審査員物語 番外編1 法律の調べ方(その1)

16.03.14

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。但しここで書いていることは、私自身が過去に実際に見聞した現実の出来事を基にしております。

審査員物語とは

えー、審査員物語も終わってしまいましたが(いや私の意思で終えたのですが)、たったおひとりでしたがアンコールを頂きましたので、毛色を変えてもうちょっと書き続けたいと思います。いつまで続くかは定かではありません。既に構想がまとまったものが10話くらいあるのでそれだけは書こうかと・・
内容はISO規格に関する問題というかテーマについて三木がいろいろと考えていくというものです。
それからもうひとつ、単なる物語ではなく私の意見を書いたりして規格をどう理解すべきかということに重点を置こうかと思います。実を言って、そもそもの私のISO小説(?)の始まりであったケーススタディはそんな形で始まったのです。ところがいつの間にか変質して成長小説もどきとなり、マネジメントシステム物語、審査員物語と時間とともにドンドン変質してしまいました。そこでこれを機会に、お好みに合うかどうかはともかく初心に帰ろうかと。
まあともかく行ってみましょう。
過去に書いたものと時間的な矛盾があるかもしれませんが、まあそこはご容赦願います。
ところで審査員物語を始めるとき、1話1万字以下にすると誓いを立てたのですが、結果として平均して1万字、つまり半分はそれを超えてしまいました。あとで読むと自分でも長すぎと思いましたので、今回は最大8500字、平均7500字を目指したいと思います。キーボードを叩くのが趣味というか生きがいの私ですから、この誓いが守られるかどうかは定かではありません。


出向して7か月、三木はやっと補がとれて審査員になった。CEARの審査員になる基準は審査経験が4回20日(書面を含む)以上となっている。その程度の要件を満たすのにそれほど時間がかかるのかと疑問に思われるかもしれない。
三木

パソコン

坂本

吉田
三木が出向したところは新人研修にひと月、その後書面審査の補助のようなことをひと月させ、それから見習いとして10回ほど審査のお供をした。そんなことをしてからCEARに申請して登録証が来るまでひと月、最低半年くらいはかかるのだ。
とはいえまだ環境管理とかISO規格については頭で理解したつもりになっただけで、まだ自分のものとしていない。自分でもそれは認識しており、自分が審査しても良いのだろうか? お金を取るに値する仕事ができるのだろうかと不安である。

今日は神奈川県某所にある従業員200名ほどの工場のISO14001初回審査である。三木も審査員になってからでも10回以上審査に参加してきたが、「法的及びその他の要求事項」を担当するのは今回が初めてだ。今まではリーダーの脇で聞いていたりするのが多く、一部の項番を担当したこともあるが、法的要求事項を担当するのは今回が初めてだ。いささか不安である。もっともそれ以外の項番なら自信があるわけでもない。

三木の相手をするのは 坂本という40くらいの男性と、二十歳そこそこの 吉田という女性だ。
三木
「それじゃ御社での法規制を調べる方法について説明していただけますか」
坂本
「実はですね、ISO認証すると決まったとき、プロジェクトを作ったわけですよ。そして私が法規制担当になったのですが、私は環境法規制なんてまったく知りません。そこで『ISO14001対応環境法の調べ方』という本を買ってきましてね、」
三木
「ほうほう」
改正省エネ法対応

ISO14001対応

環境法の調べ方



おばQ 編

USO800 出版

坂本
「その本・・・ああ、これがその本ですが、環境関連法規の主要なものが載っているのです。そして各法律の要点がここに書いてあります。全くの初心者にもわかりやすくてよくできていると思います。この本を読みましてね、当社が関係することはどれだろうかと調べたわけです」
三木
「なるほどなるほど」
坂本
「あー、その結果ですね当社はいろいろな規制に関わることが分かりまして、例えば公害防止管理者も水質4種が必要ということもわかりました」
三木
「ええっと、そうしますとお宅では今回初めて公害防止管理者の任命とか届をしたのですか?」
坂本
「いえいえ、そんなことはありません。当社は以前から遵法第一に務めておりまして、以前から排水の測定もしていましたし、それに公害防止管理者、公害防止統括者の届もしておりました」
三木
「それは良かった。
しかしそうすると・・・先ほどの坂本さんのお話と今の話の関係が良く見えませんが」
坂本
「例えばここに水質汚濁防止法というのがあります。ここで排水の量とか排水に含まれる物質によってどのような規制を受けるのかと書いてあります。しかし、ウチでは実際にどうしているのかわかりません。
そこで当社では排水をどんな管理しているのか調べました。
あっ当社では環境管理課という部署がありまして、排水処理とか廃棄物なんかの仕事をしているわけですが、ああ、今あそこの席で廃棄物管理について説明している人が環境管理課長です。彼のところに行って今まで何をしていたかを聞いてきました。そしてこの本から私が見つけたことをしているかどうかを確認したわけです」
三木
「なるほどわかりました。その本で該当するものを抽出したのちに環境課長さんにお聞きしたと・・・・その結果、どうなりましたか?」
坂本
「ヒアリングしましたら、実際にはこの本から私が見つけたことのほかにもいろいろな規制に関わっているとのことで、それらに対応しているという説明を聞きました」
三木
「なるほど、それでひとまず安心したわけですね。
ところで、そうしますと手順書に定めた手順と、過去からしてきた法対応の手順は逆だということですか?」
坂本
「逆というわけでもないでしょうけど、まあ、少しは違いますかね。
確かに手順書ではですね、この本をチェックして該当することをリストアップしてその対応をすることを決めることにしています。実際はこの本をチェックして該当しそうなことを以前からしていたかを点検したという流れでしょうか」
三木
「以前からそのように法律を守っていたならば、今回改めてその本で法規制を調べることもなかったような気もしますが」
うそ800規格
坂本
「三木審査員さん、ISO規格に書いてあるでしょう。ええっと、オイ、ミホチャン、ISO規格の対訳本あったね」
吉田
「坂本係長、ハーイ、これでーす」
坂本
「あ、あんがとね。
ええとですね、ここ、ここ、ええっと『適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し』って」

三木は坂本係長の話を聞くとなんか論理が変だなと感じながら『環境法規制調査手順書』なるものを読んだ。それには彼の話した通りの手順、つまり本を調べてそれに対応する手順書を作る手順が簡単に書いてあった。

ワカラン
ワカラン
確かにISO規格要求では法的要求事項を特定する手順を作り、それを参照できるようにせよとある。規格を満たすにはそれでいいのだろうが、ちょっとおかしいと三木は思う。
だって公害関係の法規制は公害列島なんて言葉が生まれた1970年頃に整備され、それ以降は水濁法の規制値が厳しくなったりダイオキシン関係の規制が追加されたことはあるが、法体系も具体的規制事項も大きくは変わっていない。公害対策基本法が1993年に環境基本法に変わったが、実際はほとんど何も変わっていない。この工場はもう40年も操業していて、違反も事故も起こしていない。つまり過去からの手順で問題ないわけで、それならなぜ新たに法規制を調べる必要があるのだろう。
そもそもISO規格は過去から事業をしている企業に対して新たに改めて法規制を調べることを要求しているのだろうか? いや、要求するとしたならばそれは規格がおかしいように思う。過去からしていることを改めて調べなおせというのは論理的じゃない。
とはいえ坂本係長の口頭説明はともかくとして、手順書に書いてあることと記録として提示されたもろもろを見ると、特段矛盾もなく適合とするしかないように思えた。
三木
「坂本さんが今回はともかくとして、法規制の情報は最新化することが要求ですが、次回はどうするのでしょう?」
坂本
「うーん、確かに初回はどういう順序でも説明がつくかもしれませんが、来年以降はどうしましょうかねえ〜
この本は毎年法律の制定改正を反映して改定版が出ているようですから、来年は新しい版を購入して変化したところをチェックするということになるのでしょうか」
三木
「坂本さん、そのへんをどうするのか、意味のない仕事をしても無駄ですから、
むしろ従来から環境管理課が法律の制定、改正をウオッチしているなら、それに手順書を合わせるように見直すとか方法はありそうですね。ともかく現状では手順書と実際が異なるようで、それは問題でしょう」
坂本
「うーん、規格の文言通りに手順を作ったのではどこかおかしいんだよなあ〜」

くしゃみがま止まらん
誰かが我々の噂をして
いるようだ
須々木
須々木取締役
柴田取締役
柴田取締役
審査後、移動しているときに三木は規格を何度も読みなおしたが、ISO規格には法規制を改めて調べよとは書いてない。規格が求めているのは法規制を漏れなく調べる仕組みが存在することであって、その仕組みがISO認証のときに作ったものでも過去からのものであっても問題はないようだ。とすると歴史のある会社で過去から環境管理をしてきているなら改めて調べる必要はなさそうだが?
この要求事項に対するリアクションというか社内展開はどのようなものがあるべきなのだろうか? 三木はそのあるべき姿と言える模範解答が分からない。先輩審査員に聞けばよいのかもしれないが、社内では規格に詳しいと思われている柴田取締役とか須々木取締役に聞いても、どうせ正しい道は教えてもらえないだろうという気がする。


山本
山本です
翌週は東北某県にある従業員100人程度の工場の審査である。
今回も三木は法規制担当となった。今日のお相手は 山本という若い男性だ。
三木
「山本さんですね、三木と申します。ではこれから4.3.2の『法的その他の要求事項』の審査を始めさせていただきます。それじゃまず御社での法規制を調べる方法について説明していただけますか」
山本
「いやあ、私も環境なんて全くの素人で困っちゃいましたよ。幸い当社ではISOコンサルを頼みましてね、その方が『法的及びその他の要求事項対応規定』という手順書のひな型を提供してくれました。内容を見ましたらその手順が非常に分かりやすくて、それを若干アレンジして当社の手順にしたのです」
三木
「なるほど、武道でも踊りでも外国語でも、習い事はまずは師匠を真似することから始まりますからね」
山本
「そうなんです。もっとも真似ができる前に止めちゃうことも多いんですがね。アハハハハ
さてと、当社のこれが『法的及びその他の要求事項対応規定』です」

山本は薄いファイルを広げて三木の前に差し出した。

法的及びその他の要求事項対応規定

  • 第1条 目的
    当社の環境側面に適用可能な、法的及びその他の要求事項を特定し、それらを参照できる手順を明確にすることを目的とする。

  • 第2条 責任
    • 第1項
      法的及びその他の要求事項を特定し、参照できる手順を確立する責任は環境管理責任者にある。
    • 第2項
      環境管理責任者から提供された法的及びその他の要求事項等に関する情報を管理し、「法的要求事項一覧表を最新の状態で維持する責任は、事務局にある。





三木は初めの1ページを読んでアチャーと思った。形式だけは立派だが実際の手順はほんの数行しかなく何をどうするのかわからない。実務の指針としては役に立つものではない。手順書を眺めるのは止めて顔を上げた。

三木
「この工場はだいぶ歴史があると聞きましたが、今まで環境関連法規制を知らなかったということはないですよね」
山本
「もちろんです。ウチには排水処理もないですしボイラーもないから煙突もないし、たいした環境影響はありません。あるのはせいぜい塗装くらいでしょうか。もちろん廃棄物も出ますし、製品の出荷はありますからそれに関する規制は受けますが」
三木
「とすると過去から公害関係法規制とか省エネ法に対応されていたわけですよね?」
山本
「ああ、もちろんです」
三木
「とするとこの手順書は過去からの手順とはどう関係するのですか?」
山本
「いや、先ほど申しましたようにですねISO規格要求に合わせてというか、ISO規格要求を満たすために何をすべきかという観点で手順を定めたわけです。というかまあコンサルさんから頂いたひな形をコピーしたわけですがね」
三木
「いきさつはともかくとして、この手順書に書いてある手順が今法規制を調べる方法と理解してよいのでしょうか?」
山本
「実際にはどうなんでしょうかねえ〜」
三木
「山本さん、そんなこと言われたら困りますよ」
山本
「ちょっと待ってください。オーイ、塚田君、ちょっと来てくれや」
塚田です
山本の声に応えて 部屋の隅に置かれた椅子に座っていた若い男が立ちあがり二人のところに歩いてきた。
山本
「こちらが環境管理課の塚田です。彼が公害とか省エネとかを担当しております」
三木
「三木です。ええとお宅の会社が規制を受けている法規制を調べる手順を教えていただけませんか」
塚田
「法規制を調べる手順と言われても、そもそも法律を調べるなんてしてないです」
三木
「ええ?」
山本
「おいおい、そんな、審査員さんを不安にさせるようなことを言わんでくれよ」
三木
「塚田さん、ええとですね、例えば省エネ法は最近では2002年改正がありましたし、来年2005年にも改正の予定です。改正内容を知るために塚田さんは何をするのでしょう?」
塚田
「正直言って私が法律の制定改正をチェックしていませんから、改正があったことに気が付きません」
三木
「ええ!それじゃ問題が起きるじゃないですか。法改正を知らなければ法を守れない」
塚田
「うーん、そんなことを心配したことがありません。私が動かなくても、法改正があると地方事務所から説明会の案内が来ます」
三木
「地方事務所というのはなんですか?」
塚田
「公害関係は一部を除き県の事務となっていますので、我々に対する指導とか規制は県が行うわけです。県庁まで行くのは一日がかりですから、主要な市には地方事務所と呼ばれる出先機関がありまして、そこに県庁の環境課も駐在しているのです。そこから今度○○法が改正になったからその説明会をするという通知が来ます」
三木
「すると塚田さんは日常的に官報を見たりはしていないのですか?」
塚田
「官報? 山本さん、官報ってなんですか?」
三木 三木は正直驚いた。これじゃ審査にならないじゃないか!
山本
「政府が出している新聞だよ。三木さん、ウチでは官報をとっていません」
三木
「そうですか。では塚田さん、県の事務所から通知が来たらどうするのですか?」
塚田
「ええと、地方事務所から通知が来ましたら講習会には必ず参加しています。欠席するとあとで何かトラブルがあると怖いですからね。役人の言うことを聞いておかないと」
三木
「なるほど、それで講習会でですね、どんな説明があるのでしょう?」
塚田
「一般的に法改正といっても、私のような者にはどこがどう変わったのかわかりません。法律を読むのは難しくて、それに自分なりに法律を読んで間違えてもしょうがないです。
審査員さんもご存知でしょうけど、法改正というのは改正部分だけの法律が公布されますんで、それだけを読んでもわからないのです。改正前の法律を脇において新しく制定された『○○法を改正する法律』というものと一字一句比べないとわかりません。実際には関係する条項を見るのにはあちこちめくったりしなければなりませんので、手間はかかるし自分が読んでも自信が持てないのが本当のところです」

三木は塚田の言うことが全然分からなかった。『○○法を改正する法律』ってどういう意味なんだろう。
三木は理解できなかったが、塚田の話が分かった振りをして
三木
「分かりますよ、自分が読むよりも法律に詳しい人の解説を聞いた方が速いですし間違いないですね」
塚田
「そうなんですよ。説明会では地方事務所の人が、我々に関係するところだけを分かりやすく図解してくれたものを配って説明してくれるのです。
それに・・・変な話ですが、説明会に出ずにあとで問題が起きたときは地方事務所からお叱りを受けますが、指導された通りにしていて間違えた時はお咎めなしですから。そりゃ言われた通りにしますよ」
三木
「なるほど、しかし企業によってはそのときの法改正が該当する・しないということもあるでしょうし、対応しなければならないとなってもやることの細かいところは各社異なるでしょう」
塚田
「そうです。ですから説明会では解説が終わると、担当官が何人も並んで企業からの問い合わせとか手続方法などの相談に乗ってくれるのです。この前の省エネ法改正のときも、当社が該当するのかしないのかがわからなくて、教えてもらって助かりました」

三木は斜め45度上方をながめた。まあ塚田氏の語ることは分かる。しかしそれは法的要求事項を調べる方法として妥当なのだろうか? 県の指導に従って行いますなんてのが法的要求事項に対応する手順とみなされるのだろうか? そもそも認証を受ける組織の外の力を借りることは妥当なのか? なんか裏技のように思える。
いや、まずは手順書とのずれがあるじゃないか、それは明確な不適合だ。
三木
「塚田さん、そのような方法で法規制の漏れが起きたことはありませんか?」
塚田
「私は高校を出て入社して10年になりますが、今まで上司から教えられたその方法で問題が起きたことはありません」
三木
「環境に関わる法律といっても多様です、例えば省エネは経産省、公害関係は環境省、その他消防法は総務省とか多岐にわたると思いますが・・・」
塚田
「確かに消防関係は市の消防署の指導を受けています。しかし所轄省庁が違っても、我々は県の事務所と市役所だけを見ていれば間に合います。法律をどの省庁が担当しているか知る必要はありません。どうせ私たちに何かかにか言ってくるのは県の環境課と市の消防署しかないのです」
三木
「廃棄物も同じですか?」
塚田
「この市は中核市ではないので、廃棄物も地方事務所の指導を受けて仕事しています。
この会社の従業員は100人くらいでしょう、地方事務所も市役所もこのくらいの規模の会社を重点的に指導してくれます」
三木
「ほう、それはどうしてでしょうか?」
塚田
「数百人もいる工場ですと環境部門に法律に詳しい人もいてしっかり調べているんですよ。逆に従業員が2・30人ですと、たいした機械も設備もありませんから、あまり問題になるようなことが起きません。せいぜいコンプレッサーの音で近所から苦情があるくらいです。
ウチのように100人規模ですとある程度の機械設備もあるけれど、あまり環境部門とかがしっかりしていないので県の事務所も丁寧に指導してくれます。煩わしいと感じることもありますがありがたいですね。県からも市からもほぼ毎年工場視察に来て、いろいろと指導を受けています」
三木
「なるほど・・・・・・ちょっと待って、
環境関連法規制といっても公害とか省エネだけじゃないでしょう。例えば自然保護などもあるのではありませんか。今年『 鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律』なども改正されています」

注:当初下請法を例にしておりましたが、下記に示すレイシオ様から私の間違いを指摘していただきましたので、この箇所を修正しました。ご了承ください。

塚田
「そういう法律の改正もあったのですか」
三木
「まさかそういうのは地方事務所とか消防署が説明会を開かないでしょう」
塚田
「もちろんそれはないです」
三木
「環境に関係する法律を広くウオッチしていることが必要だと思います。見逃しがあるようでは問題ではありませんか?」
山本
「三木さん、我々が事業として狩猟をしたり、この工場に野生動物が入ってくるなんてことはありません。あまり仮定の話をされても対処に困ります」
塚田
「地方事務所はその土地土地の実態を理解した上で解説をしてくれますから、ここではそのような問題がないというか、我々には関係ないと理解しているのだと思います」
山本
「三木さん、それについては、広い視野を持って仕事に取り掛からなければならないという趣旨で伺ったということでよろしいでしょう
(後ろに座っている人を振り向いて)あまりイチャモン付けられると困っちゃうよなあ〜」
三木
「なるほど、法改正を日常調べなくても、行政からの指導が密にあり問題が起きないのですか。
うーん、山本さん、塚田さんのおっしゃった手順と、この・・・ええと『法的及びその他の要求事項対応規定』に書いてある手順はちょっと違うようですね」
山本
「そんな風に見えますか・・・今回ISO14001を認証したらこの手順で行うということで勘弁してもらえませんかね」
三木
「塚田さんのおっしゃる方法で問題なければそれを手順書にした方が簡単かなと思いますが」
山本
「実を言いましてね、コンサルさんのお話では、その方法では審査員によっては不適合、つまりダメだと言われることがあるとのことで、実質はそうだとしても手順書はISO規格の文言通りにしておけと言われたのですよ。
おっと、今のはオフレコです。あのですよ、今の塚田の話はなかったことにしていただいてですね、書類上はこの通りこの手順書の通りの検討記録がありますからよろしく」

三木は何がヨロシクだと心の中で悪態をついたものの、形式的にはケチのつけるところはなさそうだった。


審査から戻ってきて三木は考える。
ISO規格はつい最近作られた。公害防止の法規制は40年も前に制定されている。省エネ法も制定の経過は違うがオイルショック時に整備されほとんど同時期だ。廃棄物処理法もしかり。
企業は法規制で定める組織を作り手順を整備しているはずだ。なぜなら手順を作り組織を作れと公害防止関連法規制が強制している。また省エネ法でも消防法でも責任者、管理者などを決めている。それらに従わなければ刑法上の罪がある。もちろん法規制を受ける企業だけだけど。
さて、ISO14001で「手順を確立し、実施し、維持すること」とあるのは、今それをしろということなのか? 過去からしていればそれでいいよということなのか?
もし過去からしている方法がISO規格に書いてある流れと異なればだめなのだろうか? あるいは認証組織外にお世話になる仕組みではだめなのだろうか? それとも実質的に遵法が達成できるなら流れが異なっても良いのだろうか?

番外編の初回はいかがだったでしょうか?
全然役に立ちそうがないなんて突込みがあったりして・・・
おっと、法律の調べ方の(その1)ですからね、(その2)、(その3)と続きます(予定です)。最後までお読みいただければ、実際に自分の会社で法律の調べる方法を構築することができるでしょう。

うそ800 本日の暗雲
今回は約9100文字、初回から上限をはるかにオーバーとは、これは春から縁起が悪い・・・



レイシオ様からお便りを頂きました(2016.03.14)
例えば従来は廃棄物処理業は下請法の対象外だったけど最近下請法の規制を受けるようになりました

私もつい最近までそのように思っていたのですが、最近調査するきっかけがあって調査しました。
「情報通信機器産業における下請適正取引等の推進の為のガイドライン」のP10のQ21に「廃棄物処理は、下請法の対象外」と記載がありました。
どうも廃棄物は自ら処理原則があるから、役務提供であっても下請法適用外のようです。

「環境原論」届きました
本文:切手まで負担いただいてありがとうございます!!
ゆっくり、じっくりと内容確認します。

*テーマの順序を差し替えました。初めの方だけをお読みになる方に備えてのことです。

レイシオ様 毎度ありがとうございます。
ご指摘ありがとうございます。いやあ、私も不勉強でありました。経産省などの解説資料を見ますと、役務提供であっても下請けと、委託しているの違いとか、と言われても私にはその違いがわかりませんでした。当時は廃棄物契約書にマニフェストが戻ってこなければ費用を払わないなんて書いてあるのが普通で、それは大丈夫なのかと考え込んだものです。でもマニフェストが戻ってこなければ廃棄物処理法上の問題はともかく、業務が完了していないのだから支払いをしなくても良いのではという結論だったような気がします。なにせ10年も前なので忘れました。
となるとどうしようかと・・・困りました。
とりあえずなんとかつじつまを合わせましたのでご了承ください  m(_ _)m

本、届いたとのこと、了解しました。読んだら捨ててください。平野先生はリサイクルがお嫌いなようですから。


神部様からお便りを頂きました(2016.03.14)
番外編ありがとうございます。
佐為様
最初のところでたった一人のアンコールというところに違和感がありましたが、きっと皆様しとやかで声を上げていらっしゃらないだけかと。そう思うと納得でき本文へスムーズに入っていけました。
しかし・・・この塚田さん、うちの主任の考え方によく似ています。塚田さんは「連絡があるからそれでOK」うちの主任は「言われたら動こう」。逆にいうと双方とも「自らは動きません」。主任に「自ら動かないのですか?」と尋ねたら、「もしそんな面倒なことやってられない。代わりにお前がやれと言われたらお前が代わりにやってくれるのか」等々。他部署から「仕事をしていない」と言われれば「そんなことはない」と言いつつやはり動かない。
身近にいる人の顔を思い浮かべつつ、番外編の塚田さん山本さんと三木さんの今後やりとりを楽しみたいと思います。

神部様 毎度お便りありがとうございます。
いえいえ、世間は冷たくアンコールなんぞ声をかけてくれたのはお嬢様ただおひとり、干天の慈雨でございましたよ、ヨヨヨ
残念ながら塚田さんももう登場しないと思います。塚田さんだけでなく山本さんも吉田さんも1回こっきり。
次回登場する方にお嬢様のお名前を頂いて神部さんとしましょう。良い役を割り当てないと・・・

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