環境実施計画 7たび 08.04.05

最近頂いたお便りに、私の話は冗長だとあった。しかし批判しているのではなく、話を聞いているようで、読む速さと理解する速さが一致していて非常にわかりやすいとあった。
普通なにかを伝えるという文章では情報が濃縮され一読しただけでは理解できないことが多い。それに比べて私の文章は簡明で情報が薄いということだろう。
ともかくおほめいただきありがとうございます。
ISO14001規格では環境実施計画を作ることを要求している。
方針を目的に具体化し、目標を定め、その実現のための環境実施計画であるのだから、目標実現の環境実施計画は必然だ。
もっとも目的の環境実施計画は不要であるもの当然である。
かってCEARという審査員登録機関の季刊誌に目的と目標それぞれの環境実施計画が必要だと書いた某審査員がいた。今は考えを改めたのだろうか?
あの人どうしているかしら〜♪

ともかく目標を達成するための環境実施計画なるアクションプランが必要なことには誰でも同意すると思うが、別に名前がそうでなければならないということはない。それぞれの会社や部門が好きな名前を付けてかまわない。
というか、わざわざ新たに「環境実施計画」なるものを作ることさえない。それぞれの会社に従来からある年間計画表でも企業投資計画表でも開発企画でもこれにあてはめれば良い。
いや、そうしても良いというより、私はそれこそがあるべき姿であると思う。そんなことを語ったこともある。
しかし、そうしない人が多い。
なぜだろうか?
審査員ともめるのが嫌だと言った知り合いがいたが、その気持ちはよくわかる。
ただ厳しいことを言えば、それはISOに基づくEMSをバーチャルで空虚なものにする非行の第一歩なのだ 
昔、喫煙は非行の始まりと言われたが、あれは本当だったのだろうか?

もうひとつ、ほとんどの人が陥る誤りは、環境実施計画を年間計画と理解していることだと思う。
もちろん、そういう決まりはない。
だいたい会社のプロジェクトは活動期間もその期限も、その目的によって異なるわけで、暦と関係あるわけがない。
ある会社では季節商品を作っており、商品のシーズンに合わせて環境実施計画を策定している。
またヨーロッパ輸出している企業は、今現在ROHS・REACH・WEEE・Eupなど、続々と制定される非関税障壁に対応しなければならず、その準備のための環境実施計画の開始時も完了期限も暦年とか日本の年度と関係ない。
ああいう規制を非関税障壁でないと思われる方はいらっしゃるだろうか?

外国の話を持ち出すまでもなく、事情というのはさまざまある。企業投資の決裁を受けて新設備を導入したならば、社長が退任する株主総会までに実績を出して花を添えたいという思いは不思議でもなんでもない。
ISO認証はいつが多いか? なんて問うまでもなく、年末と年度末である。誰だってどうせなら一年早く認証したことにしたいから。
某審査機関は目標は年度計画、目的は中期計画なんて見解を示しているが、それは大きく外している。(マチガイということだ)
ISO14004に長期の目的も短期の目的もあると書いてあったような気がする 

もちろん、活動項目(環境目標といってもいい)ごとに、開始時期も完了時期も異なる。
すべての活動はさみだれ的に始まり、活動をすすめ、完了し、また新たな活動テーマにとりかかる。
だからそれをそのまま書きものにすれば、一枚の紙にいろいろな環境目標が並び、活動が書き込まれるという形にはならない。ひとつの環境目標は一枚の紙にWBS(ワークブレイクダウンストラクチャ)として書き表される。もちろん始まりと終わりはそれぞれの目標によって異なり、スパンもさまざまである。

環境目標・活動テーマを選ぶという発想も変だ。
会社においては、活動テーマは厳然として存在するわけで、どれ今度は何をしようか?なんて考えること自体おかしなことだ。
そういう会社はISOのために仕事をしているのだろう。会社の真実は事業推進のために活動せざるを得ず、それがすなわち環境目標なのだ。
そういうスタンスから考えると、環境側面から環境目的を選ぶなんて発想は出てこない。
ISOをしている(ということも意味不明なのだが人たちにしか思い浮かばないことであろう。
一般企業人は、必要に迫られ、あるいは会社の戦略の上で事業活動を進めている。すべての活動は戦略を実現するためであり、そこに環境側面を考慮することは必然ではあるが、環境側面から事業戦略を決定するなどとは、思いも浮かばないだろう。

おもしろいのは目標未達の場合の対応である。
環境実施計画が達成できない場合にも、不適合並びに是正処置及び予防処置が適用されるのはもちろんだ。規格では不適合がおきたら、是正処置をすることになっている。まあ、物事が悪くなったらまっとうにするのは理の当然ではある。
しかし本来業務、たとえば売り上げとか開発とか企業投資というものになると、道を外れてから手を打つなんて悠長な事はいっていられない。
審査で「何%目標より低ければ是正をするのですか?」なんて質問する審査員がいる。
頭の中身は大丈夫だろうか?
答える方も答える方で
「目標値より10%下回ったら是正処置をとります」なんてこたえる。
本当ですか! じゃあ9%であれば手を打たないというわけですか?
そんなことで会社が動くのでしょうか?
ついでに言えば「進捗は何カ月ごとに把握するのですか?」に対して
「3カ月ごとに報告して、指示を受けてます」
なんて審査でのやりとりが今日も津々浦々で行われていることに1000円賭けましょう。
状況を確認して手を打つPDCAサイクルが一月とか二月なんてのんきなことをしていたら現在のビジネスにおいて負けは必然だ。他社との関係がなくても、社内で有機的な活動がとれるとは思えない。
毎日毎日、いや常時、状況を把握し、少しでも問題がおきたら、いや、問題がおきそうなら早め早めに手を打っていく、というのが仕事の進め方の基本、管理の初歩である。
水戸黄門 そういったとき、是正処置の記録なんてさまざまな打ち合わせのホワイトボードの写しであろうし、メールのやり取り、資料への朱記などなどになる。

テレビドラマの水戸黄門で事件が起きたとき、黄門様はいつも「格さん、もう少し様子を見てみましょう」なんていっているが、だから常にだれかが殺されてしまう。
ドラマだから殺されないとつまらないと思うかもしれないが、真の為政者は問題を解決するのではなく、問題を起こさない。名選手はファインプレーをするのではなく、感動するような場面を作らない。
ぶらっくたいがぁ様から突っ込みをいただいた(2008.04.05)
おばQ様は最近の水戸黄門をご覧になっていないようですね。私はほぼ毎週観ておりますが、善玉が悪代官や悪徳商人に殺されることはマレです。死人が出るのはせいぜい5、6週に1回ぐらいでしょうか。
殺伐とした今の世の中で、水戸黄門は心の安らぎを得ることができる素晴らしいテレビ番組です。

まさしく!
先日時計を見て、そろそろこの人が殺されるなと家内に申したら、なに言ってんの、殺されないよと言います。
時代に遅れましてすみません。
昔の話だが、
会社によっては小集団活動とかいろいろな名前で呼ばれていたがサークル活動なんてのが盛んだった。日科技連がその中心で、ISO全盛となる前はわが世の春であったろう。
良く地域のQCサークル発表会なんてのを聴講に行った。どのグループの発表もOHPを使い、グループ編成から問題検討、テーマ選定、活動計画、対策、歯止めまで、計画期間中にそれなりの成果を出し、自分たちこそ最高だと自慢し合ったのである。
しかし不思議なこともあるものだ・・
どうして活動の期間が会社の会計年度にあっていて、しかも必ず一定成果を出すことができたのだろう
私はQCサークルの発表会とは、発表者のテクニックを競う大会かと思っていた 

はっきり言う、QCサークルでもISOの是正処置でも予定調和の筋書きのあるドラマなら全く意味がない。
筋書きのあるドラマは水戸黄門に任せておけばよい。

本日のまとめである
ISO規格に書いてあるからしなくちゃならない・・なんていっているなら、考え直した方が良い。
ISO規格の意図はなんだろう? 当社で当てはまるものはなんだろう? と考えることだ。


小竹様からお便りを頂きました(08.09.24)
ご意見下さい
先日、ISO14001定期審査において感じたことがあります。
電子データによる受注システムの導入が具現化し、受注ミスによる輸送ロスを考慮した環境目標を設定していたところ、先日の審査において、輸送ロスが環境側面特定表に書かれていない!と仰った方がいました。
輸送という大枠での環境側面を特定表に記述していることを説明しましたが、どうも環境側面表に輸送ロスがあって、それから環境目標という考えが先に立ち、理解できないみたいでした。
企業というものは、様々な活動の集合体であり、その活動の中に課題や活動目標があり、売上げ・利益を得るために頑張っているわけです。
審査員は、こうした企業としての大前提はさておき、環境方針→環境側面の抽出→評価→著しい環境側面の決定→目的・目標という、ISO参考書に書かれているような概略を本気で環境マネジメントシステムと思っているみたいです。
環境マネジメントは、経営の中の1つの項目であり、企業は環境活動で食っているわけではないのです。
日本のマネジメントシステム審査制度(審査員)が悪である根本は、「企業経営ありき」という常識とも言える観点がないことではないか!と思います。あくまでも私見ですが、御意見頂きたいです。

小竹様 お便りありがとうございます。
おっしゃるとおり、会社の仕事、活動はすべて事業推進のために行うものと考えます。売り上げをあげること、事故を防ぐこと、品質を維持すること、費用を削減すること、すべて同じレベルで推進していくものであり、そこには環境側面から選ぶという発想はないでしょう。
そもそも環境側面とは改善を図るべき項目ではなく、重点管理すべき項目なのです。
それは私が言いだしたことではなく、ISO14001に書いてあります。そして環境目的を環境側面から選べなんてISO規格には書いてありません。環境目的を設定するときに環境側面も考慮しなさい(無視しちゃだめよ)ということなのです。
それから輸送ロスは環境側面なのか?と言えば、細かいことはわかりませんが側面ではなく影響なのではないでしょうか?であれば環境側面登録表にないのは当然です。
ここでまた多くのコンサル、審査員は環境側面と環境影響の意味と違いを理解していません。グリーン調達はプラスの側面とか、省エネ製品への切り替えは有益な側面だなんていう人がいますが、ゼーンブウソつきとは言いませんが、間違いです。
彼らは改善活動をプラスの側面と勘違いしているのです。
ということまでは全く同意です。
常識がないのか?ISO規格を理解していない審査員なのか?は議論の余地がありますが、いずれにしても困った存在に違いありません。
しかし我々がそういった愚かな審査員を説得できるかというと、非常に困難です。もし審査でそういうおかしな(というより現実には大勢となっている解釈なのですが)ことをいう審査員がいたならばとりあえず説得し、それがだめなら言うことを聞くか、審査員を変えるか、認証機関を変えるしかないというのがこれまた悲しい現実です。
そういう悲しい現実を変えようと私は大声で叫んでいるつもりです。
認証機関の自浄作用にも期待できず、認定機関の監督機能にも期待できなければ我々がするしかありません。
小竹様もご協力ください。
おっと、日本にはもちろんまっとうな認証機関もまっとうな審査員もいることを忘れてはいけません。少ないですけど


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