事務局派遣業 08.07.26

私はたいていのことには驚かないつもりであったが、最近またまた驚いたことがある。なんとISO事務局の派遣業というのがあるというのだ。以前、ISO維持管理サービスというのを聞いて、そりゃないだろうと思ったが、そんなものは序ノ口であった。
ISO維持管理サービスが序ノ口なら、事務局派遣業は序二段なのか三段目なのだろうか? などとアホを語ってはいけない。

「ISO」「事務局」「派遣」といった語句を入れて検索するとあっという間に何社も見つかる。
ISO事務局代行業務

一人一日5万円から
ISO9000、14001に限らず、各関係省庁、部署への書類作成などのISO事務局担当者が行う事務作業を代行するサービスです。
ISOの担当者が辞めてしまった。忙しいなどのニーズに応えます。
ISOにともなう業務、内部監査、文書改訂、マネジメントレビューの記録作成、審査機関との打ち合わせ、審査時の事務局や管理責任者までなんでも代行します。
もう企業様はISO規格を知る必要はありません。
../odoroki.gif
ISO事務局請け負います

ISO 9001、14001などマネジメントシステムの認証取得企業は、単に製造業のみならず、商業・サービス業へと拡大し、また規模的にも大企業から中小企業へと一層深化の傾向が見られます。
こうした中、ISO認証の取得を必要としているものの、人の面で"専任の担当者を配置できない"、"実務担当者の業務負荷が増大する"などの事情から、認証取得活動に着手できない企業が多くなっています。
当社では、このような企業向けの事務局作業の支援業務をご提供しています。
このサービスをご利用いただくことにより、システム構築の早期着手と円滑かつ効率的な認証取得活動が実現するものと確信いたします。

(1)当社はISO事務局の実務経験、豊かな知見を有する人材がおります。
(2)当社は内部監査、事務局、管理責任者派遣など幅広い業務を行います。
(3)当社が行うISO認証取得コンサルティングサービスも、是非、併せてご利用ください。

もちろん世の中は時代とともに複雑になり、職業が分化してきたという歴史がある。
大昔、人は畑を耕したり、魚を釣ったり、着る物を作ったり、炊事をしたり、家族が病気になると看病したり、育児をしたり、子供に教えたり、お葬式もなんでもかんでも自分でしたに違いない。だが、時代が下ると農家、漁師、医者、保育士、先生、宗教家などなどに分化してきた。
奥さんの仕事を代行する人は売春と呼ばれなぜかあまり高く評価されない。
会社の仕事をアウトソースすることは決しておかしくはない。しかし、しかしである。ISO審査のたびに事務局派遣会社からつわものが派遣され、その会社の名刺をもって審査対応をするというのは、妥当なことなのだろうか?

もちろんISO認証の目的がなにか?ということもある。単に入札資格のためならそういう選択肢があってもよいのかもしれない。しかし現在のようにISO認証が入札資格からはずされると認証そのものが必要でなくなる。

しかしちょっと考えるとおかしいというか、面白い現象ではないだろうか?
だって、会社の社員が会社の仕組みを審査員に説明するのではなく、派遣されてきた事務局がその会社の仕組みではなく仮想の仕組みを説明して審査を受けるというのはいかなる価値というか意味があるのだろうか?
そして、審査員が認証機関の社員でなく契約審査員であったら、いよいよもって面白い。
更にだが、派遣された事務局と契約審査員が同じISO代行会社に属していたら笑い話だ。
その時審査はどのようなものになるのだろうか?
仮に二つの国が傭兵を雇って戦争をした場合を考えると、双方の傭兵の指揮官同志が話し合い、派手にドンパチするだろうが、双方の死傷者は最低限にして雇い主の金の支払いを見てどちらが勝つかを決めるのではないだろうか?
審査においても同じようなものではないだろうか? なにしろマネジメントシステムがバーチャルであるということは明白であるので文書や記録を見るような面倒なことをせずに、審査側と事務局側で話しあい適当な不適合を見つくろい審査側はしっかり見たぞという形にして、事務局側は重大な不適合はなかったことにして体面を保ちかつ是正処置をするという仕事を作って事務局の必要性を認識させるのだろうか?
あるいはまったく不適合がなかったという結果にするのだろうか?
うーん、ゲームの理論の検討課題になりそうだ。 

ところで、ISO事務局派遣会社で派遣社員を募集をしていた。時給1800円とある。コンビニのアルバイトよりいい。ISO事務局なら深夜業務はない日中の仕事だろうし力仕事でもなく、老後の仕事としては決して悪くはない。
もちろんISOの契約審査員になれば一日数万円になるだろうが、その場合毎日仕事があるわけではない。契約審査員をしている知り合いの話だと年間せいぜい数十日しか仕事がないらしい。ISO事務局派遣が自給1800円でも毎日仕事があれば年収は300万円台の後半となり、契約審査員を上回ることになる。
定年後、私はそういった仕事をしようかと家内に言ったらズバリと言われた。
「あなたはねえ〜、手抜きのできる人ではないから、派遣された先で業務改善とか生産性向上なんて言い出して嫌われるだけですよ」
確かにそのようである。結婚して30数年、家内は私のことを私以上に理解している。
私はお茶をすすってのんびりと老後を過ごすような心構えがまだできていない。



右顧左眄様からお便りを頂きました(08.07.29)
事務局派遣業
先生、久しぶりに独り言を駄文にまとめてみました。

<内部証拠を示すための仕組みつくり>
<組織が問題を起こさないための仕組みつくり>
組織の問題が見えるたびに内部統制、コンプライアンス、独占禁止法遵守、J−SOXと似たような仕組みの建て直しを繰り返しやっている。
建て直しメンバーを集めて勉強会をしているが、形を整えるのに精一杯。いままでよりよくなるかどうかの点では疑問がのこる。それでも、メンバーの教育効果は残る。

<コンサルタントに知識があれば会社の人の知識は不要か>
これをコンサルタントにやらせてしまっては、メンバーの教育機会を奪って、組織の人として知っておかなければならないことが抜けていかないかと心配する。

<知識がなければ実効性のある改善はむり>
<知識がなくてもマニュアルがあれば組織は動く>
いろいろな部分をアウトソーシングして問題もちらほら起こっているが、まだ致命傷にはなっていない。これを称して、「問題ない」と言っておいていいのだろうか。

なにが言いたいのか・・・・昔は大体何を聞いても答えが返ってきた。いまは根拠が薄弱な答えしか返ってこない。コンサルタントだってしっかりした答えをだしてくれない。昔がいいとか言わないけど経験のない社会の構造変化がおこっている日本の将来が心配だ。
外国と真剣に立ち向かうとすればしっかりした組織が必要なのに、こんなに知識を分散させてしまってまずいだろう。

お騒がせしました。

右顧左眄様 毎度ありがとうございます。
私は先生じゃありませんので、お間違えないように 
現在の人は考えないということでしょうか? マニュアル時代、マニュアル世代と言われますからね
おおっと! ISOってマニュアル、標準化することではありませんか!
ということは、考えない人々が増えることはISOの理想が実現されたということなのでしょうか?
それならば、喜ばしいことです。


ふっくん様からお便りを頂きました(08.10.26)
ISO第三者認証
お世話になります。
ISO第三者認証について、なぜ自己宣言をしないのかということがいつぞや記述されていたと思います。
私が短いながら関わってきた中で思うのは、自己宣言をしないのは自己責任を伴うからではないかと思います。誰かが何を言われても、弊社はこういう意図で活動をしています!と胸を張って言えれる企業が少ないのではないでしょうか?「他人様のお墨付きをもらっていますよ」であれば、何かあったときそのほうに責任転嫁?も出来なくはないです。実際しなくても、心のうちで思うだけでも自分たちは救われます。
逆にお客さんのほうから見ても、この会社は他人様のお墨付きをとっているから、取引先として上に推薦してもまず大丈夫だろう(その他人様がひどい状態とはおそらく殆どの人が知らない)と思うのではないでしょうか?
これは責任を取れない、取りたくない…とると非常にややこしくなる世の中になったからかもしれませんが…
そんなことなので、「ISOを代行します。」という会社が出来るのではないでしょうか?またご意見を聞かせてください。お願いします

ふっくん様 毎度ありがとうございます。
自己宣言と派遣業は、その会社が責任を負う覚悟があるかないかという点では関連があるでしょうけど、一直線上には位置しないのではないかと思います。
自己宣言しても社会から信頼されないという状況であれば第三者認証を選ぶしかありません。他方、大のトヨタのようにガリバーであれば自己宣言どころか何もしなくても社会的に信用されるという強いものが勝ちということは現実です。
他方、事務局派遣業というのは第三者認証がほしいだけという会社の選択であって、社会的に信用を得ようというためとはリンクしません。
まあ、リソースの少ない企業においてはニュアンスとしては非常に近いかもしれませんが、異質なものと思います。
とはいえこんなこと真面目に考えたり議論するまでもありませんね
ダメなものはダメ(土井たかこの言葉)


ISO14001の目次にもどる