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これは事実である。審査に参加すれば審査経験にさせる認証機関もあるし、一定要件を満たさなければ審査経験として認めない認証機関とかいろいろだ。 もっとも現在は審査員であることにJRCAとかCEARの登録は不要だから、最終的に認証機関の責任であり決定事項なのだろう。 |
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実を言って某認証機関の審査登録ガイドに「環境目的、目標、実施計画は3年間を包含していることが望ましい」と記載されている。だからその認証機関は、その審査登録ガイドを根拠に「ISO17021で規定する認証機関の基準において定めているので、目的が3年間のスパンがないから不適合である」と語ることはあり得るような気がする。といいつつ、「望ましい」とあるのだから「不適合」にはできそうがない。 だが現実の審査においては「環境目的が3年に足りないのでいけません。不適合とは言いませんが審査が終わるまでに3年間の目的目標を作成してください」なんて語っている。かつその根拠をその会社の登録ガイドではなくISO規格としている(証拠有り)。そんな明らかに常識はずれのことをshallだと強弁することは、認証機関として恥さらし以外の何ものでもないだろう。その認証機関の社長さん、いかがでしょうか? ![]() 私もISO規格や認定機関の規定だけでなく、公開されている審査登録ガイドのたぐいも読んでおりますし、駄文を書く際は読み直しております。ひょっとして審査登録ガイドを書いている認証機関の担当者よりも詳しいかも? ![]() |
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「おや、三木さんじゃないですか」
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「ああ、宮下さん、お久しぶりです。やっとのことで出向できました。基本教育が終わって今いろいろと修行をしているところです」
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「山内取締役からは三木さんが出向してきたと聞いていましたが、出張が多い仕事ですからなかなかお会いすることがありませんね。今はどんなことをしているのですか?」
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「マニュアルチェックというものをさせていただいております」
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「マニュアルチェックですか、私もこちらに来た当初はだいぶやらされましたね」
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「こういうチェックは担当の主任審査員の方はされないのでしょうか?」
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「うーん、正直言いましてね、審査を依頼してきた会社から出てくるマニュアルは初めの段階では出来が悪いんですよ。それでね、最初に提出されたものは審査員見習い中の、いや失礼、手の空いている人に荒いチェックをしてもらって先方に修正させて、ほぼ仕上がったものを審査を担当する主任審査員が見るという流れなのです」
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「なるほど、レベルの低いもので先輩のお手を煩わすことはありませんからね、よく分ります」
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「それでも最近は環境側面とか環境法規制のまとめかたもほぼ知れ渡ってきましたし、なによりも環境マニュアルというものがどんなものかひな型なども市販されていますから、突拍子もないようなものはなくなりましたね。私が見習いでマニュアルチェックをしていた時代は、それはそれはとんでもないものが多くて・・アハハハ」
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「突拍子もないとおっしゃいますと?」
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「そうですねえ〜、思い出した例としてはISO規格のshallがすべてマニュアルに書いてないってものがありましたね」
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「ああ、それはISO規格でなくて審査登録ガイドで要求しているからですね?」
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「ISO規格でなく審査登録ガイド? いや、ISO規格にshallがあればマニュアルにそれをどう達成するかの概要を書かなくてはならないよ」
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「早苗主任審査員の講習で、規格のshallを満たす手順の概要を記せという要求は規格要求ではなく、ナガスネの審査登録ガイドだと教えられましたが」
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「そりゃ早苗さんの勘違いだろう。だってどの認証機関だって環境マニュアルに規格のshallが書いてなければ不適合にするよ」
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三木は何かおかしいぞと思ったが、ここでは真理を究める必要はないというか、もめないことが要点だと感じた。
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「なるほど、そうでしたか。覚えておきます」
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「まあ頑張ってください。まもなく審査に正式なメンバーとして参加するようになるでしょう。そしたらすぐに補がとれますから」
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「ありがとうございます」
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宮下が去ってから三木は考える。宮下は環境マニュアルに規格要求を書くのは規格要求だといったが、早苗は審査登録ガイドで要求しているからだと教えた。文章を読むと早苗が正しいのは間違いない。
今までshallが抜けているマニュアルがあったときは、審査を依頼してきた会社にメールで「御社からご提出いただきました環境マニュアルの○○項の○○に関する規格要求に対応する記述が漏れていますので追記願いたい」と依頼していた。今までは「どうして不適合なのですか?」なんて問われたことはなく、先方はすぐに了解してくれたが、もしそういう問い合わせがあった場合、どう答えるべきだろうか。 問合せがあれば「ナガスネ認証の審査登録ガイドではISO規格のすべてのshallに該当する概要を記述するように依頼しておりますので、それに対応するように記述願います」と回答しようと思っていた。宮下なら「ISO規格要求に不適合です」というのだろうか。宮下の回答にイチャモンがついたら対応が難しいなと三木は思う。そして少しは自分も進歩したのではないかと 宮下と話をしてマニュアルチェックの仕事が途切れてしまったので、気分転換しようと三木は給茶機にいってコーヒーを注いだ。 各種講習では受講者(お客様)用にはまっとうなコーヒーメーカーでそれなりのコーヒーを出しているが、オフィスで飲むのは給茶機のコーヒーでうまいとは言い難い。まあ当然かと三木は思いつつ不味いコーヒーを一口飲んだ。 | |||||||||
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「おや三木さん、お元気ですか?」
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三木は驚いて振り向いた。研修で一緒だった島田がいた。 島田はなにかの技術士とかで、町工場相手に技術的なコンサルをしているという。そんな仕事をしている中でISO9001の認証支援を頼まれるようになり、最近はISO14001のコンサルの仕事もしていると言っていたのを思い出した。 ![]() | |||||||||
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「お久しぶりです、島田さん。島田さんは研修を受けてからはこちらに来ていないのですか?」
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「本業がありますので、時々来まして研修を受けているような塩梅です。三木さんは今どんなお仕事をされているのでしょうか?」
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「マニュアルチェックというものです。お客さんから提出を受けたマニュアルが要求を満たしているかどうか確認する仕事です」
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「審査員の5日間研修でもやりましたね」
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「まあそうですが・・・実際にしてみるといろいろ疑問を感じるところがありますね」
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「なんか歯切れが悪いですね、悩みでもあるんですか?」
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「いや、悩みではありませんが、ただマニュアルチェックがどんな意味があるのかちょっと疑問を持ちましてね。島田さんは環境マニュアルとはどんなものとお考えですか?」
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「環境マニュアルってどんなものかって? そりゃ審査の手間を省くためのものでしょう」
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「えっ、審査の手間を省くためのもの?」
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「企業からしてみれば環境マニュアルなんて必要ないですよ。もともとどの会社だって環境管理という仕事をしていましたからね。省エネ、公害防止、廃棄物処理、そういったことに関してどんなことをするかは法律で決められていましたし、法律によってはどんな社内文書を作れとまで定めていることもあります。それに法律で定めていなくても行政のガイドラインなどで社内文書のひな型なんて世の中にたくさんありましてですね、 あのですよ、三木さんも会社で長年働いてこられたからお分かりと思いますが、人が替わったり時間が経っても同じ仕事をするためには、やはりルールというか仕事のやり方を紙に書いておかなくちゃいけないってお分かりになりますよね」 | ||||||||
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「確かに」
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「それで廃棄物の契約の仕方とか、マニフェストの書き方、廃棄物業者の選定方法なんてのは紙に書いているところが多いのです。おっと先ほど言いましたように行政もそういった仕事の手順を冊子などにして配っています。だから社内文書を作るのが面倒であれば、行政のそういったガイドブックとかを置いておけば間に合うんです」
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「はあ?」
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「そんなわけでISO規格が要求しているようなことは、過去から文書があり、それをみて仕事しているところがほとんどなのです。だって法律で定められていることを思いつきとか怪しげな記憶ではできませんからね。ですから個々の仕事は昔からルール化されてそれで業務をしてきました。改めて環境マニュアルを作るというのは、少なくても社内向けじゃありません。仮に環境マニュアルを社内向け文書だとしてですよ、廃棄物処理から環境方針から教育訓練からなにからなにまでを、ひとつにまとめたものを、誰が使うと思いますか」
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三木は環境の仕事ではイメージが浮かばないので、営業の場合、営業の仕事の概要をまとめたものがあったとしてそれを利用する人がいるのかなと思う。
今までチェックしてきた環境マニュアルでも、全体の概要は書いてあるが、個々のshallに対しては「教育訓練については当社教育訓練規定○○に定める」なんて書いておしまいだ。結局マニュアルの利用価値とは規格要求がどの文書に書いてあるのか、どの記録が対象になるのかが分るだけ、つまり目次というか対照表にすぎない。 ![]() | |||||||||
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「そう言われるとそのような気もしますが・・・それじゃ環境マニュアルがなくても審査はできるものでしょうか? つまり島田さんが手間を省くとおっしゃいましたが、マニュアルがなくても多少手間がかかって楽でなくても審査はできるのかということですが」
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「ああ、もちろんですよ。認証機関の中には、マニュアルは送らなくて良いといっているところもありますよ」
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「ええ!そうなんですか。ちょっと待ってください。環境マニュアルはISO規格要求にはなかったですが、確かISO9001では作成しなければなりませんでしたね」 | ||||||||
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「そうです。しかし品質マニュアルがなければ審査できないかといえば、そうではありません。というか、初期のISO9001では品質マニュアルの要求はなかったなあ〜。品質マニュアルの要求は1994年改定で追加になったはずです」
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![]() 2015年改定でISO9001でもマニュアルの要求がなくなった。20年で元に戻ったわけだ。なんか、壮大な無駄というか回り道のようだ。 ![]() 三木は斜め上を見上げて考える。ISO14001は規格要求にない。だから審査の手間を省くためのものにすぎないのかもしれない。 ![]() | |||||||||
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「三木さんは左右QAという認証機関をご存じでしょう。あそこは品質マニュアルも環境マニュアルも提出しなくて良いと言っています。 ちょっと考えてみてください。まず審査の方法にはふたつあります。ひとつは個々の規格要求について満たしているかどうかを調べていくという方法です。そういう方法では、品質マニュアルとか環境マニュアルがあったほうが審査は楽でしょう。でもその場合でもマニュアルがなくてもISO規格を基に審査することはできます」 | ||||||||
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三木は島田が語ったことを反芻した。確かにそのように思える。
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「島田さん、今、審査方法はふたつあるとおっしゃいましたね、その言い方では別の方法もあるということですか?」
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「あります。現場を観察してそこの仕事がISO規格を満たしているかどうかを判定する方法です」
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「ううーん? そんなことが可能なのだろうか。例えばISO規格では環境側面を特定し著しいものを決定しろとある。規格から行けば、環境側面を特定しましたか、著しい環境側面を決定しましたかと聞けばよいわけだが・・その反対の方法ではどうすればいいのだろうか?」
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「文字通り、著しい環境側面に該当するものが著しいと認識されているかどうかを確認することです」
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「ああなるほど、審査員がこれは重大な環境側面だと考えたものが環境側面一覧表にあるのかどうかを見るということですね」
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「ちょっと違いますね。そもそもISO規格では著しい環境側面一覧表を作ることを要求していません。環境側面一覧表がなくても規格適合です。規格が要求しているのは著しい環境側面を決定することです」
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「決定することというと・・・決定しましたと回答すれば良いということでしょうか?」
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「いえいえ、違います。著しい環境側面を決めたら、どういうことをしなければならないのでしょうか?」
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三木はハタと考え込んだ。 著しい環境側面を決めたら何するのか? 規格にあったような気がするが思い出せない。 | |||||||||
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「著しい環境側面が関係する項目はいくつもあります。目的目標を決めるときに考慮すること、著しい環境側面に関わる人の力量を確保せよ、著しい環境側面について外部コミュニケーションの手順を決めろ、著しい環境側面に関わる運用や管理に必要な記録や文書を決めて作成しろ、著しい環境側面に関しては手順を決めてしっかり運用しろ、そんなところかな」
(物語の時点で有効な1996年版を元にしている)
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「すると・・・」
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「審査員は現場、現場といっても製造ばかりでなくオフィスや環境施設もありますがね、まずそこで作業や設備、薬品などなどを観察してその仕事で重要なことは何か、どんな危険があるのか、事故が起きるかなどを考察するわけです。つまり著しい環境側面に該当するものを考えるわけです。 そして著しい環境側面であるとみなした作業や設備や物について、今言ったこと、つまり環境目的目標につながっているか、それに関わっている人たちには教育訓練などをして実際に取り扱える力量があるか、外部コミュニケーションの手順が決めてあるか、運用の手順は決めてあるか、手順通りに仕事をしているかということをですね、チェックして、その結果、このshallは満たされているか否かを判断することになるでしょう」 | ||||||||
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三木はしばし考え込む。島田が言うことはもっともだ。だけどそれは途方もなく難しいことのように思える。自分がそんなことをできるだろうか? 三木だって営業時代は客先あるいは代理店を会う前に、向こうについてそれこそ売上推移、事業の変遷、過去のトラブル、近隣との関係、関係する人間の性格など調べて行く。だがそれは継続して付き合っていくという条件があったからだ。一期一会のISO審査という仕事でそこまでしていたら・・ | |||||||||
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「つまり、それはとんでもなく難しいだけでなく、手間も時間もかかるのではないでしょうか?」
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「そうなるでしょうね。おっしゃるように規格からいくのは簡単で、現実から行くのは難しいでしょう。とにかく審査の方法は二つあるということです」
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これを書いてマタイによる福音書第7章を思い出してしまった。 「狭い門から入りなさい。滅びに至る門は大きく、その道は広い。そして、そこから入って行く者が多い。命に至る門は狭く、その道は細い。そして、それを見出す者が少ない」 ISO関係者にも福音書があればよかっただろうに、 「難しくても正しい方法を行いなさい。組織にマニュアルを書かせる楽な道を行く者は多いが、それはISO認証の価値を落してしまう。審査の価値を高める正しい方法の道は難しく、その道を行く者は少ない」 おっと、その王道をいく認証機関もありますよ、外資系に多いようですが 「マニュアルに規格のshallすべてが書き込んでありません」なんて言っている認証機関は王道ではなく邪道です。 ![]() ところで、私が若いときはジッドの「狭き門」は中高生の必読書だった記憶があるが、今はどうなんだろう? 少なくても私の娘・息子が読んだ気配はなかった。子供たちは宗田 理とか赤川次郎程度しか読んでいなかったようだ。 ![]() | |||||||||
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「あまり大きな声では言えませんが、ナガスネの方法は規格から行く方法で、更に環境マニュアルを作成させていますから非常に簡単でどんな審査員でもできるわけですよ」
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「先ほど左右QAという認証機関ではマニュアルを不要としているとのことですが、実際に審査ができるのでしょうか?」
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「私がコンサルした会社にも左右QAで認証を受けたところもあります。原子力関係は左右QAが強いですからね。最初マニュアルを送りますといいましたら、送らなくて結構というのです。その会社も指導した私も、はあ?となりましたよ」
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「なにも事前資料なしで審査に来るのですか?」
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「いやいや、それは無理ですよ。保有機械とか生産工程とか使用している化学物質とその使用量などはとりまとめて提出しましたね。まあそれが現実的には著しい環境側面になるのでしょうけど」
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三木はまた斜め上方を見上げて考える。島田のいう審査方法もあり得るとは思う。しかしそれはとてつもなく難しそうだ。少なくても営業しか知らない三木が急遽促成栽培で審査員になって審査するアプローチ方法ではないように思える。言い換えるとナガスネの方法は、促成栽培の審査員にできる審査方法なのだ。だって受審する企業に環境マニュアルを作成させ、その中に関係文書や記録を参照するだけでなく手順の概要というかサマリーまでを記述させるのだから分りやすい。もちろんそれは企業に手間ひまをかけさせることになる。そしてそれは環境マニュアルは審査員のためのものであり社内で使われるものではないということだ。
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「ちょっと待ってください・・・ええとですよ、コンサルとか審査員は社員がマニュアルを仕事で活用するようにって言いますよね、あれってマニュアルが業務に使えるというか、仕事の規範として使うべきってことですよね」
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「まあ、そんなことを語る審査員やコンサルも多いですね。でもね、三木さん、マニュアルって言葉に惑わされるかもしれませんが、品質マニュアルや環境マニュアルは業務マニュアル(手順書)とか機械のインストラクション(取扱説明書)ではありません。それはISO規格のマニュアルの定義からもはっきりしています。もし仕事で環境マニュアルを使っているとしたら、その会社はどこかが間違っているのです。仕事のコンサルをしている私が言うのですから間違いありません」
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「そうしますと、ISOのマニュアルとは純粋に認証機関のためであり、それも必須というよりも手間を省くためのものでしかないのですか」
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島田は三木がいつまでもお茶していては不味いと思ったようで、またねと言って去って行ってしまった。
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数日後、三木がトイレに行ったとき山内取締役に会った。
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「三木よ、どうだい、慣れてきたか?」
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「はい、おかげ様でなんとかやっていけそうです」
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「あんまし、堅苦しく考えることもないよ。ところで今日、仕事が終わったら一杯どうだ? 木村にも話しておけよ」
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「かしこまりました」
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定時後、山内、木村、三木の三人は新橋駅前の居酒屋にいた。
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「山内さん、お聞きしたいことがあります」
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「あんまり難しいことは分らんぞ、俺は環境とかISOなんてワカランわ。俺の頭の中にあるのは、この会社をつぶさずに事業を継続させていくにはどうするかってことだけだな」
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「経営的というほど高度なことではないのですが、事業継続という点では関連があることです。 どうもいろいろと話を聞いていると、ナガスネの審査方式というか考え方は、審査を楽にしようという発想で構築されているように思えてきました」 | ||||||||
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「ほう、そういう話を聞いたのは初めてだな」
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「三木さん、審査を楽にというのはどういう意味でしょうか?」
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「典型的なものといえば、環境マニュアルというものはISO規格にありません。ですから認証機関の中には環境マニュアルを求めていないところもあります。そしてまた環境マニュアルを要求しても、そこに何を書くか、なにが書いてないと不適合になるのかということも認証機関によって異なります。 ナガスネは環境マニュアルにISO規格にshallとあることについて、それをどのように対応するかの概要を記載させています。ですから環境マニュアルを見ればその会社の概要が分り、誰にでも審査ができるという仕組みです」 | ||||||||
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「それはいい方法ではないですか」
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「でもそれはナガスネが楽をするだけであって、審査を依頼する方にとっては余計な仕事が増えることになります。またISO規格の要求以外に余分にいろいろと仕事をさせることになっています」
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「私はそんなことないと思いますよ。どんな仕事でも合理化、標準化は悪いことじゃありません」
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「木村さんがおっしゃる通りだけど、その合理化、標準化することによってISO規格要求事項から逸脱してしまうといけないんじゃないか」
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「ええと三木よ、現実問題としてそのナガスネの考え方では、どんな問題が起きるんだ?」
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「当社の顧客といいますか依頼してくる会社がこの業界内だけであれば、企業は出向者を出しているからとか義理という理由で、他の認証機関に依頼するということはないと思います。しかし長期的には認証機関による規格解釈の齟齬とか、提出資料の多寡によって当社の競争力が落ちていくでしょうね。今でもナガスネ流とか呼ばれています。決してそれは褒め言葉ではないでしょう」
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「うーん、三木よ、分った。ちょっと考えるわ。それから今の話はうかつに社内で語るなよ。正直言ってお前がつまはじきされる危険があるから」
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「承知しました」
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認証機関の恥部 患部の間違いかと・・・ |
なるほど、恥部とは「人に知られたくない、恥ずべき部分」、他方患部は「病気や傷のある部分」、意味的には患部の方がよろしいようですね。 これはJ〇〇QAの取締役の発言ですので伝えておきましょう。いや止めておきます。 |