マネジメントシステム物語72 環境従事者

14.08.04
マネジメントシステム物語とは
竹山竹山のヒアリングもだいぶ進んだ。だがまだまだ解決策以前に現状把握が不十分だと感じる。調べれば調べるほど工場や会社による違いがありすぎる。改善策を考えるのはまだまだ先のことだ。

竹山は浦安にある物流会社に来ている。素戔嗚すさのおグループのいくつかの会社は独自に流通システムを整備するのが大変なので、親会社が設立したこの会社に依頼している。つまりこの会社の業務は、契約している会社の製品を倉庫に受け入れて、客から出荷指示を受けると最短納期で費用最小のルートで出荷するのである。その他に、返品の処理とか修理依頼などの業務も行っている。
この会社は本社が浦安にあり、浦安の他に全国数カ所に倉庫を持っている。ISO14001認証範囲は浦安にある本社と倉庫で、その従業員は約100名である。
応対してくれたのは総務課長の松本松本課長である。
竹山
「現在、私どもでは環境管理業務の標準化とか効率化を推進しようとしています。ところがこの業務は各社の違いが大きすぎてどうすれば良いのか見当もつきません。本日は御社の環境管理体制についていろいろとお話をお聞かせいただければと思います」
松本
「環境管理といってもねえ〜、会社によってその仕事が違い過ぎるのではないでしょうか。ウチの場合、運輸業と倉庫業だから、公害発生とか重油が漏れるという事故の心配はないです。しかし輸送そのものに関することとして、平常時では省エネ、省エネといっても私どもが直接トラックを運転しているわけではないのですが、運送を依頼している荷主ですからその燃料削減が厳しいです。それと緊急時としては万が一輸送中に事故があれば、荷物破損による環境汚染といいますか、そういう影響対応もあります。
その他にお客様、つまりウチに仕事をご依頼されているもので旧式になったとか劣化したもの、あるいは不良返品などの廃棄を依頼されることも多く、産業廃棄物はけっこうあります。もちろん材質などによって産廃ではなく一廃になるケースも多いのですがね。だから廃棄物処理については詳しくなりましたよ」
竹山
「なるほど、御社ではそういう環境対応のお仕事にはどれくらいの人数をかけているのでしょう?」
松本
「まあ親会社の方ですから本当のことを言いますが・・・・我々の本業はお預かりした製品の保管、輸送のわけです。ですからもちろん営業や業務そのものやその業務改善が重要です。環境管理に限らず保守業務はどうしても第一線を引退した人を回すようになるのは、まあ〜やむをえません。
この浦安の本社と工場では営業や倉庫業務の第一線から引退した人を総務などに回して、その中で棒にも箸にもかからないのを環境担当させているのが実情です」
竹山
「するとかなりの年齢になった人をその仕事に就けるわけですね、教育とかどうしているのでしょうか?」
松本
「そんな高齢ではないです。営業の第一線で頑張れるのは40過ぎまでですよ。倉庫の場合は50歳くらいかな。それに管理職になれるのは限られていますしね、そうそう、ある意味ラインにそって管理職になれない人の人事処遇という意味もあるでしょうね。まあ、役職につけない人は管理部門に来て支援業務をしてもらうというルートが社員にも納得されていると思います」
竹山
「環境管理というのは簡単に習熟できるのですか?」
松本
「ウチの場合、環境管理といっても公害防止と違って複雑じゃありません。省エネ法による削減計画とかその届け出、廃棄物処理についてはほとんどパターン化されているというか、お客様と協議して手順を作っています。不用品といっても所有者はお客様ですから、我々は委託されて廃棄の手続きだけをするという形です。
かなり具体的に手順書に定められていますので、それを見て伝票処理とか報告などができるようになるには、まあ数日の教育と少しの経験を積めば大丈夫でしょう」
竹山
「なるほど、先ほどおっしゃった事故が起きた時などは・・・」
松本
「そういう場合は環境担当が単独で処理することはありません。もちろん第一義にはトラックを動かしている運送会社の任務ですが、我々も荷主として運送会社、我々に依頼しているお客様などと連携して対応します。だから異動してきた人に任せるというものではないですね」
竹山
「なるほど、じゃあ御社の場合はある年齢になった人を、環境管理に異動して担当させても問題はないということですか?」
松本
「問題がないというよりも、人材活用の場として必要なのです。
廃棄物処理もだんだんとIT化されてきていますよね。ウチではまだ紙マニフェストですが、全国展開しているので電子化すれば便利というのは分っています。そうなると省力イコール人員削減ですから余った人をどうするかということが問題になります。人件費削減は良いことなのですが、人材を活用する場も必要ですから」
竹山
「でも人材活用のためとはいえ、より付加価値のある仕事をさせるべきでしょう」
松本
「そりゃまそうですが、うまい具合にちょうどの仕事があるとは限りませんよ」
竹山
「ISO事務局もありますよね?」
松本
「そうそう、ISO事務局もあります。ウチの認証目的はまあ横並びといいますか、特段認証の効果を求めているわけではありません。そんなわけでコンサルさんが作った文書や記録を後生大事にお守りするだけですね」
竹山
「ということはあまり重要な仕事ではないということですか?」
松本
「ハハハハ、管理部門に異動してきた人の中で一番使いものにならない人を充てています。露骨にそう言っちゃいけないでしょうけど、本当のところです。我々から見ればISOなんてどうでもいい仕事ですからね。
もっともISO事務局担当者になると、その仕事が非常に重要だと考えて絶対に守らせようと頑張る人が多いです。といっても今の担当者はまだ認証してから二代目ですがね」
竹山
「それじゃISO事務局業務の改善などは考えていないのですね?」
松本
「まあ会社にはいろいろな人がいますんで、そういう人の仕事も必要ですから」


竹山は今日、岡山にある工場に来ている。従業員1,600人、素戔嗚すさのおの工場としては標準的な規模である。
環境課長の伊佐治いさじ伊佐治が対応してくれた。
竹山
「現在、私どもでは環境管理業務の標準化とか効率化を推進しようとしています。ところがこの業務は工場によって違いがありどうすれば良いのか見当もつきません。本日はお宅の環境管理についていろいろとお話をお聞かせいただければと思います」
伊佐治
「確かになあ、環境管理といっても工場によって内容はまったく違うだろうなあ。ここは規模としてはウチの会社でも中間くらいだろうけど、まったくのアッセンブリーでさ、メッキもなければ塗装もない、危険物といっても汚れ拭きにIPAを使うくらいだ。法規制と言えば省エネ法くらいだろうね、電気だけは人一倍使っているから」
竹山
「お宅の環境課の人員はどうなっているのでしょうか?」
伊佐治
「アハハハハ、それを言うと愚痴になってしまうね。この工場では、環境課は掃き溜めってことになっている」
竹山
「はあ? 掃き溜めってどういう意味ですか」
伊佐治
「竹山君の世代では掃き溜めも知らんか・・・・今の時代は掃除にほうきを使わないのだから当たり前か。掃き溜めに鶴なんて言葉も知らんだろうなあ。まあ他の部門で使えない人ばかりということさ。
ウチの課で若い奴と言えばエネルギー管理士をしている43歳と去年新卒で入った奴くらいだな。新卒といっても、入社試験でビリの奴がここに回されてきた」
竹山
「そんなことを言っては失礼でしょう」
伊佐治
「いやいや本当のことだからね。
おっと、誤解ないように言っておくけど私自身、元は設計にいたんだ。50になったときに環境管理課に行けと言われて、おれもこれで会社人生は終わりかと思ったよ。アハハハハ」
竹山
「はあ?」
伊佐治
「先ほども言ったように、この工場は環境負荷なんてほとんどない。いやエネルギーの負荷はあるけど事故の恐れもないし危険なものを使っているわけでもない。それで過去から製造や開発の課長を引退した人がここの管理職をするのが伝統になっているんだ。
それと今のご時世だろう、うつになる人も結構いる。病気で休みがちとか、肉体的に現場では使えないという人もいる。そういう人を引き取るのもこの課の役目なんだよ。 そしてここに来たら、無理なことをせず大過なく定年まで過ごすというスタイルになるんだ。それと突然休まれたり長期病欠になっても仕事が滞らないように考えておかなくてはならない。それが周りから期待されることでもある」
竹山
「そんなあ〜」
伊佐治
「ハハハハ、そういうのが実態だった。だからここの職場は競争なんてものは存在しないから和やかで人間関係でトラブルことはほとんどない。なにせ100の能力に対して80くらいの仕事を任されるわけで、ストレスはないからね。
だけど私がここに来て3年になるのだけどね、いろいろと仕掛けをして生産性向上と費用削減を図っているんだ」
竹山
「はあ、どんなことでしょうか?」
伊佐治
「なにせ廃棄物担当だけで7人もいる。どう考えても2人は余分だ。とはいえ人を減らせないのは言った通りだ。従来は仕事がないときは休憩所でタバコを吸ったりしていたんだが、私は時間を決めて廃棄物の仕事を終えるようにさせた。そして余った時間を休憩ではなく彼らに現場巡回させて省エネのアイデアを考えさせたり、分別状況の点検をさせるようにした」
竹山
「そういうことはストレスにならないのですか?」
伊佐治
「自分のことを反省するとか改善をするというのはストレスになったり嫌気がさしたりするようだが、他人のすることを点検したり指摘するのはあまりストレスにならないようだね。ということであまり無理はさせないけれどのんびりさせないようにした。そして実際に省エネや廃棄物の分別の徹底、職場美化などの効果は出ている。それに何よりも・・」
竹山
「なによりも?」
伊佐治
「今まで他の職場から環境管理課に対して苦情があったわけだ。病気持ちと分っていても、現場が汗水流して働いているときのんびりとタバコを吸っているのを見ると、そりゃいろいろあるだろう。今ではそういう苦情はなくなった。それが一番の効果かもしれないね」
竹山
「なるほど、伊佐治課長も大変ですね」
伊佐治
「まあ、自分自身もそのお仲間だからそんな風には思わないよ。少しでも第一線の人たちの役に立てればと思ってはいるがね」
竹山
「どんなお仕事にも作業標準というのがあると思います。現場からこちらに異動してきた人に、仕事を教えるのはどうしているのでしょう」
伊佐治
「まず人の出入りはけっこうある。病気の人がここにくれば一件落着ってことではない。病気が重くなったり、ここでも勤まらない人もいるわけだしね・・・そして、ここに来る人に高い能力を期待できないことは事実だ。
それで皆を熟練作業者にしようということは考えていない。実際にはそれぞれの仕事で頼りになる人を一人前に教えて、他の人はその人の指揮に従ってもらうことにしている。正直言って定年まで1年とか半年の人が来たとき、仕事をイチから教えるわけにはいかない。だからそれぞれに考えて仕事してもらうのではなく、指揮者の口頭指示で働いてもらうしかない」
竹山
「中心になる人とおっしゃいましたが、そういった人たちはまっとう、つまり病気持ちとか休みが多いとかいうことはないのでしょうか?」
伊佐治
「全部が全部、病人というわけじゃないからね。現場で職長をしていたけど定年まであと数年になったのでこちらに来たという方もいる。そういう人にお願いしているわけだ。もっともそういう人には負担がかかることでもある。でも普通の人は責任を負うことはうれしいようだ」
竹山
「なるほど、
作業標準というものはあるのですか?」
伊佐治
「現場の要領書のように微に入り細にいったものではないが、大まかな手順を書いたものを作っている。細かいことは口伝ということになるのかな。まあ読んで仕事をしろといって通用する人は半分もいないから細かい手順書を作ってもしょうがないこともある」
竹山
「伊佐治課長から本社の環境管理部に支援を頼みたいこととかありますか?」
伊佐治
「具体的な仕事の手順などは工場によって大きく異なるのはやむを得ない。こまごましたことまで標準化するというのはありえないだろう。この工場で即役に立つような手順書はよそでは役に立たない。
とはいえ工場でできないことも多い。具体的には廃棄物処理の全貌とか法規制の全体の教育資料を作ってほしいと思うときもある。我々も法律を読まなければならないときもあるが、法律を読むってむずかしいんだよね。だから法律を読むための基礎知識のようなもの、他の工場や関連会社での改善事例、事故事例なんてのがあれば非常に役に立つ。もちろん改めて作るのではなく参考図書の紹介とかウェブの情報提供であってもよいが」
竹山
「なるほど、おっしゃることは戻ったら上長と相談します」
伊佐治
「上長って、佐田さんかい。彼ももういい歳になったんだろうなあ。竹山さんが後任なんだろうからしっかりしてくれよ」
竹山
「しっかりやってますよ」
伊佐治
「お前さんが福岡工場に飛ばされたいきさつは聞いているよ」
竹山
「ええ!」
伊佐治
「その会社はここからほんの数キロだ。3年くらい前だが、向こうの人が廃棄物処理について相談に来たとき、私に君の一件を話してくれたよ」
竹山
「あれはもう何年も前のことですよ」
伊佐治
「一度ミスをすると、後々まで言われるものだ。失敗するのはしょうがないが、リカバリーする努力はしなくちゃならない」

もう30年も前のこと、私が現場の管理者をしていた時である。50代半ばの人から現場で働くのは辛いので環境部門で廃棄物の分別や現場を巡回して各種メーターの記録などをしたいといわれた。人事に話をしてみたが、環境部門だって誰でも引き取るわけにはいかない。ターレ 結局その人が異動できたのは環境部門のひとりが定年退職してからだった。
また営業にいた人がいつしか工場内の廃棄物をターレで集めて焼却炉まで運ぶ仕事をしていた。どうしたの?と聞くと営業が嫌になってこの仕事を希望したという。
傍から見ると掃き溜めみたいに見えるけど、そこに行きたいと考える人もいるものだと驚いた。



竹山は岐阜県の人口5万くらいの市に来た。今日はここにある関連会社に環境管理のヒアリングに来たのだ。駅からタクシーで10分くらいのところにその工場はあった。建物も新しく、従業員も若い人ばかりのようだ。
環境管理課に行くと大山大山さんという年配の方が対応してくれた。
竹山
「現在、私どもではグループ全体の環境管理業務を標準化して効率化しようと考えています。ところが環境管理といっても工場によって違いが大きすぎてどうすれば良いのか見当もつきません。本日は御社の環境管理体制についていろいろとお話をお聞かせいただければと思います」
大山
「そうだよなあ〜、経理とか資材というと、どこに行っても仕事の内容は似たようなものだ。最たるものは人事だろう、人事なんてどこに行っても全く同じだ。だけど環境管理となると管理するものが全然違うからね。
この会社は親会社の岐阜工場が手狭になったのでここに作ったんだ。環境負荷は大きくはないが内容的には一応そろっているね。そろっているというのはいろいろな設備があって大変だということだ。メッキはしていないが酸洗いをしているので排水処理はあるし、塗装をしているから塗料や薬品もある、塗装ブースの水の処理もある。他方エネルギー使用量は少なくエネルギー管理指定工場にはあたらない」
竹山
「排水処理とか危険物貯蔵などをしていると運転も大変でしょう。そういう担当者はどのように育成しているのですか?」
大山
「竹山君とは以前会ったことはなかったかね。おれは元岐阜工場の部長をしていた。定年になってから、ここで採用されて環境部門の管理者をしている。
そんなわけで環境管理の担当者のイメージってのは知っているよ。岐阜工場では生産部門や生産管理部門で歳をとった人を環境部門に異動させている。岐阜工場に限らず素戔嗚の工場では新卒、それも優秀なのを投入しているところは少ないね。環境は大事だといいながら口だけのようだ。
まあ、それが悪いとも一概には言えない。人は歳をとるからいつまでも開発や生産の第一線で働くにはいかない。時間に追われいつも競争相手と戦っているような生活は何十年もは続けられないんじゃないかな。人は肉体的にだけでなく精神的にも老いてくるんだよな。私も今は閑職においてもらってありがたいと思っている。
とりとめのない話だが聞いてくれ」

竹山はうなずいた。
大山
「この会社は5年ほど前に設立された。素戔嗚からの若干の出向者とこちらで採用した社員で構成されている。この会社の環境部門の特徴は新卒ばかりを配属したことだろう。環境管理部門を若いメンバーだけで構成したところを俺はここ以外で見たことがない」
竹山
「私も若い人が多い環境管理部門なんて見たことがありません」
大山
「といって誇るべきことでもないんだなあ、だって、新人以外いなかったからというのがその理由だからね。だけど若いってのはすごいことだ。ここはもちろん水質の公害防止管理者が必要で、当時環境部門に出向してきた一人が有資格者だったのだが、あと一人足りない。当時は設計にいるのが資格を持っているのでその名前を借りて届をしたそうだ。もちろん環境管理をしているものに取らせなければならない。そのとき若い3人に受験しろといったらしい。まあ3人も受験すれば一人くらい合格するだろうってサバを読んだのだろう。ところが全員合格してしまった。若い奴はファイトもあるし頭の働きもいいんだろう。
それ以外の資格取得だけでなく、排水処理とか廃棄物処理の法規制などもどんどんと勉強して、創業5年目の今ではみんなベテランだよ」
竹山
「それはすごいですね。排水処理施設などは、機械のくせなどを知った経験豊かな人でないと運転できないなんて言われていますけど・・」
大山
「そういうのは大げさだろうね。機械というのは理屈があって動いている。動かない機械があれば、叩いて動かそうとするよりもどこが具合が悪いのだろうと検討する方がまっとうだよ。
それと元々新設の装置だから、くせなどを考えることもなかったのかもしれないね」
竹山
「ええと、それでは今はそういった若手が作業標準を作成して業務を遂行しているということですか?」
大山
「創立時からこの会社はISO9001の認証をして、ルールとか基準とかをはっきりして仕事をしようという方針だった。元々何もないということも理由だったのだろう。だから品質保証だけでなく、総務や資材その他すべての部門に渡って標準化、文書化するという文化ができた。環境管理も例外ではない。だから手順も文書化されて、連中が作ったものだから改善したり問題があると躊躇なく改定をしている」
竹山
「まさに理想的じゃないですか」
大山
「現状を見ると理想的に思うかもしれない。しかしおれはある意味危険だと考えている」
竹山
「はあ、どうしてですか?」
大山
「国鉄って知っているかい、1987年に民営化されてJRになった。民営化される前は、高齢化して賃金が高く、大赤字で、最低最悪の会社だと言われていた。しかしその30数年前、日本が太平洋戦争に負けて復興しようという時代は、国鉄はすばらしい会社だった」
竹山
「はあ?」
大山
「会社が良い悪いというのは時代背景によって違うし、従業員の構成や年齢によって変わる。終戦直後、復員してきた人が入社して若い人ばかりだった。そして道路も整備されていない時代だったから、旅行するにも荷物を送るにも鉄道しかない。そういう外部、内部要因で国鉄はすばらしい会社だったわけだ」
竹山
「はあ・・・・」
大山
「しかし人は歳をとる。時が経つと従業員はだんだんと高齢化し賃金が上がり、そして組織自体が老化してくる。それによって人件費の増加のようなことだけでなく、改革が困難な組織、新しいことへのチャレンジをいとうようになる。要するにある時点で理想的と思えても、10年後、20年後どうなるかを考えないとね」
竹山
「なるほど、そうしますとお宅の環境管理課は、現在は理想であっても、定期的に新人が入るような人員構成になっていないから時間と共に高齢化していき長期的にみると技能の伝承などにおいてリスキーだということですか?」
大山
「そう、それもある。それだけでなく、いつかは当社も環境管理とか設備管理といった業務に、他部門を引退したような人を回すようになるだろう。そういうことは業務の性格からいってしょうがないことだろうと思う。だがそういった人事政策は、保守部門を不活性化し、能力の低下を招く遠因となるのではないだろうか」
竹山
「植生の遷移なんて言葉を思い浮かべますね」
大山
「なるほど、そういうものと同じだね。荒れ地に草が生え、やがて鳥がアカシアなどの種を運んできて、だんだんと松などが生えてやがて照葉樹林に移っていくと・・・、
環境管理部門も最初は若手だけでもだんだんと年をとる。そこに補充される人たちは若い人ではなく他の職場で不要になった年配者で、いつしか50歳代ばかりの職場となる。定年で去っていく人と50前後の入ってくる人のバランスが取れて平均年齢は55歳に保たれると・・・悪い冗談みたいだな」
竹山
「大山さん、それじゃ岐阜工場が既に極相になっているとも言えますね」
大山
「竹山君、極相って英語でなんて言うか知っているかい?」
竹山は首を振った。
大山
「クライマックスってんだ。でも岐阜工場の環境管理部が最高潮とは思えないね」
竹山
「大山さんが我々本社機構に期待すること、あるいは要望したいことはなんでしょうか?」
大山
「毎年いろいろな実績報告を依頼してくるだろう。あれを真面目にまとめるのは大変手間がかかるんだよ。止めてほしいと言いたいが、でも情報公開の時代だからそうもいかないかな。
我々の業務改善のためには、先ほど言ったような法律を読むためのテキストとか、法改正について定期的に説明会をしてもらうとか、とにかく個別論に入らなくても良いが、あまりに一般的で適用が難しい話でもなく、業務にすぐ役立つ教育とかテキストなどの供給をお願いしたいね」

シチュエーションや内容は過去に私が関わったこと、見聞きしていたことをぼかして書いています。
多くの会社では電気主任技術者とか公害防止管理者など有資格者は別として、第一線で役に立たなくなった人を環境部門に異動させるところが多いですね。それも管理者から担当者まで。中でもISO事務局はもろに不要の人材置場のようでした。病気持ちとか欠勤が多い人などがいると、他の人にも士気低下が伝染します。だからそういった人事管理もありなのでしょう。
はっきり言って、環境管理とかISOなんてのは、企業のエリートとかばりばりの人を配置するところではないのでしょう。逆に考えてバリバリのやり手をそんな部門に置いたら、もったいないのではないでしょうか。
老人やいらない人が環境管理部門に回されるなんていうと、差別だと文句を言われるかもしれません。でも、お断りしておきますが、私自身、ラインでは不要で保守部門に流された身でありました。もっともそんな逆境でなぜか私の才能が開花して、他の人にできないことをしてしまったという前代未聞、驚天動地の物語があったわけで・・

うそ800 本日のクイズ
この駄文をいかほどの時間で書いたと思いますか?
数日前、お昼を食べてからスイミングスクールに出かけようと考えていたら、スイミングスクールから電話があり、コーチの体調が悪くスクールをお休みしますとの連絡が。
しょうがないと、空いた時間でサッサとこの文章を書きました。まあ2時間くらいでしょう。
実を言ってこういうストーリーにしよう、こういうやりとりにしようというのは以前から頭にあるのですが、文章にするのは結構面倒です。



initialA様からお便りを頂きました(2014.08.06)
佐為様
こんにちわ。
initialAです。

審査サポートで出張中です。サポートなんてお金にならない作業は辞めないといけないと感じています。
その前に、認証自体を辞め・・・

マネジメント物語、そろそろ佳境ですね。
竹山の成長ぶりに、ちょっとうれしくなっています。

今回の中で「棒にも箸にもならないのを環境担当させているのが実情です」とありましたが、「棒にも箸にもかからない」というのが正しいのではないでしょうか。
まあ、箸にもできないような間伐材というような意味で、通じますけどね。
つまらない突込みでスイマセン。

initialA様
お許しくださいませ!
ついうっかりと、いやいや、65年も日本語を話してきたのにまだ私が日本語に習熟していないのでありましょう。
本来なら腹を切るところでしょうけど、腹を切ると痛いので止めます。
この間違い、胸に刻んでしっかりと・・・三日持つかどうか、いや三歩もつかどうか・・・
とりあえず修正いたしました。


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