「日の丸」「ヒノマル」

12.05.20
著者出版社ISBN初版定価(入手時)巻数
三浦 朱門・吹浦 忠正海竜社4-7593-0649-82001/1/251700円全一巻

このところ本棚の整理をしている。私が持っている本は、多くても1000冊はないと思う。しかし整理するといっても、片っ端からパッパッと捨てるわけにはいかない。一冊一冊手に取り、残しておく価値があるかどうかを考えて、場合によっては読みはじめて結局最後まで読んでしまったりということもある。まあ、急ぐこともないし、特に仕事もない。年金のもらえない年金生活者である。
とまあ、そんなことをしていて、この本を手にとった。この本は10年も前に発行されたものだ。以前読んだときの感想は、ああそんなものかでおしまいだったと思う。 日の丸・ヒノマル とはいえ、読んですぐに捨てなかったということは、少しは価値があるとみなしたのだろう。というのは私は一読して価値がないというか、正確には取っておく必要がないと判断すると、すぐに人にあげるか、捨ててしまうから。そうしなければ置いておく場所がない。
あらためて読み直すと、日の丸というか日本の国旗についていろいろ書いてあるが、特段感動することもなく、新しい情報もなかった。この本はいらないな、捨てようかと思ったところであったが、最後の方に来て、あれえ、と感じるセンテンスがあった。ほんとうにたった1行なのであるが・・

「アメリカ合衆国憲法を読むと明らかだが、原文は何のことはない13の州が取り交わした、国際条約のようなものである」(p.260)

つまり三浦朱門は、アメリカ憲法は日本国憲法と同等のものではなく、国際条約であるという。国際条約というと変だが、合衆国憲法とは50の州が守るべき共通事項というか最低限のことを決めているに過ぎないという。そして合衆国憲法のそもそもの目的は「合衆国政府が強大になりすぎないための牽制措置」、州の権利を保持することであったという。そのへんになるともう私の知識ではわからないし、これから勉強するにもたどりつけるかどうかわからない。
じゃあ、日本国憲法にあたるものはなにかといえば、州の憲法であるそうだ。州の憲法などというものを読んだことがないのでネット検索してみた。
アメリカには50州あるが、日本語訳が載っているのはほとんどない。全文が日本語に訳されていてネットで読めるのはニューヨーク州憲法くらいしか見当たらなかった。
英語の憲法を読むほど私は英語の力はない。とりあえず三浦さんの説が正しいのかどうか、ニューヨーク州憲法の和訳を読んでみた。
ニューヨーク州憲法を読むと、細かく規定しているというのが第一印象だ。日本国憲法どころか日本の一般の法律でこれほど微に入り細に入り規定しているものはない。私の商売であった環境関連でも、法律が決めているのは一般方向だけであって、決めるべき大事な事はほとんどを施行令に振っている。更に具体的なことや規制する数値などに至っては省規則で定めているのが普通である。
これを称して要綱行政とかいうのだが、ここからわかることは、日本では真に大事なことは、国会ではなく、閣議でもなく、省の課長レベルが決めているということなのだ。
いや行政でなく、日本の立法そのものが政党や国会でなく官僚が行っているという、重大な問題である。

おおっと、三浦説が正しいかどうかについてだが・・・
正しいかどうかは何とも言えない。なにせ他の州の憲法を読んでいないのだから。
だが、少なくてもニューヨーク州の憲法はアメリカ憲法よりはるかに細かく人権とか参政権とかを細かく規定していて、日本国憲法同等である。確かに三浦さんが語るとおりであった。
ということは今後、日本国憲法を語るときは、アメリカ憲法との比較ではなく、州憲法との比較でなければならないことになる。じゃあ、中国やその他の国の憲法はどうなんだろうか?
過去に、「世界は憲法前文をどう作っているか」なんて本もあったが、その前にその憲法と称するものは、日本国憲法とイクイバレントなのかを確認してからでないと論評できませんね。
ちなみにニューヨーク州憲法前文は
「我々ニューヨーク州住民は我々の自由に対して全能の神に感謝し、その祝福を確実にするためにここに本憲法を制定する」
である。
日本国憲法前文のように、乞食のようにおすがりするだけの汚らわしい文章でないのがさすがである。
捨てようとして読み直しちょっと勉強になりました。

タイトルが日の丸であるのに、お話は、日の丸から、憲法になって、日本の主権が国民ではなく、官僚にあるということにどんどんずれているぞ! タイトルと内容が全然関係ないという苦情は・・・あるでしょうね。
私の駄文は流れ漂いますので、まあ気にしてはいけません。


参考文献
「アメリカの連邦制」
「アメリカ州憲法の単一主題ルール」
「アメリカにおける連邦・州・地方の役割分担」


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