なぜ不祥事は止まらないか 10.08.28
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環境不祥事といっても多様である。
騒音を出して近隣に迷惑をかけているなんてのはかなりある。なにしろ典型7公害で一番多いのは騒音である。2000年からは大気汚染が統計上一番多いが、内容はダイオキシンからみだ。
排水データを改ざん、つまりうその数字を書いていたなんてのも、しばしばニュースになる。
廃棄物処理で法違反をしたなんてのは、ときどきニュースになる。
有毒ガス漏れ事故を起こして近隣の人に避難をさせたなんてことはめったにないが、なくはない。
なんか、中学英語のalways、almost、usually、often、sometimesなど頻度を表す副詞の練習のようだ。 
まあ、そういうのをひっくるめて環境不祥事と呼ぶことにしよう。
ところで環境マネジメントシステムというすばらしいものが1996年に発明された。そしてその規格を満たせば遵法や汚染の予防ができるであろうと思われたわけです。

日本人は流行に弱い。ISO14001が制定される前から、我も我もと、みな認証するよう一生懸命でした。その結果、世界一のISO14001認証件数を誇っていたわけです。2007年に認証件数は中国に抜かれましたが、まあ人口が10倍なら企業の数も10倍あるのでしょう、単に登録件数を競ってもあまり意味がありません。
ところが2000年以降、環境不祥事が続発して、ISO14001認証しても効果ないじゃん!、第三者認証なんて役に立たないよ!、認証よりも公害防止をしっかりやれ!、なんてことが言われるようになりました。

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確かに今まで企業側は、ISO14001認証しました!、当社は環境に優しい企業です!、環境管理の国際規格を取得しました!なんて宣伝してたんですから、その反発も致し方ないでしょう。

ところでISO14001は環境不祥事を防げるのかというのは、どうなんでしょうか?
ISO14001はマネジメントシステムの規格、つまりこういう仕事には文書を作りなさい、文書管理はこうしなさい、難しい仕事はしっかりした人に任せないといけないよ、問題が起きたら当面対策はもちろん再発を防ぐようしっかりとしなさいよ・・とまあそういうことを決めており、認証とは外部の審査員にチェックしてもらい、その会社がしっかりとした仕組みを持っていることのお墨付きを頂くこと。
お墨付きを頂けば、事故も違反も起きないのか?ということをチョット考えて見ましょう。
あんまり真剣に考えると知恵熱が出るのでチョットだけよ・・
ISO14001認証しても不祥事が起きるとしたらどんな原因が考えられるだろうか?

  1. ISO14001規格が力不足で、環境不祥事をとめることができないから。
    間違って、役不足などといわないこと 

  2. ISO14001って、もともとマネジメントシステムの規格だから、
    固有技術や、士気が高くなければ成果は上がらないから
    環境事故はともかく、環境犯罪は固有技術とは関係ないような気がする・・

  3. その会社がISO審査のときに、うそをついて審査員をだまして審査をパスしたから
    これは2009年に東大の飯塚先生が言い出したいわゆる虚偽仮説というものです。
    天動説と同じく、ISO認証制度のヒエラルキーのトップである認定機関が広めているようですが、真実か否かはどうなのでしょうか?
    ヒエラルキーとはまさにキリスト教会の階級制度をいう。

  4. その会社はISO14001規格を満たしていないのだけど、ISO審査員の目が節穴なので見逃しているのだ!
    節穴審査というのは2010年に東大の飯塚教授が言い出した新しい言葉です。もっともまだ事実によって証明はされていませんので、節穴仮説と呼びましょう。
    ところで節穴なら眼内レンズを入れる手術をするとか、対策をしているのでしょうか?
    私は対策として、節穴に詰め物をしたとか、認定審査の基準を見直したとか、CEAR登録基準を厳しくしたとは聞いていないのですが・・

  5. 不可抗力の場合もある。
    不可抗力が多発しているなら、そもそも不可抗力じゃないんじゃないだろうか?
    昔、15年ほど前、私がタイで仕事をしていたとき、ものすごい豪雨があり、新聞とかタイ政府は1000年に一度しかないといって1000年雨と呼んだ。ところが、次の年もタイで仕事をしていたら、前年以上の豪雨があった。そのときはなんと2000年雨といったように覚えている。

  6. ISO14001は、悪意をもって犯罪を犯そうとする人を止めることはできない。
    これも止めることができないと言い切れるかどうか定かではない。今まで報道された不祥事の言い訳の多くは「担当者に任せきりにしていた」というものだ。本当にそうなら管理者が無能だし、うそならトカゲの尻尾きりなのだろうか?
    最近の流行語ではリスク対策がとられていませんねと・・

  7. いや、ISO認証は効果があるのだ
    認証していない会社は認証している会社以上に環境事故や環境違反を起こしているのかもしれない。なにせISO認証の効果がないと語る人は、そう思うという根拠で語っており、根拠を示したことはない。
    ISO審査では組織は、文書、記録、その他のエビデンスで証明しないと不適合になる。第三者認証制度側は、思い付きを語るだけでエビデンスは不要らしい。

    こんなふうに可能性を羅列すると、ISO審査で虚偽の説明をしているから不祥事が起きるなんておっしゃるお方は、何も考えていないことが明白だ。このような人は、現場で不良が出たとき、思い込みとか決め付けて対策して、まず正解にはたどり着かない。
    虚心坦懐に、三現主義、つまり現場、現物、現実をしっかりと見て、何が原因かを追究しなければ問題の解決はできない。
    虚偽だ!虚偽だ!と叫ぶ人は現実の品質対策などはできないことは間違いない。
    前述したように、私がチョット考えただけでも可能性は多々あるのだから、もっともっと可能性を考えて、それぞれについて検討し、真の原因を突き止めなければならない。
    もちろん予防原則というのもある。真の原因をつかまえるまで何もしないということではなく、できることはしてみるという積極性も非常に重要だ。
    例えば、第三者認証している企業の不祥事発生と審査報告書の誤字・脱字、「てにをは」の間違いは関係ないかもしれない。しかし報告書をしっかり書かないという不注意、ふまじめさは、実際の審査においても現れているかもしれない。いや審査のときは120%まじめで、報告書を書くときはまじめさが半分になるとは思えない。じゃあ、そんな報告書を見たらその審査員の力量を向上させるように認証機関はなんとかしなければならないのではないだろうか?
    これは反語ですよ、真意は解雇せよという意味なのですが・・
    ということは、不祥事がなくならないのは、対策を打っていないからではないのだろうか?
    MS信頼性ガイドライン&アクションプランというのは対策ではありません。ありゃ、悪い会社は認証停止するぞという手順であって、改善するための方法ではないようです。

    そして実はもうひとつの見解がある。
  8. 環境不祥事は増えていないという可能性もある。
    環境不祥事が増えていると語る人の多くは、いや全部は環境不祥事が増えているというデータを示していない。
    信頼性が落ちているという人は、信頼性が落ちているデータを示していない。彼らが出すデータは信頼感が落ちているというものしかない。
    何が違うのか?なんていわないでほしい。
    つまり、環境不祥事が増えている、信頼性が落ちている、というのはうそかもしれない。うそといってはまずければ、勘違い、バーチャルなのかもしれない。
    実は私はそう思っている。
    脳内妄想なら、対策しようがないではないか?
本日の予言
ひょっとすると、2011年のJAB/ISO9001公開討論会では、虚偽仮説よりも節穴仮説よりも、更に一歩進んだ「善人仮説」が唱えられるかもしれない。
善人仮説とは、第三者認証制度関係者は善意のお人よしばかりで、組織(企業)の悪人たちにだまされて、第三者認証制度は崩壊したという前代未聞の冤罪事件のこと。
間違いなく私は宗教裁判にかけられるだろう。アーメン

ちなみに法律で善意とは、無知のことである。



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