所詮ビジネス 09.03.01

この「うそ800」には毎日、大勢の方がご訪問されているようです。特に2008年に「アイソス誌」に掲載していただいてからはご訪問者が多くなりました。
しかしコメントを書きこまれる方はほとんどいらっしゃいません。「アイソス」を読まれたISO関係者が怖いもの見たさで弊ウェブサイトを訪問してみたものの、言いたい放題書かれていて、いや気がさして書きこむ気になれないのかもしれません。しかし、二度と訪問しないならアクセスは増えないはずなので、見るだけは見ているのだろうか?
そのあたりが疑問のところです。
さて、本日の言いたい放題は今まで以上に輪をかけたもっと怖い話です。ISO業界の方は読まない方が良いかも?
おおっと私にとっても怖い話です。どこぞから、抗議が来るかもしれません・・まさか公安が駆けつけてはこないでしょうけど

ご存じのように私は審査員やISO事務局でもないのにISOマネジメントシステム規格や認証制度について関心を持っており、それに関する本に可能な限り目を通し、可能なら講演会などに参加している。
最近の傾向はISO審査登録制度のかげりをなげき、「なんとかせねば!」という絶叫が目立つ。しかし私にとっては、ISO認証制度(審査登録制度)が先細りになると、何が悪いのか? どうして悪いのか? ということが疑問である。別にISO審査登録制度がすたれても世の中に何の影響もなければ、それは社会から必要とされていなかったというだけに過ぎない。
これは乱暴な発言ではない。CDが現れてFDが使われなくなった時、「FDを残すように頑張ろう!」と叫んだ人はいない。メモリーオーディオが現れたときCDウオークマンやカセットのウオークマンの復活をたくらんだ人もいないように思う。
第三者認証件数が減ってきたとき、「ああ、時代が変わってそういう制度が不要となったのか」とか、「より良い管理方式に替わったのか」と思うのが普通だろう。そしてその変化を否定せず肯定してもおかしくはない。流れに逆らい、廃れるものを盛り返そうと考え頑張る方が不思議ではないのだろうか?
今ではFDと書いても分からない方もいよう。フロッピディスクといってプラスティックのケースに入った円盤状の磁気シートにデータを読み書きする記憶装置であった。今のパソコンにはついていない方が多い。私は2000年頃100枚買ったが今はほこりをかぶっているだけ・・
おっと、CDもDVDも過去のものになりつつある

まずISO9001にしても、ISO14001にしても、第三者認証制度とイコールではない。それらの規格は無色透明で誰が使っても良いのであり、認証制度のために制定されたわけではない。
ISO9001:2008は序文で「この規格は適用される顧客要求事項及び法令・規制要求事項並びに組織固有の要求事項を満たす組織の能力を、組織自身が内部で評価するためにも、認証機関を含む外部機関が評価するためにも使用することができる」とある。
ISO14001:2004の序文では、更に「自己宣言、利害関係者による確認、組織外部の確認、認証機関による審査にも使える」と明記している。
世の中ではISO9001やISO14001と第三者認証制度が一体のものと思われているが、そうじゃないのだ。
次に世間でISOマネジメントシステム規格がだめだとか、役に立たないと言われているという事実を私は知らない。第三者認証と関わりなく、ISO14001規格への適合をISO17050に基づいて自己宣言する自治体は増加している。それもはじめから自己宣言をしたのではなく、第三者認証を返上して自己宣言に切り替えている。
ということはそれらの自治体は、ISO14001規格に基づくEMSの価値を認めながら、第三者認証の必要性を認めないということかと思う。
また今はどの企業もグリーン調達なんて称して、環境に配慮した企業から優先して購入すると公表しているが、ISO認証を必須とせずに、類似のマネジメントシステム認証あるいは社内に環境マネジメントシステムが確立していればOKとするところが多い。つまりグルーン調達においてもISO14001規格の価値は認めているが、第三者認証をしなくてもよいという意味である。
第三に認証件数が減ると社会的問題だということもないようだ。認証件数が減って困る人というのはどんな立場の方であろうか? 認証を受ける組織(企業や自治体)側では、ISO事務局の方は存在意義を失う可能性がある。でもそれは今まで事務局が何をしていたかによるだろう。認証機関のための仕事、例えば形だけの文書の維持、形だけの環境実施計画の推進、形だけの内部監査などをしていれば、無用であるのは当然であり、そんな事務局ならないほうが会社に貢献するだろう。
しかし、会社の品質経営や環境経営を良くしようというスタンスの事務局であれば、認証の有無に関わらずやることはたくさんあり、認証をやめることによって、認証機関のための無駄な仕事をしないぶん一層会社を良くし利益に貢献することができるようになるだろう。内部監査一つとっても、審査のときにイチャモンがつかないように規格対応の記録を残していたかもしれないが、そんなことを気にせずに何が問題か? 何を伸ばすべきか? を深掘りした実のある監査をするようになるだろう。
認証機関と審査員にとっては、認証制度崩壊は即職を失うことにつながる。おっと、認定機関も一蓮托生である。
世の中にISOコンサルタントという職業がある。ISOコンサルとは企業がISO規格を活用することを手伝うのかというと、そういう方も一部いるだろうが、ほとんどはISO認証取得のためのコンサルタントである。そうすると認証を受けようとする企業が減ると、これもまた仕事がなくなることになる。
実を言って認証を手伝うコンサルはまだ良い。私が納得できないのは認証維持を手伝うコンサルと依頼する会社である。というのは、世の中には審査の前にコンサルが来て文書記録を作らないと認証を維持できない会社が多く存在するのだ。
そんな会社を認証するということは、審査員の力量がないのか? それともそんな会社の認証を取り消すと客がいなくなって認証機関が倒産してしまうのだろうか?
とするとISO9001やISO14001の認証件数が頭打ち(正確に言えば減少)を嘆くということは、認証というビジネスに関わっている人々の嘆きと見てよいだろう。より具体的に言えば、ISO規格に基づく第三者認証市場がシュリンクすると、そこで営利事業を行っている人々が利益を出せなくなり食えなくなるということである。

ISO認証制度でオマンマを食べていない我々一般人にとって、ISO認証件数が減少しようと、認証制度が立ち行かなくなっても、困ることはないし、嘆くこともない。
今時点、日本のISOに関わっている人でも、ISO認証制度が発祥する以前を知る人は少ないだろう。私は、1991年からISO認証に縁があったが、品質保証にはそれ以前から関わっていた。私の記憶では、日本でISO認証制度がなかったとき、認証制度がなくて困っている人を見た記憶はない。
1990年以前、私はお客様の品質監査をしょっちゅう受けていた。ISO規格による第三者認証制度ができて二者監査がなくなったかといえば、90年代中頃一時下火になったが、その後また増えた。
どうしてだろうか? 
認証制度は元々なかったのだから、今後、ますます認証する企業が減って認証制度がなくなってもどうということもないだろう。

ところで環境に関する第三者認証制度というものは、ISO規格に基づくものだけではない。環境省肝いりのエコアクション21、国土交通省の環境経営、某企業が主導してはじめたエコステージ、関西からはじまったKES、そして驚くことにほとんどの自治体が独自のEMS認証制度を有している。(自治体のEMSはほとんどがKESと互換である)
そういったものの認証件数はどうなのだろうか? 順調に伸びているのか、伸びていないのか? 結論を言えば伸びているものもあるし、伸びていないものもある。
それぞれの認証件数は公表されているが、その数字は日々変わるのでここには載せない。
そういった認証制度はそれぞれ自ら審査基準を定めてそれを基に審査を行い、適合不適合を判定し認証している。ここで疑問がある。例えばJABやJACBとは無縁というか競合関係にある認証制度を作った場合でも、ISO規格を使ってはいけないということはない。わざわざISOと異なるEMS規格を考えだすことなく、当社はISO14001規格に基づくコンサルと認証を行いますと言っても後ろ指さされることはない。ただIAFに連なる認証制度ではないということに過ぎない。
ところで、日本ではJABとこういった認証制度は敵対関係にあるようだが、イギリスではUKASが類似認証制度の認定も行っていると聞く。じゃあ、イギリスは認証件数が増えているのか?といえば、そこでも減少中と聞く。

日本にも一部あるし、海外では珍しくないらしいが、認定機関の認定を受けないでISO規格の第三者認証を行っている審査機関がある。エコステージやエコアクションがどうしてそういう道を選択しなかったのか? 私はわからない。
ISO規格に基づく認証制度であっても、自分たちがコンサルも行いますという仕組みを作ってもいいし、あるいはすべての要求事項を満たさなくても段階的に認証をしていきますといっても、どこからもお叱りを受ける恐れはない。あるいは電気とゴミと水は環境目的に必ず入れることといってもおかしくない。自動車関連の品質保証を考えればISO規格要求への加除修正を行ってもおかしくないということに納得いただけるだろう。
ISO9001:1987では冒頭でテーラリングを認めていた。
現行規格で認めていなくても、別の認証制度で制定した規格において、ISO9001やISO14001の一部を引用規格とすることは法違反ではない。
IAFガイドでもISO19011を引用し、文中のshouldをshallに読み替えたり、変幻自在である。(ガイド62と66がISO17021に代わってもまだその他のガイドは存在している)

そうすれば、自分たちの認証規格での審査員制度とかそのための研修というもの、いや認証していただくお客様である一般企業に独自規格を理解していただくことはなかったはずだ。
ともかくこういった独自路線の第三者認証制度が何を目的としているのか?といえば、これまた結局認証ビジネスにおける営利の追求だろうと私は考える。もちろん環境や社会に貢献しようという意図はあるだろうが、その仕組みによって事業を推進し利益を出そうとしているのは事実だ。
おっと、そう考えると、独自規格を作ってそれに基づく研修や書籍を売るというのもビジネスの一環だろうからそのためにISO規格そのまま利用しなかったのかもしれない。
エコ検定というものがある。あれは完全に営利事業だと私は思う。エコ検定の公式テキストを作り(売り)、ウェブのeラーニングで儲け、講習会をして儲け、いやはや・・
ところでテキストに環境ホルモンなんて載せているが、信用できるのだろうか?

ところでさらに脱線するが、ISO規格では自己宣言という方法も認めている。そして世の中にはISO自己宣言を支援しますという団体や個人がいる。自己宣言支援というなら、ISOの仕組みを確実にする方法や改善活動の支援かと思うと、実はそうではなく、EMSのできぐあいをチェックする検証ビジネスであることがほとんどである。
つまりこれは、企業の環境経営がしっかりさせて自己宣言できるようにするのを支援するのではなく、自己宣言というものを認証する実質的なIAF/JABとは別の第三者認証システムビジネスであるようだ。

そういったことをまとめると、第三者認証制度に限らず、環境マネジメントシステムに関わるものはすべて営利事業であり、自己宣言さえ外部の者の金儲けの手段にされているということだろうか?
ISO認証が減少して、エコアクションが元気!ということは、単にA社の車が売れて、B社の売れ行きが減ったという程度のことなのだろうか?
鈴木自動車の社長は、「自動車産業の最大の危機は人口減少だ」と語ったそうだ。
第三者認証制度の最大の危機は、認証制度そのものを社会が必要でないと判断することだろう。そうならないためには、第三者認証の価値を示すことしかない。
どうやって?
それは認証した組織は間違いを起こさないという実質で立証することしかないだろう。そして認証した組織に問題があったときは、認証機関はその責任を負うしかない。
お金をとって認証して、認証した組織に問題が発覚したときは認証を取り消すだけなら何の意味もない。

自動車会社は車という目に見える効用を社会に提供している。第三者認証制度というスキームが提供している認証というサービスが、社会から効用を認められなければ存在価値はない。
私の本音を言えば、存在するべきではないのだ。

商品やサービスを提供してお金を得ることはまっとうなビジネスである。
しかしまっとうなビジネスであるためには、その商品やサービスの効用が社会的に評価されなければならない。効用が認められなければSF商法と同じじゃないか、

本日の提言
第三者認証制度に関わっている人々よ! 認証というサービスが社会的に効用を認められて、まっとうなビジネスと言われるように頑張ろう。

東京都は、「2020年までに2000年比で温暖化ガスを25%削減」という都の目標を達成するため「CO2排出抑制」と「排出権取引」を条例化した。
当面対象となるのは1300事業所で、報告に際しては第3者の排出権検証を必要とし、都はその検証費用を1社50万ないしそれ以上と広報している。
つまり、一瞬にして毎年6億5000万の検証ビジネスが発生したことになる。移動費用とかホテル代とかは別計上だから10億くらいになるのだろうか?
さっそくISO認証機関も排出権検証ビジネスに乗り出したと聞く。京都メカニズムのほうがノリが悪いので、都の規制はカンフル剤になったことだろう。
みなさんは検証ビジネスをどうお考えなのだろうか?


塩ジジイ様からお便りを頂きました(09.03.03)
塩ジジイです。おばQさんも過激だね。
さて私見だが。
大企業といえども管理部隊(コストセンター)が大きくなりすぎると負担が増えるので、これをアウトソースに切替える。切替えればその会社にとってはプロフィットだから利益追求が始まる。だからといってガツガツも儲ける必要はない。認証機関としてはガリバーのJQAは財団法人であり、他の株式会社も業界の枠の中で存在している。
環境管理が一時のインフルエンザ的な流行は終わった。(かな?)しかし突き詰めればおばQさんのしてる遵法監査だって時間がたてばアウトソース(本体⇒関連会社⇒独立)の道を辿ることにはならないのかな。
ISOを所詮金儲けというが、10年以上持ったビジネスモデルを作った先輩には脱帽する。次のビジネスモデルは遵法監査か?パフォーマンス審査か?
まぁ、所詮業界の枠の中だが・・・。

塩ジジイ様 毎度ご指導ありがとうございます。
おっしゃるとおり、第三者認証というビジネスモデルをでっち上げた先輩は目先の利く人たちであったということは確かです。
しかしアメリカやイギリスに発祥した金融工学というしろものは結局人類(大げさかな?)に大きな被害を与えて自ら敗れ去ったということを踏まえて考えると、第三者認証ビジネスを考えた人は、いっときのお金儲けをしたけれど、結局品質も良くしなかったし環境も良くしなかったという結果を残すのではないでしょうか?
まだ現在進行中で断定はできませんけど・・
ということでそういう先人を尊敬しませんし、早くこの世を去って欲しいと願うばかりです。
誤解ないように申し上げますが、ISO9001もISO14001も私は価値を認めます。第三者認証というしろものの価値を認めないということです。
それにしても業界団体が作った認証機関がそろい踏みという実態を見れば、公務員の天下りなど批判する立場にないことは言わずもがな・・・
サムライなら恥を知れと言いたいですね
ところで社内監査の価値について外部にアウトソースできるとおっしゃる、そういう可能性もあります。しかし弁護士法というのがありまして、外部に遵法確認を依頼するには弁護士でないといけないらしいです。
ということで当分法に守られて大丈夫でしょう。
塩ジジイ様、規制緩和でも主張してください。


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