ISO14001:2015年改定ドラフトを読んで

14.08.18
今の私は会社員ではないから、金のかかる資料を購入もしないし講演会に行くこともない。それでISO14001のDISが出たというのはネットで見たが、現物を見たことがなかった。幸い同志からISO14001の2015年版DISを見せていただいた。
ありがたいことです。感謝申し上げます。

規格の制定や改定の流れは、はじめは作業原案(WD)、次に委員会案(CD)となり、最終的に国際規格案(DIS)となる。
作業原案(WD)
矢印
委員会案(CD)
矢印
国際規格案(DIS) 今ここ
矢印
国際規格(IS)
これからの流れとして各国の代表が投票して採否を決めることになる。まあ信任投票だろうから普通はそのままISO規格になる。ISO14001はこれが2度目の改定で、JTCGの共通テキスト化など従来にはなかった余計な仕事も追加になったこともあり、前回改定から11年かかってやっとたどりついた感じである。
私の感じだが、次回改定はあるかどうかわからない。いや今回の第2回目の改定だってやったほうが良かったのか、改定せずに放置しておくべきだったのかなんとも言えない。
だってだよ、ISO14001規格ができて10数年、その規格通りの仕組みを作って認証を受けてパフォーマンス改善も遵法の効果も立証されていないなら、しかもその因果関係さえはっきりしていないなら、従来の規格を見直そうという発想になるものだろうか? あたりまえの神経ならこの方法は効果が立証されないからとりあえず止めといて、別な方法を考えようとなるのではないだろうか?
REMAS報告以外効果があったというものを見たことがないし、REMASの中で具体的効果は書いてない。それどころか日本ではISO認証の信頼性がないと言われており、効果どころではない。
まあ、そんなことを言っていると規格の価値論まで戻ってしまうから、ここではとりあえずDISを読んだ感想を書く。とはいえ体系的にまとめていないし、まとめる価値もなさそうだから、徒然なるがままに、日ぐらしキーボードに向かひて、心にうつりゆく妄想を書き付く。

お断りしておくが、私が拝見したのは日本語訳であり、英語原文を読んでいないので細かいことというか、真の意味を理解したかどうか定かでない。規格の文章は副詞節、形容詞節がついて長いのが特徴だ。ところが日本語訳では、句や節のかかり具合がはっきりしないので文章の意味を特定できないところが多々ある。また日本語で同じ語であっても原文での単語が同じかどうかわからない。実を言って翻訳文を読むとそんな感じがする所がある。
思うのだが、この改定を機に翻訳規格であるISOMS規格は、英語原文のままJIS化したらどうか。そして参考用に和訳を添えて最終的な判断は英語原文によることと注記を付けておくのが良いだろう。なにせ現状の和訳では暗闇を手探りで歩くようである。
審査員の語る解釈はあたかも群盲象をなでるごとし

    注1:以下、文字色をバイオレットにした箇所はDISからの引用である。
    注2:( )内は該当ページを示す。
  1. 誰のための規格か?
    ドラフトを読んでまず気になったのは、このISO14001:2015となるであろう規格は、誰のための規格なのかということである。
    もちろん答は明白だ。それは認証制度のためのものだろう。適用範囲に使い方がいろいろ書いてあろうとなかろうと、この規格の用途は認証以外にはない。素直に考えて、認証しないで自社の環境管理体制を見直そうと考えた組織は、ISO14001ではなくISO14004を参照したほうが良い。ISO14001はISO14004の簡易版というだけでなく、shouldでなくshallで書かれていて明白に認証用である。
    ところで今回もマニュアルの要求もないようだし、認証を受けようとする企業・組織は現実を見せて規格適合か否かを判定してもらうというアプローチを選択すべきだろう。お金を出して審査してもらうのにわざわざ余計な文書や説明書(環境マニュアル)を作ることはあるまい。

  2. 組織を主語にした文章
    「組織は・・」という文は多数ある。これは1996年版から変わっていないが、どうも責任の所在があいまいになるように思う。実際読んでいて、誰の責任なのかわからない、問題になるだろうというところがある。もっと具体的にトップマネジメントなのか担当する管理者なのか、明記した方が良いというか、審査しやすいのではないか。言い換えるとこれでは審査が成り立たないケースがあるのではないかな?

  3. 「持続可能な発展の目標である」(p.vi)
    そうだよなあ〜、ISO14001の提示する環境マネジメントシステムは持続可能社会を作るための仕組みを提示しているはずだよなあ〜
    ならば認証制度の持続可能性を立証しないと誰も信用しないよなあ〜(独り言)

  4. 「この国際規格をうまく実施していることを示せば、適切な環境マネジメントシステムを持つことを利害関係者に納得させることができる」(p.vii)
    理想からいえばそうなのだろうが、現実は大違いのようだ。例えば過去に品質問題があった会社に対して、認証機関が徹底的な臨時審査を行い、環境に関する不適合を見つけ出して認証停止したことがあったよね。
    つまりこの文章を現実的に書き直せば(「正しく書き直す」とは言わないでおこう)、「事故も違反もなく実施していることを示せば、適切な環境マネジメントシステムを持つことを利害関係者に納得させることができる」ということではなかろうか。そしてそのとき一般社会は、適切な環境マネジメントシステムを持っていようといまいと気にはしないだろう。
    そもそもこの規格に基づいた環境マネジメントシステムを持つことにより、事故も違反も起きないわけではないのだから(序文にそう書いてある)。
    なんだか規格文言が嘘の塊のように、おっと失礼、規格文言に意味がないように思えてきた。

  5. 「環境マネジメントシステムの根底にあるアプローチの基礎は、ディミングによって広まった、シューハートのPDCAという概念に基づいている」(p.vii)
    確かにこの規格はPDCAに従って規格を書いているようだ。しかしだよ、世の中の仕事や勉強において、いや機械や仕組みにおいて、PDCAに基づかない方法論というのはあるのだろうか?
    試験を受けるには、過去問を基に学習計画を立て、それに基づいて勉強し、進捗と計画の違いを修正し、模擬試験結果を分析し、それを以降の計画に反映するのではないか。
    PDCA NC機械だって、信号がきた分だけサーボモーターが回れば良いのではなく、位置を検出しそれを制御部に戻さないのか?
    原始的なオーディオ回路だってアンプからの出力をアンプ入力部に裏返して戻している。そうしないと不安定で発信してしまう。
    製造業だってファミレスだってパチンコ屋だって、お客様の声を常に集めて教育や製品の質向上に反映している。
    町内会の夏祭りだって方針があり計画があり実行した後には酒を飲みながら反省会をして、翌年には前年の経験を踏まえて改善が図られる。 PDCAなんて、わざわざ断ったり自慢したりするようなことではあるまい。
    以前のISO9001はPDCAに基づいていなかったぞなんて反論は却下する。あの規格は作るものが枯れているという前提、すなわち製造標準に基づいて実行すれば必ず良いものができるという前提である。だからこそ品質保証というのだ。それで規格はDOの部分がメインだったのだ。とはいえ工程管理など個々の業務においては、ちゃんとPDCAの考えが取り入れられていた。
    マネジメントの規格を作ろうとしたとき、PDCAの考えを取り入れずにサマになるとは思えない。ということはこの文は無意味ということだろう。

  6. 3.4環境マネジメントシステム(p.2)
    新しい定義には、2004年版にあった「環境方針を策定し」がなくなっている。これはなにか意味があったのだろうか?
    2004年版
    組織のマネジメントシステムの一部で、環境方針を策定し、実施し、環境側面を管理するために用いられるもの。
    矢印
    2015年版
    DIS
    マネジメントシステムの一部で、環境側面を管理し、順守義務に適合し、脅威及び機会に関連するリスクに取り組むために用いられるもの。
    確固たる理由があってこのようにしたのかどうか分らないが、重要な要素が漏れてしまったように思う。
    ひょっとすると、従来は方針はマネジメントシステムに包含されるものであったのを、改定版ではマネジメントシステムの上位の存在と考えたのだろうか? それも一つの考えであるが、この規格のいう環境方針はそんな上位概念ではないようだ。

  7. 3.16目的(p.3)
    注記3において「同じような意味を持つ別の言葉[例 狙い(aim)、到達点(goal)、目標(target)]で表すこともできる」
    おいおい!、今まで「目的は3年後の目標、目標は1年後の目標」と口を酸っぱくして語っていたJ△○○の方々はこれからどんな顔をして審査をするのだろう。
    まあ、元々規格を全く理解していなかったというだけだけどね。
    しかし「objective」と「target」は同じ意味じゃない。そこんところは規格文言がおかしいと思う。原文はどうなのだろうか?

    水泳 恥ずかしながら私も英会話スクールに通っている。そこでシカゴから来た先生に聞いてみた。
    すると
    「スイミングで1キロ泳げるようになりたいときゴールを使う、とりあえず夏までには500mめざそうってのがターゲットかな、オブジェクティブって普通は使わないよ。いつか国体出場を目指すというときオブジェクティブっていうかもしれない」
    とのことでした。もっとも私の英語力はプアですから、先生が英語で語ったことをちゃんと理解したかどうかは定かではありません。


  8. 3.29継続的改善(p.5)
    「パフォーマンスを向上するために繰り返し行われる活動。」
    注意してほしい、ここでは「パフォーマンスを向上」である。じゃあ本文はどうなのか見てみよう。
    5.2環境方針(p.8)
    「e)環境パフォーマンスを向上するための環境マネジメントシステムの継続的改善へのコミットメントを含む。」
    10.2継続的改善(p.17)
    「組織は、環境パフォーマンスを向上させるために、環境マネジメントシステムの適切性、妥当性及び有効性を継続的に改善しなければならない」とある。
    「継続的に改善すること」「継続的改善」は原文がことなるのだろうか?
    どうも定義と本文で言っていることがずれているように感じるのだが、ここは原文を当たらないと何とも言えない。とりあえずペンディングとする。

  9. 4.4環境マネジメントシステムを確立する(p.7)
    私は違和感120%だ。こんなばかばかしい表現がまだ規格にあるということは、規格を作る人たちは本当のEMSを理解していないと思われる。
    みなさんも耳にタコができるほど聞かされてきたでしょうけど、過去より多くの審査員やほとんどのコンサルタントは言います。「環境マネジメントシステム(EMS)を確立しなければなりません」とか「環境マネジメントシステム(EMS)を構築しなければなりません」てね
    それはおかしいよね!
    「環境マネジメントシステム」なんてわざわざ確立することがないと思いませんか?
    それは元からあるよということではなく、組織の属性として付帯しているのではありませんか。
    実は私の意見と似たようなことを、このDISでも語っている。
    「組織は、環境目的を達成するための活動を組織の事業プロセスにどのように統合するかについて検討しなければならない」(p.11)
    「環境マネジメントシステム以外の目的のために作成された文書化した情報を用いてもよい」(A7.5 p.27)
    だがそれじゃ腰が引けている。正しくは「ISO14001認証のためには、従来から存在する環境マネジメントシステム以外の目的のために作成された文書化した情報を用いることが望ましい」いや「ISO14001認証のためには、従来から存在する環境マネジメントシステム以外の目的のために作成された文書化した情報を用いることがあるべき姿である」ではないのだろうか?

  10. 5.2環境方針(p.8)
    環境方針は「a) 9)組織の目的に対して適切であること」という要求が追加になった。これは審査において、定款とコンペアして確認するのだろうと推察する。いや、大いに結構なことだと思う。審査員にできるならだが。

  11. 6.1.1一般(p.9)
    「組織は、プロセスが計画とおりに実施された確信を持つために必要な程度の、文書化した情報を維持しなければならない」
    「確信を持つために必要な程度」というものは客観的に定まるものだろうか。それぞれの審査員がイメージしたものが一致するとも思えない。こんなあいまいもこな文章はMS規格には不適当だろう。
    おおっと、これは小さな問題ではない。どこまで文書が必要、記録が必要という1990年代のバトルが21世紀に繰り広げられることになるのか・・・・

  12. 6.1.2著しい環境側面(p.9)
    a)文章を読むと、対象範囲があいまいだ。どこまでの範囲を要求するのか、その精細はどうなのか、見当もつかない。また審査の場で審査員の独断的解釈がまかり通るのだろうか?

  13. 6.1.5取り組みのための計画策定(p.10)
    「考慮に入れる」「考慮する」「考慮しなければならない」と語尾が3種類そろい踏みである。
    「考慮に入れる」「考慮する」についてはアネックス(p.19)で解説しているが、「考慮しなければならない」についてはどうなのだろう?
    「考慮する」は義務だとアネックスで言いながら、「考慮しなければならない」も日本語からすれば義務なので、違いが分りません。義務にも強弱があるのだろうか?
    これも英語原文を読まないと何とも言えない。

  14. 7.3認識(p.11)
    どうもこの項の文章全体が日本語になっていないような気がする。論語と同じく100篇も読めばわかるのだろうか?
    勉強中である。

  15. 8.1運用の計画及び管理(p.13)
    「外部提供者」という語が出てくるが、定義もなく良く分らない。これも英文を読まないとなんとも・・

  16. 8.2緊急事態への準備及び対応(p.14)
    「環境上の緊急事態及び事故の発生を防止するための処置をとる」
    2004年版では「顕在した緊急事態や事故に対応し、それらに伴う環境影響を予防または緩和する」であった。
    現行規格を読み直したが、「発生を防止」は見当たらない。改定後は「事故が起きた時の環境影響発生防止」だけではなく「事故を起こさないこと」も求めている。従来より高いレベルである。この項番の守備範囲を広げたということなのか?
    理由はともかく、それが可能かどうか私にはわからない。
    ちょっと待てよ!
    項番のタイトルが「緊急事態への準備及び対応」であるが、内容は「緊急事態の発生防止及びその準備及び対応」ではないのか?
    アメリカでは、その名称にないことを定めた法律は無効だと聞いたことがあるが・・いや独り言です。

アネックスではいろいろと参考になることが書いてある。いや、参考になると思う人にとっては
  1. 継続的(continual)と連続的(continuous)の違い
    私が以前、講釈を語っていたが絵と事例がないだけで言っていることは同じだ。

  2. 考慮する(consider)と考慮に入れる(take into account)
    これは日本語訳が適正かという観点で大いに疑問がある。元々英語原文の単語が異なるのだから、日本語でも全く異なる用語を当てはめるべきであったろう。意味が大きく違うのだから、必須と任意が一読してわかるような単語とすべきだ。例えば必須なら「織り込む」とか「反映する」とし、任意なら「考慮する」とか「検討する」というのもあったかもしれない。述部のわずかな違いに大きな意味の違いを持たせるのは不適切だ。
    まあ、審査がすんなりいってしまうと面白味がないと、トラブルのタネを仕込んでおいたのかもしれない。ISO規格の講演される方にとってはこういうことが飯の種になるだろうから。
    規格翻訳がもっと良くなって、誰が読んでも同じ理解ができるようになれば、規格解説の講演会はあがったりになる。そんなことはありえないなんて言ってはいけない。公差の規格、ねじの規格などみんなISO規格に基づいているけれど、規格解説講演会がないとワカラナイなんてことはないのです。

  3. A4.3環境マネジメントシステムの適用範囲の決定(p.20)
    ここでは認証範囲の決定、カフェテリア認証の禁止などについて説明しているが、当たり前のことだけ。
    ところでこういったことはMS規格ではなくISO17021のようなところに盛り込むべきではないかという気がする。というのは適用範囲を明確にするということは認証のために必要であって、自社のEMSを考えるときはあまり重要でないのだから認証の審査の規格に入れるべきだと思う。だが一般人は認証を受けるときも、そんなマニアックな規格を読む機会がないからここに入れたのだろうか?
    だけど、ということはますますこの規格は認証のためですよってことだ。
    認証なくしてISO14001はないということは、この規格の目的は「持続可能社会の実現」(序文)ではなく「持続可能認証制度の実現」のようだ。

  4. A4.4環境マネジメントシステム(p.21)
    「設計・開発、調達、人的資源、販売、マーケティングなどの種々の事業部門に、環境マネジメントシステム要求事項を統合する」
    日本語としてこなれていないことはともかくとして、発想が逆ではないかという気がする。
    本当は「設計・開発、調達、人的資源、販売、マーケティングなどの種々の事業部門の手順に織り込まれている、環境に関する要素を抽出したものをこの規格の環境マネジメントシステム要求事項に合わせてわかるようにしてください」と書くべきじゃないのか?
    何のために? 審査員のためにでしょう!
    どう考えても組織の役には立たないし・・・

  5. A5.3組織の役割、責任及び権限(p.22)
    突然「管理責任者」というものが現れた。これってなんでしょうか

  6. A6.1.2著しい環境側面(p.24)
    A6.1.3順守評価(p.24)
    この説明はなかなかグッドである。ただこれを読んで勉強しなければならないのは審査員でしょう。

  7. A6.1.4脅威及び機会に関連するリスク(p.25)
    「この取り組み(脅威及び機会に関連するリスク)は6.1.2(著しい環境側面)及び6.1.3(順守評価)における分析と統合することもできる」
    私は「統合することもできる」とは思えない。いやそれができないというのではない。「統合することしかできない」と考える。

    あなたが経営者だとしましょう。
    さて財務のことを考えるか、それが終わったら品質関連の決裁をして、じゃあ次は環境問題について報告を受けて指示しよう、なんて考えるはずは絶対にない!
    経営者であるあなたは、いかなることを決裁する際にも、現在の法規制だけでなく今後出現する法規制も、科学技術の進歩も、消費者の嗜好の変化も、市民運動なども、財務も品質も環境もすべてを考慮して経営判断をしているはずだ。

    そういったことを別々に判断する発想もあり得ず、実行できるとも思えない。

  8. A6.2環境目的及びそれを達成するための計画策定(p.25)
    書いてあることをひとことで言えば、環境目的つまり何を企業が推進するかは算数の問題とか審査員の嗜好ではなく、経営者の決断、専決事項であるということだ。
    経営者の決定に文句あるなら審査員を辞めろ・・・となるのかもしれない。
    私は工場長が決めた環境目的(実は事業計画)に審査員がいちゃもんをつけて困った経験がある。これからはそんなことはなくなるだろう。
    同様に方針にイチャモン付けるのも止めてほしい。工場長が俺は身命を賭けてこれをするのだと決めたことを、第三者がどうこういうのは失礼というか不遜だ。

    現実には、環境方針の審査といっても、「周知」とか「枠組み」の言葉があるかどうかしかチェックできない審査員もいる。「枠組み」という言葉が方針の中にないといって不適合を出したH審査員も、今では少しは進歩したのだろうか?

  9. A7.2力量(p.26)
    従来よりも記述が平易で中身もまっとうになった。
    継続的改善をみとめる。

  10. A7.3認識(p.26)
    私が15年も前から言っていたことを規格が書いている。
    すなわち
    「方針の認識を、コミットメントを喚起する必要がある、または組織の管理下で働く人々が実際の文書化した環境方針のコピーをもつという意味に捉えるのではなく、環境方針の存在、その目的、及びコミットメントの達成における自らの役割を認識することが望ましい」とある。
    当たり前だよね!
    引退した2012年のことだが、私のところに某会社の総務担当者とISO事務局担当者から電話があった。ISO担当者は環境方針カードを配布して携帯しなければならないといい、総務担当者はそんなバカなことをしたくないという。決着がつかないのでISOに詳しいと思われるおばQに問い合わせしてきたのだ。
    私は環境方針の周知とはカードを持つことではなく、従業員が方針の意図を理解し実行することだと説明した。ISO事務局担当者は私の話を理解できなかったようだが、総務の方は理解したものの、それはカードを持つことよりも大変なことだと言って考え込んでしまった。
    だが、良く考えてみれば、部下は経営者や上長の考えを理解してそれを実現するために行動しなければならない。好き嫌いを言ってはいけない。だってそれによってお金をもらっているのである。ISO規格なんて、当たり前のことを当たり前にすることでしかない。今回の改定で言い回しがバカでもわかるようになったのは良いことだ。
    おっと、だが規格がこうなると審査ができない審査員が出るかもしれないぞ!

    何しろ環境方針カードの携帯しかチェックできない審・・・(ピー放送禁止)


  11. A7.4コミュニケーション(p.27)
    「(コミュニケーションは)偽りなく、報告した情報に頼る人々に誤解を与えないものであること」
    ちょっと待てよ!
    質問です。
    「ISO認証の信頼性が損なわれたのは企業が虚偽の説明をしたからだ」とJABはおっしゃいましたが、その報告は偽りなく、その情報に頼る人々に誤解を与えないものであったのでしょうか?
    ネットの言い回しで言えば「お前が言うな」というところでしょうね、
    おっとJABはISOとは無関係でしたか。ともかく今後の言動(活動)に期待します。

  12. A9.1.2順守評価(p.29)
    「(順守評価によって検出された)不適合がシステムの不適合のレベルまで達しないこともある」
    そう言われるとそういうケースもあるのかなと思ってしまうが、よく考えるとやはりシステムに起因するのではないだろうか?
    「(順守評価によって検出された)不適合がシステムの不適合のレベルまで達しない」ものってどんなものなのだろうか? ぜひとも具体例を挙げてほしい。
    それとも細かいこととか具体的なことの見直しはシステムの不適合のレベルではないのだろうか? となるとその境界を示してほしいところだ。
    審査で「是正処置が行われていません」と言われたとき、「これはシステムの不適合じゃないんです」という回答が通用するのか興味がある。

    真面目な話だが、私はISO規格なんてどうでもいい。私が20年前、現場で仕事していたときに問題が起きれば、(その問題が法に関わるものであろうとなかろうと)その発生頻度と問題の重大性を考えて、どこまで対策するかしないかを判断した。対策するコストよりも問題が起きた時のコストが小さいと考えれば手を打たなかった。もちろん発生したときのダメージが大きいと考えれば再発しないように頭を絞った。
    要するにシステムの不適合であっても是正処置をしないこともあるし、偶発的なことであっても手を打たなければならないこともある。想定外とかコンクリートから人へといった甘い考えでは、己の命を失ってしまう。本当に想定できなかったなら仕方がないが、コンクリートにするか人にするかは絶対ではなく、相対的というか天秤にかけて考えなくてはならない。人の命が地球より重いなら、発生確率に地球の重さをかけて判断しなければならない。それだけだ。

とりあえずのまとめ
全体的に見れば今までよりも文章は分りやすくなっており、内容も常識的なものとなってきた。ただ内容が現実的・常識的になればなるほど認証する意味が薄れてくる。この規格を参照して企業のEMSを見直し改善していくならば、認証など受けることもない。いやISO14001よりもISO14004のいいとこをつまみ食いをしたほうがよさそうだ。
それをチェリーピッキングだと言ってはいけない。
そもそも規格をどう読むかというか規格に対するスタンスだが、規格ありきで対応する手順を考えるのではなく、現実ありきで規格を満たしているかどうか審査してくれよという発想が私の持論であった。私のひいき目か、以前よりは私の意図が実現されたように思う。これからのISO審査は、環境マニュアルもなにもなく、どうぞ現場を見てください。そして適合かどうか判断してくださいと言えるものであってほしい。
となるとますます認証の意味は薄れるが・・・・
ところで、同じ概念でも従来審査の現場で理解されていたニュアンスと異なると思われるものが多々ある。環境方針を理解しているかなんてことは、方針カードの出番であった。今回はカードを持つことでも暗記することでもないとあるが、これは今までの審査員のご理解とは隔絶している。この齟齬をどう言い逃れるのだろうか? 私にとってはバカバカしいことだが、非常に気になる。

しかしながら、この規格で認証を受けた企業が良くなるとも思えず、認証制度の信頼性が高まるとも思えない。規格を作った人たちは本音ではどう思っているのだろう?
私はもう認証規格であることを止めて、ISO26000のように手引き(Guidance)として発展的解消すべきだろうと思う。だって認証しようがしまいが、商取引にあまり関係なく、一般消費者も気にせず、経営にも関係ないのであればそもそも認証の意味はない。
あるいはわざわざ環境マネジメントの規格など独立して存在することもなく、ISO26000に入れてもらった方が手間がかからないかもしれない。本のサイズもフォントサイズも異なることを無視して数えると、ISO26000の環境のパートは15ページ、ISO14001は序文を除いて要求事項とアネックスで24ページである。今ISO26000にある環境の部分を概論として、ISO14001とannexを各論として合わせてしまって全然おかしくない。ISO26000は300ページもあるのだから、24ページくらい増えても文句を言わないだろう。

うそ800 真夏の陽炎のような妄想
カブト虫 電車が混むのを避けるために、お盆より1週間早く帰省して数日家内の実家に泊った。墓参り、新盆見舞いと親戚の顔を見て歩いたあとは、姪の子供相手にオセロをしたりカブト虫を獲ったりした。夜はみんなでゾロゾロと田んぼに蛍を見にいった。
そしてヒマがあると缶ビールを片手に同志から拝借した規格ドラフトをパラパラとながめた。私の頭に浮かんだことをメモしておいて帰宅してからキーボードを叩いたものがこれである。
ところで、陽炎は夏を意味するのかと思っていましたが、調べましたら春の季語なのですね。それで真夏の陽炎としてみました。



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