事務局百態
08.05.24
世の中なにごとも一人では成り立たない。商売には売る方と買う方がいて成り立ち、学校は教える人と習う人がいないと成り立たない。
刑事裁判だって、検察がいて被告人がいて成立し、双方がよき検察、よき被告人でないと良い裁判はできそうにない。
よき被告人とはなんだとおっしゃいますか? 突っ込み個所を作っただけです
ISO審査でも審査する人と、審査される人がいて成立する。良い審査を実現するには、良い審査員とよい企業側担当者がいなければならない。
私は
事務局という言葉は好きではない
のだが、企業側担当者というと長すぎるし、一般的でないので以下ここでは事務局という。
よい事務局とはどんなものだろうか?というのはまた難しいのであるが、本日はいろいろな事務局について取り上げて論評しようと思う。
羊事務局
審査員に何を言われても反論一つせず、ハイハイとうなづいて言われて通りにする事務局っていますよね。ご本人には確固たる考えも、会社を良くしようというウィルもなく、言われた通りにすればよいと信じ切っているのであります。
上長に対しては、「審査員がそうおっしゃるのでしかたありません」なんてね、
もう羊か奴隷か!とカツを入れたくなります。
1990年代にはいたるところで見かけましたが、最近はどうでしょうか?
と言いながら、つい先日もそんな事務局を見て、愕然としました。
いえ、そんな意気地なしでこの世に生まれてきたかいがあるのかと感じたもので・・・
審査員が変わるたびに違うことを言われ、AからB、BからAとシステムを変更する事務局は間違いなく羊事務局です。
ことなかれ事務局
羊と似て非なるものでありまして、審査員がアホなことを言っていてもそれを知りつつ、ISO審査なんて税金さ、問題を起こさないように、もめごとを起こさないようにと如才なく立ち回る事務局であります。
これは実に多い。言い方を変えるとISO審査員を子供扱いしていると言えるでしょう。
長年、事務局をされていてこの春定年退職し、今審査員の口を探している方から聞いた言葉です。
「私が事務局を担当していた時、一回たりとも不適合を出さなかったことが自慢だ」
それを聞いた時、彼がしていたことを知っている私は、自慢にはならないと思いました。
不勉強事務局
羊とも違うのですが、ともかく何も知らない事務局です。審査員に「規格にあるでしょう」なんて言われても「ご教示ありがとうございます」なんてボケまくるしか能がありません。
審査員も張り合いがなくて中身がどうしようもなくても、大きな不適合をださないようです。
突っ込むとボロボロで認証機関が困るからでしょうか?
ということは、不勉強事務局とは失礼な言い方で、戦略的事務局というのでしょうか?
ただ、往々にして、この事務局は審査員が語ったことを金科玉条として以降行動します。
ですから真に会社を良くするとは思えません。
ということは戦略的どころではなく、前述のことなかれ事務局よりも質が劣るのかもしれません。
くれない事務局
昔、くれない族なんてありました。あれと同じです。
「法律って難しくて・・・誰も教えてくれないんです」
「私たちがどうすればよいか知ってたら教えてくれたらよいでしょう」
「担当している人以外、協力してくれないんです」
「コンサルももうふた月も姿を見せてくれないんです」
そんなに主体性がなく他力本願ではコンサルにも、同僚にも嫌われて、審査までたどり着けそうありませんね。
実を言いまして私の知り合いにもいるんです、このタイプが・・関わり合いにならないのが一番なのですが、なぜかまとわりついてくるんですよ
聞かない事務局
正直言いまして私はかなりおせっかいであります。こうした方がいいよ、ああしたほうがいいよと親切丁寧に教え、マニュアルどころか、下位文書まで作ってあげちゃうという親切が服を着て歩いているような人間です。
ところが私の親心を知らず、あるいは単にうっとうしいからかもしれませんが、人の話をきかない人がいるんですよね。
もちろんISOの預言者である私の話を聞かない事務局は地獄に落ちる・・・いえそんなことはありませんが、うまくいくはずがありません。
結局、ISOの荒海で難破して「どうしたもんでしょうかねえ〜」と私のところに舞い戻って来るのです。
「そんなこと3月前に言ったでしょう!」なんて言うだけ無駄
近づかないことが一番です。
でもまた寄ってきますね、困りました。
ケンカ腰事務局
規格のことなら審査員は無論のこと、ISOTC委員よりも詳しい・・なんてことはないでしょうけど・・会社の文書のことならだれよりも詳しく、法律もそこそこ知っておりまして、環境関連資格なんて胸に勲章付けきれず代わりに略綬を付けても左胸に収まらず右胸まで・・なんてことはないか。
勲章とか略章と言っても今は通じないかもしれない。勲章とは戦功ある方が国からもらう顕彰であり、大きく儀式のとき以外つけるには邪魔なので、その代りに着ける小さなリボンを略綬という。
そりゃシステムについては自家薬籠、適合していることは言わずもがな、有効性はもちろん、効率性にも自信満々
審査となりますと、ついつい「規格の意図はですね」と審査員に教えたくなり、審査員が意見を開陳すると「まあ世間ではそういう解釈もあるようですが」と口を曲げて笑い、最後には「規格のどこにありますか?」
あまりケンカ腰になってはいけません、
アッツ、これは10年前の私のことだったか
粘り腰事務局
担当者がISO規格、IAF規格、JAB基準などを縦横斜めに読み解き、自家薬籠としているのはケンカ腰事務局と同じですが、こちらはずっと大人
審査では常に低姿勢、声は穏やかに審査員に説明し説得に相努めます。
万が一、双方の主張が異なり話し合いが決裂したとき、そりゃあ黙っていません。認証機関にお邪魔して、エライさんにお会いして淡々と説明し、それでも納得していただけないときは正式異議申し立てしますと・・
たいていはここで・・・以下略
私の知り合いにはこういった猛者が何人もいます。
これは修行だけではなれず、先天的なものなのでしょうか?
本腰事務局
ある会社でISO14001認証しようと決めたとき、その会社の英知を集めてISO14001にどのようにアプローチしようかとさんざん議論しました。そして正攻法でしっかりと基礎から作り上げていきました。
ところが驚くことに、大金を出してこの世界の人間ならだれでも知っている超有名コンサルに依頼して、システムを見てもらったのです。しかしそのコンサルには適合を確認してもらっただけで、指導的なことは一切受けませんでした。
そして最終的にお墨付きをもらって審査を受けたのです。もちろんまったく問題ありませんでした。
コンサルが大丈夫と言った瞬間に、ISO審査など受けなくてもよかったのでしょう。それでは審査費用は無駄だったのでしょうか?
コンサルに頼まず審査を受けてもよかったのでしょう。それではコンサルに払った費用は無駄だったのでしょうか?
ご本人にお話を聞きましたが、会社を良くするために仕組みを整えたのであり、その確認には一流の方が良い。ただ認証も必要だったとのこと。
確かに審査員とコンサルのスタンスは違いますから・・
タイトルが百態といいながら、百ないじゃないか!おっしゃるあなた、
あわてない、あわてない
次回に続きますよ
次回のタイトルはもうバレバレでしょうけど
ところで、これらは創作ではなく、すべて実例でありましてサンプルには事欠きませんでした。
ネーミングにはちょっと頭を使いましたけど
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