環境法違反 10.07.25

ときどき環境法違反が報道される。環境法違反とは、排水基準をオーバーした汚れた水を公共河川に放流したり、煙突から法律の規制を超えたばい煙をモクモクと出したりすることです。
もちろん典型七公害というくらいですから、残りの五つである、騒音を出したり、振動を出したり、悪臭を出したり、地盤沈下を起こしたり、土壌汚染を起こしたりということもあるはずですが、そういう事例はあまりありません。
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環境法違反というのは環境法規制を犯したことではなく、環境法規制を犯したことが見つかることなのです。そういえばつい最近も自殺として処理されている人のかなりの割合は殺人ではないかという記事がありました。犯罪とは法を犯してそれが見つかったことをいい、見つからなければ犯罪じゃないのです。無罪とは犯人ではないことではなく、犯人だと立証できなかったに過ぎません。

では、実際の環境法違反はどれくらいあるのだろう?といいますと、はっきりとはわかりません。そりゃ行政は環境法違反件数を公表していますが、それは前述したように発覚した件数でしかありません。
環境法違反をしていないかを各社をしらみつぶしに調べた調査はないのでしょうか? 私が知る限り、ちょっと古いが2005年に総務省が廃棄物関連について調査した報告があります。ありますというより、これしかないというのが正しい。この「産業廃棄物対策に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」によると事業者の7割に廃棄物契約書やマニフェスト票違反 が見つかったそうだ。残念ながら既に総務省のウェブサイト掲載期間が過ぎてアップされていない。
この調査の対象はISO認証に限定していないので、ISO認証企業はこの調査結果よりも良い成績なのか否かわからない。しかし私は経験からISO認証している企業と認証していない企業の差はないと考えている。
またここでは廃棄物に関する法違反を調査しているが、私は典型七公害においても違反率は同じだろうと推察する。私の同業者であればみな私の意見に同意されるだろう。同意しない方は実態を知らないか、違反を見つける力量のない方である。 
日本にISO14001認証している企業は減りつつあるといえど約2万あるわけで、その内部監査員が、1社あたり仮に10人いるとして20万人になる。しかしその中で自分のサイトが関わる環境法規制を理解し監査できる人は1割いないことは間違いない。
この説に異議ある企業、あるいは内部監査員がいらっしゃれば申し出られよ。私が試験をしてあげよう。
しかし別に内部監査でしっかりと法順守を見なくてもよいし、4.5.2順守評価で法規制を守っているかとチェックするまでもなくISO規格では法規制を把握して、それを社内展開し、教育し、運用することを求めている。なぜそうできないのだろうか?
ISO14001アネックスA5.5参考1で『環境遵法監査はこの規格の範囲ではない』とあります。 ISO14001でいう内部監査はマネジメントシステムの監査であって、法規制やパフォーマンスなどをみなくても適合なのです。

法規制の社内展開はISO規格に従って記述すると次のようになる。
4.3.2法的及びその他の要求事項

a)法的要求事項を特定し参照する
../2009/yamigi.gif4.3.2法的及びその他の要求事項

b)要求事項を組織の環境側面にどのように適用するかの決定
../2009/yamigi.gif4.4.6運用管理
a)管理するために文書化された手段の確立
../2009/yamigi.gif運用../2009/yamigi.gif



法的要求事項../2009/yamigi.gif
著しい
環境側面
../2009/yamigi.gif
チェックとフィードバックループである4.5.1、4.5.2、4.5.3を省いているが、オープンループであろうと正しく機能しなければならないのは当たり前である。クローズドループは自動制御を確実にするものではあるが、それがなければシステムが成り立たないというならそもそもの設計がおかしいのだ。
半導体になってNFをガバガバとかけるのが当たり前になって、それを当たり前と思うのが普通になったが、真空管時代のアンプはNFなど刺身のつまでしかない。

さて、このオープンループの社内展開において遵法が実現されないなら、どの素子が機能していないのか?ということになる。
私の経験から各ステップで発生したエラーの割合を下図に示す。
40%25%20%15%
法規制の把握漏れ
法の適用の検討漏れ
社内展開不十分
手順書なし
教育不十分ルールを守らない
運用が悪いこと、つまり手順や基準を守らないことより、手順や基準が不適切なことが多く、それよりも法的要求事項を環境側面にどのように適用するかの決定を怠っていることが多く、それよりも法規制をしっかりと把握していないことが多い。これが経験から得た実感である。
じゃあ、対策は簡単だね、
法規制を読む力をつけること・・それが真っ先にしなければならないことだ。

でもそれは簡単じゃない。
ある会社に行って、どのようにして環境法規制を調べているのですか?と聞いたら、「○○環境法規制」なんてタイトルの本を取り出してきた。これを読んで該当する環境法規制を調べてその本に書いてあることを信じて、社内の手順を決めているそうだ。
絶句である。
環境法規制の本など腐るほど出版されており、毎年法改正を反映して改定版も出されている。でもそんなもので仕事をするようじゃだめです。本の内容が間違っているとは言いませんけど、十分ともいえません。いったい廃棄物処理法に契約書とマニフェストを交付しなくてはならないと書いてあるのはいいとして、契約書の内容、つまり委託基準などかいてありません。マニフェストの書き方も書いてありません。WDSについても書いてありません。印紙金額の額についても書いてありません。そんな本を読んだだけで仕事ができるはずがない。
まさか本を読んだだけで、ダイビングに行く人はいないでしょう。環境法規制の本を読んで仕事をしようという人は本を読んだだけでダイビングするのと同じく勇気のある人です。

じゃあ、法律の本文を読めというのが良いのだろうか?
法律、施行令、省規則を読んでもだめだ。告示、通達、通知、ガイドライン、中央省庁や自治体の出しているQ&Aも知らなければならない。もちろん条例も忘れてはいけない。
法律を読むことだけを考えても、しっかり読めるようになるのはけっこう骨である。
容器包装リサイクル法は B to C だけが規制を受けて、B to B はまったく関係ないと思っている人が多い。B to B においても帳簿記帳義務があると知っている人は半分いるだろうか? 帳簿記帳義務を読み落とした人たちはどうして読み取れなかったのだろうか?
原因がわからなければ対策は取れない。
まさか環境法規制に関わる人たちは法学部にいかなければならないなんてことはできない。そして法学部に行けば法律を読むのが得意になるということもない。もっと実践的に簡単にできる方法を考えなければならない。
ついでに言うと、ISO14001認証すると官報を取る会社が多い。新聞は時代遅れのビジネスモデルなんて本もあった。過去10年間毎日は言うに及ばず朝日も読売も購読数を減らし続けている。しかしなんと官報は、つまり政府が出している新聞、それには芸能界のスキャンダルもない、番組欄もない、天気予報欄もない官報は部数を増やしている。ISOは官報の売り上げ増に寄与していることは間違いない。
でもはっきり言えば、官報なんてとっても無駄です。一年間に環境に関する法改正は何回ありますか? 今年2010年は大気汚染防止法、水質汚濁防止法、廃棄物処理法その他PFOS関連で多かったほうだが、せいぜい20件くらいではないだろうか。平均すれば年に10回はない。そして官報に載るのは法律、施行令、省令、告示までであり、行政内の通達、通知は載らない。毎日官報を眺めるのは時間の無駄、官報を購読するのはお金の無駄だ。
働いている振りをするには最適かもしれない

じゃあ、どうすれば良いのよ?
そう聞かれることだろう。
実を言って、私はそれに対する的確な回答は持っていない。
ただ自社に関わる法規制を把握していない組織は、環境側面をしっかりと把握していないであろうと思われる。その原因は著しい環境側面を決定する方法にあるのではないかと見当をつけている。
その関連をつかめたら、法規制を把握する方法がわかり、環境法遵法は大きく向上するだろうと考えている。

じゃあお前はどうして環境法規制を知るようになったのか? という質問があるに違いない。
私自身わからない。見よう見まねというか、必要に迫られて法律を読んでいたというだけだ。自分を説明できなければどうしようもないのかもしれない。



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