ISO維持管理サービス 2006.01.27

世の中には会社の一部の業務を請け負うという、ビジネスというか商売をしている会社がある。
昔を振り返ればほとんどの会社はすべての機能を備えていた。たとえば製造業であれば、製造部門はもちろんであるが、設備補修部門、総務、人事、経理、資材、営業、場合によっては社員食堂も守衛も、更には床屋から診療所まで自前で備えていたりしたものだ。
社宅や独身寮を持っている会社は今でも珍しくない。

しかし、時代の流れか最近はアウトソース、つまり自前で持たずに外部に委託することが多くなった。
国会の地下には議員用の床屋があると聞くが、いまどき会社の中に床屋があるところはないだろう。たいていの会社では、社内で社員の弁当を作る代わりに弁当屋から弁当を取ったり、守衛は社員ではなくガードマン会社と契約するということが一般的になってきた。
まあ餅は餅屋というから、専門以外の仕事、不得手なこと、小規模では能率の悪いことは専門家に任せることは悪いことではない。
大分昔から経理部門をアウトソースすることは珍しくなかった。最近はテレビなどでみるが、総務部門とか人事部門を引き受ける会社があるらしい。人事部門を持つ会社でも、リストラや出向を告知するには専門の会社に頼んで行うところもあるらしい。確かにリストラのようなドロドロしたところはまあ誰かに頼みたくなるのかもしれないし、あるいリストラを告げられる方も社外の専門家のほうが気が軽いのかもしれない。

また最近はEMSというのもはやりである。
環境マネジメントシステムのEMSではない。
これはElectronics Manufacturing Serviceの略であって、昔からあるOEMと似たようなものであるが、EMSは電子機器の製品の設計も受注先に代わって行うことが違う。
水が高きから低きに流れるように、資本主義社会においては何事においても効率化、経費削減を図るのは必然であり、時代の流れは止めることも変えることもできない。
昔は良かったなどと過去を懐かしむほど弱気なおばQではない。 

しかし、最近驚いたことがある。
新聞で読んだのだが、『ISO維持管理サービス』という会社があるそうだ。
ISO14001の認証企業を対象に、文書管理やシステムの運用管理を受託し、インターネットで文書作成や運用業務を行うというのだ。
いくらなんでも、これには「ちょっと!おかしいぞ」と思った。
物やサービスだけでなく、ノウハウにも価値があり、ISOの認証の支援を行うのはコンサルタント、もうちょっと進んでISOの認証を請け負いますという商売もその存在が悪いわけではない。現実社会を見ればその是非はともかく、現実の官公庁の入札などの関係でISO認証をせねばならない企業もあるわけでそういったビジネスの存在意義は否定できない。

しかしマネジメントシステムの維持管理まで外注することは可能というか、あってよいことなのだろうか?マネジメントシステムというのは会社の機能ではなく本質、枝や葉ではなく幹である。会社の本質を外に出すならその会社はいったいなんだろうか?
文書管理ならともかく、会社の規則や仕事の手順を決めることを他人に頼めるだろうか?
私は過去30年以上社内のシステム文書や作業文書を書いてきたが、すべての作品は私の思いを読む人に伝えるラブレターであると考えていたし、今もそう信じている。そのような最重要な仕事を人に任せるなど思いもよらない。さらにシステムの運用管理を委託するとは考えることもできない。
だって、考えてごらんなさい。外部の人が作った会社の規則が有効であるとは思えない。少なくとも私の30年以上にわたる経験からいかなる規則も会社の文化、風土を反映したものでなければ有効ではなく価値がない。
あなた、本屋で売っているCD-ROM付きISO14001文書記録様式集というものが自分の会社で役に立つと思いますか?
もしそう考える人がいたら、会社で仕事をしたことがないに違いない。
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超古い映画だが「七人の侍」とか、その西部劇版「荒野の七人」をご存じだろうか?
山賊に困っている村人が、剣術使いにチャンバラを教えてくれというと、チャンバラを習うより用心棒を雇った方が早いといわれ、七人の侍やガンマンを雇うのである。
やがて、山賊が現れてチャンチャンバラバラ、ドンパチが起きるのだが、最後に村を守るのは村人の勇気と力であるという、涙と笑いと感動のお話である。
どう考えても会社のマネジメントシステムを外部の組織に預けるというのは納得いかない。
映画の村人たちに笑われてしまうのではないか? 

しかし、はたと気がついた。
私の考えているシステム運用とここで委託するシステム運用の概念が異なるのだろう。
きっと、いやたぶん、システム運用のアウトソースとは本質的な会社のマネジメントシステムをアウトソースしているのではなく、認証維持のための『みせかけの仕事』をアウトソースしているに違いない。真のISO14001活動ではなく認証の維持業務を外注しているのだろう。


本日の疑問

環境事務局はアウトソースできるのか?


ISO14001が企業のシステムへ溶け込ませようとして2004年に改定されたのだが、今時点このようなビジネスが流行っているということは、日本のISO14001はまだ本当に会社経営に内部化されていないということなのだろう。
いや、負のスパイラルといわれそれを解消しよう挽回しようとISOシステム認証に関わっている人たちは頑張っているのだが、マネジメントシステムの維持管理のアウトソースというのはそれに逆行した負のスパイラルを加速するものではないのだろうか?
それは悲しいことではないのか?


参考資料
環境新聞 2005年1月18日「ISO維持管理サービスが好調」




あらま様よりお便りをいただきました(06.01.28)
アウトソーシング考
佐為さま あらまです
アウトソーシング(outsourcing)を調べたら、以下のように記されていました。
「企業が自社の業務や機能の一部または全部を、専門業者あるいは子会社などの外部に委託すること。
特定の部門を人員を含めて子会社化したり、事業売却(業務委託は継続)することを指す場合もある。」
麻生太郎外務大臣が総務大臣の頃、アウトソーシングを奨励してから、こうした思考が急速に伸びました。
今では経営者までも外注する時代、オーナーはただ利益だけいただくという寸法。
私の知人も、複数の人材派遣会社を競合させ、事業全てをまかなわせているというのですから驚きですね。
従業員やその家族の心配など煩わしいことがなくなったというのですが、会社という概念が変わりました。
「ISO維持管理サービス」も、勿論アウトソーシング。
従業員としてみれば、職場は変わらず、人材派遣会社に「転職」したことになります。所得は約半分にカット。
そうやって、自動車会社などの過酷な「カンバン方式」(管理版方式)に対応しているようです。
ところで、自民党の党改革実行本部は、今月から外部委託のかたちで、政策研究チームを発足させたと、今朝の地方紙で伝えています。
こうしたシンクタンク構想は「官僚依存」からの脱却を狙った前政策本部長の安倍晋三官房長官の肝いりだそうですが、政務調査会サイドでは「屋上屋を架す」と反発しているようです。
どうやら経営者の経営理念、政治家の政策までもをアウトソースに頼る時代に入っているようですね。
小生はこうした官民挙げての丸投げブームに疑問符です。
第三者評価機関を設けて客観的に見直そうという考え方なら賛成ですが、その責任まで「丸投げ」するようなアウトソーシング思考は、基本的なところから考え直す必要があると思います。
創業者あるいは創始者の理念を継続させることは、時代遅れなのでしょうか。
組織の人格としての同一性は、「信頼」を積み上げる上での必要条件かと思っていました。
あらま様、毎度ご指導ありがとうございます。
あらま様のご意見には論点がいくつもあります。
  • 経営を委託することの是非?
  • 自社の仕事をすべてアウトソースすることの是非?
  • 人は変わらずに雇用方法を社外とすることの是非?
  • 政党が政策を外部に検討を依頼することの是非?
  • 官僚主導の政策とシンクタンクによる政策の比較?
  • アウトソースと丸投げの類似あるいは同一性?
どの論点についても議論・検討が楽しめそうですね。 
あまりつっこむと大変というよりあとにとっておきたいと思いますが、経済性とか効率性という観点でなく、アウトソースすべき事項とすべきでない事項があると思います。
しかしながら、政党が政策検討をアウトソースする時代なら、ISO事務局をアウトソースするくらいは可愛いということでしょうか?


大国主命様からお便りを頂きました(06.01.29)
どうも、管理人さん。大国主命であります。
小生の住む県では、各市町村でISO資格を取っています。
なんでも、「法人経営を取り入れる」という名目です。
傍からみればいいように見えますが、地方自治法を見ると、「市町村は法人とみなす」規定があるではありませんか!
言葉のあやで、取り入れてみせただけのようですね・・・。
大国主命様、毎度ありがとうございます。
そりゃ法人は法人ですけどね・・・民間と自治体はまったく違うところがあります。
それは、民間の会社は手順を定めるということは義務ではありません。
法律で手順を定めることが決められているのは、就業規則、安全衛生、消防法などに限られています。
それ以外の業務は手順を決めずにして良いというのが現実というか当然です。
ISO規格によるマネジメントシステムというのは、誰がやっても同じ結果がでるように社内のルールを決めろというのがその本質です。
もともと社内規則のない民間会社ではルールを決めるのは意義のあることですし、人事異動の引継ぎなどで実際的な効果もあるでしょう。
言い換えると以前から社内ルールをしっかりと決めていた会社ではISO9000もISO14001もあまり効果がありません。
これは私の本職ですから誰からも異議を受け付けません。 

さて、自治体、官公庁はどうでしょうか?
そこではもとから法令、通知、告示、その他諸規則というのがしっかりと決められています。
じゃあ、ISOの認証をする必要は?
全然ありません。
税金のムダ使いにすぎません。
納税者として頭にきます。




あらま様からお便りを頂きました(06.01.30)
アウトソーシング考-2
佐為さま あらまです
アウトソーイング思考で世の中を見渡してみます。
すると、特定アジアの広報業務を請け負うかたちで、朝日新聞が存在するのかと思ってしまいます。
ところで、中韓は、朝日新聞に業務委託をしているのでしょうか。どうも朝日新聞は、自発的ボランティア精神で、捏造、情報操作をしているようですね。
どこまでも、特定アジアに都合のよいマスメディアのようですね。
冗談はさておき、佐為さまがおっしゃるように、外部に委託してよいものと、すべきでないものとがあると思います。
先日も、ニート対策の話し合いがありましたが、ニートに対して、「目標」を設定してあげるのではなく、目標設定が自発的にできるように「援助」することが、肝心だと確認しました。
自分の人生の目標をきめたり自分を向上させるような精神、そして自己反省する精神まで、他人が立ち入る領域ではないと思います。
そこでわたしは、ISO認証を修得するために努めることは、自己反省だと思っています。
つまり、全てを見直して正す行為は、全く自主的行為で、まさにその本体が判断すべきことだと思います。
その判断までをも外部に委託することは、自己放棄だと思います。
あらま様 毎度ありがとうございます。 確かに人間にとって一番大事なのは自分で決めること、主体性ということでしょう。
しかし人間はなかなか自分で決めることが苦手で、外圧によって仕方なしに動くということが多いですね。
ISO9000というのはEU統合の1993年に先立ち、低賃金国から安い製品が流通するのを嫌った先進国がISO認証企業の製品だけがEU域内を流通できるという規制をしたのがはじまり。そしてヨーロッパに輸出していた日本企業があわてて認証し始めたのが1993年、とどちらにしても他力本願、外圧とあまり自慢できない話ですね。
いずれにしても、アメリカ様様も主体性がなく、中国様様も主体性がなく、困ったものです。
まあ他人をあがめる程度ならしかたないとして、ボランティアで特定アジアの宣伝をしてもらっては困ります。
NHKなどは国民の税金で特定アジアの宣伝放送をしているようで・・・ダメダこりゃ


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