ケーススタディ 審査トラブル

12.04.07
山田が出社すると、森本と横山が既に出社していた。今までは山田が一番乗りで、廣井と中野が来るまでにブラインドを上げたり郵便物などを振り分けたりしていたのだが、今は後輩二人に先を越されている。 横山です 横山は郵便物を振り分けているし、森本はパソコンを立ち上げてキーをカタカタ叩いている。俺も歳をとったものだと山田は自嘲した。
山田が自席に座ってパソコンを立ち上げると、横山がコーヒーを持ってきてくれた。いい香りがする。
「横山さん、大変ありがたいが、ここでは上下関係をあまり気にしないでほしい。ここでは誰でもお茶は自分が入れるし、掃除も自分でする。廣井さんは横山さんの以前の職場なら支社長クラスですが、廣井さんも同じです。ときどき立ち上がってお茶をいれるのも、気分転換なんだ」
横山は何も言わず笑顔を作ったが、山田は彼女の笑顔の意味を読み取れなかった。
山田はメールソフトを立ち上げて、夜の間に入っていた50件ほどのメールをチェックする。今日は各工場の環境管理部門からの週報が入っているが、行政届けとか、排水や廃ガスの定期測定結果などで、特段、問題はないようだ。
平穏無事かと思いながらメールのタイトルをながめていくと、1件「ご教示ください」というタイトルのメールがあった。メールアドレスの@マークの後は聞いたことはあるが、山田はよく知らない会社名だ。メール本文を開くと
「本日、ISO14001審査がありました。審査で不適合と言われたのですが、なにが悪いのかわかりません。『廃棄物処理法の第12条の委託基準に適合していない運用があります』という指摘を出されたのですが、どういうことでしょうか」とある。
どんな会社かと関連会社部のイントラで調べると、鷽八百社の孫会社にあたる会社で、保養所を運営している。
さて、委託基準といってもいくつも要件があるから、これだけの文章では、なにが不具合だったの分からない。山田はロッカーから廃棄物処理法の三段組の本を取り出した。
委託基準は法律だけでなく、政令と省令でいろいろと決めている。そこにはたくさんの要件が羅列してある。廃棄物の運搬や処分は許可業者に委託すること、書面の契約書を取り交わすこと、契約書に記載する要件、廃棄物処理業の許可証または再生事業者などの認定証の写を添付することなどなど・・

以下は2012年4月7日時点の法令の関係箇所である

さて、その会社、鷽リゾート(株)ではいったいなにが悪かったのだろうか? メールだけからは分からない。
ところで山田も良く知らない会社が、どうして山田のメールアドレスを見つけたのだろうか? それにどうして山田に相談しようと考えたのだろう?
そんなことを思って再度メールを読みなおすと、発信者は以前本社の総務課長だった飯山さんではないか。
そうか、飯山さんは、今孫会社に出向しているのか。山田が本社でISO14001担当していると知っていて相談メールをよこしたらしい。総務部門や経理部門の人は、関連会社に出向したり本体に戻ったりする。彼らの業務は標準化されているのでどこでも通用することと、本社によるグループ企業の監視ということもあるのだろう。一般社員が出向すれば片道切符なのに、彼らは行き来できるのがうらやましい。
「鷽リゾート」がどこにあるのかと調べると、伊豆半島にある。会社概要を読むと、元々鷽八百社がそこに保養所を作ったのだが、その後一般向けのホテルに業態を変えたのだ。けっこう繁盛しているようだ。
山田はすぐに返事を書いた。
「飯山様 メールだけではわかりませんので、下記をお願いします。
 1.審査報告書をメール添付で送ってください。
 2.そのときの状況を、できるだけ詳しく教えてください。
 3.審査終了時にどのような話になったのでしょうか?
 私もすぐに動きますから、可能な限り早くお願いします」
そしてCCに廣井と森本に加えて発信した。飯山氏がメールをよこしたのが昨夜の8時過ぎ、まだみんなの記憶は薄れていないだろう。

1分もしないうちに森本が山田に声をかけてきた。
「山田さん、メールを拝見しました。孫会社のISO審査で不適合が出たのだけど、なにが悪いのか分からないということでしょうか?」
森本です 「森本さん、そのようだね、ときどきISO審査で問題が起きることはあるが、なにが悪いか分からないというのは僕の経験でははじめてだよ」
山田は笑いながらそう応えた。
「山田さん、こういう問題をどのように処理するのか是非知りたいですね。山田さんの頭の中にはどういう計画があるのですか?」
「計画も何も、今時点は情報がまったく不足している。まず事実関係を知ることだ。審査報告書になんと書いてあるのか、なにを不適合と言われたのか、それを知ることが第一だね」
山田はそう言いながら残りのメールを片付けていく。ヤレヤレ、今朝はほかには特段問題がなさそうだ。
電話が鳴った。山田が出る。
「ハイ、鷽八百環境保護部です、おお、飯山課長、ご無沙汰しております。そうなのですよ、課長を拝命しました。みなさんのおかげです。ハイ、メールだけではわからないものですから・・」
「山田さん、審査報告書は今メール添付で送りました。いや、正直申しますとね、私たちもそりゃ緊張していましたし、審査員の先生が『委託基準違反だ』とおっしゃるものですから、分からないままに『ハイ、分かりました』と言ってしまいました。今考えるとどういうことなのかを確認すべきだったのですが。まあ、そういう心理状況はご理解くださいよ。ともかく委託基準違反であるという言葉以外、何が悪いのかという詳細についての説明はありませんでした。山田さんの三番目のご質問ですが、是正してくださいと言われたので、これもハイと答えてしまいました。内容の詳細説明も確認するようなこともありませんでした」
「飯山課長、了解しました。今メールが届きました。一旦電話を切りまして、報告書を拝見した後に、こちらからお電話しましょう。ところで審査はもう終わってしまったのですよね。審査員に連絡は取れるのでしょうか?」
「昨日のお話では、一旦東京の認証機関に戻るとおっしゃっていました。お名前は報告書を見れば分かると思いますが、大森さんという方です。よろしくお願いします」
山田は電話を切った。森本が山田を注目している。
「まずプリントして読んでみよう」
山田はプリントアウトのボタンをクリックしてプリンタのところに行くのに、森本は付いてきた。
山田は2部プリントして、一部を森本に渡して読みながら自席に戻った。
『根拠4.3.2 廃棄物処理法では、産業廃棄物の処理委託するにあたり、委託基準を守ることが義務つけられています。 証拠 実際の運用において、廃棄物処理法の第12条の委託基準に適合していない運用があります』
それが不適合に関する記述のすべてであった。山田はアドレナリンが放出されるのを感じた。このような審査員はただではおかないぞと体が反応したのだ。
山田は時計をみた。まだ8時半、通常の認証機関は9時から業務だろう。それから審査報告書の認証機関名を見た。以前、社長の村田が来た認証機関だった。社長の意思が末端まで徹底されていないのだなと山田は皮肉に思った。
電話を取ると通話履歴の番号を押した。すぐに飯山が電話に出た。
「ハイ、ああ、山田さん、お世話になります。どうでしょうか?」
「飯山さん、これでは訳が分かりませんね。言った言わないという水かけになりそうですが、実はISO審査には審査のルールがありましてね、証拠、根拠は具体的に書け、そして審査を受ける企業に良く説明して理解を得なければならないという決まりがあるのです。だからこれは完璧に審査員のミスか、あるいは審査員が力量・能力がないのでしょう」
「どうしたらよいでしょうか?」
../phone.gif 「一番簡単なのは、飯山さんがこれから認証機関に行って、審査報告書を書き直せと要求することでしょう。でも伊豆からわざわざ来るのも面倒だし、お金もかかる。私が行ってもいいのですが、法人が異なりますので、飯山さんの代理というわけにはいかないでしょうね。さてどうしたものか」
「こうしましょう。山田さんに任意代理人をお願いします」
総務という人種はそういうことには頭が回るものだ。はたしてそういう理屈が認証機関に通じるかどうか定かではないが、それで行ってみよう。
「飯山さん、一筆委任状を書いて私にメールで送ってください。ついでにその審査員の大森さんにも送っておいてください」
山田は電話を切ると、ロッカーに行ってISO17021の2011年版と2006年版を取り出した。実を言えばわざわざ改めて読むまでもなく、17021の文言は山田の頭に入っていた。でも議論するときは相手に該当箇所を示す必要がある。

9時になったのを見計らって、山田はその認証機関に電話をかけた。
「鷽八百の山田と申します。審査員の大森様をお願いしたいのですが」
お待ちくださいという返事の数分後に
「大森です」という声がした。
「始めまして、鷽八百の山田と申します。昨日弊社の子会社にあたります鷽リゾートの審査をされた大森様ですね。ハイ、不適合があったと聞いております。それで内容が分からないというのです」
「困りますねえ、なにが不適合かも分からないとはレベルが低い。御社ではどういった指導をされているのかね」
「はあ、私も審査報告書を拝見しましたが、記載が具体的でなくなにが不適合か理解できませんでした」
「山田さんとおっしゃいましたか、ISO17021では証拠と根拠を明確にしなさいと決まっておりまして、私は二つの要件を明記しております。よくお読みください」
「はっきり申しまして、これではISO17021を満たしていません。これからお邪魔したいのですがお会いしていただけますか? お忙しい。困りましたね、大森様にとっても、審査のペンディング事項解決が最優先かと思いますが」
「山田さんはどのような資格というか立場で私に会うのでしょうか? 私は鷽リゾートさんの依頼を受けて審査を行っておりますが、審査を依頼した会社の親会社といえど、審査契約には関係ありませんので、お会いする理屈がありません」
「それがですね、私が鷽リゾートの任意代理人になりましたので、法的には鷽リゾートの管理責任者である飯山の代理として大森様にお会いいたします」
その後、二三やりとりがあったが、11時から30分なら会うという約束を取り付けた。
森本が山田に一緒に行きたいと言ってきた。山田は黙っているならいいと了解した。
山田は廣井に断って森本と出かけた。

地下鉄で30分もかからず到着、まだ約束より10分早い。
受付の前にあるソファに座っていると、通りかかった人が山田に声をかけてきた。
「鷽八百の山田さんじゃありませんか」
山田は驚いて顔を上げた。ここに知り合いがいただろうか?
「村田です。もう1年くらいになりますか、御社にお邪魔しました」
社長の村田だった。山田は立ち上がって挨拶した。
「社長、ご無沙汰しております。こちらが気がつきもせず、社長からお声をかけられるとは恐縮いたします」
「いやいや、社長なんていっても中小企業ですよ。今日はどんなご用件ですか?」
「弊社の子会社の審査のことで、大森様という方にアポイントをいただいております」
「大森ですか。彼は当社のベテランですよ。おっ、ご本人だ」
大森と思しき人物が現れたところだった。
「大森さん、こちらは鷽八百の山田さんです。大森さんと約束していたとのことですよ」
村田が大森に声をかけたので、大森は驚いたように村田と山田の顔を見比べた。
「社長、では失礼いたします。大森さん、山田です。お忙しいところありがとうございます」
山田が大森に歩み寄ると、村田も離れずについてくる。
「何か面白そうなことですか。ぜひとも私もお話をお聞きしたいね」
大森は困ったような顔をしたが、さすがに社長の言葉を断ることはできないようだ。
「第3応接を取っていますのでこちらへ」
大森が「3」と表示のついているドアを示した。
部屋に入ると、山田は大森と名刺交換した。
「鷽八百の環境保護部の山田と申します。こちらは部下の森本です」
「山田さん、僕にも名刺ちょうだいよ」
村田がそういうので村田とも名刺交換する。
「ほう、山田さん課長に昇進されましたか。いや前回お会いしたときにISO規格に詳しい方だと思いました。ぜひとも当社に来ていただきたいですね」
山田は村田に笑顔を見せて、大森に対して口を開いた。
「では弊社の子会社の鷽リゾートの審査での不適合について確認させていただきます」
「ご確認いただきますが、審査報告書には証拠と根拠が明記されております」
大森は村田の存在を気にしつつも、絶対に譲らないぞという意思を示している。
「大森さん、鷽リゾートでは不適合を消してくれということを申しているのではありません。大森さんが書かれた審査報告書では、なにが悪いのかわからないということを問題にしています」
「いいですか、ここに『廃棄物処理法の第12条の委託基準に適合していない運用があります』と書いてあるでしょう。このように証拠を明記しています」
「大森さん、委託基準といいましても廃棄物処理法で定めている事項はたくさんあります。大区分でも5つ6つ、細かくあげれば10数項目になります。なにが悪かったのでしょうか?」
「あのね、詳細を書くと御社がお困りになるのではないでしょうか? 委託基準違反は懲役3年罰金300万の重罪ですよ」
「大森さん、それはおかしいですよね、第十二条第六項といっても内容は多様です。無許可業者に委託した場合の罪と、契約書に数量が記載漏れの場合、日付の記載の間違いが、すべて懲役3年ということはありませんよ。要するに問題を再確認しますと、ここには不適合の証拠が記載されていない。これはISO17021の9.1.9.6.3に定めている『不適合の根拠となった客観的証拠を詳細に明示しなければならない』を満たしていません。再度申し上げますが、私どもはそれを明示してほしいと要請しているのであって、それは鷽リゾートの問題ではなく、審査の質の問題です」
大森の顔が真っ赤になった。
「なにをおっしゃるか、失礼な。私は問題を丸くおさめようとしてこのように書いたのです。そのとき問題点については先方の方々に十分に説明したはずです」
「審査報告書はISO17021に不適合ということをご理解いただけますか? 大森さん、まずそれを確認しましょう」
大森はげっぷしたような声を出しただけだった。
「では次になにが問題だったのかを、お話いただけないですか。とにかく審査を受けた者はなにが悪いのかご説明を受けなかったと語っております」
「では言おう、収集運搬契約書に積み込み場所の記載がない。それを私がマイルドにしてやろうというのに、まったく親の心子知らずだ。わかったか」
「ああ、そうだったのですか。それなら隠すことなく『廃棄物処理法施行令で記載を定めている積込地が記載していない』と書けばよかったのではないでしょうか。
しかし、大森さん、それも変な話ですね。廃棄物処理法と下位の施行令や省規則では積込地を記載せよという決まりはないようですが」
山田がそういうと大森は赤い顔を更に赤くした。
「なにを言っているのですか。そんなこと常識でしょう。ほら、このこの『ISOのための環境法読本』に運搬を委託するときの契約書には、運搬の積込地と最終目的地を記載するとあるでしょう」
「大森さん、そういう本は信頼できないでしょう。法律の原文を読まなくては議論になりません。廃棄物処理法の三段組はお宅にはないのですか? それを見て話をしましょう」
大森は大きな音を出して立ち上がり部屋を出て行った。
「なかなか面白そうですね」
村田が実際に面白そうに言う。
「面白いといえるのかどうか・・・私は弊社の子会社を正当化とか合理化しようとは思いませんが、真実を知りたいです。それを子会社から委任されております」
山田は飯山が送ってきた委任状を村田に見せた。
「ほう、御社では子会社で問題が起きると親会社が対応するのですか?」
「いや、そういうことはありません。今回は子会社の担当者が御社まで来るのは大変であるということで、私に御社に問い合わせしてほしいということでした。しかし法人も異なりますので、単にリーダー審査員の大森さんにお会いする資格が問題になるとして子会社が私を委任代理にしたわけです」
「なるほどと言いたいですが、そこまで武装しなくても話し合いはできると思いますが」
「そう願いたいですね。しかしながら今朝、大森さんとお電話でお話しましたとき、私に当事者能力がないとおっしゃいましたので、法的根拠を確保しました」
村田はフーンと言ってだまった。
大森が大きめの本を持って部屋に戻ってきた。
「うーん、排出地を契約書に記載することという文言はないようですね。私はこの環境法の本を見てあると思っていたのだが」
大森は今では青い顔をしている。
「大森さん、まだ報告書を出していないのでしたら、ひとつ修正してもらえませんか。私どもも処置に困りますので」
山田は下手に出た。大森にも気分良く納めたい。
大森は村田の顔を見てから、
「わかりました。修正しましょう。しかし管理責任者のサインをもらい直さなければなりませんが」
「それは私が代行します。ISOであろうと法的に代理人であれば問題ないでしょう。任意代理人の委任状を添付しても不十分でしょうか?」
「うーん、判定委員会と認定機関がどういうか、」
大森は困ったようにいう。
「じゃあこうしましょう。大森さん、報告書の修正版を作成して鷽リゾートにメールで送ってください。向こうの管理責任者である飯山がサインして、本日午後の弊社の社内便で送れば明日午前中に弊社に着きます。それを御社に持参しましょう」
大森が修正版を作りに席を外すと、村田が山田に話しかけてきた。
「ご迷惑をおかけしますね」
「いや、円満解決でよかったです」
「山田さん、今日は勉強になりましたよ。ありがとうございます」
村田は何度もうなずいて部屋を出ていった。

会社に戻ると森本が山田に話しかけた。
「まったくおかしな話でしたね。でもこんなことを何度も経験すれば、ほんとの意味でISO規格に詳しくなりますね」
「そうさ、問題が起きて、それを解決すること、それが勉強です。しかしISO審査は真剣勝負ではありません。せいぜいが道場の稽古です。これが行政から法違反だとか指摘されると実戦ですね。平穏無事を望みますが、問題が起きると勉強にはなります」
山田はわざわざ森本を教えることもなく、こんなことを何度も経験すれば成長するだろうと思った。

本日の解説
こんなことを実際にしているのか? というご質問がありましょう。
審査でのトラブルがあれば認証機関を訪問するのは当然ですが、このように報告書を修正することを了解したのは私の経験で二度くらいしかありません。ほとんどの場合、ああだこうだといって、認証機関側に逃げ切られました。
ともかく指導したくなる審査員はたくさんいます。主任審査員なんていっても、ピンからキリまであります。ISO17021をそらんじているようなピンの方は、まず1割はいないでしょう。そして更にJAB基準類を読みこんでいる審査員は、1パーセントいない気がします。その上に法律を知っている審査員なんて、もう希少価値があるのではないでしょうか。これはいいがかりではありません。もし主任審査員だけでなく、審査員が審査基準を理解しているなら、ISO審査と審査報告書の質は今より数段向上しているはずです。
いやしくも審査をしてお金をいただこうとするならば、最低限ISO17021とJAB基準類を読んでから審査に出かけてほしいものです。いやもちろん、内容を理解しなければ何度読んでも意味がありませんけれど・・
ところで、JABの認定審査員も、ISO17021やJAB基準類を知っているのでしょうか?
不安だわ 



外資社員様からお便りを頂きました(2012.04.09)
佐為さま どんどん生々しい雰囲気になって、わくわくしながら拝読しております。
実は、私も前職で、山田氏と似たような体験があります。
その頃は、会社が出資するベンチャーの支援をしており、技術だけでなくライセンスなどの契約の面倒も見ておりました。
そのベンチャーで、契約に関して 妙なトラブルに巻き込まれていたので、委任を貰って対応していた時に山田氏と同様に、相手の会社から「あんたはどんな権利があってでしゃばっているのだ」と言われました。
委任状を貰って、契約については纏め上げたのですが、その時に社内に妙な事を言う人がおりました。
法的なアドバイスを「業として行う」ならば、弁護士などの資格が無いとコンプライアンス上 問題だというのです。
「業として行う」は、依頼人から対価を受け取ってコンサルタントを仕事としてやる事で、出資した会社に、その会社の仕事として契約を纏め上げる事は、当事者としての仕事だと思うのですが、世の中には妙な事を考える人がいるものです。こういう人は、明確な判例や、法律の文言を示さずに思い込みで言うので困ったものです。根っこの所は、大森氏と同じ雰囲気を感じます。
山田氏も、社内から「子会社の認証に口を出すのはコンプライアンス上 問題だと」言いがかりをつけられない事を希望します。(笑)

外資社員様、毎度ありがとうございます。
私は仕事で教えられたことしか分かりませんが、委任されて法律行為をするのと、法的な指導をするのは違うのではないでしょうか?

弁護士法
第三条  弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
第七十二条  弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。


実を言いまして、私の経験では、子会社のISO審査に親会社の立場として陪席しますと事前通告して、疑義を呈されたり、反論されたことはありません。認定審査(JABが認証機関の審査に立ち会うこと)のときには、子会社から心配だから立ち会ってほしいといわれたこともあります。基本的に認証機関も認定機関も拒否する根拠はなさそうです。
やはり親会社という立場は、コンサルタントよりは審査員にとって拒否しがたい位置づけではあろうと思います。


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