認識とは

15.12.10
フィットネスクラブに通うようになって3年半になる。効果があったのかといえば確かに体重は7キロくらい減ったし、おなかもへこんだ。スイミングについていえば、まったく泳げなかったのが、今では毎日3キロは泳いでいる。
スイミング じゃあ健康になったのかと言われると、実はかなり疑問である。健康と言ってもいろいろ尺度があるだろうが、私が一番気になっているのは肩こりだ。私はなで肩で若い時から肩こりがひどかった。肩こりで毎日気分がすぐれないのは健康とは言えないだろう。
正直言って毎晩寝るのが怖いという感じ。なぜなら朝起きると肩こりがひどいのだ。安らぐために寝るのではなく、肩こりするために寝るような感じだ。
フィットネスクラブでストレッチとか筋トレをして肩こりが治ったのかといえば、そんな気配は全くない。

ところでフィットネスクラブでは体重や筋肉量などを、いつでも無料で測定してくれるのだが、年に一度少し測定項目を多くするほか写真を撮って分析したりする定期点検をしてくれる。実を言って入会してからそんなことをしてもらったことがなかった。11月のこと、どういう気まぐれかたまたまそのボディチェックをしてもらったのである。
結果は上半身の筋肉量と脂肪量は並みだが、下半身は筋肉が平均以下で平均以上の脂肪がついているという。そして更なるダメ押しとして、上半身が左右対称ではなく左半身が前に出ていて、その影響が足の向きにもおよび、右足は前を向いているのではなく横を向いていると言われた。その上猫背で特に肩の可動範囲が狭く、実年齢よりもはるかに老化していてすぐさま改善しなければいけないと言われた。
その通りである。実は肩こりがひどいという話をすると、そりゃ当然だよと言われた。
どうしたらいいのかと聞くと、専門のトレーナーに見てもらい適切なストレッチとか運動を教えてもらった方がいいという。個人レッスンなど金のかかることなどしたことがなかったが、もしかしたら肩こりが治るかもしれないという期待を込めて個人レッスンを受けることにした。

トレーナーはストレッチだけでなく、ウェイトトレーニングや有酸素運動についても指導してくれた。今までどんな運動をしていたのか、やり方に問題がないのかと。その結果、どの運動でも私のしているのは問題だという。彼が言うには同じ運動をするにも同じ機械を使うにしても、目的は人によって異なるのだから、その目的に見合った方法を取らないといけませんという。
ラットプルダウン 例えば腹筋でも、胴を細くしたいならそれなりに、荷物を背負える体を作るなら自衛隊流だし、その他目的に合わせなければならない。肩こり防止のためにするなら頭の後で手を組んでするのではなく、肩甲骨を広げるようにして頭を膝に着けるまで起こすのではなく、少し浮かした状態まででよいから一定時間その姿勢を維持するようにするとのだという。
ラットプルダウンでも肩こりを防ぐためにするのと、筋肉をつけるための方法は違うよと言われた。レッグプレスしかり、
いずれにしてもその目的に合った方法をしっかりと身に着けて、それが正しくできるようになったら荷重をあげていくようにするのだという。変な方法で荷重をどんどんあげていくのはだめで、軽い荷重でも正しい姿勢で行うことが絶対だという。

週1回1時間のレッスンであるが、そこで習ったことを次週のレッスンまでジムや自宅でひたすら行った。
それからひと月、効果はあったのかとなると、ものすごい効果があった。まず毎日毎日、体の動く範囲が広がっていくのを感じる。泳いでいても腕が今までより伸びるから泳ぎが大きくなった感じがするし、実際25メートルプールを泳ぐストローク数が減ってくる。いくらへぼでも25mを何ストロークで泳ぐかを決めているからその進歩を体で感じる。ひと月前に比べ三つくらいストローク数が減った。
さすがトレーナーと称する人はトレーニングを教えることに長けていると感心した。
あっ、肩こりですか? トレーナーについてストレッチを始めてからは肩こりが消えてしまいました。もっともその代り、肩が回るようになってスイミングのやりすぎか今は筋肉痛が・・

っ、ISOとも環境とも関係ないだろうって?
そうでしょうか? 本日はISO14001:2015の7.3認識のお話なのですよ。
どんなお仕事でも、仕事をする手順や要領を覚える前に、その仕事はなんのためにするのか、その仕事はどんな意味があるのか、仕事の要点は何か、もしルール通りしないとどんな問題が起きるのか、ということを知らないとやる気も起きないだろうと思う。
それは環境に限らず、仕事に限らず、勉強であっても、家事であっても、スポーツであっても同じだろう。
ISO14001は環境に関しての規格だから、環境に関しての仕事においてそういうことの重要性を語っている。

組織は、組織の管理下で働く人々が次の事項に関して認識を持つことを確実にしなければならない。
  • a)環境方針
  • b)自分の業務に関係する著しい環境側面及びそれに伴う顕在する又は潜在的な環境影響
  • c)環境パフォーマンスの向上によって得られる便益を含む、環境マネジメントシステムの有効性に対する自らの貢献
  • d)組織の順守義務を満たさないことを含む、環境マネジメントシステム要求事項に適合しないことの意味
(ISO14001:2015より)

まあ、述べていることについて一般論としては特段問題はない。
認識しなければならないことが羅列されているが、それらについても異議はないだろうと思う。
とここまで書いてきて思うのだが・・・
現実には「認識」とはいかなるものかを理解している審査員も少ないし、企業の担当者も少ない。過去には「訓練する必要がない従事者に行う教育が自覚である」とか、「環境管理に関わっていない一般社員に対する環境教育が自覚である」なんていう説もあった。
*:
2004年版では自覚と訳され、2015年版では認識となったが、原語は同じくawarenessで同じである。
そうじゃないですよね、認識とは規格に書いてある通りのこと、つまり組織の目的を理解し、仕事における環境側面や環境影響を知り、その改善効果とか己の役割を認識し、ルールを守って組織のために協力しようという気持ちを持たせることですよね。それは訓練と並行して行わなければならないものです。

しかし過去15年間の審査や講習会でそういう意味を伝えていないということは、規格が変わっても変わらないだろう。
そして企業の人々がそういう認識を持たなければ環境保護も遵法も徹底しないだろう。
なによりも審査員の方々が認識の意図を理解していなければまっとうな審査が行われないだろう。
「認識」なるものを理解させるには、まずはあなたの仕事の環境側面は何かというものがあってそれを認識せよという順序になるだろう。

しかしISO TC委員が書いた「ISO14001:2015要求事項の解説」のp.251を読んでも、規格の意図が通じていないように思う。著者がそこんところをわかっているのかどうか私にはわからない。
いや、私のような者がISOTC委員が分かっているのか心配することもなかろうが・・・

「ISO14001:2015要求事項の解説」のp.251より引用
「(前略)ということまでを認識しなければならないのは、廃棄物管理担当部門の人だけでよいだろう。
多くの一般社員は入社してから定年退職まで、一度もマニフェストや廃棄物処理業者との契約書を見ることはないだろう。部門ごとの責任範囲に応じて、認識すべき"順守義務とそれを満たさないことの意味"は違ってくる」
(ISO14001:2015より)
弊ウェブサイトの著作権に関する考えは次の通り

確かにこの文言は間違ったことは語ってはいない。しかし誤解を招きやすいことは否めない。要するに事例を引用するときに否定形であることが誤解を招きやすいのである。というのはこの文章では、廃棄物管理担当以外は認識というものが必要ではないと受け取られると考えるからである。
より認識の意味あるいはイメージを正しく伝えるなら肯定形として
「廃棄物管理担当部門の人であればマニフェストや廃棄物処理業者との契約書に関する事項であろうし、他の部門であればその部門が関わる環境側面や責任範囲に応じて、認識すべき"順守義務とそれを満たさないことの意味"は違ってくる」
とすればよかったのではないだろうか。

規格が変わっても審査員がしっかりと意味を理解するのか、なんだか非常に心配になってきました。

うそ800 本日の言訳
本日はこの項番がいかに重要であるかということと、認証に関わっている多くの人たちは規格の意図や規格の文言の意味するところをよく理解していないようだということのみの問題提起ということでお許しください。
つまり本日は関係者にご認識頂くのが目的である。
つまり本日は関係者に誤認識ではないよ!
この項番の以前との違い、そして言い回しにどんな問題があるなどということについてはまた今度ということで・・



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