認証の効果2

2014.12.02
私が審査員物語を書いていて考えたことである。いや頭に浮かんできたことである。私自身、明確な考えを持てず困ってしまった。自分が信じないことを書くことはありえない。いくら面白おかしい物語を書こうとしても、うそというかまったく確信が持てないことを書くことはできない。
その疑問であるが・・・・ISO認証の効果とはいったいなんだろうか?
そりゃ認証制度関係者やその他大勢がいろいろなことを言っている。ここでは認証が我々消費者に対していかなる意味、価値と言っても良いが、あるのかということである。
おっと私は過去、長年企業にいてISOに関わってきたし、数年間であるが認証制度の内側にいたこともある。しかし引退した今は、第三者である一消費者、一市民と称してもよかろう。

話を始める前に、ちょっとアナロジーを考えてみたい。
健康診断とはなんのためにするのか?
健康診断というと漠としていてわかりにくい。具体的な検診項目を考えてみよう。胸部X線検査は「結核患者を54人見つけるために、1人のがん患者を作っている(注1)」という。ここで救われる54人は被害者1人より多いから検査は効果があるとは言えない。検査で発見された54人は検査しようとしまいと結核患者であり、そして検査は結核患者を見つけるだけであり結核の治療はそれからである。健康診断の効果を考えるには、発見された結核患者54人をいかに治療し寛解するまでに要する本人と社会のコストと治療による本人と社会の利益の合計、そして発生した一人のガン患者の治療に必要なコストとご本人の物質的・精神的被害の総計を比較しなければならない。そしてその比較結果はほとんど変わらないというデータを見たことがある(注2)
じゃあ胸部X線検査の全体的な効果は合計するとゼロ近いのであれば、止めてしまっても良いかというと、そうは一概には言えない。
個人レベルで考えれば、結核であったとすれば、それを発見して治療することは、その人のこれからの人生にとって十分価値のあることだ。それにその人が結核を知らずにいれば、家族や周りの人に感染させる可能性は大きい。他方、結核でなかったとして検査によってガンになれば被害甚大であるが、少なくても結核であるかないかが判明するという価値がある。そして肺がんになったとしても、次の胸部X線検査で見つかることもあるだろう。
つまり立場というかミクロとマクロによって効用がことなることになる。そして現実に個人的には受診したほうが良いと考えられているから実施されているのだろう。
検査によってわずかでもガンになるという重大な結果をもたらすものを考えるのは極端かもしれない。検査結果で病気を起こすことがない寄生虫の検便を考えてみよう。検便はいかなる疾病も引き起こさないだろう。まあ、検便することによって気分が悪くなるとか精神衛生上問題があると考える人もいるかもしれないが、その程度のことはとりあえず無視する。さて検便だって検査にかかる総費用と、それによる改善効果を比較して費用対効果が見込めると判断されたものが実行されるであろうということはご理解いただけるだろう。もちろんそういう考えで効果がない、あるいは無用として中止された予防接種や寄生虫検査などもある。
なにごとでもその影響は多様であり、その影響の効果を考えるとき、当事者のミクロの効果、社会全体のマクロの効果を考えなければならない。そして判断するには基準がひとつではなく、決定者の位置づけ、目的によって異なる。

話は変わる。ISO認証とはどんな意義があるのか?
世の中ではいろいろなことが言われている。いや、正確に言えば世の中全般ではなく、ISO業界とかISO関係者という狭い世界で言われているに過ぎないが・・。
どんなことが言われているかというと、ISO認証しても事故は減らない。ISO認証しても不祥事が起きる。ISO認証してもパフォーマンスが上がらない。ISO認証して良くなったのは文書管理と意識だけ・・
ISO認証すると会社が良くなります、売り上げが伸びますと語るのはISOコンサルだけのようだ。
前述したようにものごとはミクロで見ると同時にマクロで考えなければならない。ISO認証についてはどうなのだろうか? つまりISO認証の効果というものは、個々の組織における効果を論じるとともに、ISO認証した組織のグループの効果、そして認証が社会に与える影響を考えることが必要である。
ISO9001は顧客満足をめざし、ISO14001は環境遵法と汚染の予防を目指す。ISO14001で考えると、認証すればその組織が環境遵法と汚染の予防の効果があるのか、認証した組織の集合が認証しない組織の集合よりも環境遵法と汚染の予防の効果があるのかのどちらを目指しているのかということである。

認証制度の公式見解であるIAF/ISO共同コミュニケ(2009/07)によると
「定められた認証範囲について、認証を受けた環境マネジメントシステムがある組織は、環境との相互作用を管理しており、以下の事項に対するコミットメントを実証している
 A.汚染の予防
 B.適用可能な法的及びその他の要求事項を満たしていること
 C.環境パフォーマンス全体の改善を達成するために環境マネジメントシステムを継続的に強化していること(注3)

ここで疑問がある。「認証を受けた環境マネジメントシステムがある組織は、環境との相互作用を管理しており、以下の事項に対するコミットメントを実証している」と言われても、それは結構でございますねとは言いかねる。「認証を受けた環境マネジメントシステムがある組織は、環境との相互作用を管理しており、以下の事項に対するコミットメントを実証している」とはいかなる価値があるのかということだ。
とりあえずここの結論として、ISOやIAFが語る効果を、実際に効果とみなすかどうかは消費者の権利であるということを確認しておきたい。

ISO9001の場合
 メリットデメリット
認定機関・・・・・・・・
認証機関・・・・・・・・
組織
企業など
・・・・・・・・
中間顧客
代理店・流通業者
・・・・・・・・
最終顧客顧客満足・・・・
矢印
これのみが本当の認証の効果
ISO9001の意図が顧客満足であるなら、業務の効率化やコミュニケーションの改善は目的とする産物ではない。同様にISO14001で費用削減が図れても、それはISO14001の目的ではない。

じゃあISO認証が消費者に対する影響はどうだろうか? もし消費者に影響がないならば、効果を考えるまでもないのも明白だ。効果とは良い影響なのだから。
まず一般消費者がISO9001やISO14001をどれくらい認知しているものだろうか?
目的にピッタリあった調査がネットでは見つからなかった。ISOについてのアンケートは数多いがほとんどが認証企業や企業担当者対象で、学生については少しあるが一般消費者対象がない。
なんとか類似の調査をみつけたがそれによると、「ISO14001について聞いたことがある」と回答した人は半分もいない。現実にそれらを見かけるのは、新聞広告に小さく記してあるとか道路を走る車や工場の看板に書いてある程度であるから、それは当然だろう。まして「ISO14001について説明できる」と回答した人は1割以下であった。
認知されていないから影響がないとも言えない。例えば法律を知らなくても法規制は受ける。じゃ、ISO認証は一般消費者に影響があるのだろうか?
ISO認証を受けた企業の製品は消費者により供給しやすい、それとも価格が認証を受けていない企業より高く値付けできるということがあるのかということになる。
現在の日本は民主主義であり自由競争が実現されていて、一般消費者向けの商品については購入者の選択の自由が確保されていると考えられる。つまり参入障壁が高く供給者が限定されていて選択の自由がないとか、法定価格で価格競争が実現されていないという製品やサービスはほとんどない。
ということは、消費者は価格、仕様、品質、納期などによって商品を選択する自由があるといえるだろう。つまり供給者にとって認証した結果を価格その他に反映していないから、認証は消費者に影響を与えてはいないと考えられる。
これは頭で考えただけだが、現実にISO認証は消費者の認知の低さもあるが購買活動に影響を与えていないと言える。

では認証が認証した企業に改善効果があるのかということになる。
このときもコスト改善ができましたとか、社内コミュニケーションが良くなったというような論法はありえない。なぜならISO9001が品質保証から品質マネジメントシステムになろうとも、その目指すところは「顧客満足」である。ISO認証が顧客満足につながるものでなければ効果があるとは言えないだろう。
世の中で言われている認証企業の効果ってどのようなものだろうか?
業務の効率化と言われても、効率をあげただけそのリソースを品質保証に投入し品質向上を図るとか現実に品質をあげる、あるいはコストを下げないと顧客満足につながらないように思う。もっともISO認証によって業務の効率化ができるのかどうかは分らない。
社員のコミュニケーション改善というのは、顧客からの声が関係部門に伝わりアクションがとられるということなのだろうか? 上司の命令が部下に伝わり、部下の意見が上長に伝わっても、その中身が顧客満足につながるのだろうか?
不良削減、省エネなど費用改善が図れます。そういうなら、その改善された費用は製品の価格に反映されるのだろうか?
認証が新しい顧客獲得につながるというかな? 認証がお客様を振り向かせはずはないと思う。費用、品質、納期、技術というものが他に比べて良くなければ、お客さんは振り向かないと思う。認証がお客さんを増やしてくれると考える根拠はない。

どうもISO認証は認証を受けた企業にとって、顧客満足を増進する効果があるようでもない。
となると認証機関や認定機関の売り上げに寄与するのだろうか?
お、それは間違いないようです。

もしこの駄文をお読みになられた方が、ISO認証の効果についてお考えありましたらお便りください。
もちろん証拠なくISO認証の効果を語るのは科学ではない。科学でないなら宗教というのだろう。同時にそうでないことを立証しないでISO認証は効果がないと語るのも同様である。

お断り
ここで対象とするのは認証の効果であり、認証の価値である。ISO規格の効果とか価値ではない。それは聖書とキリスト教が異なるのと同様である。
誤解なきよう。ISO規格は価値があるというつもりもさらさらない。ISO規格に価値があるのか、意味があるのかは定かではなく、それはまた別に考えなくてはならない。
個人的な見解だが・・・ISO規格とはあまりにも常識レベルであって、それゆえに価値がないと思っているのだが・・

うそ800 本日のタイトル
1年前に同じタイトルで書いているので2としました。

うそ800 本日のチョンボ
同じ趣旨を3月前に書いていた。最近物忘れが激しい。

注1
「労働安全衛生法66条で規定する健康診断で胸部レントゲン検査を実施する目的とその有用性」
比較するために整数にするために54人と1人としたと思われる。これは76万人あたりの数値である。
注2
出典は忘れた。
注3
「継続的に強化していること」という言い回しに違和感をもち原文を当たったが、それも同じだ。ちょっと変ですねえ?
Continually enhancing its environmental management system in order to achieve improvements in its overall environmental performance
continual improvement がどうしてContinually enhancing になったのか? まさかISOとかIAFがISO規格を読んでいなかったはずはないだろうと思うが?



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