*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但し引用文献や書籍名はすべて実在のものです。民明書房からの引用はありません。
アウト! |
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「砲兵工廠から電話ですよ」と南条さん ![]() 今日の約束はないはずだと、伊丹は頭にクエスチョンマークを浮かべて受話器を取る。 相手は藤田中尉だった。 藤田中尉が言うには、最近、演習で歩兵銃の故障や動作不良が増えている、その原因究明にご協力いただきたいという。伊丹は技術的なことは専門外だと言ったが押し切られ、結局、午後一に砲兵工廠に出向いた。 ●
会議室に案内されると、いつもの木越少佐、藤田中尉、黒田軍曹の他に、髭を生やした士官がいる。● ● ![]() |
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「こちらは | ![]() 南武少佐 |
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「初めまして、伊丹と申します。私は作業改善とか現場管理について指導をしております」
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「君がノギス製作の指導をしたと聞いている」
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「指導というよりも見本を作っただけです。なにか問題と聞きましたがノギスが関わっているのですか?」
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「うーん、このところ小銃の故障が増えているのだが、そのような不具合は従来なかった。調べると問題が起きたのは、生産や検査にノギス使われた時期以降に生産されたものなのだ。そこに何か関係があるのかと・・」
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「先ほど申しましたように私は管理技術について指導していますが、固有技術は専門外です。 とはいえ故障が増えているとおっしゃいますが、具体的にはどのような?」 | ||||||
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「野戦演習で砂塵や泥水などをかぶることによる動作不良だ。調べると細かな砂が摺動部に入り込んでいる」
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「従来品と現状の寸法の変化は調べてみたのでしょうか?」
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「う?それはどういうことかな」
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「いや摺動部とおっしゃいましたね、具体的構造は知りませんが、当然組み合わさる二つの部品があるわけでしょう。その組み合う、ふたつの部品の寸法とか表面粗さが従来と今では変わってきているのではないかと思います」
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「おお、わしはゲージでのチェックはしたが、測定するという発想がなかったわ。 おい軍曹、寸法測定はできるか?」 | ||||||
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「はっ、できることはできますが・・工場に何丁があると思いますので、それを探して新旧を確認してとなりますと・・」
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「よし、これから現場に行って始めようや」
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![]() 黒田軍曹はやれやれという顔をして皆を先導して工場に行く。 黒田軍曹が現場で部下にあれこれ指示をして対象物がそろうのに30分ほどかかった。その間に伊丹は南武少佐から小銃の構造の説明を聞いた。 南武少佐の話によると遊底(ボルト)という部品の摺動部に砂が入り込み動かなくなるという。
あちこちから新旧の銃が10丁ほど集まってきて、黒田軍曹が机の上に並べた。 南武少佐が小銃を手に取り、無造作にガチャガチャと遊底を動かす。 | |||||||
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「最近作られた方が動きが滑らかだなあ〜。古いものは感触が悪い」
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伊丹も南武少佐の真似をして遊底を動かしてみる。古いものは感触が悪いというよりもガタが大きい感じがする。 ![]() | |||||||
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「遊底はレシーバーの中を前後に動くようになっている。前進して弾丸を薬室に入れて後退して排莢する。このレバーを回すと遊底の前後方向の移動が固定されたり解除されたりする。弾丸を発射するときは遊底が止まっていないと困るからね」
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「なるほど、よく考えられた構造ですね」
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「ハハハ、これは | ||||||
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「遊底の摺動部に砂が入るといいますと隙間が大きくなったのですか?」
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「いや現物をみると隙間が小さくなっているようだ。というのは古いものよりも新しいものがボルトを動かすときのガタが少ない」
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「報告します。ええと測定した結果、従来のものより現在の物の隙間の差は0.5ミリ小さくなっています」
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「ええ、0.5ミリも?」
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「設計では隙間をいくらに設定しているのですか?」
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「いや正直言って俺も隙間がいくらが良いのか知らないんだ。なにせ今まで図面には呼び寸法 | ||||||
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「今はゲージ基準でなく図面寸法を基準にして加工しているからですかねえ〜」
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「それはどういうことかな?」
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「従来は限界ゲージに合格することを目安に作っていた。実際の寸法がいくらか分からなかったし、気にもしなかったわけです。 しかしノギスを使うようになって、図面寸法を目標に加工するようになったと」 | ||||||
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「それがどういうことに?」
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「従来は限界ゲージに入ればよいわけですから部品を削っていってゲージの通り側を通ったところで削るのを止めたでしょう。削りすぎてゲージの止まり側を過ぎてしまえばオシャカですから。 そうすると完成した部品は、上限が多く、下限は少ない分布になるでしょう。このときの分布は釣り鐘ではなく上限側が高い三角形の分布になりそうです。 他方、呼び寸法つまり図面に書いてある寸法を目指して加工するとその寸法を中心に釣り鐘型に分布するでしょう。 ところで設計の呼び寸法が限界ゲージの中心寸法であるわけではありませんから、ゲージ基準で行っていたときとは分布の形が違うだけでなく、分布の範囲がずれていたと予想されます」 ![]()
寸法基準とゲージ基準で加工した場合の分布
青線は寸法目標で加工した場合、赤線はゲージ基準で加工した場合
![]() 上図は概念図であり状態を正しくに示すものではない。 寸法を目標としたときよりゲージ基準の方が端の方が多くなること、また工程能力が低いと三角形の分布から台形になる。標準偏差が変われば条件は変わるが、いずれにしても赤の方が限界の組み合わせが増えるのは変わらない。 ![]() | ||||||
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「なるほど、そうするとノギス使用以前とは、中心寸法も分布の形も異なってきたと・・ 今の報告では実際に隙間が小さくなっている。それで摺動時の感触が良くなったものの、泥や砂塵には弱くなったと」 | ||||||
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「じゃあ寸法を基準に加工することは間違いで、従来通りゲージ基準に戻せば良いのか」
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「いや木越君、それはおかしいだろう。精度良く加工できるのに精度を落とせというのもおかしな話だ。従来と同様に隙間ができるような寸法指定をすべきだろう」
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「従来は精度は悪かったが正確さはよく、現在は精度は良くなったが正確ではなくなったということでしょうか」
注:正確さ(確度)とは、真の値に近いことで、系統誤差の小ささを言う。 | ||||||
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「いやいや図面の呼び寸法に照らして今の方が正確なのだろうなあ〜」
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「あのお話中失礼ですが・・・ノギスを使うようになる前は部品寸法のバラツキが大きく、そのまま組み立てることはできませんでした。それでゲージの検査では合格したものでも、組み立てる時にヤスリがけして現物合わせしていました。 ノギスを使って加工するようになってからは、ほとんどが手を加えずに組み合わさるので調整作業を止めています」 | ||||||
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「ということはノギス基準にすることで互換性が確保されたということか。やはりバラツキが小さくなっただけでなく正確になったということか」
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「だが砂塵に弱いのではしょうがない」
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「そのとおり。だがそれはゲージの設定ミスなんだろう。だからこの分布のままで隙間が従来と同じくなるように中心を動かせば、組み立て時に調整なしで組み立てできかつ砂塵の問題がなくなるはずだ。 おい軍曹、遊底を削りなおして従来の隙間にすることはできるか? つまり径を0.5ミリ細く」 | ||||||
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「できなくはないですが、新規に製作した方が間違いないですね」
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「そうか、それじゃ遊底の径を0.5ミリ小さいものを50個作るとしてどれくらいかかる?」
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「二日もあれば」
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「よし大至急やってくれ、頼むぞ」
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黒田軍曹が指示を出すのをみて、南武少佐は元の部屋に戻る。 木越少佐、藤田中尉と伊丹は慌ててその後を追う。 ![]() | |||||||
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「南武、どうもわからないが、従来の方法に戻すのと現行の作り方で0.5ミリ変えるのとどう違うのだ」
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「そりゃお前、全然違うだろう。今まではたまたま良かったということだ。それも互換性がなくて組み立て時に調整が必要という条件付きだ。 今試作を頼んだのは、寸法を変えれば本当に良くなるのかの確認だ。 これで砂塵の問題がなくなれば怪我の功名、棚から牡丹餅だな」 | ||||||
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「南武少佐殿、しかし変でしょう。ゲージだって互換性が確保できる設定にできるはずです。限界ゲージで合格になっていながら互換性がないというのはどう考えても・・ こういったものの部品の寸法公差というのをどうお考えなのでしょうか?」 | ||||||
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「結局、現物を正確に寸法測定ができないからだろうなあ。現物合わせで物ができたら、それを基準に可動を確認して最大最小のゲージを作り、その限度内に製造しているという実態が問題だな。 もっとも計算して許容差を決めても、測定する方法がなければどうにもならない」 | ||||||
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「ただほとんど全数、組み立て時に調整や追加加工が必要だとなると、限界ゲージの設定が適切でないということです。それなら限界ゲージの見直しをするとか、工程能力がないなら部品の大小を層別することはできるはずです」
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「そう言われるとそうかもしれない。言い訳になるが実際の加工精度がどうなのかってのも測定できないんだから把握していない。そこがゲージを使う方法の限界かもしれないな。 今では現場の職工全員がノギスを使っていると聞いたので、これからはそれを前提に設計すべきだと思う」 ![]() |
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「測定と加工と公差というものは一体です。私はそれを三面等価と言ってます。 満足な測定器がない状態で図面指定するというのは難しいですね」 |
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「まったくだ。頭で考えた公差を指定しても、加工ができないとか測定ができないでは意味がない。現場で百分台の精度で加工も測定もできればいいのだがなあ」
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「現在はノギスを使っているから20分の1ミリまで測定できる」
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「それは読み取りが20分の1ということであって、実際の精度はわからんぞ。 公差設定も加工精度も重要というか向上していかなければならないが、まずは測定だろうな。 伊丹君が測定で改善しなければならないと考えていることはなんだ?」 |
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「いろいろありますが、まずはしっかりした計測器体系を構築すること。その根本はトレーサビリティです」
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「トレーサビリティ、アメリカに視察に行ったとき聞いたな。追跡可能という意味のようだが、どういうことか?」
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「原器までつながっているという意味ですね。現時点、工廠の計測器がメートル原器とつながっているかどうか確信が持てません。 そして定期的な校正が必要でしょう。だいぶ前ですがゲージが狂ったために合格すべき部品が不合格になったこともありました」 |
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「なるほど、校正は計測器だけでなくゲージも定期校正など管理をせんといかんな」
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「それに加工においてはやはり実測して実際の寸法が分からないと。また今回のような場合は、通常から寸法を測って記録していればすぐに原因究明ができたと思います」
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「先日、呉海軍工廠の後堂少佐 ![]() |
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「ああ、後堂君ならよく知っている。彼も互換性の理屈では有名な男だ」
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「細かいことは忘れましたが、昔アメリカで小銃をゲージによる管理で完全に互換性を確保したという話を聞いたことがあります」 |
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「ワシも聞いたことがある。結局、単にゲージ方式が悪いとか測定すれば良いということではなく、切削でもプレスでも正確にそしてバラツキが抑えられるなら、どんな方法でも互換性は確保できるるのだろう。我々のように、1個1個現物合わせでヤスリとかキサゲで仕上げをしているようじゃだめなんだろうな」
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「ここではノギスを普及させましたが、次はバラツキのない加工をできるようにすることですね。そうすれば寸法公差を指定する設計が可能となり、互換性のある品質の良いものが量産できます」
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「かの国ではもう100年以上、小銃や拳銃を作ってきた歴史があるし、そのほかに馬車や蒸気機関などの機械を作ってきたから、技術やインフラの蓄積はあるのだろうなあ〜」
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「結局は国全体の総合的な技術レベルの問題ですか」
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「とはいえアメリカに生まれたらよかったなんて言っも詮のないことだ。この国に生まれこの国で死ぬしかない我々は、与えられた環境で最善を尽すしかない」
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「最善を尽くすだけでなく、他国より優れた成果を出さなければならない。 そう考えると辛いものではあるね」 |
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「見方を変えれば、男冥利に尽きるじゃないか」
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伊丹が帰った後、木越少佐、藤田中尉そして南武少佐が残って話をしている。 | |
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「たいへんな問題になるかと心配したが、なんとかなったようだな」
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「いやいや、それどころではない。互換性向上について見通しがついた気がする。 しかし、あの伊丹って野郎は只者じゃないな、」 |
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「私は練兵場建設のときからそう思ってましたよ」
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「練兵場とは?」
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「半年ほど前に超短期で練兵場を建設したことを知っているだろう。 普通に考えるととても無理な計画だった。そのとき彼を臨時の嘱託にして日程計画やその他事務的なことを仕切らせたのだ。すべて計画通り達成したのには感心したよ。 そんなことからその後、毎月生産性向上や能率改善の講演をしてもらっているのだが、一回2両の価値は十分あるね」 注:この物語の世界では1両を現代の約12万円としています。 ![]() |
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「講演1回で2両だって! そりゃ少尉どころかここにいる藤田中尉の給料くらいじゃないか。それなら講演を依頼するのではなく、軍属にすればいいじゃないか。月3両も払えばいいだろう。そうすればひと月自由に使える」
注:軍属とは軍隊に所属する軍人以外の人で、階級を持たない。弁護士、通訳、語学や技術の教官、技術者、看護婦、売店など。軍医は軍属ではなく軍人です。 |
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「いやいや、また聞きだが彼は月給6両以上もらっているそうだよ」
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「へえ! 驚いた、それほど稼いでいるのか」
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「確かに彼は高い、しかし今まで払った金はノギスだけで十分に元は取ったように思う。 それにここで飼い殺しにしては国家に申し訳ない。彼には広く活躍してほしい」 |
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注1 |
ISO的には定量化とは必ずしも数値化ではないとされている。しかし英英辞典によるとmeasureとは to find the size, length, or amount of something, using standard units such as inches, metres etc だから、数値で把握しないと定量化ではないようだ。 |
注2 |
「原因と結果の法則」ジェームズ・アレン、2003(原書は100年前発行)、サンマーク出版 昔から誰もが考えることのようだが、実践する人は少ない。 もっとも行き過ぎると決定論的な考えになってしまいそうだ。 |
注3 |
前回も似たようなことを書いたが、ちょっとしたことに興味を持ってデータをとるということを私は継続してきた。その結果、実際に役立ったことも多い。日記をつけるのも良いが、日常生活や仕事で気になったことを記録するのは大いに役立つ。私は過去10年間、日々の体重、血圧、歩いた歩数を記録している。将来役に立つかもしれない。まあアリエナイだろうけど。 ちなみに9月17日は63.8キロ、118-80、雨の中4,100歩ほど歩いた。運動不足で体重オーバーなのは明らかだ。 |
注4 |
38式歩兵銃は外国では有坂ライフルと呼ばれているが、有坂成章中将が設計したのではなく、部下の南部麒次郎中将(当時は少佐)が担当した。この物語では南武とした。 南部は南部14年式拳銃に名を遺した他、多くの小火器を設計した。退官後、南武銃製造所を設立した。変遷はあったが現在ミネベアに吸収されて警察官用拳銃を製造している。 ![]() |
注5 |
呼び寸法とは「JISZ8114:1999 3145 対象物の大きさ、機能を代表する寸法」のこと。 通常は図面に記入された寸法をいう。「呼び寸法」は許容範囲の中心でもないし、許容範囲外のこともある。例えば、呼びが10ミリのねじはすべて10ミリより細い。またIT公差でHとJ(及びhとj)以外は、呼び寸法と許容範囲は重なっていない。 |
注6 |
30年も前に読んだことであいまいだが、たぶんスプリングフィールド国営造兵廠(1968閉鎖)だと思う。そこでは1800年代半ばゲージによる管理方法(工廠方式と呼ばれた)で完全な互換性を実現した。 ゲージによる管理方法が良い悪いではなく、精度が悪ければゲージであろうと寸法を測ろうとダメということだろう。 ところで伍堂卓雄がゲージによる管理方法を1929に万国規格統一協会(ISA)で講演をしている。はるか昔にアメリカで工廠方式があったのだから、伍堂が講演したのはどんなことだったのだろうか? ネットだけからでは分からなかった。 |
注7 |
この物語のとき、日本全国の自動車の保有台数は500台程度だった。すべて東京23区内にあったとして、1キロ四方に1台もない。 「明治・大正・昭和初期の道路交通史」、片山三男、神戸大学紀要2005、 全国の自動車保有台数の推移 |
注8 |