ISOの限界 09.07.10

ひいきの引き倒しという言葉がある。善意であろうと悪意であろうと、故意であろうと無意識であろうと、なにものかを褒め称えているうちに、それが行き過ぎてかえってその名誉を棄損(きそん)するということだ。
簡単な例をあげれば、
ゴマの油は栄養がある。ゴマの油を入れると料理がおいしくなる。ゴマの油は健康にいい。ゴマの油をとっていると病気にならない。ゴマの油でがんも治る。じゃあゴマの油があれば医者いらずだね、なんてことになる。
食べ物ばかりじゃない、ゴマ油を入れると機械の調子がいい。ゴマ油は歯車だけでなくパソコンの動きもよくするんだよ、ゴマの油は魔法の力もあるんだ、開けゴマというと扉が開いちゃうんだ・・てなことはありません。
ISO9001って品質マネジメントシステムの規格なんだ。ISO9001って品質経営の規格なんだ。ISO9001って経営の規格なんだ。ISOって経営を良くするんだ。ISOの通りすれば経営が良くなるんだ。ISOって経営そのものなんだ、ISOやると利益がものすごいんだ・・てなことはありません。
私のバカ話を聞けば、みなさん、なアホな!とおっしゃるでしょう。普通の人ならそんなこと言わないよ、騙されないよというのではないでしょうか?
現実には世の中にそういう宣伝、公告はいっぱいあります。 日本では、20世紀末にISO規格とかISO認証というのが打ち出の小槌というか、魔法のように思われ、実態以上、実力以上にもてはやされたはいいが、やがて品質が上がらない、遵法がしっかりしない、儲けにつながらないということが分かってきて、みなさん嫌気がさしているんでしょうか?
仲人口に乗せられて結婚してみたものの、話に反してひどい女だったなんて・・
仲人じゃありませんが、植木等の歌にありましたね、
「お願い〜棄てないでぇ〜、てなこと云われてその気になって女房にしたのが大間違い、炊事洗濯まるでダメ、食べることだけ三人前、ひとこと文句を云ったならプイと出たきりっハイそれまでよ〜」
いや、公平を期すならば、もともとそんな理想の女性とか完ぺきな男性なんていませんよ。
最初の望みが高すぎて、現実との差に自分の気持ちの整理がつかないのでしょうね。

2009年08月号のアイソスに産業環境管理協会のISO14001審査員登録センターの方が次のように書いていました。
「いずれの審査員にも知識、技能、個人的特質を兼ね備えた欠点のない完全な人間であることが要求される。」
もう・・・言葉がありません。そんなことありえません。そんなこと期待するとか求めるほうが常識離れしてます。世間を知らない子供じゃあるまいし、完ぺきな人間は存在しません。そういった完ぺきを求めることが捏造とか虚偽記載を生み出すんじゃないでしょうか?

ISOなんて小集団活動と同じレベルですよ。過剰な期待を持つと、期待通りでないと裏切られたと感じて評価が反転しちゃいます。
過剰な期待はいけません。
あまり規格とそれに基づく活動はすばらしいといわないほうが良いと思います。ISOも認証制度も審査機関のできることも限界があり、身の程をわきまえるべきです。
お間違えないように、ISO9001もISO14001もすばらしい規格です。でも万能じゃありません。経営全般に活用しようなんていったら恥ずかしくて逃げ出すんじゃないですか?

本日のまとめ
ISOは無力ではありません。万能でもありません。
まあ、○カもハサミも使いよう。ISOも使いようという程度に過ぎません。


ISOを斜めに見て 09.07.11

私は海から遠いところに生まれたうえに貧乏だったので、還暦の今までヨットなんてものに触ったことも乗ったこともない。ではあるが、本日はヨットのことから話を始める。
ウインダサーフィン 聞くところによると、ヨットは「まぎる」といって風に真っ正面ではないが、斜めになら風上に向かって進むことができるという。ヨットだけでなく現代の帆船もウインドサーフィンも同じことができる。
理屈は分力とかなんとかむずかしそうだが、ともかく風を受けて風下側にだけでなく、風上側にも進むことができる。
ちょっと考えると不思議なことだ。だが現実である。そのためには平たい帆ではなく、三角の帆でないとだめという。しかし日本の江戸時代の千石船などは平たい帆ではあるが、実際には風上に向かってジグザグに航行できたという。
帆の形というより、単に帆というか風を受ける平面をしっかりと固定しておけるかどうかが要点だろう。
ハルクレメントの「重力の使命」にもそういった話がでてくる。自然エネルギーしか使えない状況において、「まぎる」ことを知っているか・いないかが文明レベルの指標となるらしい。
風上に向かって進むだけでなくもっとすごいことがある。帆船が風を順風満帆に受けて航行するのが最大スピードかというと、実はそうじゃないというのだ。
じゃどういう状態が最高速度かというと、これまた風を横から受けて進むときが最大速度を出せるという。いやあ、常識から考えると不思議としか言えません。
実をいって、風下に向かって進むより横方向に進む方が速いというのは経験則であるが理論上証明されてはいないそうです。現時点、追い風より早く進むヨットあるいは車は現物サイズでも模型でもないという。
それで追い風より早く進む帆船(あるいは車)が作れるかということが研究テーマとなっているそうだ。(make Vol.4)
何の話かとお思いでしょうね、ここまでは起承転結の起なのです。まあ、私の話は前ふりが長く、前ふりだけで終わることも多いという困ったものです。

では起承転結の次の段階に入りますが、承なのか転なのかは定かでありません。
世の中は多くの人が生きていますので、それなりに妥協とか遠慮とか約束事やしきたりなどのしがらみの中で生きています。
「しがらみ」って柵と書くのです。まさに柵で囲まれた人生であります。
だから己の心情や熱い思いを直接表明するのは野暮であったりしますし、それを主張してばかりではあっちでもこっちでも人とぶつかり衝突ばかり・・自ら人生を険しいものとしてしまいます。
しかし、長いものに巻かれろ、寄らば大樹の陰、多勢に無勢・・ちょっと違うぞ 
世の中の大勢に真っ向からぶつかるのも大人げありませんが、大勢の一人になってワッショイワッショイとおみこし担いでいい気になるのもいかがなものかと思いませんか?軍国主義の時は軍国主義を唱え、戦争に負ければ戦後民主主義を標榜している朝日新聞../nisehata.gifのような人生は、やはり信用できません。
そんな人生じゃ生まれてきた甲斐がない。生きていく生きがいがない。そうじゃありませんか?

一体何の話だ? といよいよ不信が高まってきたでしょう。 
そこでですよ、人生斜めに見て生きていけなんていいますよね。大勢に合わせることなく、あまのじゃくになることなく、是は是、非は非と己のスタンスをはっきりと生きていくのが人間というものでございましょう。
ISOなんてのに関わっている人は大勢います。日本でISO9000の認証件数が約4万、ISO14000が約2万ですから、認証している組織の数の数倍の人がISOに関わっているはずです。また審査員として飯を食っているのがISO9000で4000人、ISO14000で2000人くらいと思われます。そのほか、研修機関、コンサルタント、出版会社などなどISOでオマンマ食べている人は合計何人くらいになるものでしょうか?
まったくの想像ですが、まあ4・5万人はいるのではないでしょうか?
日本の就業人口は6300万人(2004)だ。国内総生産が500兆円、ISO業界の総売り上げが2000億とすると、組織側を除くISO業界に関わっている人口は0.2/500*6300万=2万5千人になる。
ちなみに日本のホームレスは2万5千人と言われる。まあその程度の数だ。
小さな市の人口くらいいるわけですが、不思議なことがあります。
ISO認証をするためにどうすべきかと語るコンサルはたくさんいます。
ISO規格の解説を語る審査員もたくさんいます。
ISOの素晴らしさを語るISOTC委員もいます。
ISOで会社を良くしようと語る事務局は掃いて捨てるほどいます。
そして、
ISOはダメだと語る人もいます。
ISOとはインチキ、詐欺、押し売りのことだと非難する人もいます。
ISOで会社を悪くしたという人もいます。
ちょっと待ってください。
本当はその中間にあるのではないでしょうか?
ISOはこう使えば役に立ち、こう使えば害をなすという是は是、非は非を論理的に語るべきではないのでしょうか?
ISO認証の良いところ(実を言うとあまりないけど)もあるし、悪いところもあると語るべきではないのでしょうか?
そういうバランスをとって語る人は実はあまりいません。
私たちISOに関わる者も、大勢と同じことを語っていれば安全だとか、赤信号でも怖くないなんて、無責任な行動や発言はいけません。
同様に、何でもかんでも反対だあ!と共産党のようなことを語っていてもダメなのです。
世の中のことと同じく、ISOについても斜めにみて考え、語っていこうじゃありませんか。
波風を立てず無風で生きていくというのはやはりまずいのではないだろうか?
ここはひとつ、ISOを斜めに見て、思うところを語り、思うところを行動すべきじゃないだろうか?
案外ヨットのように、追い風を一杯に受けて進むより、斜めに見て行動していく方が、会社を良くし、社会に貢献するんじゃないだろうか?

本日のエクスキューズ
斜めといってもヨットとISOじゃ全然違うじゃないか、おまえはダジャレばかりだ!
そんなこと言わないでくださいな、ダジャレなしには生きていけません



ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(09.07.12)
帆を使った舟が風上にも進めることは知っていましたが、最高速度が得られるのは横風を受けて進むときというのは知りませんでした。
ところでISOに対する姿勢ですが、私は「ISOで会社を良くしようと語る事務局」に近いですね。正確に言えば「会社をよくするためにISO『も』うまく利用しようと語る事務局」ですが。

ISOの悪いところというか、いかがなものかと思う部分はたしかにあります。
例えば環境方針の中に法令順守を強制している部分です。
こんな当たり前のことをわざわざ方針に含めなければならないほどわが社はアホではないと考える経営者がいて、この条項を無視することは何らISO規格を否定するものではありません。
規格の「いいとこ取り」をすることはよくないことだという風潮があるように思います。しかし私はそうではない、大いにケッコウと考えます。いい結果を出す経営が大事であって、規格に適合することや規格を使うことが大事ではないからです。

たいがぁ様 毎度ありがとうございます。
審査とは議論の場という審査員ほど、議論を拒否するというのは私の経験則です。
経営に役立つ審査をすると語る認証機関ほど経営に役に立たないというのも感じます。
ISO規格文言を金科玉条として波風立てない審査というイベント・行事をしようという事務局も多いですよね
そんな形だけのものなら、ヤメチャイマショーヨ!
そして本当に会社を良くする、遵法を確実にする、事故を起こさない、パフォーマンスを上げる、利益を伸ばす、ISOをやりましょう。

名古屋鶏様からお便りを頂きました(09.07.12)
佐為様
お世話になります。名古屋鶏です。
審査とは審議の場という審査員ほど、議論を拒否する
ホント、その通りですね。
こーゆー事を言う人ほど、こちらの話を全く聴かずに一方的に話を進めるんで困ったもんです。
先日も「大いに議論しましょう」と審査員が言うので、「・・それではですねぇ・・」と規格解釈の話を持ち出したら「いや、それはおかしいです!」と怒り出して、全く受付んのです(笑)
どうやら彼らの"議論"とか"審議"ってのは、自説を押し付ける事のようですわ。

名古屋鶏様 毎度ありがとうございます。
○カと審査員につける薬はない・・・某薬剤師の言葉 


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