私の勤めている会社も一人前にISO14001などを認証している。しかし、いつも言っていることだが、当社にはISO事務局というものがない。別にそれでも困らないのである。
いったいISO事務局というものが何をするのかね?
私には、ISO事務局のお仕事というものが想像つかない。
- 文書管理? そういうお仕事は昔から総務の文書担当がしている。
ISOのための文書? なんですかそれ? 会社には会社規則しかないです。
- 内部監査? 監査部が監査せずに誰が内部監査するんだ?
- 教育訓練? 教育というのはOJTにせよ、OFFJTにせよラインが行うものと決まっている。
ISOの教育ですって? なんでそんなことせにゃならんのですか?
当社ではISOの教育なんてしてません。ISO規格なんて覚える暇があったら外回りしてこい!
- 環境実施計画? そんなもの各部門で計画を立てて進めてくれれば良いじゃないですか? 何も全部まとめてなんて手間をかけることもありません。
それに当社にはISOのためにすることはありません。会社の本来業務しかありません。
- コミュニケーション? そりゃ会社の仕事そのものですね、毎日コミュニケーションしてますよ。納期調整、苦情処理、上長の指示、業界仲間から聞いたネタになりそうなことは関係者に伝えているし・・環境に関わることも関わらないことも・・
- 順守評価? それこそラインの職制の仕事でしょう?
使いこみ、サボタージュ、下請けいじめ、セクハラ、輸出管理、部下の仕事ぶりすべてを監視し間違いのないようにするのが管理者のお仕事です。貴社では管理者が管理していないのですか?
- マネジメントレビュー? 内部監査、計画の進捗状況、事故が起きれば(事故が起きてなくても)ちゃんと役員に報告してます。それがなにか?
このようにどう考えても事務局がしなくてはならない仕事というものが思いつかない。
もちろんISO審査の時は会場を確保し、役員の予定を確保し、昼飯を準備し、各職場へご案内はせにゃならん。そういう仕事はある。しかし事務局って名乗るほどのことはないだろう。
もっとも審査員が間違ったことを言ったとき指導教育する仕事はある
だが本当はそれは事務局の仕事ではなく、認定機関の仕事である。
より詳しく事務局の仕事を知りたい方は
以前書いた事務局のお仕事をお読みください。
ときどき、よその会社から「ISO事務局同志で懇談会をしませんか〜」なんてお声がかかる。当社には事務局がないので、そんなとき私が対応することになる。私はISO担当ではないが、まあ社内でISOに詳しいと思われていることと、暇で能がないのでそんな役目に適当と思われているのだ。
最近ある会社さんの事務局数名がお見えになりました。こちらは一人、お金にならないことは人数が少ない方が良いに決まっています。
- 客「環境側面を決める方法はどうしているんですか?」
- 私「私どもではわざわざ決めてないですね。元から管理していた項目が側面ですね」
- 客「?」
- 客「当社では本業を環境目的目標にしようとしてるんですが、なかなか決まらないのです」
- 私「決める以前に、会社の事業計画があるじゃないのですか。わざわざ考えることもないでしょう」
- 客「??」
- 客「当社では事業予算とは別に環境活動として環境予算を確保しているんです」
と誇らしげ!
- 私「私どもの会社では事業計画は一通りしかないので別に予算枠はありません。ふたつあるの変ですよね」
- 客「???」
- 客「内部監査員はやはり審査員コースを受けることが必要と思いますか?」
- 私「内部監査員がISO規格知らなければならないということはないでしょう。」
- 客「????」
そんな話し合いをしてお開きになったが、きっと
訪問者は私をアホか、ISO規格を知らない老人と思ったに違いない。
あるときのISO審査で、私が対応しなければならなくなった。私は監査をするのは好きだが、されるのは嫌いだ。
まあ月給をもらっている身、仕方がない。
- 審査員「管理責任者は順守評価をしていますか?」
- 私「してません。順守評価はラインの仕事です。」
- 審「管理責任者はすべての順守評価をしなければならないでしょう?」
そんなこと規格に書いてないというのも大人げない。もっとも規格にないことを主張するのは子供っぽい
- 私「会社というのは、それぞれの部門の管理者が売上の管理、交際費の管理、業者やお客様との交渉状況などやコンプライアンス全般を管理しているのです。環境遵法はその一部で、当然各部門の管理者が遵守状況をみて不具合があれば是正するのです。」
- 審「管理責任者が順法状況を知らないのは規格不適合ですよ」
- 私「交際費でも品質問題でも金額や問題の大きさによって決裁する者が決まりますよね、職制による順法点検の結果、問題があれば上位の管理者に報告され、重大であれば環境担当取締役すなわちISOでいうところの環境管理責任者に報告されます。」
- 審「そういうものですか?」
- 私「会社とはそういうものです」
- 審「環境マニュアルは貴社の最高位の文書と書いてありませんが?」
- 私「環境マニュアルが最高位の文書でないからです。そもそも環境マニュアルは社内では強制力を持ちません。」
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これはバーチャルな体系図 | | これが本当の関係図 |
- 審「はあ? じゃあ社員の皆さんは環境マニュアルを読んでないのですか?」
- 私「読んでいません」
- 審「えつ! じゃあ不適合ですよ」
- 私「弊社は昔から会社規則というもので仕事をしております。マニュアルはISO規格と会社規則の対照を書いたもので審査のために作成したものです。社員はマニュアルを読む必要はありません。」
- 審「マニュアルがそういう位置づけの会社は初めてです。」
- 私「そんなことないでしょう。他の会社さんは嘘を書いているだけです。会社とはそういうものです」
- 審「内部監査は誰がしていますか?」
- 私「監査部です。」
- 審「監査部の方はISO規格の教育を受けていますか?」
- 私「監査部の者はISO規格を知りません。」
- 審「じゃあISO規格に定める内部監査ができないじゃないですか?」
- 私「ISO規格と会社規則の対照表がマニュアルです。審査員はマニュアルを見て規格適合と判断したのですよね。監査部は法律と会社規則の専門家ですから会社規則を順守運用しているかは十二分に点検します。ですからISO規格を満たしていることになります。そんなこと論理学の初歩でしょう。」
- 審「そういうものですか?」
- 私「会社とはそういうものです」
私の考えが間違っているのか、あるいは狂っているのか?
それとも多くの方がバーチャルなシステムを思い描いて無駄なことをしているのだろうか?
どうも後者のように思えてならない。
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現在の日本には、ISO9001のために品質マニュアルを作り、それを社内展開した手順書を作り、教育し、実施し・・するのだと考えている人が大杉である。
もちろんISO14001のためには環境マニュアルを作り、それを社内展開した手順書を作り、教育し、実施し・・するのだと考えている人も大松がいである。
だからマネジメントシステムを統合しようなんておかしな発想がでてくるのだ。
本当はそうじゃないだろうが・・
どの会社にも会社創立以来の唯一無二のマネジメントシステムがある。ISO9001審査のためにそのなかから品質に関わることを項番順に抜き出し概要を書いたものが品質マニュアル、ISO14001審査のためにそのなかから環境に関わることを項番順に抜き出し概要を書いたものが環境マニュアル、そう考えると平易そのものです。
それがなにか?
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本日の小話
向かい合っていた二人の侍が一合交えた後パット離れた
一人が言った「おぬしできるな」
もう一人が言った「おぬしできぬな」
本日の質問
タイトルを「おぬしできるな」とお読みになられた方はいらっしゃいますか?
本日の質問 その2
あなたはできる人、それともできぬ人?
ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(09.03.08)
そんな話し合いをしてお開きになったが、きっと訪問者は私をアホか、ISO規格を知らない老人と思ったに違いない。
私も訪問者がそう思ったであろうことに500円賭けます。
きっと帰り道では訪問者同士のこんな会話があったことでしょう。
訪A「なあ、どう思った?」
訪B「あの人、ISOのことは何も知らないみたいだね」
訪A「だよな。あれじゃあ、ISO認証のために特別なことは何もしなくても取得・維持できると言ってるようなものだよ」
訪B「無駄足だったね」
訪A「うん」
かくしてこの訪問者たちと大金と莫大な労力を注いで“構築”した訪問者たちのISOは、今後も苦難の道を歩むのであった。ちゃん、ちゃん。
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たいがぁ様・・・・笑いをこらえるのが苦しい
90%いや100%そうでしょうね
でもISOってそんなものですよね?
達人は剣を合わせただけで相手の技量がわかるそうです
へぼは切られても気がつかないそうです
そのほうが幸せかも
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