2013.09.18
私のウェブサイトをご覧になっている方から、7月に行われた規格改定説明会の資料を送って頂きました。ありがとうございます。
私は、活字を読むのが大好きで、ISO規格が大好きですから、ISOに関する資料は猫にマタタビみたいなもので、更にこの資料はいろいろな意味でとても面白い。そんなわけで何度も読み返している。
どこが面白いのかと言いますと、ひとことでは言えません。
では本日はそれを読んだ妄想をひとつ、、
まず
「次期ISO14001に必要となる組織の対応」とあるタイトルがいいですね。
これをみて真面目に講演を聞くとか、資料を読もうとされた方は、振り込め詐欺にあう恐れが多分にあります。お気をつけてください。
「何かおかしいか?」ですって、そんなことをおっしゃるようでは、そりゃもう完全に病魔に侵されていますよ。
ちょっと話を変わります。
この世に「ISOマネジメントシステム規格」というものが、存在していることは事実です。そして企業やNPOなど目的を持った組織、ゲゼルシャフトといってもいいですが、そういうものも存在しているのも事実です。ではこの二つはどう関わっているのか、どちらが主でどちらが従かを考えてみましょう。
ここではISO規格が主で組織が従とする考えを天動説と呼び、組織が主でISO規格が従とする考えを地動説と呼びましょう。天動説と地動説というのは同志ぶらっくたいがぁさんが唱えたアイデアです。ぶらっくたいがぁさんは、規格に会社を合わせるのを天動説、会社に規格を合わせるのを地動説と説明していましたが、まあ説明は違っても意味は同じです。
ちなみに元々の天動説とは、地球は動かず太陽をはじめとするすべての星々が地球を回っているという考えです。私たち人間が、太陽が上ると起きだして狩りをしたり木の実を採り、太陽が沈むと寝るという暮らしをしていた時は、そういう無邪気というか体で感じたままの単純な考えでも問題ありませんでした。しかし大航海時代と言いますが、沿岸が見えない遠洋を航海するようになると、その考えでは船の位置を測定することや正しい暦を作ろうとすると矛盾が起きてしまいました。そして自然界の動きをを矛盾なく説明するには、太陽も星々も動かず、地球と惑星と呼ぶいくつかの星が太陽を焦点のひとつとする楕円軌道を回っていると解釈するしかありませんでした。それを地動説といいます。
そんなことを中学で習ったと思います。まあ、ここでは比喩的に、直観的に納得してしまう考え方を天動説、直観とは違っても諸事を矛盾なく説明できる考えを地動説としましょう。
長い脇道でしたが、ここまで読んで思い当たることはありませんか?
え、ない・・・・困りましたねえ〜
それじゃ練習問題です。資料のタイトルの「次期ISO14001」という語を差し替えて「消費税法改正に伴って必要となる企業の対応」という文章を考えてみましょう。この文はおかしくともなんともない。法律は国内において絶対の強制力を持ちますから、自然人も法人も否が応でも従わなければなりません。ですから法改正があれば、その対応を考えることになります。
では「秋からの新番組に伴って必要となる企業の対応」という文章はどうでしょうか?
テレビ番組はシーズンごとに一斉に切り替わり、
端境期にはひな壇番組などのバラエティが放送され、そこに新番組の出演者が出てきてジャンジャン宣伝します。とはいえ新番組の過半はスタート直後から視聴率が取れずに途中打ち切りとなるのは世の常で、それは平家物語の時代から変わりません。
いや、そんなことはどうでもいいのですが、この「秋からの新番組に伴って必要となる組織の対応」という文章は意味を持ちませんよね。テレビ朝日がどんなドラマを放送しようと、JRは列車の運行を安全に正確に行うことは変わりません。日テレが主演女優にだれを起用しようと、三菱重工が作る船に影響はありません。民放だけでなくNHKも同じ。
では
「次期ISO14001に必要となる組織の対応」という文章はどのような意味を持つのでしょうか? どう考えても
「次期ISO14001に必要となる組織の対応」という文章そのものが意味を持たない天動説としか思えません。
ISO14001が改定されても、売上何百億、何千億というあなたの会社が、いや失礼、お宅は一兆円企業でしたか、そういう会社が、たかがISO規格の改定ごときに影響されるわけがありません。
ちなみに日本のISO業界の売上なんて
全体で300億程度、ガリバーと呼ばれるJQAであっても、認証事業の売り上げは70億前後でしょう(財務諸表が非公開なので推定)。売上規模から考えればJQAの認証事業は中堅企業とはいえず、大きめの中小企業というところでしょうねえ、
ということは、他の認証機関は零細企業なのでしょうか?
なにしろ
売り上げが数億なんてところも・・・
常識で考えると・・・私は常識でしか考えられないのですが・・・お宅の会社が「当社に合わせてISO規格を改定しろ」と言っても全然おかしくないのです。実を言って、CDやDVDその他メモリーカードのフォーマットなどは、企業の人たちが自分たちが開発した技術を基にISO規格を作っているのが実態です。技術がある会社は世界征服ができるのです。
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「ISO」でググってごらんなさい。そこで表示される半分はISOマネジメントシステム規格でしょうけど、あとの半分はCDやDVDの書き込みのフォーマットやカメラの規格に関するものです。
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ということでこの資料の表紙を見ただけで、この規格改定説明会の資料を作った人は天動説ということが分りますから、眉に唾をつけて聞かねばならないということがお分かりでしょう。
長い前振りでしたが、では期待に胸を膨らませて2ページ目を開きましょうか・・・
ページごとに論評していくと疲れますし、読む方も面白くありません。ということで興味を持ったところのみチェリーピッキングしてコメントします。
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チェリーピッキングという語を知っている方は、2003年以前からISO14001に関わってきた方です。いや、別にそんなことを知っていても偉くもなんともないんですけどね、
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本日の最後っ屁
ISO14001の資料だけでなく、もうひとつの資料には
「次期ISO9001に必要となる組織の対応」と書いてありました。ああ、天動説これに極まれり、
私がこんなことを書いているのをこの講演者(氏名不詳)が見たら、私を宗教裁判にかけようとするかもしれません。
おおっと、私は殺されるのは嫌ですから、すぐに宗旨を変えますよ。「ハイハイ、ISO規格は会社よりも優先しなければなりません」と大声で言いましょう。
もっともISO規格を尊重して企業が傾いたらどうするのでしょうか?
ちなみにガリレオは「それでも地球は動く」と言ったのではなく、「それでも動く」と言ったらしいです。とすると「それでも太陽が動く」という意味にもとれて放免されたのかもしれません。
本日の御礼
資料を送っていただいたO様、楽しい時間を持つことができましたこと、御礼申し上げます。ありがとうございました。
とりあえずレポートはこれでよろしいでしょうか?
名古屋めし様からお便りを頂きました(2013.09.18)
ISO14001:2015改定案
名古屋めしと名乗らせていただきます。(名古屋鶏さんのパロディです)
ISO14001改定案の7.2力量の原文は
person(s) doing work under its control or on behalf that affects its environmental performance
です。itは組織の代名詞です。for itという記述はなくなりました。
2004年版と改定案を英語の原文で読み比べましたが、言葉づかいなど表現の違いはあっても、内容そのものには何も追加や変更はないと判断しました。
わが社ではこの規格改訂によって変えることは何ひとつありません。
MSS共通事項が加わったじゃないかという御仁もいらっしゃるでしょうが、ISO規格で最初のMS規格の14001の内容を環境以外の規格にも適用できるように表現を変えているだけですので、新たな要素は皆無です。
したがって、14001改定案は、同じ内容が繰り返し出てきます。
つまりMSS共通要求と14001固有事項が、意味が同じなのです。
これは審査員様のミスを助長するだけですね。
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名古屋めし様 お便りありがとうございます。
「名古屋めし」と言われても、多種多様であるようで好きも嫌いも言えません。個人的には「ひつまぶし」が好きです。一度出張したとき、名古屋駅ビルで食べたことがあります。でも値段を考えたら高いですよね〜
それはともかく
現 行 person(s) working for or on behalf of the organaization
改定後 person(s) doing work under its control or on behalf
ですから同じとみて良いようですね。
じゃあとりあえずは安心と・・・
ところで名古屋めし様は英文はどこから入手されたのでしょうか? お金がかかったのでしょう?
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名古屋めし様からお便りを頂きました(2013.09.19)
ISO14001改定案
ISO/CD.1 14001は、闇ルートではなく、まっとうなルートで入手しました。今年の4月に実施された日本規格協会によるISO/CD.1 14001改訂動向説明会に参加して、そこで入手しました。講師は吉田師匠でした。
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名古屋めし様 毎度ありがとうございます。
私は2月の説明会を聞きましたが、無料だったからでしょうか、配布資料はなかったです。
講師は同じく吉田さんでした。
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O様からお便りを頂きました(2013.09.18)
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お問い合わせを頂いたのは数日前でしたが、それ以降やり取りがありましたので本日アップします。
@『特に私は、ISOのために新しいルールを作るという発想がありませんでした。会社の従来からのルールからISOの要求に見合ったものを見繕って審査員に見せて規格適合であることを説明するというアプローチでした』
このくだりについては、おばQさんだから仰れる事で、年に1回の審査の時なんかは、現場の人間のISOに関する意識が低いものですから、小生なんかは、規格への適合性を証明するのにひたすら汲々としております。
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いろいろな考えがあります。まずそもそも論から行きますと、ISO17021規格を読めば組織側が規格適合であることを立証する義務はありません。組織側は、組織が規格適合であるようにする義務があります。しかし規格適合であるか否かの判断は審査側の責任です。
我々は不適合と言われたとき、その根拠と証拠を否定すれば責任は足ります。もちろん現在の審査員のレベルはそれが通用するレベルじゃありません。しかし本質はそうです。
私は現役時代、各職場には普通通りの仕事をすること、質問には誠意をもって答えること、分らなければそのままでよいこと、トラぶったらこちらが対応するとしていました。実際にトラブル、不適合は多々出されました。しかしそれを良く見て、審査員が間違いか企業に至らないところがあるかを判断するのが事務局であろうと思っておりました。
事務局は審査員より一枚上手でなければなりません。
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A『MSSの要素を完全に分離して、MSSの共通要素と専門分野の要素に規格を分けたがより良いと思います。構造化・パーツ化という方法は、どんなことにおいても使い勝手がよいです』
この件については、よく理解できません。
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言っていることは簡単なことです。
図に示すと次のようになります。
要するに同じことを二回も三回も書くのは無駄だし、共通に使えるなら一つで十分というだけです。
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B『基本的なルールが適正かどうか見てほしいという会社があるかもしれません。そういう新しいカテゴリーの顧客に対応した「共通要求事項のみのベーシックMSSの認証」という新しいジャンルの認証ビジネスが創設できます。』
ユニークなお考えで面白いと思いました。
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考え方ですが、ISO9001やISO14001を認証するには事前にベーシックMSの認証を必要とするとすれば、ISO認証の価値が高まるのではないでしょうか?
認証機関の売上も倍増します。
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C『さまざまなシステム規格の審査のとき、共通要求事項はそのマニュアルを見せた方が楽です。これぞ標準化ですね、』
これも、意味が良く理解できかねます、その前に今度のマニュアルの中身をどのようにしたら良いか今のところ全く理解しておりません、これから多分何件もセミナーなんかに出席して2年掛くらいで作り挙げるしかないかなと考えております。
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D現在のJABの見解への変化は、4年という時間でのISO関係者の認識の前進なのだろうか? あるいは単に表現のゆらぎなのだろうか?
先日のセミナーでは冒頭に挨拶の中で、今回の改訂の意義を、認証の為の審査・審査の為の運用に成っており、現業に即した運用ではなく、ISO固有の運用に成っており、これを改めるための大改訂であるとの言葉も有りました。
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その講師のおっしゃることは間違いないでしょうけど、今更ですよね
今までそんな事態を放置してきたJABや認証機関の責任はどうなのでしょう?
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Eマネジメントシステム規格を自称したISO14001のドラフトをみたとき、こんな曖昧模糊の規格では監査も審査もできないだろうと思った。
これは、どのようなことを仰っているのか、噛み砕いて説明いただけますか?
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例えば7.3認識を取り上げましょう(たまたまそのページを開いただけです)
「自分の仕事に伴う、適用可能な法的要求事項及び自主的義務を含む、著しい環境側面及び関係する顕在又は潜在の影響についての認識を確実に持たせる」とあります。
あなたはなにをみて、どのようであれば規格を満たしていると判断するのでしょうか?
私の基準とあなたの基準が一致するとは思えません。いかがでしょうか?
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F『「規格では○○することとありますが、マニュアル(あるいは規定)には○○すると書いてありません」なんて不適合がジャンジャンと出され』
G『JABは規格要求事項がマニュアルに書いてあるかの有無を調べるのではなく、規格要求が組織に展開されているかをみろというのだが、そのへんに転がっている審査員にそんなことができるとは思えない』
幸いにも弊社の審査会社においては、その様な審査員は居られませんでした。
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それは幸いです。私は複数の認証機関の所見報告書を見ていますが、そのようなものはたくさんあります。
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H『ところで対象を組織外のバリューチェインまでを考慮せよとあるが、よほどのレベルにある大会社しかこれには対応できるはずがない。あまり難しいことを要求しても多くの企業は対応できるはずがない。』
ISOでのバリューチェインとは、なにを謂わんとしているんでしょうか、弊社の関わる自動車業界ディーラーでは、車両販売以外の修理や車検・その他サービス・保険商品など本業以外の付加価値(バリュウ)の連鎖性を言っていますが、
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なるほど、正直言ってそのようなものとは思いませんでした。私が思ったのは材料の上流から製品の下流までの流れです。採掘から製品の廃棄までの環境影響を把握できるのは一流メーカーくらいで、それを管理できるのは超一流メーカーでも困難だと思います。
普通の代理店が製造メーカーからの輸送はともかく、メーカーが調達するときの輸送をコントロールできるとは思いません。
そしてコントロールできなければ把握する意味はなさそうです。
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Iリーダーシップ及びコミットメント
今回の大きな改正点は経営層にもっとISOに関して関心を持って貰うための規格改訂ではないかとも個人的には思います。認証返上が相次ぐ中何とか、企業(組織)内でのISOの位置づけを明確にするための考えがあるようにも、おもわれますが、弊社でも、一年に一回のマネジメントレビューと審査時のトップインタビューくらいしか関わっていないのが現状のように思います。
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まず一番として、認証とは誰に対するものかということがあります。
経営に寄与するというなら依頼者は組織の経営者です。実はISO17021でもそうなっています。であれば経営者の方針の良し悪しを審査できるはずがありません。方針展開の良し悪しは言えるでしょう。
そのへんからいったい認証とは何かを議論する必要があると思います。
ほかにもありますが、私の本文をお読みいただけますか。
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J「環境目的の実施計画と環境目標の実施計画が必要だ」と騙る審査員はいなくなるのだろうね?
このあたりは非常に明確になったような気がします、従来なら目的が長期的なもの、目標は計数を伴う短期的なものとの認識でしたが、次回改定からは、目標目的が一緒になる事になり、わかりやすくなったとおもいます。
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K力量
色々と思いつくまま書きましたが、そもそも小生の様な退職前の人間にISOに関わらせること自体が不適合のような気がします。何せ、典型的なB型人間でその上、物ごとをおばQ様のように論理的思考が出来ないで、また昨今求められる、コミュニケーション能力低い一番の不適確な人間です。
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おっしゃることとは違いますが、力量についての考え方もいろいろあると思います。私のウェブサイトへのコメントですが、従事する人の力量を確保するなんて現実の認識不足だと言います。そうじゃなくて力量のある人を従事させるのだろうというのです。
あるいは力量に見合った仕事を与えるのだという人もいます。
会社で実際に仕事をしているならそういうことが感覚的にわかります。
規格の文章を作った人はそういう現実を知らないように思います。
あなたのことについて言えば、上司は力量を持っていると判断したのか、あるいは仕事をしている中で力量を身に付けると考えているのでしょう。
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