*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。但しここで書いていることは、私自身が過去に実際に見聞した現実の出来事を基にしております。
審査員物語とは
審査員物語が始まってちょうど1年になる。1年で54話とは少しペースが遅い。マネジメントシステム物語では1年で83話まで書いていた。以前に比べて足取りが遅いのは私が年を取ったせいだろうか? それとも物語を書くのに飽きてきたからだろうか? ともかく気を取り直して本日も駄文を書く。
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「三木さん、先日はお世話になりました。お礼を言おうと思っていたのですが、なかなか三木さんが捕まりませんでして」
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「いえ、仕事ですから」
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「ちょっと話できますか」
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「どうぞ、どうぞ。ここでもなんですからコーヒーでも飲みながら」
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![]() 二人は立ち上がり給茶機でコーヒーを注いでから、それを持って窓のそばの打ち合わせ場に座る。 ![]() | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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「まずは先日の対応ありがとうございました。改めてお礼申し上げます」
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「いえ、仕事ですから。それに大した手間もかかりませんでしたし・・・ただ潮田取締役、以前からお話はしていたつもりですが当社では規格解釈とか礼儀作法、礼儀作法といっても頭の下げ方とか敬語の使い方ではなく、もっとベーシックなことですが、そういったことの教育が足りませんね。社会常識的なことをしっかりしない。 今回の問題も判定のトラブルの前に高圧的な態度とかコミュニケーションがとれず心証が良くなかったとうかがいました。真の原因はそこじゃないかと思います。おっと、そんなことは報告しましたね。ともかく放っておくと似たようなトラブルはまた起きますよ」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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「おっしゃるとおりですね。それと三木さんに言われましたね、新規顧客獲得には既存顧客維持よりも5倍のコストがかかるとか、とにかく今の客を大事にしなければならないと思います」
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「まあ、私はまもなく引退ですから、この問題は潮田取締役がイニシャチィブをとって改善を図ってほしいと願っております」
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「うん、審査後のアンケートもきれいごとばかりじゃなくて辛口の意見もあるんだ。そういったことに対する今後の方向つけとか三木さんと話し合いたいと思っているんですよ」
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「お客様からのフィードバック情報を有効に活用することは大事ですね」
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「三木さん、そう他人事みたいなこと言わないで下さいよ」
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「他人事ですよ。あと半年で引退ですからね」
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「えっ、半年ですか? まだ一年あると思っていたのですが」
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「冗談はよしてください。もう私の頭は引退後のことでいっぱいです」
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「とはいえ三木さん、完全に引退するのではなく契約審査員とかされるのでしょう」
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「確かに現在の年金制度では65歳まで預金を食いつぶしての生活では心細いですし、生きがいなんてことも考えると契約審査員にしていただこうかなと思っております。とはいえフルタイムじゃなくなり審査の時だけとなりますから、会社にはほとんど来なくなるでしょう。潮田取締役とお話しする機会はなくなります」
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「それは残念だなあ」
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「話を戻すと、余計なことですがウチは営業が弱いですね」
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「弱いといいますと?」
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「営業というのはどんな業種でも同じで単純だと思われているでしょ。つまり新しい顧客を開拓する、現在の顧客をしっかり確保する、売掛金を回収ってことですかね。 でもそれだけではありません。会社とお客様との接点ですから、お客様の要望、苦情、ご意見といったものを積極的に収集し社内に伝える、また当社が持っているお客様に役に立つ情報を積極的に提供してお客様に貢献するということがあると思います。そういったことをきめ細かくしていかないと客を囲い込めません」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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「それはそうなんだろうけど・・・一般的な製品やサービスの提供ではなくウチは審査を提供している。だから営業部よりも審査部、営業担当者よりも審査員がお客様に近いということになり、当然そういった一般には営業が行うべき仕事は審査部や審査員が担っていると思うけどね」
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「営業活動は営業部がしなければならないということもありません。ただそういう機能がなければならないということです」
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「そうなんだろうけど・・・実際は審査員からはそういった情報のフィードバックはほとんどない。また我々が情報発信しようとしても審査員から伝達するというのも実際問題として難しい。結局、年に数回開催している顧客を招いた講演会程度になってしまうね」
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「客からの苦情や提案はどうなんですか?」
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「そういう情報が来ないんだよね」
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「審査後のアンケートがありましたよね。どんなことが書いてあるのでしょう?」
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「先日も言ったと思うけど、通り一辺というか当たり障りのないことだけだよ」
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「話は変わりますが、審査前に審査員を提案した時に、審査員を変えてくれという要望はどれくらいありますか?」
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「うーん、それは営業部はタッチしていないのでよく知らないな。取締役会で雑談で出たことがあるが、あの時の話では100回に2・3件くらいらしい」
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「そいじゃ、ハインリッヒの法則からは、ほとんどの会社で不満があるということですかね? つまりアンケートに書かれた2・3件の問題の29倍の書き込まれなかった不満があり、300倍の小さな不満がある。すると1社当たり3件の不満があることになります」 ハインリッヒの法則のイメージ図
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「まさか・・・いや、しかし、先日の島田さんのようなトラブルが1で、書き込んだものが29にあたるとすると、不満全体は20か30になるのだろうか?」
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「お客様のウチに対するイメージを知りたいですね。なにごともデータがなければ対応が難しいでしょう」
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![]() ![]() 潮田は頭の後ろで手を組み合わせて考えているようだった。 三木は腕時計を見る。もうそろそろ昼ご飯を食べに行かなくてはならない。審査なら何千歩も歩くが今日はオフィスでパソコンを叩いていただけだ。昼は軽めのものにしよう。そばでも重そうだ。コーヒーとドーナツくらいでちょうどかなと思う。道路の向かいにあるスタバでスコーンを食べようか。 ●
1週間後、三木が自分の来月の審査予定を見ると以前より大幅に減っている。まさか認証企業が減ったわけでもないだろうに、どうしたのだろうか?● ● 会社にいても特段仕事がない。めったに会わない人と雑談していると潮田取締役から会議室に呼ばれた。 行くと潮田取締役のほかに伊田取締役と営業の住吉課長の三人がいた。 ![]() | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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「これはみなさんおそろいで、今日はどんな難題ですか?」
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「三木さんに審査員とは違う仕事をしていただきたいと思いましてね、今日はそのお願いというわけです」
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「いや、違う仕事をしていただくのではなく、違う仕事もしていただくということですよ」
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「違う仕事といいますと?」
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「先日、三木さんから指摘されたウチは営業機能が弱いということですが、なんとかそれを強化しなければならないと感じました」
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「営業の強化?」
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「三木さんと話す前はとにかくお客をとるにはどうしようかという発想でした。しかし三木さんから新規顧客よりも既存のお客様を維持することが大事ということを伺いました。そして既存のお客様がウチをあまり評価していないということも。新しい客を取ろうとして足元の既存の客に逃げられては元も子もありません」
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「そんなわけで三木さんに顧客とのコミュニケーション強化をお願いしたいのだ」
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「はあ?」
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「それででしてね、三木さんには審査員もしていただくのは変わりありませんが、事務方に来月から審査の仕事を今までの三分の一くらいにしてもらいました。 まずお願いしたいのは現状のお客様のご意見、苦情というものを分析していただいてひと月くらいで報告をまとめてもらいたいのです。 次のステップは当社の評価を上げるためのアクションプランを考えてほしいのです。もちろん三木さんに丸投げというわけではなく、この4人で適時打ち合わせ方向を決めていくつもりです。 いかがでしょうか」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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「三木さん、とりあえず無役でも動きにくいだろうから営業部副部長になっていただくことにした」
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![]() 住吉が素早く名刺の箱を取り出して潮田の前に置く。 潮田がそれをとって三木の前に置く。 ![]() | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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「辞令というのはないのですが、これからは社内外で副部長を名乗ってください。」
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「いや、全く予想もしていないことで驚きました。私はあと半年で引退するのですよ。そのような今後の方向に関わる仕事は責任重大で、間もなくここを去るものとしては請け負えません」
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「いやいや、三木さん、社長とも話したんだが三木さんには退職せず現職を継続してもらおうということになったのですよ。63歳を超えても子会社の社員の身分のままでお仕事を続けていただきたい」
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![]() 三木は斜め上方を見上げてそろばんをはじいた。確かに会社のイメージというかそういう調査分析をするのは面白そうだ。出歩く仕事が減れば肉体的にも楽になるだろう。それにこれからの健康保険や年金までのことを考えると契約審査員として働くよりも分はよさそうだ。 しかしルーチン業務の審査と違い自らが企画して成果を出さなければならず、中途半端に責任だけ押し付けられると貧乏くじを引く恐れもある。うーん、どうしたものか ![]() | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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「まあ、先のことはともかくとして、当面の課題をお願いしますよ。三木さんの見識で素晴らしい報告書がまとまることを期待します」
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「三木さん期待しているから」
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![]() ということで三木は押し切られたのである。 ●
先日、新しい仕事を依頼されてから三木の審査は月に7日程度となり、それも日帰りか移動が楽なところに限定された。その辺は結構気を使っているのだろうと三木も思う。● ● まず三木が始めたことは、過去数年間の審査後のアンケートを見ることだった。ISO審査が始まってから20世紀末までは審査員は神、絶対者であり、企業側が苦情を申し立てるような雰囲気ではなかった。審査あるいは審査後に認証機関に苦情を入れても、「おまえは何を語っているんだ」といわれるのが常であった。
もっともアンケート結果を公開しているところはすべて素晴らしい評価を得ていますというところばかりである。アンケート結果が素晴らしくないところは公開していないのか、あるいはアンケートはフィードバックのためでなく宣伝用なのか? アンケートの方法も内容も種々雑多である。審査員がアンケート用紙と封筒を置いて後で郵送してくださいというところもあるし、ウェブサイトから入力するところもある。そしてその設問も各社各様である。 私は数社しか知らないのでネットでググってみた。5段階で該当するところに✔印をつける方式もある。文章でコメントを記載する方式もある。設問そのものがなく白紙に自由記述のところもある。 質問の切り口としては
述べたようにアンケート結果をウェブにアップしている認証機関も多々あるが、それが真実なのかアンケート結果のすべてなのかわからない。
三木は他社の広報をみてそんな皮肉が頭に浮かぶ。 ナガスネ環境認証機構の場合は、5段階評価で一番最後に自由記載欄がある。実際には回答の9割以上はコメント欄が空欄である。 5段階評価のほうを見ると、ほとんどが上から2番目つまり4点である。1割程度が満点(5点)と中間(3点)で、たまに2点があるが、1点はない。 これを審査が高く評価されているとみるよりも、可もなく不可もないとみるのが正しいのだろうなあと三木は思う。1点上方にずれているのは企業が認証機関に気を使ったことによるバイアスだろう。 ![]()
![]() 数少ない自由記載欄の記載を読むと、お褒めの言葉が過半を占める。
だがよく見るとオヤッというのもある。
![]() 次のようなものは過去の審査員はダメだったということだろう。
![]() 次のようなものになると審査員がルール違反と思われる。もちろん企業が真実を書いたとしてだが
![]() そして中にはこれは即対応しなければならないなというものもある。
アンケートの回答を総合すれば、ナガスネの審査は素晴らしいと思われるレベルではないようだ。それどころか顧客満足という観点では問題であるレベルだろう。それにまた過去から現在までのナガスネの審査しか受けていない企業が9割以上であり、他社との比較という観点がない。だからその評価点は単なる感覚でしかない。絶対値でもなく相対値でもないのだ。そして誉められたにしても批判されたにしても、礼儀や態度の問題、規格解釈の問題、審査以外に「余計なことをしている/させている」ということがうかがえるのであった。 シニカルに言えばナガスネの審査は顧客企業に迷惑をかけまくっているように思える。ナガスネ環境認証機構を他社に推薦してもらえるかという設問があり、そこでは勧めるというのが過半を占めているが、実際はどうだろう。 本音は No という回答が過半を占めるのではないだろうか? ●
気分転換も兼ねて三木は住吉課長と話をする。● ● 職階が権限とリンクしていない会社だから課長とか副部長といっても単なる呼称に過ぎない。実質的に決裁権限を持つのは部長職にいる取締役だけで、課長、副部長などは単なる名誉か対外向けの呼称に過ぎない。当然賃金とも上下関係とも無縁である。 ![]() | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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「住吉課長さん、お借りした審査後のアンケートを読んでみたところですが、けっこう苦情がありますね。ああいったものに対してどのような対応をしているのでしょうか?」
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「まあ数の中ですからねえ〜、最近のことと言えば・・・・そうそう審査の後、有名なみやげもの屋に連れて行けと言われたというのがありましたね」
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「ああ、ありましたね」
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「これは審査の間違いとかではありませんから変に話が広まったりするとことだなと思いまして、私が菓子折りを持ってその会社に伺いました」
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「ほう、それはご苦労なことで」
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「お話を伺うと、審査が終わった後に土産に菓子を買って帰りたい、ついてはその店まで案内してくれとを言われたそうです。ところがそのとき既に5時過ぎ、審査員は6時過ぎの電車に乗るということで、とても時間的に無理だから後日そのお菓子を審査員宅に送るからとまっすぐお帰りくださいと言ったそうです」
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「それも問題ですな」
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「審査員側にとっては倫理上問題ですな。会社側としては精一杯の対応でしょうね。ところがその審査員は今日持って帰らなければだめだと言い張るばかり。仕方がないので社有車でその土産屋に連れて行ったそうです。ところがたまたまそのお店がお休みで、急いで引き返してなんとか間に合ったという顛末でした」
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「その会社に対してはどんなことをしたわけですか?」
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「ですから私が菓子折りを持ってお詫びをしたということですが」
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「会社として謝罪と今後の対策などを伝えておかないといけないんじゃないですか」
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「そう言われるとそうかもしれませんね。まあ、先方としては私に対してもう結構ですとおっしゃったので良いかなと思いましたが」
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![]() 三木は住吉課長も少しおかしいというか常識がないだろうと心中思う。 ![]() | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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「その審査員に対して社内的な処分というのはあったのですか?」
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「処分? そんなことできませんよ。その審査員は契約審査員でしたので変なことをしたら即やめたでしょう。しかも一人ではなく取り巻き数人と一緒にほかの認証機関に鞍替えしたと思います」
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「えっ、お咎めなしですか?」
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「本人には手の打ちようがありません。社内に対しては本来ならば『接待を受けないだけでなく、お土産やとか観光地に案内など依頼しないように』という通知するところでしょうけど、角が立つと思いまして、いえ私の一存ではなく潮田取締役と相談した結果ですが」
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「なるほど、営業課長もクレーム対応でご苦労されているのですね」
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「そうなんですよ。その他にもありますよ。ええと、これは半年くらい前でしたが、幹事審査員が審査資料を審査を受ける会社に送ったのですが、それがその会社のものではなく別の会社の資料を誤って送ってしまったのです。 別の会社の資料を受け取った会社では、自分の会社の資料がほかの会社に送られたのではないか、そうでなくても情報管理はどうなっているのだとお怒りでした。資料といっても時間割を書いた審査スケジュールだけでなく、過去の不適合の処置とか社内の環境側面と言えば設備や使用電力量や配置図、組織図など社外に出すべきではないものがたくさんありましたからね」 |
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![]() 三木は以前自分も同じことで社外からの苦情電話を取ったことを思い出した。あれはもう2・3年前になる。今でも同じことが起きているのかとある意味感動した。 ![]() |
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「私もそういう苦情を受けたことがありました。おっと、私のチョンボではなく、他の方がミスしたのですが苦情の電話を取ったのがたまたま私でした」
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「おお、今私が申し上げたのもアンケート結果ではなく、その問題が起きた時電話で苦情が入ったのですよ」
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「私が電話を受けた時はひたすら謝って電話を切り、そのあとの処理は営業に依頼しました。住吉課長さんがここに出向される前のことでしたね。 住吉課長さんはその問題をどのように処理されたのでしょうか?」 |
「すぐに間違いをした審査員はわかりましたので調べたところ、その会社の資料はほかに送付していないことがはっきりしました。それでその旨その会社にご報告して一件落着した次第です」
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![]() 三木はそんなことで一件落着したんじゃ時代劇ならお白洲の場面になる前に終わってしまうぞと心の中で思う。 ![]() | |
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「なるほど、大変ですね。今のお話では半年に一件くらい問題が起きているわけですか?」
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「いやいやとんでもありません。これは問題だと思うようなものは月に1件はありますよ」
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「それじゃ住吉課長さんも大変ですね」
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「そうなんですよ。実を言いまして営業部というのは部長を除いて5名おりますが、このような苦情処理で二人分くらいはかかっているのです。新顧客開拓の活動どころではありません」
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「こんなことを言っては失礼ですが、過去の問題やアンケートに書かれたようなことに対して再発防止処置をしっかりとれば問題が起きなくなるような気がしますが」
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「私は出身会社では営業といっても事務をしていましたし、他の者もものを売るのは専門家ですが、そのようなことにはまったくの素人でして。不良対策の専門家でもいればよろしいのですが、」
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「ウチにはISO9001の審査員なんて掃いて捨てるほどいるでしょう。つまり品質管理とか品質保証の専門家なんだから、そういう人を集めて対策しろと言えばおしまいじゃないですか」
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「三木さん、ここには講釈を語る人はたくさんいますが、手足を動かす人はまずいませんし、実際に仕事ができる人は皆無ですよ」
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どんな業種でも問題があればひとつひとつ原因を追究し再発防止をしっかりすれば まったくもってその通りですね。そう言えば、ウチに来ているISOの審査員も常々そう申しておりましたっけ。 |
名古屋鶏さん 話すことの半分もできたら素晴らしい人だという話を聞いたことがあります。読める漢字の半分書けたらすごいのとおなじでしょうか? |
お客様の声 「建前上、仕方なくやってるけどサッサと返上したい」 |
名古屋鶏さん まじめな話、お客様の声をまじめに書いている会社ってどのくらいありますけね? 私が以前勤めていた会社では、部長が審査員の気を悪くしてはいけないと一語一字チェックしていましたね。なんせ私を信用していませんでしたから。ですから毎回美辞麗句のオンパレード、あんなのをお客様の真意だとでも思っていたのでしょうか? 会社を変わって、言いたいことをかけと言われたのが新鮮でした。 |