスアプローチという言葉があらわれた。改定された当初は、それがまったく新しい思想か手法かと右往左往された方が多かった。その後、品質ISOの重鎮加藤さんが「たいしたことではないのだ、要求項番ごとではなく業務のフローを基に考えることだ」と言ったものだから、なあんだ、じゃあ昔からしていたことじゃないか、と一件落着した覚えがある。
といっても私がISO9001に関わっていたのは1998年頃までであり、それ以降は環境一筋でISO9000には関心がなかったこともあり、実際にそうだったのか? 記憶違いか、勘違いかは定かではない 

本日はISO9001のプロセスアプローチではない。常々考えていることを書くだけである。
じゃあ、なぜプロセスアプローチというタイトルなのか?と問われるかもしれない。オット、もう分かっちゃった人は分かっちゃいましたよね
では行きましょう。
とりあえず、環境に限定して話しを進める。品質に関しては私の頭はもう錆付いていることを認める。
なお、以降、監査とは監査と審査を合わせていう。理由は単に面倒だし英語じゃ同じというだけです。

監査とは、依頼者から指示を受けた監査員が監査基準と現実を比べて監査基準に適合しているか否かを判定し依頼者に報告することをいう。(ISO19011参照)非常に簡単なことである。
私の非常に単純明快な説明にご異議はございませんね?
あると困るなあ〜

監査のスタイル、すなわち現実が監査基準に適合しているか、していないかを見るには多種多様な方法というかアプローチがある。審査機関の数あるいは監査員の数だけあると言える。
以前そんなことを書いたことがある。
本日の出し物はその続きというか、そのまんまかもしれない。
man7.gif
環境側面
てなんだ?

例えば、著しい環境側面と特定された業務に従事している人が力量を有しているかを確認するときに、何を持って力量があると判定するのか?また組織が力量を持つことを確実にしたのを適正と判断するのか? と簡単なことを考えてみる。
著しい環境側面と決定したものにはいろいろなことを要求される。 さて、あなたは監査員である。ある業務に従事している人が力量を持つことを確実にしているかどうか、そしてそれを立証する記録があるか調べなければならない。
なにしろあなたは監査員であり、監査しないと給料がもらえないのだ。
どういったことを聞き取りあるいは調査をすればよいだろうか?
町で売られている内部監査のテキストの後ろについているチェックリストなんてみると
 「この仕事に従事するためにはどのような資格要件を定めているのですか?」
 「どのようにしてこの仕事をしてもよいと判断しているのですか?」
 「Aさんが力量を持っていると評価した記録を見せてください。」
なんて、具体的な質問例がいろいろと書いてある。
実際にはどうだろうか? 内部監査員はそういったチェックリストを基に毎年毎年、十年一日のごとく質問しているのだろうか?
「そんなことはない!」という声を聞きたい。
私の知るいくつもの工場や会社では、毎年監査のときに事務局がそんなチェックリストを監査員に渡して監査して来いといっている。
著しい環境影響を持つ仕事に従事する資格要件を、あれこれと定義することができるのだろうか?
まずこれが疑問だ。
公害防止管理者になるには公害防止管理者試験に合格したものでなければならない、と法律で定めている。
公害防止管理者とは会社で公害防止管理者として指名され届出された者をいうのであって、試験に合格したあるいは講習会を修了しただけでは公害防止管理者ではない。
でも、公害防止管理者試験に合格しているからといって力量があるとはいえない。man2.gif私の友人の資格マニアはすべて種類の公害防止管理者、すべて種類の計量士、その他環境関連だけでなく両手両足で足りないほどの資格を持っているが、いずれの実務に就いたこともなく、まずそれらの仕事ができないことは確実だ。
人のことばかり言えない。私は放射線を除いた作業環境測定士の資格を持っているが、実務として行ったのは有機溶剤だけでそれ以外はできないことを白状する。
記録改竄をした企業の公害防止管理者は指名され届け出ていたわけだが、業務を遂行することができなかったのだ。
国家資格を要求される仕事において、国家資格を持っているだけでは任務をまっとうできる保証にならないのである。

では何を持って力量があることを示すことができるのだろうか?
資格だけでなく経験があればよいのか?
経験といっても責任者としてはんこを押していただけとか、下働きだったのか、中心人物だったのかなどなどあり一概に言えない。また経験年数といっても、短期間しか従事しなくてもなにごとかを立ち上げた人と、10年していてもルーチンワークだけの人では、仕事の理解と応用力では雲泥の差である。
とまあ、思うことは多々あるが、力量を定義することはかなりというかできそうがない。

しかし実は簡単である。
力量を立証することとは、仕事を立派にこなしているか否かではないか?
仕事振り、つまり実際の作業を見て、作成した記録を見て、口頭試問して適正かどうかをみりゃいいんですよ。
そういうプロセスにおいて手順書が適正かも同時に判明する。
手順書の要否だって「要員の力量によって異なる(ISO14001A4.4c)」のだ。著しい環境側面の業務に従事している人の力量次第では手順書がいらないかもしれないし、立派な手順書があっても理解できないこともある。
「じゃあ、その人がいなくなったら困るのでは」という疑問の声を期待するところだが、それこそマネイジメントであって、システム的にそういう人をアサインあるいは育成しているかということを点検するべきだろう。
なにを言いたいかというと、規格要求事項の項番ごとに「shall」とか「すること」を基にチェックするのではなく、現実を見て、適正に業務が行われているか、遵法が担保されているか、改善が進んでいるかを見て、規格要求事項が満たされているか否かを判断すればいいじゃないですか。

一生懸命に「4.3.2法的及びその他の要求事項」での調査方法を調べ、その結果を確認し、それが4.4.4や4.4.6に展開され、そして4.5.2で順守評価をしているかなんて神経をすり減らして調べるまでもありません。
あなたの監査員としての力量で、この会社あるいはこの職場ではこのような法規制を受けるだろうと推定し、その予測が正しいかを現実を見て調べていく、そしてその結果法規制を守っているか、漏れていないかを見て、逆算していって法規制の調査というか認識に漏れがないか、文書化のレベルが適正か、運用が適正かを判定すればよいのではないですか。というかそこに至ったときには既に適正か否かは判定されているはずだ。
これこそが本日私が言おうとしているプロセスアプローチです。
被監査組織から提出を受けた法規制のリストを見て、そこに載っている法規制が守られているかを見ても意味がないのです。
その組織に適用されるであろう法規制が守られているのか、そしてそれらがリストに載っているかを見るのが当たり前でしょう。

じゃあ、法規制や環境管理の実務を知らない人は監査ができないじゃないか? と言う人がいるかも知れない。そりゃ当たり前、当然です。
廃棄物管理をしたことがない人が廃棄物処理委託契約書を見て適正か否かが分かるはずがない、マニフェストを書いたことのない人が、マニフェストを見て正しく運用されているかどうか分かるはずがないでしょう。
ある会社でISO審査を見学したことがあるが、審査員がマニフェストの日付や記載内容を一生懸命にチェックしたあとで「大変良く運用されてますね」と語ったのを聞いてふきだしてしまった。
だって、そのマニフェスト票は左端ののり付け部分が切り離されていなかったのです。交付時にA票を保管せず、収集運搬業者から処分業者まで手渡されていき、そして戻ってきたマニフェストを見て「大変良く運用されてますね」はないだろう 
もちろん、この不適正な運用に罰則はないが万一紛失すれば不交付となり50万の罰金である。

別の例だが、局琲の排気口がひさしより低かったのを屋根より高くして改善したと誉めている審査所見報告書を見た。オイオイ、労働安全衛生法(正しくは有機則)を知っているのかい。書かないほうが良かったのでは・・・
結果が適正か否かを判定できないなら、法の認識が間違いないか、環境側面への適用が適切か・・・それよりなにより著しい環境側面が一体なんなのかが分からないではないですか!
ガイド66では著しい環境側面を決める方法は組織の仕事、それが適正かどうかを見るのは審査機関の仕事って決めてますよ。決定された著しい環境側面が適切かをみるということはエクセルの算式を検討することではなく、決定された著しい環境側面がその組織に見合っているかを検証することでしょ?

他の項目も同じです。
内部監査を考えて見よう。内部監査員の力量をどう決めているのか? なんて聞くまでもない。
内部監査報告書を見りゃいいんです。経営者への報告で不具合の件数とかグラフが書いてあるもの、すべて是正が完了しましたなんて書いてあるだけのものはペケ
だって、「ISO14001 4.5.5(a)1)組織の環境マネジメントシステムが規格要求を含めて計画された取り決めに適合しているか? 2)そして適切に実施され維持されているか」の結論が書いてない内部監査報告書は内部監査報告書じゃありません。
必要条件が書いてなければ門前払い、足払い、書いてあって初めて内部監査報告書を見る価値があります。
はっきり言って内部監査報告書を見ただけで、その組織のマネジメントシステムのレベルは分かる。
監査能力がある人でもまともな監査報告書を書ける人は少ない。監査能力がない人が立派な監査報告書を書くことはまずない。監査報告書が必要十分条件を満たし、その書いてあることが論理的であるなら、内部監査員に会うこともなく、内部監査に立ち会うこともない。監査員の力量があることを確信する。
もちろん内部監査だけではなくPDCAすべてにわたって大体見当がつく。
内部監査員には外部講習会を受講した者を任命するなんて決めている会社が多いです。でも、外部講習会を受講すると監査員の力量が身に付くのだろうか? そんなもの効果がないとは言わないが、力量の保証にはならないだろうことは保証する。
内部監査員の力量を示すものは監査報告書でありその中身である。

同じく、ISO審査員の力量を立証するのは、審査所見報告書であり、適合・不適合を立証する証拠・根拠を記述できないような審査員は即刻辞めるべきなのである。
私は複数の審査機関の所見報告書を、年に100件以上見ている。私が見て合格と思えるものは・・・約4割である。

文書管理もしかり、その組織の手順書にはどんなものがあるのか、そのファイルあるいはウェブサイトの管理状況はどうか? 発行前の文書のレビュー、決裁、発行管理、版管理・・・もう4.4.4も4.4.5も監査終了である。

もちろん私はチェックリストなんて要らないとか、行き当たりばったりでいいとか、要求事項の項目ごとの適合不適合をみなくていいなんて言ってるわけじゃありません。
監査を個々のチェック項目からはじまるのではなく、プロセスとパフォーマンスを見て問題点をつかまえて個々の要求事項の適合不適合を記録しなさいといっているのです。
フォーカストの反対語としてバックキャスト(backcast)という言葉があるそうだが、そんな感じかなあ〜
本日のくだらない話を、くだらなかったと本当のことを言ってはいけない。 
ISOの内部監査そして審査が形骸化しているというのを否定する人は少ないだろう。
あっつ、あなたは否定されるのですか?
でもね、形骸化していないなら、内部監査は経営に寄与し、品質はドンドン向上し、品質コストはグングンと下がり、利益はギュ〜ンと上昇し、儲かって儲かって困っているはずだ。環境も遵法はしっかりと守られ、環境リスクも限りなくゼロに近づき事故なんて起きないという状況がとうに達成されていなければならない。
第三者審査も形骸化していなければ、認証された企業からは品質事故も環境事故もなく、不祥事も違反も起こりえないではないか!
現実を見ると否定できないようですね?

監査の有効性を向上するために、規格要求から監査をするのではなく、プロセスアプローチという監査を行って監査基準を満たしているかを判定するようにしましょう。
おっと突っ込まれる前に言っておきますが、パフォーマンスの切り口からパフォーマンスアプローチって言ってもいいですし、遵法の切り口からコンプライアンスアプローチって言ってもいいんです。
なんか、非常にいい加減だな 
要するに馬鹿の一つ覚えで、規格項番毎に調査しても無駄だってことをご理解いただければいいってこと


本日の最後っ屁
プロセスアプローチって言葉を誤用するなと言われそうなので逃げるとしよう。

この文章を書くのに下書きなしで2時間半でした。質はともかく私の頭の回転が速いのは認めてください。アッ、単にキーを打つのが速いだけかもしれません。


うそ800にもどる